ダーク・ファンタジー小説
- Re: チェンジ・ザ・ワールド 番外編 ( No.9 )
- 日時: 2017/11/06 18:27
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
〜記憶の館編〜 3話
「ここは…?」
目を開くと見知らぬ部屋にいた。
木造で辺りには本が散らばっている。ここに住む者は片付けが苦手なのだろう。
「お目覚めかな?」
声のした方を向くと、水属性の魔法使いであろう女性が立っていた。
ファルナはその女を知っていた。なぜなら……
「昔の私の体… の人ですよね?」
「そうよ。今は君の物だけど。」
女はファルナと融合された者だった。
「恨んでますか…?」
ファルナが融合されてからずっと不安に思っていた事が口から出た。
正義感の強いファルナは生前、泥棒をよく影だけの存在にしていた。
理由は、いけない事をしたとちゃんとわかってほしかったから。
でも、わかるどころではないと今は実感する。
本当の自分じゃなくなっても精神は自分。
今まで仲良くしていた者にも、家族にもわかってもらえない。
そんな者になってしまった者はとても辛いであろう。
今の自分がそうなのだから。
受け止められないけれど、受け止めなければいけない。
目の前の人をみて、思ったのだから。
恨まれているならそれでいい。どんなに言われたっていい。
それでも知りたかった。
「別に、恨んでなんかいないわよ。だって君は悪くないもの。」
「え?」
意外な答えにファルナは戸惑った。
「こうなったのは自分のせい。だけど君も受け入れたでしょ。その体を手に入れて。だから、恨んでない。
でも、1つだけお願いがあるわ」
そして女は、大切な事を言うように優しく言った。
「自分のせいで相手が不幸になるかもしれないけど、それをこえるくらいで、君の持つ正義の心で人のためになってあげて。そうすればきっと大丈夫。」
女は最後に微笑んだ。
それと同時に光が辺りを包み始める。最初の光とは違い、ぬくもりのある光が。
ここで別れのようだ。
「ありがとう! 私、頑張るから…!」
再び女が微笑んだのを見てファルナは目を閉じた。
目を開くとたくさん本のある部屋に戻っていた。
「あらファルナさん! 戻ってきたのですね。」
ナキナが奥から走ってくる。
そしてファルナの顔をジロジロと見る。
「何か変ですか? 私」
「どこも変じゃないよ。でも変わったな〜っと思って」
「どこらへんが?」
「表情。さっきまでは雨の日みたいに暗かったけど、今は太陽みたいに明るいよ。スッキリしたんだね」
「はい。今日はありがとう。私、旅に出るわ。」
「うん、また来てね」
ファルナの新しい人生が始まった。
これからは本当に人のためになってやる。もう1人の私と離れていたって、心は通じ合っているから。
ナキナはファルナの事を見送った後、自身の部屋へ戻った。
『この世界では受け止めなきゃいけないことだってある。でも受け止めた時、人は前に進もうとするんだ』
誰に言われたのか思い出せない。
でも、記憶に残ってる。
だから私も進もう。
この、館と共に。
ーENDー