ダーク・ファンタジー小説
- Re: Change the world ( No.85 )
- 日時: 2018/04/15 20:28
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
41話 関係
「お疲れ様です。約束通り差し上げますね。ついてきてください」
スタンプがすべてうまり、事務室へ戻った俺達。
タンドさんは誰も見ていないことを確認すると奥の本棚を動かした。
どかした本棚のあった場所には、先が暗く、どこまであるかわからないほどの地下へと続く階段があった。
まさか、このような場所に秘宝の眠る場所があったとは。
少し降りると、後ろの方で本棚が動く音がした。
「出口、なくなっちゃったけどいいの?」
「大丈夫。別の方法がありますし、あっちではニョーがうまくやってくれているはずですから」
さらに降りると、部屋があった。
壁には松明が飾られ、辺りを照らしている。その壁に描かれていたのは…
「これは… 幻獣の壁画?」
土で作ってあると思われるレンガの壁に描かれていたのは幻獣の絵。
少し消えかけて色が薄くなったりとしているが、だいたい何が描かれているのかわかる。
「そうです。ここに描かれているのはそれぞれの属性を司る神とその使い… 幻獣の絵です。昔、私の祖先が描いたとされています。」
どの方向にも壁画がある。中心には人… 神がおりその隣に幻獣がいる。幻獣の背後には建物らしきものが描かれていた。それについて聞くと、「その建物は魔石のありかです」とタンドさんは教えてくれた。
確かに、今まで魔石を求めて行った建物に似ている。ここを見ればどこに何があるかすぐわかりそうだ。
「守一族と神と召喚士と幻獣の関係、わかりますか?」
「常識ってカンジで覚えたけど、あんまり理解できてないぜ。俺は」
それでいいのか国王。
先が思いやられる…
「では、説明しましょう。うまくできるかわかりませんが…」
その後、タンドさんは壁画を使って説明してくれた。
「この世に魔法などの属性が出来た時、同時にそれを司る神が生まれた。
神は魔力が強く、特に自分の司る属性の魔法の威力は計り知れないものだった。
ある時神は人々に魔法を教えた。すると文明は栄えていった。
文明が栄えることで人は力を持ち、互いに力を求めて争うようになった。
そのうち、神の力をも求めるようになっていき、神は自分を守るための使い…幻獣を生み出した。
力を求める人、自分を守るために生み出された戦うための幻獣は戦うようになっていった。」
「だからバハムートはあんなふうに言っていたんだ〜」
「バハムートにあっているんですね。さっき言った戦いでその力が危険視されバハムートは魔石とされてしまったんです。だからそう言ったんだと思います。」
タンドさんは説明を続けた。
「だが状況はずっと変わらず、どちらも犠牲をうむばかりだった。
そんな時、世界を創造したとされる神… 創造神が皆の前に現れこう言った。『争いを止め、共に手を取り合いなさい。』と。そこで神は魔力の強い人間を選び、契約させ力を与えた。それが私達守一族です。
しかし戦うために生み出された幻獣は危険なものばかりだった。そのため神は幻獣をバハムートのように魔石に変え世界の様々な場所へ安置した。
ある日、幻獣はそれぞれの主へこう言った。『これでは、存在する意味… 生きる意味がない』と。
神にはもう、戦う理由がなかったため幻獣は必要なかった。消してしまってもいいと思った。神にとって幻獣は自分を守るための道具にすぎないのだから。でも幻獣にはそれぞれの感情…心ができてしまっていた。戦いのおかげで道具ではなく、1つの生き物となっていた。だからと言って、巨大な力を持つ生き物を自由に野放しにするわけにはいかなかった。
そんな時、神と契約した守一族の者が『我らが作り上げた召喚魔法で幻獣を呼び出し、共に協力して生きていく事を望む者が我が一族にはいる』と言い出した。
神は思いもよらぬ言葉に驚いたが、それなら安全だと思った。
なぜなら、創造神の言った『共に手を取り合う』という事ができ、幻獣を手放すことができたからだ。
そして、『共に協力して生きていく事を望むもの達』はそれぞれの幻獣を従えるために守一族と離れ、神との契約を無きものとし幻獣と契約した。離れた者達は後に召喚士と呼ばれて言った。
…という感じですかね」
守一族と神と召喚士と幻獣の関係。それは古の頃から続くものだった。
「さて、秘宝についても説明しますね。この『他世界への鍵』は、その名の通り別の世界へ行くための鍵です。
この鍵が対応している扉は世界には3つあります。しかし私が把握しているのは幻獣界への扉のみです。」
「どこにあるんだ?」
「この大陸の北側にある『召喚士の里』の下です。私は守一族の者なので詳しくはわかりませんが…」
「ありがとう、タンドさん。あとは私達に任せて」
タンドさんがオリガを見て何かに気付く。すると、何か安心したようだった。
「任せますね。では、これを」
宝石のように輝く石… 『他世界への鍵』を貰った。
「…どうやってここから出るんですか?」
誰もが思った事をシドが聞いた。
ここへ来る途中に、別の方法があるとは聞いたが…
「私が今から私以外の者を対象にして転送魔法を唱えます。行き先は、召喚士の里の入り口です」
「ありがとうございます。 …飛空艇もですか?」
「はい。戻ってくるのも大変でしょうし」
タンドさんは瞬時に詠唱を終えた。
辺りが光に包まれ、その眩しさに俺は目を閉じた。