ダーク・ファンタジー小説

Re: 殺す事がお仕事なんです ( No.4 )
日時: 2010/09/26 21:54
名前: トレモロ (ID: C4aj9LgA)
参照: http://blog.goo.ne.jp/roki000

第一章『便利屋と殺し屋の出逢い』———《死人を探す少女》

「あー、つまりあなたはお父上を探して欲しいのでしょうか?」
「はい……」
質素
そういえば聞こえはいいが、言ってしまえば只のぼろ部屋だ。どうしようもなく劣化している部屋なのだが、別にこの部屋のある建物自体が老朽化している訳ではない。
もし、外からこの部屋を見ても、まさか中が此処まで酷いとは思わないだろう。
事実この部屋の下の階で料理店を経営している店は、清潔感と味が売りの店で人気がある。
つまり、建物の所為で無く、この部屋に住む者の問題でここまでボロイ部屋になってしまったのだ。
「でもですよ、お嬢さん。たった一日帰ってこなかっただけでしょう。それじゃあ事件性は無いんじゃないですか?そこまで心配なさらなくても……」
そんなぼろ部屋で一人の少年と、一人の少女が会話している。
少女の方は歳は16,8程度だろうか。学校制定らしい制服を着ており、長い黒髪が大人しそうな顔と相まって、箱入りお嬢様のイメージを作り出している。
対照的に少年の方は、服はシャツにGパンというラフな格好で、目つきは鋭く髪は短めに切りそろえられている。どこか狼を思わせる顔つきだが、口調だけは丁寧だ。
歳は少女より若く13,5といったところだろうか。
およそ、ぼろ部屋とは似合わない組み合わせだが、少年は部屋の中央にある応接用のボロソファーに座り、向かいにお客様用に部屋で一番高級の真新しいソファーに座る少女に話しかける。
「警察でもそう言われました。そしたら、ここの事を紹介してくれて……。祠堂さんなら力になってくれると……」
「警察ですか……」
少年は少し苦笑いしながら少女の『警察』という言葉を聞く。
しかし、心中では言葉とは裏腹にもっと粗野な事を考えていた。

————あのくそ刑事め、余計な問題を持ってきやがって。

と、心中で毒づく。勿論顔には毛ほどもそんな事は出さず、柔和な笑みを受かべている。
先ほど、自分がこの部屋に【出勤】して数分でこの女性【依頼人】は表れた。
最初は猫探しでも頼まれるのかと思ったが、どうやら行方不明の父親を探して欲しいという事だった。
そんなのは警察の仕事だと思い、追い返そうと思ったが、どうやら警察には既に行ったとのことだ。

————だったら、ここにも来るなよ……。

そうは思うが、目の前の女の子の顔を見ると、多少は力になってあげたいとも思う。だが、依頼が【父親探し】だ。
そんな、面倒で時間がかかる仕事を、こんな報酬もロクに払えなさそうな少女に【依頼】されても、正直お断りしたかった。
そんな事を考えながら、さて、どうしたものか。と考え目線を下に向けると、二つのソファーの間におかれたテーブルに一つの紙切れを見つける。

————ん?

さっきは気付かなかった紙片を手にとって、そこに書いてある文字を特に考えもせず見る。

————え〜と、[BARロゼリオ]領収書?……、って、50万!?半年分のツケ!?おいおい、こんなの聞いてないぞ!?

「あの、大丈夫ですか?」
「あ、いえいえ、なんでもないです。大丈夫ですよ!」
少年は顔に心中の表情が出てしまっていた事を反省し、改めてこの領収書について考える。
もっとも、彼にバ—なんぞに行く趣味は無いから、十中八九【あの人】の仕業だろう。
哀れな少年はこの借金の所為で少女の仕事を受けなければ、経営が少々まずい事になると考える。
「はぁ〜」
「あ、あの……」
そんな少年の態度に不安になってきたのか、少女は心配そうな声で彼に言う。
少年はそんな少女を見て、負の感情を全て押しこみ、爽やかな笑顔で少女を見る。
「わかりました、あなたのご依頼を受けさせて頂きます。ちょうど、祠堂の方は出かけているので、そちらに向かう道すがら、詳しい話を聞かせて頂きましょう」
「え?あの、あなたが祠堂さんではないんですか?」
今までの流れから少女はてっきりこの少年が、警察で紹介された祠堂鍵谷なのだと思っていた。
その言葉に少年は笑いながら答える。
「いえいえ、私はただの祠堂の部下ですよ。祠堂は基本この【事務所】にはいませんからね。便利屋としてはどうかと思いますが」
ハハハ、と笑いながら少年は言う。
「私の名前は霧島 終夜と申します。そういえば、あなた様のお名前もう一度確認してもよろしいですか?」
丁寧な口調で霧島少年は少女に問う。
少女は依頼を受けてくれると聞き、顔を少し安堵に歪ませながら、自分の名前を彼に言う。

「進藤。進藤麻衣と言います」