ダーク・ファンタジー小説
- Re: 殺す事がお仕事なんです ( No.157 )
- 日時: 2011/06/26 12:50
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
『余章』
選択。
一つの道筋。
つまり未来への繋がり。
【便利屋】が繋ぐ細い糸。
その繋がる先は……。
つまりどういう事なんですか?
『あらぁ〜、今の説明で分からなかったかしら? 抽象的すぎた?』
ええ、まあ。
『もぅ〜、仕様がないわねぇ〜。じゃあ、もっと分かりやすく教えて、ア・ゲ・ル・♪』
……ありがとうございます。
『要するにね、今この【井出見市】では【町】も【街】もいい男たちが、いい感じに、いい汗を流してるのよ。あ、良い女も居るわよ。癪だけど……』
あの、ですからもっとわかりやすく……。
『はいはい、わかってるわよん。あ、勿論いい男にはしーちゃんも含まれてるわぁ〜』
……ありがとうございます。
『あら、さっきと反応が一緒よ? 同じ動きをする男はあまり女性に好かれないわぁ〜。変化がマンネリ化を防ぐ、第一歩よ?』
何の話をしてるんですか……。
『あら、分からなかった? ふふっ、じゃあ、今度私がお相手してあげ——』
もういいですから、さっさと情報をお教え願いたいんですが? 今日はちょっと時間が無いようなので。
メールで大事な話があると連絡してきたのは、そちらの筈ですよ。
『あらぁ〜、つれないわね〜。まあ、いいわぁ。いい加減しーちゃんで遊ぶのはやめましょう』
……遊んでたんですか。
『ふふっ、まあいいじゃない。きっとあなたは今、私に聞きたい事があると思って、わざわざメールしてあげたのよ〜?』
確かに、聞きたい事は有りますが。
思考を読まれるというのは、少々恐怖を感じますね。
『伊達にあなたと一緒に仕事をして来て無いわよん。欲しいのは、今の【市】の状態についての情報よね?』
ええ。金は情報の精度に応じて、何時もの様に払わせていただきます。
『はいな。え〜と、今入ってきてるネタで分かる事はね……。ちょっと、あなたにとって都合が悪い事が多いかしらね』
どういう意味です?
『どうやら、あなたの部下。終夜ちゃんが、厄介な案件に首を突っ込んでるようね』
え?
『そして、あなたも相当面倒な護衛の依頼を請け負っているじゃない』
依頼の事は、私と依頼主位しか知らない筈なんですがね。流石です。それで、終夜がどうかしたんですか?
『あの子ね、どうやら一人で依頼を受けているらしいのよ。余りに個人的な依頼で、詳細は解らないんだけどね』
は? それだけでどうして厄介だと?
『その依頼人の名前は、進藤麻衣。それだけは解ったわ。どう? 聞き覚えある名前じゃないかしら?』
進藤……。
【イルミナティ】の幹部の一人ですよね?
『やっぱり知ってたか。進藤麻衣はね、彼の娘なのよ』
娘……。
『そして、進藤卓也。彼はつい最近【暗殺】されたわ』
暗殺?
誰にですか?
『木地見輪禍』
なっ、それって……。
『あなたの護衛対象が、あなたの部下の依頼主の、憎い憎い仇って事になるわね』
……成程。
あの着信履歴はそういう事か……。
俺に依頼を受けた事を、話したかったのか。
『さて、これからどうするの? 終夜君が受けた依頼は、恐らく進藤麻衣からの父親捜索の依頼だと思うわよ?』
何の連絡も無く家に帰ってこなかったら、心配するでしょうしね。
恐らく死体は回収されただろうし。
『恐らく木地見輪禍に【暗殺】を依頼した個人だが、組織だかが処理したんでしょう』
その組織への目星は?
って、まあ、あそこでしょうね……。
『【志島・井出見組】。【組織】の連中よ』
志島の旦那が言っていた、【仕事】ってのはこういう事か。
これは急いで木地見さんを探さないと。
『そう上手くいくかしらね?』
え? どういう事です?
『私は基本恋する乙女の味方って事よ』
いえ、意味不明ですが?
『あなたを探してる乙女がいたから、情報売っちゃった。テヘ♪ だからちょっとそっちのお相手してあげて頂戴』
えぇ!?
誰ですか! その乙女とやらはっ!!
『あなたの良く知っている【幼馴染】よ。じゃ、また何か用が合ったらよんでねぇ〜。バイバァ〜イ♪』
あ、ちょ、まだ話は終わってな……。
切られたか……。
しかし、俺の良く知っている幼馴染?
探している?
……オイオイ。嘘だろ。もしかして。
だけど、あいつが俺を探す意味なんて。もう無いはずなのに。
俺達は、もう会わない方がいいと……。
「鍵谷」
……嘘だろ。
何で。
何でお前がこんなところに。
こんなところに居るんだよ……。
「……。再会。歓喜感涙。私は心の底から嬉しいわ」
……。
「久しぶり。鍵谷。会いたかった……」
……。
本当に。
本当に久しぶりだな。
会えて悲しくなるくらい嬉しいよ。
【光加】……。
選択。
一つの道筋。
つまり未来への繋がり。
【便利屋】が繋ぐ細い糸。
その繋がる先は。
途轍もなく強靭で儚い。
【光】だった……。