ダーク・ファンタジー小説

Re: チェンジ・ザ・ワールド 番外編 ( No.11 )
日時: 2017/12/10 21:04
名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)

【番外編】〜旅立つ前編〜

孤児院や緑の国が帝国に襲撃され、離れ離れになってしまった少年少女たち。
少年少女たちはその後どのように生活していたのか…

1.レオンの旅立つ前
1−1 リベロという男

「ここは…?」

見たことのない部屋。
そして、食欲を増進させるいい香り。

確か、孤児院が襲われて、逃げ出して…?
そこからは思い出せない。

助かったのか。

だから俺はここにいるのか。

「目ぇ覚めたのか」

横に視線を移すと、いつも眠っていそうな顔の男が椅子に座っていた。
細身で古着のような服を着た男が。

「あんたが助けてくれたのか?」
「んな訳ねぇだろ、そういう男に俺は見えるか? 助けたのは俺じゃねぇ。きっと妖精だ」

妖精だと?
そんなのがこの世にいると信じているのか。

「お前、名前は?」
「レオン・ハイレゾ。あんたこそ名前は?」
「俺はリベロ。ここの『フー吉亭』の店主だ。腹減ってるだろ?下に来い。試作品を食わせてやる」

リベロに言われた通りに下の階へ行った。
木製のテーブルがあちこちに並んでメニューらしきものが置いてあるが、誰もいない。

「今日は定休日なんだ。ここにいるのは俺とフー吉だけだ。おーいフー吉」

名前を呼んだら、料理人の格好をしたフーがやってきた。

「こいつがここの看板フー。フー吉だ。どっかの席に座ってこいつと待ってろ」

リベロは厨房の方へ「ヤベっ」と言って走って行った。
ここは飲食店のようだった。

ならば、出てくる料理は安心して食べれるものだろう。
オリガの作った試作品のものみたいにはならないだろう。
アレは、酷かった…

数分してリベロがやってきた。
持ってきたのは塩焼きそば。
野菜とベーコンが彩りよく入っている。

「試作品だからまぁ、まずかったらしょうがねぇ。感想よろしくな」
「わかった。いただきます」

人参が少し硬い。おまけに塩よりも胡椒が強い。
もう少し長く炒めたらきっと美味しいだろう。

…と、リベロに伝えた。

「お前、味覚がいいな。どうだ、料理やってみねぇか? その才能をさらに俺が開花してやる。」

料理か。
今の俺には剣を扱えること以外何も残ってはいない。
生きていくためにもやってみるか。

「わかった。やってみる。」
「そうこなくっちゃな!」

こうして、俺はリベロと共に料理を作り、客へ提供するという日々が始まった。
リベロには、俺には剣の才能もあるとわかっていたらしいが、そちらにはぜんぜん話さなかった。なぜなら…

Re: チェンジ・ザ・ワールド 番外編 ( No.12 )
日時: 2017/12/21 19:19
名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)

1ー2 再会を夢見て

みんなは元気にしているだろうか。

モンスターを狩り食材を手に入れたり、料理を学んだり、接客の手伝いをしながらフー吉亭で生活し始めて5年がたった。

俺達を襲った帝国はその後はどこかを襲撃したりしなかった。…というか穏やかになっていた。内部はよくわからないが。

今日も店の入り口の看板をOpenにして1日が始まった。
朝のうちに食材の下準備を済ませておいたので、いつもよりも自由な時間ができた。

「さて、何やっかな…」

剣の手入れでもするか。…と思った時、入り口の鐘が鳴った。
お客さんが来たのだ。

「いらっしゃい!」

厨房からリベロの声が聞こえた。
『いらっしゃい』といつもは普通だが、今回は『!』が付くくらいなので来たのは常連さんだったのだろう。

1階へ降り、厨房へ行く。
注文は『山ベリーのパンケーキ』。
こんな甘い物を朝から食べるのはあの人しかいない。
そう思いながら客席へパンケーキを運ぶ。

「今日も来たんだ、ジンさん」
「お、レオン。もう『さん』はつけなくていいって言ったろ」
「そう… だったか?」

甘党の常連客の名はジン・レンロス。
俺の2つ上で元帝国の兵であり、剣の師匠的な人。なんだかんだあったらしく今は反乱軍に所属しているらしい。

「そんな甘い物を食べて大丈夫なのか?」
「大丈夫。工夫とかしてっから。」
「今日もこれのために?」
「いや、別の用件もあるからな。ちょいと待ってろよ」

5分後。

「で、用件は?」
「お前、反乱軍に入ってみないか?」

急すぎるだろう。
どういう事かわからないがリベロはOKを意味してるのか、指で丸を作っていた。

「前によ、『再会したいやつがいる』って言ってただろ? だからよ、世界をまわって探してみたらどうだ? まぁ、任務もあるけどな」

任務か。
どのようなものだろうか。

「ま、任務は今んところ情報収集しかないけど。どうだ?」
「興味はあるな。条件とかはあるのか?」
「うーんと、『復讐のみを目的としないこと』ぐらいかな。」

復讐か。
確かに俺が反乱軍に入る理由としたらそれが入るだろう。
しかしそうしようなど思ったことはない。

反乱軍に入れば、再会できる確率は上がるだろう。
それに、各地へ行けるのだからいろんなものが見れるだろう。
俺にとって得する事はたくさんある。

戦闘を任務に与えられるかもしれない。再会どころか敵対してしまうかもしれない。しかし、生きていく上での経験にもなる。

だから…

「俺、入るよ。その反乱軍にさ」
「了解。連絡はしとくから準備してこいよ」

自分の部屋に戻り、目を瞑る。
ここまでいろいろなことがあった。

リベロや村の人々にお世話になったと伝え、準備は終わった。
反乱軍の本拠地は孤児院
まさか戻ることになるとは。

期待と覚悟を胸に、村を後にした。

ーENDー