ダーク・ファンタジー小説
- Re: 殺す事がお仕事なんです ( No.98 )
- 日時: 2011/04/26 22:09
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
『余章』
繋がる。繋がる。
人と人が会話する。
正義と悪が会話する。
相反する者達が会話する。
『もしもし』
もしもし。じゃねえぞコラ!
おめえだろ?あの娘に【便利屋】を紹介したのは!
『ん?んんん?おまえさん誰だ』
……。すっとボケてると、頭ん中に鉛玉ぶち込むぞ?
『あん?その前に、お前をしょっ引いてやる』
ふん。それが出来ねえから、てめえらは毎日暇なんだろうが。
『失礼な奴だな。これで結構忙しいんだが……。まあ、良い。それで用件は?』
だ・か・ら!おめえだろ、あの娘。進藤麻衣に【便利屋】を紹介したのは!
余計な事しやがって。あんたこれからどうなるのか解ってんのか?
『なんだ?何かされるのか俺は。善良な、しがない公務員の俺に何の罪が在るってんだ?』
ケッ!よく言うぜ。おめえみてえなのが、善良だったら、俺なんて天使だぜ。
『いや、それは無い。お前が天使?ありえん。聖書を冒涜するのはやめろ』
その前に俺を冒涜してんじゃねえ!
っち、別にあんたをどうこうするつもりはねえよ。こっちの身が危ないからな……。
俺が言ってんのは、これからあの【殺戮者】が【便利屋】達をどうするのか、解ってんのか?ってことだよ。
『……、そんなことの為に電話してきたのか?暇なのはお前の方だろ』
お〜い、いい加減にしねえと、マジ殺すぞ?
『ガキじゃないんだから、一々殺すとか言うな、かっこ悪いぞ?』
うるせえ、糞じじい!俺はまだ若いから良いんだよ!
『……。いや、もう三十路だろ?』
四十過ぎにとやかく言われたくねえよ!!
『俺はお前と違って家族もいるしな。いやぁ〜、家族はいいぞ?娘たちはどんどん美人になるし、息子は毎日元気だ。妻なんて、いまだに若々しい。ホントにありゃ四十歳なのか?三十路って言っても若く見えるぞ?』
どうでもいいんだよんなこたぁ!いきなり惚気話を始めるな!
『だがなあ、次女がいっつも無表情でなぁ〜。あれじゃ彼氏が出来るのか心配だ……』
どうでもいい、つってんだろうが!
ったく。……。ふざけんのはやめて、真面目に聞けや。
お前、ホントに良いのかよ?【便利屋】とは付き合い長いんだろ?悪いが、俺にあの【殺戮者】は止められねえぞ、つーかもう今頃は【便利屋】の助手の方はやられてるかもしれえ。一様念のため、【あいつ】にも、後を追わせたけどな……。
『それこそどうでもいいな。鍵谷や終夜君とは長いが、あいつらが【悪党】なのは変わりない。潰れてくれるのなら好都合だ。ついでに、お前らもさっさと潰れてくれ』
冷てえな。それは本音か?
『いや、違うが?』
……おい!
『まあ、五割本音ってとこかね』
半分本気かよ……。
『ああ、おまえらが潰れて欲しい、ってとこはな』
そこかよ!
『といううか、お前。何か勘違いしていないか?』
あ?何を?
『お前あの眼鏡のガキが、終夜君を殺せるとでも?』
ああ?あいつは強えぞ?なんせ【組織】の本部からの直属の精鋭だからな。あんなガキ一瞬だろ?
『【組織】ね。はっきり言ってお前ら【光に照らされたもの】はここに巣を張る事はできんぞ』
おいおい、ちゃんと【イルミナティ】って呼べよ。折角格好良い名前なんだからよ。
『なにが、格好良いだ。その名は昔っから、狂信的な組織に付けられる忌み名だぞ』
だからこそ俺たちにぴったりだろ?裏でコソコソ蠢く狂人集団。へっ!胸糞悪くなるくらい、ぴったりだ。
『自己陶酔はやめろ気持ち悪い。切るぞ?』
まてまて!お前、なんやかんやで俺の言葉に何も答えてねえぞ!ずっと明確な答えを寄越してねえだろうが!
『そう言う風に会話してるからな。当然だ』
……。じゃあ、一つだけ答えろ。それだけ聞いたら他の質問はどうでもいい。
『断る』
うるせえ!聞け!!
おめえは『木地見輪禍』を知ってるな?
『……』
あの女は【警察】と繋がってるって聞いた。そんで、そんな【殺し屋】がついこの前。うちの【幹部】の一人を殺った。
『……で?』
普通に考えりゃあ、おめえら【警察】が【イルミナティ】抑制の為に【殺し屋】を使った、って考えるのが自然だ。
『は〜ん』
真面目に聞け!
で、そう考えるのが自然なんだが……。実際は違うんだろ?
『さあ?』
チッ。
そういう態度はイラつくな。まあ良い。
んでよ、じゃああの【殺し屋】を雇ったのはどこのどいつだ?って話なんだが、それはこっちで調べることにする。
お前に俺が聞きたい事は、あの【殺し屋】の経歴と得物、【標的】の殺し方や住み家。その他もろもろの情報が欲しい。
『へ〜ん』
聞け!
『ふん。自分の【道具】の情報を、敵に教える馬鹿がどこに居る?』
……。
『まあ、警告という形で一つ小話をしてやろうか』
それでいい。頼むぜ。
『木地見輪禍は昔、外国に居たんだ』
外国?
『ああ、おまえら【イルミナティ】も本部は外国だろ?』
ああ。そうだな。もっとも日本の外に本部が在るつっても、組織の【ボス】は日本人だが……。
で?木地見もどっかの組織の子飼いだったのか?
『そうだ。【賢人統一協会】という組織の、雇われの【殺し屋】だった』
!?
おいおい、海外系の日本組織の中で、一番勢力のでけえ【組織】じゃねえか……。
『知ってるのか。まあ、当然だな。で、その【賢人統一協会】でも屈指の腕を持っていた木地見は、かなりの量の任務をこなしてきた。【組織】の奴らからも、かなり信頼を置かれていたようだ』
実力は折り紙つきってことか。確かに厄介だな……。
『違うんだよ。あの女の危険な所はそんな所じゃない』
じゃあ何が危険なんだよ?
『あいつは【組織】を追い出されてるんだ。別に何かヘマをやらかしたり、裏切った訳じゃない。そんな事だったら、やつら【組織】は木地見を殺すだろう』
なんで追い出されたんだ?
『殺し過ぎたからさ』
は?殺し屋が殺し過ぎた?意味わかんねえぞ?
『つまりあの女は【標的】を殺した後も、殺し続けたんだ』
はぁ?
『だから。あの女は【標的】を殺した後も、死体に必要無い【死】を与えたんだよ。ある時は五体をバラバラにして。ある時は頭だけを何回も何回もこん棒で叩きつけて、ぐちゃぐちゃにして。そんなことばっかしてたんだよ』
……マジかよ。
『そんなあいつの行動を見て、【賢人統一協会】はあいつを自分達の縄張りから、追い出したんだ。いつかその矛先が自分達に向くんじゃないかっていう恐怖を消したくてな』
……。
『ま、俺から話せるのはこの位だ。あとは適当に頑張って、適当に潰れてくれ。じゃあな』
っち、切りやがったか。
しっかし、木地見輪禍って女は相当やばいな……。
相手を必要以上に殺す【殺し屋】か……。確かにやばい。どうしようもなくやばそうだ……。
だが……。
どうしようもなく壊し甲斐が在りそうだなぁ、オイ。
繋がる。繋がる。
人と人が会話する。
正義と悪も会話する。
相反する者達が会話する。
そしてその会話は歪んで歪んで。
破壊の予感を振り撒いた……。