ダーク・ファンタジー小説
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.1 )
- 日時: 2020/08/05 00:37
- 名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
一話
夜道を歩きながらふと時間を見る。2520年9月19日23時34分晴れと書かれた文字が手から出ているように見えるホログラムの画面に映し出されていた。
「ああ、もうすぐ日付変わるんだ」
ぼんやりとそう呟いてホログラムで内職しつつ次のバイト先へ歩いていく。目の前に現れている画面も見慣れていて、操作は手馴れたものだった。今使っているのは一般的にマイクロチップと呼ばれる、正式名称手中式空中ホログラム映写用マイクロチップ。生まれた時に手の中につける小さいが便利なこれ、開発されて50年前に実用化されるまでに色々とめんどくさい問題もあったらしいが、もはや装着は義務化され税金でまかなわれるようにまでなっていた。
後ろを歩く人の気配を感じた。ただの人だろうと思いほっといた次の瞬間、ふわっと力が抜ける感覚とともに意識はあっさり抜けていった。相手がスタンガンを持っていると気がついた時はすでに遅かった。
「ん、う......?」
一瞬あれが夢かと思ったが固い床と謎の人混みがご丁寧に否定してくださった。
「では最後の1人がお目覚めになられたようなので説明を始めましょうか」
目の前に仮面をつけた人間のバストアップの立体映像がつき、喋り始めた。録画ではなくおそらく本人がどこかでここと通信している。そう考察していると、喋り方と仮面が妙にイラつくそいつが
「ではまずあなた方にはデスゲームをしていただきます。私はゲームの主催者。ゲームマスターとお呼びください」
なんて平然と言い放つ。俺は驚愕した。当たり前だデスゲームなんてそんなとんでもないこと。周りもパニックになっているかと思い見回したのに、なぜかみんな涼しい顔で笑っていた。
「おや?皆さん信じてないご様子で。では誰か1人ランダムに死んでいただきましょう」
1人の女性の周囲が光り始め、周囲にどよめきが広がる。やがて体が透明になりながら、
「何よこれ!?嫌!?嫌!助けて!」
と叫ぶも無意味に、無慈悲に、女性は消えた。
俺の周りも、女性の周りも、遠くの人も驚く人、恐れる人、様々な反応を示している。
「驚いたでしょう?でも大丈夫。彼女は我々の力を尽くした最新技術によって痛みもなく、安らかに逝きましたから。無駄に苦しめるような悪趣味なことは致しませんよ。
まあ、多少恐怖はあったでしょうが」
まったりと説明するゲームマスターの話を聞いていた人はこの中に何人いるのかもわからない。
「ではルール説明と参りましょう。ルールと言いましても各ゲームごとに違うので一概には言えません。まずはみなさんのマイクロチップのホーム画面をご覧下さい」
全員が一斉にマイクロチップを起動し、ホーム画面を見た。すると今までなかったアプリが追加されている。
「みなさんお気づきでしょう。そこに追加されたアプリがどういった物なのか」
そのアプリは真っ黒のアイコンの下にノードゥスゲームと書いてあった。当然ただのゲームアプリでないことくらい全員がわかっていただろう。ゲームマスターはアプリの起動を指示したが、言われる前に多くの人がアプリを起動させていた。アプリを開くと左上に自分の名前があり、その横には体力ゲージ(仮)真ん中には人型の絵があり、その右上に装備という文字がある。右側にはたくさんのメニューがあった。
「まずはあなたと運命を共にするペアを組んで下さい。五分以内です。五分後に1人だった人には先程の様に死んでもらいます。詳しくはメニューの一番上の『ペアを組む』で分かります」
そう言うとゲームマスターは消えた。
アプリの画面の上に五分のタイマーが現れた。そしてそれは刻一刻と00:00へと向かっている。『ペアを組む』を起動させるとペアの組み方だけが簡素に書いてあった。周りはどんどんと組んでいる。傾向としては筋骨隆々で強そうな男性、美人の女性が人気だった。友人同士で組んでる人もいる。でも当然ただの男子高校生には誰1人として寄ってこなかった。ここには友達もいなさそうだ。そもそも友達そのものが......うん。すでにタイマーは2分を切っていた。周りのいい人争奪戦はすでに終わりを迎え、余り物だけで組むのまで終わり始めている始末。ペアを高望みして誘いを断り他の人を探す人もいた。もう死ぬかもしれないという覚悟が浮かぶと待ってましたとばかりの走馬灯が脳裏に走る。
「他の人ならもうちょっと良い思い出見れるんだろうな......」
俺は最期に夢くらい叶えたかったと思いながら走馬灯を眺めていた。