ダーク・ファンタジー小説

Re: スキルワールド ( No.1 )
日時: 2022/08/29 03:34
名前: マシュ&マロ (ID: y7oLAcgH)

 あの日、思わず差し込む夕日に目を逸らしたことを今でも自分は覚えている。学校からの帰り道、いつものように友人とくだらない話題を語り合っていたことを覚えている。
 頬を掠める冬風、笑うと白く凍った息が吹き出す、何が面白かったのか再び笑いが起こったことを今でも覚えている。たわいのない日常、いつかは忘れてしまう脆く浅い人生の1ページ、しかし自分は鮮明にあの日を覚えている・・・。

「なぁ!」

 時はもう既に夕刻を回った頃だった、学校から帰る道中に竹を割ったような快活な声が聞こえてくる。聞き慣れた声、友人の渡達とたち 京八きょうやが話しかけてきたことに気づくまでに然程の時間も要さなかった。少しばかり顔をそちらの方に向けてみる、黒の混じった茶髪、そして薄い青色の瞳と目が合った。こちらから言葉を発しようとする前に彼の方から口を開いていた。

「コーラおごってくれ!」

「ーー。」

 しばし無言の後、何も聞こえなかった素振りを装って彼を置き去りにするように帰り道を急ぐ、正直に言うと少し呆れてしまっていたのかもしれない、今月に限っても何回目になるだろうかと数えてみたが両手の指だけでは足りないことは確かだろうと思わず苦笑する。
 だがしかし見切り発射まではよかったが、残念なことに身長がお互い170未満と同じぐらいであるためか追いかけてきた京八の眼差しが嫌でも目に入る。暑苦しい、頼むからそんな目で自分を見るな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



自販機から缶の投下された音が聞こえてくる、結果としては自分の根負けという形である。ため息混じりに自販機から缶を取り出すと缶コーラから汗をかいたように手を伝って水滴がいくらか垂れていくのを感じた、少し不機嫌な面持ちで缶を京八の方に放ると水滴が勢いよくこちらに飛んできて思わず目を細めてしまった。

「サンキュー黒奈、恩にきるぜ♪」

 自分の苗字を呼ばれる、彼の爽やかな笑顔がここではかえって自分を少し苛立たせたが、ここは言ってもしょうがないと口に出かかった言葉を飲み込んで代わりに自分の頭を掻いた。

「はぁ〜...、お前ってホントにコーラが好きだよな」

 少しため息が漏れたが、コーラを勢いよく喉に流し込んでいる京八に対して言ってみる。彼は最後の一滴を飲み干すと歓喜の声を漏らしつつ、こう答えてきた

「まっ、俺は生粋のコーラ好きだからな」

「はいはい、そうですか」

 特段、何か機知に富んだ回答を求めていた訳ではないので適当な言葉を返しつつ、自分は帰り道を行く。後ろからスチールの鈍く反響した音が聞こえてくる、京八が缶をゴミ箱に放り入れたのだろう。自分はそんなことを考えながら足を止めた。

「俺こっちだから、またな京八」

「おう!、またな黒奈!」

 自分はその言葉に対して彼の方に振り返りながら呟く。

「それとさ、俺のこと名字で呼ぶのやめない?」

 友達なんだしさ、と言いかけたところで京八と目が合い、言葉は途切れてしまう。正確には彼が神妙な表情を浮かべていたからであろう、周囲が静まり返る、頬を切る風の音だけが流れていく。

「お前に情が移っちゃいけねぇからな....」

 時が再び動き出す、いつの間にやら目の前にまで迫っていた京八に気づき自分は数歩たじろいだ。

「じゃあ明日な」

 ぽん、っと一瞬だけ自分の肩に手を置くと京八は通り過ぎていった、訳が分からず彼の方を振り返るとこちらを見ることなく片手を振る彼の背中が見えた、そして段々と遠くなるにつれて淡くぼやけ、最後には姿形も見えなくなってしまった。

 一人、ただ一人だけがこの場にいる。いや、正確には此処に一人だけで残されてしまったのかもしれない。

 雪が降り始めたことに気づく、強風に吹かれた粉雪はどこか恐ろしくも儚げな美しさを纏っていた。再び強風が吹き荒れる、今度は身震いする、もう冬なのだと実感させられる。

 突如、地の底から這い出してきた悪寒。理解を超えた何か、目が不意に焦点を失い空中を彷徨う。血管を伝って悪寒が心臓の鼓動を加速させる、息が苦しい、耳をつんざく鼓動、血管は引き裂かれそうなほど脈打っている。

「ーーーー。」

 声が出せない、いや結局考えるのをやめた。

 いつのにか異変は消えていた、もうどのくらいたっただろうか。早く家に帰ろう、疑問を振り払うように首を振ってみた、家への帰り道を一人で歩き始める。今はもう忘れていたかった、悪寒のことも京八のことも今はただ___。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



息が白い、そう頭で思考する。家の鍵を取り出すのに手間取る、いつにもなく手間取る、まるで家に入ることを拒まれている、そう思ってしまうほどに___。

 __ガチャ

 鍵はあっさり開いた、不気味なほどあっさりとだ。家に踏み入る、最初に感じたのは何とも言えない異臭、次にその臭いが生臭いということ、目が痛くなるほどの悪臭である。嫌な予感がした、自分は玄関に立ち尽くす。

「ーーーー。」

 唾を飲み込む。

 何かがおかしい、理解を超えた異常との対峙、自分は腹に力を込める。力強く廊下を踏み締めて一歩また一歩、リビングの扉がある。腹は括った、、、つもりだ。

 ______ガチャ....

 年季の入った扉が軋みを挙げる。リビングには見知らぬ男性が一人、テレビを見ていた、座っているのは家族が一斉に座れるタイプのソファ、いわゆるアームソファに浅く腰かけていた。男が不意にこちらに視線を向けてくると清潔感を感じさせる整えられた茶髪が少し靡く、羽織ったロングコートをはたきつつ男は立ち上がった、大きい、背丈は自分より二周りは上だろうか。

「やぁ待っていたよ、友間ゆうまくん」

 下の名を呼ばれた、頬が引き攣る。血管が、神経が、脳からも、すべてが警報音を打ち鳴らす。男の正体を告げるように騒がしくだ。

「__誰ですか?」

「んっ? あぁ私か、私は[カマキリ]とでも名乗っておこう....。まぁコードネームであって本名ではないがね。私としたことが突然のことで自己紹介を忘れてしまっていたよ」

 いや、謝るところはそこではない。コードネーム?、第一にこの男の素性は自分にとってどうだっていい。聞きたいのはどうして此処にいるのかだけだ。

「目的は?、見た目的に強盗って訳じゃなさそうだけど?」

 一旦、平静を装ってみたがどこかぎこちなく感じる。これは明らかな震えだ。

「いやいや、そんな無理はしなくてもいい。ほら、足元が特に震えているのがよく分かる」

 バレたか、まあハッタリもクソもない一世一代の痩せ我慢だ。心で笑い、一歩退く。足元に何かが当たる、サッカーボールほどだろうか、足先に何かが絡み付いてくる。

 吐き気が一気に襲ってきた、首だ、首なのだ、母親だったものの亡骸である。カマキリは笑う、甲高くて嫌になるほどの笑い声を挙げている。

「ーーーッ!!」

 人が緊急時に取る行動は二つに限られる。逃走か闘争__の2択である。自分は咄嗟に後者を選んでいた、具体的にはカマキリに殴りかかっていた。勝てない、勝てないとは分かっていても挑んでしまった。

 右足から左足へ、背中から右手へ、体重が乗る。目が血走り、声にならない奇声を挙げて男に拳を振りかぶる___。

 身動きが止まる。口腔内に何かが入ってきたのだ、思わず目を剥く。認識が正しければそれは鎌である、それもカマキリと名乗る男の左手が文字どおり”蟷螂”なのである。

「おっと、この場合はなんだったか__。そうそう、動くな」

 その瞳はとても冷たかった__。

 夢、いや現実、たしかにこれは現実だ、そのはずなのだ。頬肉に触れる刃の感触、緊張で唾液が溢れる。思考が、視界が_定まらない。

「何のために?__っと言った顔だね、決まってるよ、君を組織へ招待するためだよ。母親に関してはサプライズみたいなものさ」

 どうだ驚いただろとでも言いたげなカマキリの表情に思わず鼻に力が入り皺が寄る、鼻息を荒げ、肩で息をする、鎌の刃先が少しだけ頬に食い込んだ。

「君の答えはどうかな?」

「嫌だね!、こっちから願い下げだ!」

 頬を切り裂かれた、どっと痛みが押し寄せ、床に崩れ落ちる。痛い、息をするほど痛みが増していく、血と唾液が混ざる、それが口先から溢れ出して床に垂れていく。自分はいつに間にか絶叫していた。

「ア__ア“ア“ーーーツ!!?」

 なんで自分がこんな目に遭っているのか理解が追いつかない、悶える、ただひたすら痛みに悶えることしか出来ない。

 そんな時___竹を割ったような快活な声が聞こえてくる。

「よお黒奈、大丈夫そうか?」

 その声でふと我に帰ることが出来た、声の主は京八だ、京八がいるのだ、京八の姿がそこにはあったのである。

Re: スキルワールド ( No.2 )
日時: 2022/08/30 02:17
名前: マシュ&マロ (ID: y7oLAcgH)

「よお黒奈、大丈夫そうか?」

 たわいのない言葉に両目がうるむ、言葉にではない、ただこの場にいることが耐えられなかった、絶望の前に一人とり残されたかのようで怖かったのだ。涙腺が緩む、下瞼が徐々に熱を帯び、あつい水滴が頬をなでていく。

 カマキリの頬に触れる感触、京八の拳が男の頬骨を穿つ、頚椎が嫌な音を立てて軋む、男は数歩たじろぎ、殴られた頬に触れる。

「油断してたとはいえ中々に、今のはいい拳だったよ」

「それ、よくザコが言うセリフだよな?」

 男の口元が僅かにひきつく、口角が上がり犬歯を薄らと覗かせ、目尻が少し吊り上がりその目は京八を見据えている。

「ほぉ___ザコが、言うセリフねぇ......ふふふ、お前はストラングからのまわし者といったところか?」

「おうよ正解だ!、景品に頬にでもキスしてやろうか?」

 彼は男を嘲笑い、自らの拳にキスをする真似をしてみせた。

 一触即発___。

 空気がピリつく、自分は固唾を飲み込んだ、自分はただ二人を見ていることしか出来ない。

「チッ! 大人をバカにするもんじゃ.....ねぇぞ!!」

 初動を制したのはカマキリであった、男の一歩に床が震える。ただ一直線に京八を、その嘲笑う表情をズタズタに引き裂かんと鎌を伸ばす。

 空気を切り裂く音がした、鎌が京八の前髪を掠める、彼は咄嗟に半身で避けたのだ。男の胸が熱を帯びる、そして呻いていた、深々と肋骨に突き刺さる京八の爪先に目を剥きながら__。

 蹴りの衝撃が肋骨を突き破って肺へと達する、男の口腔から唾が飛び散る、声にならぬ叫びと共に___。

「___ア“アッ!?」

 自分、黒奈友間は生まれて初めて人が白目を剥いて床に突っ伏すさまを目の当たりにした。また、ここまでの胸の高鳴りを感じたのも初めてであった。

「わ、わた私が、、何でこんなガキに私が....っ!』

 男が目を覚ましたのだ、悪態をつきながら唾液を垂れ流し、胸の痛みに身を震わせながらも立ち上がったのだ。その視線には迷いはなく、京八を捉える瞳には憎悪と闘争心だけが残されていた。

 「いや、ただアンタが弱いだけだろ?」

 最後の杭が打たれた、言葉で表すのならばそうと言うことしか出来ない、板に釘がきれいに打たれた時のような、そんな感覚が周囲を包み込んだでいた___。

「 スキル『蟷螂』ッ!」

 絶叫にも似た声でカマキリは叫ぶ、大空に噛みつかんとする形相で___。

 自分は耳を塞ぎ、目を瞑っていた、当然それは京八も同じことだ。耳を抑える両手が震える、人ならざる者の鳴き声を聞いているようで怖かったのだ。

「うわぁ〜.....完全にお怒りのようだぜ黒奈」

 いやいや京八が怒らしたんでしょ!?、っと思わず心でツッコんでいた。

 目を開けると京八の身体は貫かれていた、胸から腹にかけてを大きく、そして深々と___。

 自分は恐怖する、目の前で起こったことにではない、京八を貫いた巨大な生物、“蟷螂“にである。

 人の常識を逸脱していた、象、いやそれ以上に大きいだろうか。

 口元から生えた触覚が小刻みに動く、視線は京八に注がれていた、むしろ京八にしか興味はないのだろう。

 貫かれた胸元から血が、突き破られた心臓の鼓動に比例してドバドバと床に滴り落ちていく。彼を助けなければ、足が言うことを聞かない、恐怖に抗えない、ただ目見開き、目の前の光景に唖然する。

「俺も、、本気、出さねぇとな、・・・・・・スキル『発電』ッ!」

 京八を中心に同心円状に拡散した光、鼓膜を激しく叩かれる、信じられない熱量が途端に蟷螂に牙を剥く。

「覚悟しな、この化け蟷螂」

 蟷螂の片腕の大部分が焼失、京八からの体から今まさに電流が迸る。しかし彼は床に崩れ落ちる、出血が著しい、このままでは死ぬのは時間の問題である。

 己の無力さを呪う、臆病さを憎しむ、自分は最低だと激しく罵倒する。握り締めれた拳からは血が、噛み締めた口元からも真っ赤な憎悪が滲み出る。

 神に縋った、初めて神に祈るのだ、代償なら後でいくらでも払おう、だから今はこの屈辱を、この憎しみを、この理不尽さを消し去るための鉄槌ちからをどうか神に求める___。

 しばしの時が流れた、変化は何も起きず、ただ床に倒れた自分がいる。

 絶望する、そして立ち上がる、手元にあった拙い木片を右手に構えて対峙する、そう怪物に、絶望に挑むのだ___。

 その時、自分が何を叫んでいたかは覚えていない、だがしかし確かなことは一つだけある。

 “神はいた、鉄槌をたずさえた神が今そこに“

Re: スキルワールド ( No.3 )
日時: 2023/04/22 00:14
名前: マシュ&マロ (ID: 81ny2H6d)

 知らない天井が見える、瞬きをニ回してみた。

 知らない天井が見える。

 周囲を見回してみる、鼻を突くような消毒液のにおい、ここは病室だろうか。

 ベッドから身を持ち上げる、此処はどこだ、なぜ此処にいるのか、考えろ、考えなければ___。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 半刻が過ぎただろうか、時間の感覚が分からない、外の様子を見ようとしたが病室の扉は開かなかった。窓や時計、外部の情報知る手掛かりとなるものは一切なく、今が昼なのか夜なのか、自分はどのくらい寝ていたのか____。

 次に思ったことはどうして此処にいるのかだった、がしかし、それが思い出せない。頭を強く掻いた、何かが欠落していている、記憶の一部が抜け落ちたかのようだ、結局は分からなかった。

「___っ!」

 不意に頬に触れてみた、ガーゼで覆われた方の頬に触れると布越しだというのに酷く痛む、頬の内側から傷口を舐めると糸で縫われたいるのが分かった、金属のような味が口に広がり鈍い痛みが走って思わず顔が引き攣る。

 覚えているのは京八といつものように帰り道を歩いていたこと、そして彼が不思議な表情を浮かべていたことぐらいである。

「____?」

 疑問に思い周囲を見回す、京八はどこにいるのか、彼は大丈夫なのかと___。

 やはり誰も、自分以外は誰もこの病室には居なかった。

「_____っ!?」

 扉がウィーン、と機械的な音を挙げて開いた。ここの看護婦か、女性の白衣が目についた。女性は少し驚いた様子で自分をしばし見つめて立ち尽くす、訳がわからず首を傾げていると彼女は早足にここを去っていく、彼女が戻ってくるまでにそこまで時間は掛からなかった。

「あの、えと、、、気分は大丈夫ですか?」

「え、まぁはい、大丈夫かと?」

 多分そんな内容の会話を交わしたことだろう、彼女は手をそっと伸ばして自分の額に触れてきた、どうやら熱を測っているのだろう、いくつか質問され、それを慣れた手つきで彼女は事細かく紙に書き留めていく、看護婦は自身の書いた紙に一通り目を通すと物腰柔らかに自分を部屋の外へと誘導する。

 廊下に出た、とてつもなく長く感じた、すべてが白い、壁も床も天井までも、これがまた歩いてみると足が鉛を入れたかのように重いのだ、まるで何日も歩いていないかのようであった。

 しばらく歩くと自分がいた部屋とは異なる部屋についた、道中では自分と同じか下の年ぐらいの子とも数人すれ違った、中には見るのも憚られるような深手を負ったのも何人か見かけた、ここは何の施設なのだろうか、そう頭で思考する。

 着いた部屋に入ると年配、それもかなりの年であろう風貌の男が白衣を身につけ諸々の書類に目を通しているところであった、男は曲がった背骨を動かしこちらの方を一瞥する、目線はすぐさま書類を見ていた、こちらを見ぬまま口が動かした。

「よく生きていたものだな」

 しわがれた声、称賛ではなく呆れているといった方が近いかもしれない、額に皺を寄せた訝しむような顔で___。

「えと、あの・・・・・・?」

「座りなさい___」

 こちらを見ずに老人は椅子の方を指し示す、看護婦が小声で座るよう自分の耳元で囁いてきた。

「あの、それで、先程の言葉はどういう意味で・・・・・・?」

 老人の目線がじろりとこちらを向く、ヘビに睨まれたカエルの心境、固唾を飲む。

「ほんとうに何も覚えていないのか?」

 はい?、思わずこんな顔を浮かべていただろう。老人が軽くため息をついた。
 
「そんな呑気な頭で、これでよく死なずに済んだな」

 一周回って腹が立ってきた、今すぐその顔を殴りつけたい、そう思った。しかし、看護婦がどーどー、と自分の肩を押さえてくる。これではまず立ち上がることは不可能である。

「カマキリ__。君はこの男を覚えているか?」

 え??、疑問が増える、話が見えてこない。

「そうか、分からないのならそれでいい、それもまた君自身が選んだことなのだから」

 鋭い痛みが脳を刺す。カマキリ?、蟷螂___??

「____ッ!!?」

 記憶が溢れてくる、思い出したのだ。

 苦虫を噛む、脳が焼き切れたかのように熱をうねらせ、痛みを伴った警報が頭蓋を強く叩いてくる。看護婦の悲鳴だろうか、周囲の音がよく聞き取れない。視界がひどく霞む、そして大きく傾いた、とつぜん平行感覚を失い、頬が床に吸い込まれたかのように倒れ込む。視界を覆う暗闇、もはや悲鳴は聞こえない。


Re: スキルワールド ( No.4 )
日時: 2023/04/22 11:19
名前: マシュ&マロ (ID: y7oLAcgH)

 
“神はいた、鉄槌をたずさえた神がいた。“


 その瞬間、友間は叫んだ、カマキリを睨みつけ立ち上がる。白濁とした意識、身体がミシミシと軋む。獣だ、まるで獣のようである。血走った瞳に、うねる喉、唾液が飛び散る。

 その姿を祝うのか嘲笑うのか、神は口元を歪め、何かを呟く。そして鉄槌は下される。


 「ア“アアアア“アあ“ぁ“ッッ!!?!?」


 カマキリに突進する、なりふり構わず、がむしゃらに、ひたすらに友間は右手を振り上げ、カマキリの中腹部、複数の腕が生えた辺りに木片を突き立てる。鈍い音と共に噴き出ていく血が友間の顔にかかる、深々と刺さった木片が血で滑って取れない、無理に引き抜こうと勢い余って転倒、直後に友間の頭部を無造作に振り抜かれた鎌が掠めた。カマキリは絶叫する、悲鳴が友間の耳をつんざく。

 ____ドゴッッ!?

 慌てふためくカマキリの腕が友間の体を吹き飛ばす、骨どころの衝撃ではない、内臓が宙を舞う。リビングの壁に打ちつけられ痛みに耐えられず吐いた。ドバドバと血が滴る口元、胸から下の感覚が鈍く、そして苦しいのだ。肺を突き破った肋骨が皮膚を貫き、胃腸は目視せずともグチャグチャに潰れているのが分かる。体が動かない、脳が出血しているのか世界がぼやけて上手く視点が定まらない。


 「ぁ___あ______ぅぷッ!?」


 何か言おうとした気がしたが溜まらず吐いた、鼻からも血が滴る、息をする毎に苦しくなる。


 「非常に残念だよ、出来れば生け捕りが良かったんだが・・・・・・」


 カマキリは落ち着き払ってそんなことを言う、人間の姿に戻ったようであるが片腕の消失と腹部の重傷を負うこととなった。友間と京八、子供相手とはいえ、その代償は大きなものだった。


 「__ぁ____」


 友間は虫の息、未だ生きている事が驚かれる程である。薄れゆく意識の中、何かを言おうとしている。カマキリは呆れる、これほどの男はそういるものではないと__。


 「介錯は任せてもらおう、せめて苦しまずに殺した後に、君の友人をそっちに送るとしよう」


 せめてもの情けとカマキリは片腕を振り上げ、鎌へと変化させる。狙うは頸椎、長年にわたり組織の犬として数多の人間の首を切り落としてきた、この期に及んで失敗などはあり得ない。男の目がギラリと光を帯びたかと思うと、間髪いれず斬りつける。

 バアアァンンンッッ!!!

 刹那、男の体は爆風に煽られ吹き飛ばされる。理解が追いつかない、歯を食いしばり衝撃に抵抗する。その瞬間、脳がピシリと動き出す。そう、つまりは“備えろ”と脳が警告音を発したのだ。

 視界は煙が立ち込め、状況の整理は未だ追いつかず、冷や汗が頬を伝い、顎先から落ちていく。視界の端に変化を感じ取る、咄嗟に体が反応した。振り抜かれた鎌が何かを仕留めた、いやむしろ男の方が仕留められたと言って良い。何かが鎌に絡みつき離れない、煙の向こう側へと引っ張られる、もの凄い力だ。

 カマキリは藻掻いた、圧倒的な力によって床に叩きつけられ煙が晴れる。そこには友間が、友間が立っていたのだ。しかし姿は異様、木目を纏いしその風貌、髪の先からつま先まで身体が木材に置き換わっており、その両手は触手の如く伸びてカマキリを捕縛していたのである。


 「どうなってんだッ!!?」


 カマキリはそう叫ぶ事しかできなかった。

Re: スキルワールド ( No.5 )
日時: 2019/09/07 23:04
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 今度は肩を揺すられて起こされた友間、すると直ぐに自身が椅子に座らされているのに気づいた。


 「んっ?、・・・・・・え〜と....こんにちは?」


 友間の目の前には自分と向き合って座り、服装は黒服で容姿は黒髪にオールバックの整った顔立ちの男がいたのであった。


 「やぁこんばんは友間くん、.....私はストラング第2基地の署長を任されている金森 剛(かなもり ごう)という者だ。まぁ周りからは“ボス”と呼ばれてる」


 「・・・・・・1つ聞いて良いですか、ここって何処ですか?」

 友間は警察の尋問室のような部屋の所々を見渡しながらボスにそう聞いてみた。


 「・・・・・・大まかに言えば日本の海に浮かぶ無人島の地下にある基地の中だ。もう少し細かく言えば一般人では誰も知る者がいない島という事かな」


 「.....っで、俺はどうなってるんですか?」


 「っと、言うと?」


 「俺の体が木だったり鉄だったりに変化したんです、普通じゃ信じらない事が目の前で起きたんです.....」


 「 ・ ・ ・ それは“スキル”という普通ではありえない力だ」


 ボスは何か物深しそうな雰囲気で友間に言った、しかし友間には理解できずにボスに聞き返してみる。


 「え〜と.....つまりスキルって何ですか...ボス」


 「もう少し詳しく言えば、スキルとは使い方で周りにも自分にも危害を......ん〜、やっぱり実際に見せた方が早いな」


 するとボスは座っていたパイプ椅子から立ち上がると片手の襟を少し捲って友間に肌を見せたかと思うと次の瞬間にボスの片腕がダイヤの腕へと変化する。


 「ワッ!、なっ! 何ですかソレ!?」


 「これは自然系の[金剛こんごう]というスキルだ、この様にスキルは普通では考えられない事ができるし鍛えようでは更に上へ極める事もできる」


 そう説明するとボスはスキルを解除して服の襟を整えると再び椅子に座り直した。


 「じゃあ俺にも、そのスキルってものがあるんですか?」


 「あるが、どんなスキルかは君が発動しないと分からない」


 「よしッ! 俺もやってみます!」


 すると友間は立ち上がってカマキリと戦っていた時の感覚を思い出してみる....。

 段々とスキルの扱い方が分かってきた気がする。何と言うか体の一部を動かす感覚に近い、そう思っていると友間の体が全て木材へと変化する。


 「よし!、上手くいきました」


 「友間くん、君にはもう一つの鉄の姿もあるらしいね」


 「はい、ちょっと待って下さい」


 今度は友間の体が鉄へと変化したが、体は固苦しくなく普通通りに動くことができた。それもそれで友間にとっては奇妙な体験である。


 「ん〜君のスキルは何だろうか.....」


 「・・・・・・あっ!....俺、何か分かったかもしれません...ボス、ちょっとさっきの姿になってくれませんか?」


 「んっ?、まぁいいぞ」


 「どうも、少し失礼します」


 そう言って友間はダイヤとなったボスの腕に軽く触れてみた、すると友間の体がたちまちダイヤの姿に変化した


 「やっぱり....俺の予想、当たってました」


 「それなら君のスキルは何なんだ?」


 「はい、え〜と俺のスキルっていうのは・・・・・・」

Re: スキルワールド ( No.6 )
日時: 2019/09/08 18:37
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「はい、え〜と俺のスキルってのはたぶん“性質のコピー”です」


 「性質の、コピー...?」


 「はい、説明すると物質の性質を触れる事で使える様になるって事です......つまり石に触れば体が石になって、火に触れば体が火になるって事です」


 「・・・・・・これはまた一風変わったスキルだ、なら君のスキルは性質のコピーであって自然自体を操っていないのであれば自然系ではなく超常系という事か......」


 深く考えるようにボスは腕組みをし眉を細めている、すると友間は言い切るかのようにこうボスへ言う。


 「まぁ、よく分からないですけど俺のスキルはさっきボスが言った超常系ってやつですよ...きっと」


 「そうか....まぁだとしたら話は早いな、なら後で誰かにストラングの基地の中でも案内させよう、しかしひとまず此処から出てから物事を進める事にしよう」


 そう言うとボスは立ち上がってドアへと近づくと友間を手招きして先に部屋から出るように促した。





 数分ぐらい基地の通路を二人が歩いていると偶然通りかかった京八と出くわした。


 「おう!黒奈!、元気にしてるか!」


 「ああ、京八こそ元気そうだね」


 「・・・・・・二人で喋っているところ悪いが京八、お前は友間に基地内を案内してやってくれ」


 「おー良いっすよボス、行こうぜ黒奈」


 「それとだ京八、今回の任務の成果について少し話がある、あとで私の部屋に来てくれ」


 「...はぃ、分かりました.....」



 その後、京八に食堂や売店、他にも様々なトレーニング施設などを案内され最終的にはストラング第2基地にいる人の数は900程という事と基地にいる人には一人一人の部屋がある事も分かった。


 「おっし! じゃあな黒奈、俺は全部案内し終わったから覚悟決めてボスに会ってくんな」


 「じゃ、じゃあ頑張ってね京八」


 そうして二人はお互いに手を振って別れ、友間は京八から渡された手書きの紙を頼りに自分の部室を探すことにした。


 「え〜と俺の部屋は.....」


 _______ドンッ!


 「邪魔だ!、俺様が歩いてるのが見えねぇのかッ!!」


 尻もちをついた友間の目の前には、いかにもガキ大将というかチンピラというのか柄の悪い取り巻きを数人従えた大柄で太った少年が怒号を吐き散らしながら立っていた。

Re: スキルワールド ( No.7 )
日時: 2019/09/08 18:46
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「俺を見ずに何処見て歩いてやがった!」


 「ど、どうもぉ〜」


 友間はあまりの少年の怒りように引き気味に言葉を投げかけてみた、しかし少年の怒りはヒートアップしたようで、憤慨した顔で少年は友間の胸ぐらを掴んで体を引き寄せる。


 「オイオイ舐めてんのか?」


 「いえ、あなたを舐めても不味そうですので」


 この一言で少年の怒りはピークに達し、友間を通路の床に投げ飛ばそうと両腕を高く掲げる。


 「おいおい、もっと静かに出来ないのかよ?」


 そんな声が憤慨する少年の背後から聞こえたかと思うと肩に誰かの手が置かれる、咄嗟に振り替えると見知らぬ少年が呆れ気味に立っていた。


 「よお、俺は氷飴 零(ひあめ れい)だ、よろしく」


 「邪魔すんな! 俺はコイツをブッ殺すんだよ!」


 「いやいやストラングの基地内じゃ、殺しは“厳禁”だぜ?」


 その声と共に肩に置かれた零の手からは周囲に向けて冷気が通路内に充満する。


 「手を退かせ! お前もブッ殺されたいかッ!」


 「やれやれ...一旦寝てな、フッ!」


 そう言うと同時に友間を掴んでいた少年の顔に息を吹きかけると一息の間もなく少年の顔が霜に覆われ体が床に倒れ込んでいた。


 「あれ、ちょっと加減を間違えたかな? まぁ死なない程度に抑えてるから大丈夫だろうけど」


 「ありがとう...ございます」


 「んっ? 良いって事よ、それじゃあ周りの取り巻きはどうすっかねぇ」


 そう言って零が周囲の取り巻きどもに睨みをきかせると床に倒れた少年(親玉)を連れて何処かへと去っていってしまった。


 「あいつら、新入りを虐めるのを遊びにしてるから気をつけろよ、じゃあまたな」


 「あっはい、それじゃあまた」


 こうして友間は新たに友達というものが増えた、まぁその話は置いといて友間は再び自分の部屋を探しに無人となってしまった通路を歩き出した。

Re: スキルワールド ( No.8 )
日時: 2019/09/08 19:18
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 友間がストラングに来てから早3日が過ぎていた。基地内にも数人の知り合いができて母親を殺された悲しみも少なからず薄れている頃だった。


 「ハァー暇だ〜....、いっそ黒奈の部屋でも訪ねてみっか」


 冷え冷えのコーラを片手に持っている京八は暇潰しに友間の所へ訪ねてみる事にしたのだった。


 「おーい黒奈〜、部屋入るぞ〜」


 _____ガチャ


 そう言って部屋に入ると玄関を通ってリビングへと出る。だが友間の姿が見当たらないので辺りを見渡してみた、そしてキッチンに行ってみると友間が火の着火しているコンロに手を伸ばしているところであった。


 「オイ! 待て待て何してるっ!?」


 「えっ! 京八!? うわッ」


 二人とも勢い余って床へと倒れ込んでしまう。しかし京八は即座に立ち上がってコンロの火を消した。


 「何やってんだ?、焼け死にしたいのかよ?」

 「えっ?、え〜とただスキルの実験をしようかと....」


 「はっ? スキルの実験...?」


 「ほら、俺のスキルって物質の性質を取り込める『性質吸収』だろ?。だから“火の性質”でも取り込んどこうかと思って.....」


 「あぁそうだった!、お前のスキルってそんなんだったな」


 そう自身の額をたたいて言った京八、そうこうしてると友間は自分の力で立ち上がり再びコンロの突起を捻って火をつける。


 「い...いちょう気をつけろよ黒奈」


 「ああ、大丈夫だよ」


 そう言って京八の心配する声を跳ね退けると友間はコンロの火に触れる。すると友間の体から炎が吹き出して全身を包み込んでいく。

 だが熱くは無く、何と言うか温かいという感じである。


 「どんどん変身出来んのが増えてんな」


 「まぁ、そう言ってもまだ4つの性質しかないけどね」


 軽く苦笑してみせると友間はスキルを解除して体から炎を消した。

 だがその途端、二人の背後から見知らぬ男の声が聞こえてきた。


 「よぉ、あんた....俺と最悪な時間を過ごさないか?」


 「「んっ!??」」


 咄嗟に二人は後ろを振り向くが、あったのは空間が裂けたような真っ暗闇の穴であった。


 「おい黒奈、何だよコレ...」


 「いや、俺に聞かれても....?」


 二人がそんな感じで話していると一瞬の沈黙の後、二人の体は謎の引力に引き込まれるかのように謎の穴へと吸い込まれて行ってしまった。

Re: スキルワールド ( No.9 )
日時: 2019/09/08 19:33
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 京八と友間の二人は大回転しながら何も無い真っ暗な空間へと放り出された。


 「あ〜〜目が回るぜ〜。黒奈は大丈夫か〜?」


 「お、俺もちょっと気分が....ウッ!」


 「.......ようこそ、俺の世界へ...」


 二人は吐き気を催しながらも声のした方を伺ってみると少し短い手足に少々ふっくらとした体形をしている男が立っていた.....いや、浮いているのかな?

 「・・・・・・敵かッ!!」


 「えっ!、京八の知り合いじゃないの!?」


 「こんな奴は俺は知らん!!、スキル『発電』ッ!!」


 京八は手に持っていたコーラを一気に飲み干すと空きのペットボトルを下へと捨ててスキルを発動する。


 「おっし!、殺るか!」


 そう言うか早いか京八は男へと殴り倒す勢いで飛び出していく。


 「俺も.....戦った方が良いのか?」


 ポツン、と残されてしまった友間はそんな事を言いながらも自身のスキルを発動し京八のサポートへと回ることにした。


 「チッ!、外した....」


 「いやいや、外したのではなくて“避けられたんだよ”」


 「ああそうかよ....、ヤァァーッ!」


 「うわぁ〜京八、張り切ってるねぇ.....って!言ってる場合じゃないや!!」


 「チッ!、全然当たらねぇ」


 「じゃあ、そろそろ飽きたから攻撃に移るよ?」


 その途端、気づくと京八の体は吹き飛ばされていた......油断はしていなかった。それに殴り飛ばされたのではなく何かよく分からない力に押し飛ばされたような感じである。


 「い....イテテテ、こりゃあ効いたぁ」


 「京八、ここは一旦逃げた方が....」


 「逃げるって言っても何処に逃げるんだよ?」


 京八は走り寄ってきた友間を見ると暗闇が広がる空間を見回して思わず友間に苦笑いを投げかけてみせる。


 「そ、そうだね」


 「1つ言っておくが、お前ら二人がどんなに力を合わせて俺に向かって来たって俺の一回の攻撃で終わる、そんぐらいなら一度人生をロードし直したらどうだ?」


 完全に下に見られている、そのぐらいは二人も即座に分かる事であった。


 「・・・・・・ぷっ...はっ!はっ!はっ!、冗談だよ悪かったな」


 「「.....へっ?...」」


 突然のカミングアウトに二人はお互いの顔を見合わせて数秒硬直する。そして少しして我に返った様子の二人は同時にまだ少し笑ってる男の方へ首を向ける。


 「いやいやゴメンゴメン、ちょっと小手調べのつもりだったんだけど君達の白熱ぶりにちょっと感化されちゃったのかな?、少しやり過ぎてしまってホント悪かった」


 「おいおい、どういう事だよ?」


 今までのは何だったのかと言わんばかりに問いかける京八、まぁ確かに突然の出来事なのだから文句を言われても仕方ないのかもしれないが.....。


 「まぁまずは自己紹介からだな、俺は『サンタム・スカル・サンズ』だ、気軽に“スカル”って呼んでくれ」

 

Re: スキルワールド ( No.10 )
日時: 2019/09/09 22:14
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 真っ暗闇な風景だけが広がる世界に三人の人物の存在があった。


 「でっスカルとやら、お前は俺らの敵じゃねぇって事か?」


 「あぁそうだ京八くん、俺はただ基地内にある異空間に住み着いてるだけだしね」


 「そんでお前の存在をボスは知ってんのか?」


 やけにスカルを不審に思っているのか京八はスカルに対して次々と質問を投げかける。


 「もちろん、ボスはちゃんと知ってるし俺は許可をとってる身だ」


 「ところでスカルさん、俺ら二人って元の場所に戻れますか?」


 友間は何分も続く京八による質問コーナーを終わらせるためにスカルにそう聞いてみる。


 「それはもちろん、この空間は僕の一部のようなもんだからね。君達が良ければ送り返すことも可能だよ?」


 「あっ、なら直ぐにお願いします!」


 「おい黒奈!?、コイツはまだ信用できねぇってのに易々とそんな事を頼むもんじゃ・・・・・・」


 「京八は黙ってて!、それともこのまま亜空間の中に居たいの?」

 「ちょっと待っててくれ........確かに嫌だな!、そうと決まれば帰るか」


 京八が周りを見回した後の意見の変わりようには流石の友間も呆れを通り越して苦笑いがつい出てしまった。


 「それじゃあ通路を開けるから少し離れて....OK、じゃあ通路を・・・・・・」


 すると三人の視界に最初に見た変な空間の穴が現れ、それに対して友間はスカルに頭を下げて礼の気持ちを示した。


 「ここを通ったら戻れるよ、それじゃあね.....あっ!、言い忘れるところだったけど困った時は口笛を吹いてね!、すぐ俺が駆けつけてあげるから」


 「分かりました、それと失礼しました。行こっ、京八」


 そして友間は少しばかり納得のいっていない様子の京八と一緒に次元の穴へと飛び込んでいく。


 [〜数分後〜]


 暗闇に光が差し込み二人は少し前にいた部屋へと戻っていた。穴は既に消えてしまっていたが、少しの休みも挟めずに誰かが勢い良く部屋に入ってくる。


 「やっと見つけたぜ、何処行ってたんだよお前ら?」


 一応説明を挟ませて頂くが、部屋に入ってきたのは数日前に友間を助けてくれたれい本人である。


 「何って...どうかしたの?」


 「いやいやそりゃねぇぜ友間、お前ら3日も行方不明だったんだぜ?」


 「「・・・・・・・・はッ!?!」」


 京八と友間の脳裏には突如として電撃が走るような感覚が起こる。お互いに顔を見合わせて驚きの声が部屋に響き渡ったのも無理はない話であろう。


 「いやいや零!、俺らはスカルのとこから一時間もしねぇぐらいで戻ってきたぞ?」


 「んっ?、スカルって誰だ京八.....。あっそうだお前ら、ボスがお前らに収集かけてたぜ」


 「えっ俺らにか?、行ってみるか黒奈?」


 「そうだね、怒られたくないし.....」


 そんな事を二人は呟きながら零をおいて部屋を後にする。


 [~ 署長室へ ~]


 「やぁやあ君達。“な・ぜ・に”この3日間は姿を見せなかったんだい?」


 「き、キレてるよね完全にボス?」


 「あぁ、これはヤバイかもな黒奈」


 「何をヒソヒソと話してるんだい、君達二人は?」


 「「す、すみません.....」」


 「まあ、この件については後にして君達二人にはちょっとした任務をやってもらいたい」


「「へっ?、任務ですか....?」」

Re: スキルワールド ( No.11 )
日時: 2019/09/09 22:23
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 友間は今、京八+他の数人のメンバーと共に“眠らない夜の町<歌舞伎町>”に来ている。何故そうなったかと説明を省きたいので、かなり時間を巻き戻させてもらいます。


 [〜 4日前 〜]


 「君達二人にはちょっとした任務をやってもらいたい」


 「「......へっ?、任務.....?」」


 「簡単に言えば、京八が友間の確保任務で『目立たず遂行する』、という項目の条件に違反してしまっていた。という事で京八に対しての罰則と、ついでに友間にとって良い経験にもなるという事でそう決まった」


 「あ〜〜そんなのアリかよ〜〜」


 「まぁまあ京八、任務を済ませちゃえば良い話じゃない?」


 「ハァ〜、黒奈....お前ってホント受け入れ早ぇよな」


 「ところでボス、任務の内容って何ですか?」


  「そうだな、二人には歌舞伎町にあるスキルの悪用に関する組織の壊滅を行うことが“総議会”で決まっている」


 「総..議会...?・・・・・・え〜とまず俺達は歌舞伎町の組織の壊め、、、、壊滅ッ!?!、もう一度聞きますけど『組織の壊滅』ですか!??」


 「そうだが、何か問題でも?」


 「さすがに黒奈も驚いてるようだな、安心しろ俺もお前と一緒の心境だ」


 「まぁ私も人の心は持っているつもりだ、なので3名程の助っ人を向かわせよう。くれぐれも失敗のないように頼むよ」


 本人ボスなりには出来る限りの優しい表情になり気持ちを楽にさせようとしているらしいが、なにせ目付きが元から鋭いので逆に二人は不安の苦笑いを浮かべるしかない。

 少しの不安と少々の悪い予感がしてきたが、二人とも心を奮って気を引き締めたのであった。

Re: スキルワールド ( No.13 )
日時: 2019/09/09 22:45
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 友間と京八の二人の他に『組織の壊滅』に加わるメンバーは一人の少年と二人の少女らしい。そして今から任務遂行を行うメンバーによる軽いミーティングが始められるらしいのだ。


 ______ガチャッ!


 「あっ!、京八だ! 久しぶりだね♪」


 最初に入ってきたのは京八と面識のあるらしい少年であった。だが最初に見た時は少女かと見間違いそうになるぐらい可愛いかったので思わず心の中赤面してしまう友間であった。


 「おぉ龍紀たつきじゃねぇか!、もう他の任務は終わったのかよ?」


 「うん!、僕の役割はいつも後援からのサポートだから、あまり出番がなかったけど.....」


 「そうだ黒奈!、紹介するぜ! こいつは榎元 龍紀(えのもと たつき)って言うんだ。しかもスナイパーをしてんだが実力は俺の保証付きだぜ」


 「きょ! 京八!?、そんなこと大っぴらに言わないでよ恥ずかしいからあ......」


 恥ずかしそうに頬を少し赤めながら言う龍紀はさながら可愛かった。そしてその様子に京八は思わず笑ってしまっていた。


 「たくよぉ龍紀、お前の女っぽい所は全然変わんねぇな!」


 「京八こそ、僕の気にしてる事を平気で言うのは変わらないんだね」


 「まぁそれより龍紀、残りのあと二人って一体誰なんだ?」

 「えっ!、ボスからメンバーのこと聞いてないの京八?.....あ〜確かシスティア姉妹だったはずだよ?」


 「あ〜姉のジャッキーと妹のシセラかぁ.....」


 ______ガチャッ!


 「へー何よ京八、私に何かクレームでも?」


 「うっ!、ジャッキー!?」


 「あっ、どうも俺は友間って言います」


 「そんな事より、あんた達シセラを見なかった?」


 友間の自己紹介を軽く弾き返すとジャッキーは先に来ていた少年ら三人に向けてそう聞いてきた。だが誰も検討がつかずに首を傾けるばかりである。


 「いや見てねぇぞジャッキー、お前らいつも一緒なんじゃねぇのか?」


 「そう何だけど...。さっきまで私と一緒にいて、ちょっと目を離してたら行方不明になったのよね」


 「え〜と.....ジャッキー、さん..?



 「ジャッキーで良いわよ友間、でっ何?」


 「シセラの特徴って何処かありますか?」


 「んっ?、まぁ私と同じ白色の髪のショートヘヤーで、病気持ちだから普段から車椅子で移動してるけど.....何?、一緒に探してくれるのかしら?」


 「まあ、いちょう手はあります」


 それだけ言うと椅子から立ち上がった友間はスタスタと歩いて部屋の壁に触れると片手を壁へと伸ばしたのだった。


 「....『性質[コンクリート]』」


 すると友間の体は文字通りコンクリートと化していくが、更には壁に触れている友間の片手がコンクリートと徐々に同化していき肘まで壁に飲み込まれてしまっていた。


 「お、おい黒奈....これでどうするつもりだよ?」


 「これで基地全体の壁とリンクして探し出すつもり......、だけど自信はないかな」


 「おいおい締まり悪ぃな黒奈」


 果たして成功するのか否か、ちょっとした友間の試みが何かを起こしそうな気が......少しだけします。

Re: スキルワールド ( No.14 )
日時: 2018/04/07 14:53
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)

壁に片腕がすっぽり入った状態の友間は意識を基地全体の壁へと張り巡らせていた、すると ・ ・ ・


 「んっ!.....あっ!、居たかも!」

 「えっ!?、何処何処!?何処なのっ!!?」

 「おいおいジャッキー、少しは落ち着けよ」

 「うっさい京八ッ!!」

 「えーと、話を戻させてもらいますけどシセラらしき人物は通路を移動していて、たぶん迷ってるんだと思います」

 「場所はッ! 何処に居るの!?」

 「あ、えーと部屋を出てから右に曲がってから左に行ったら......」

 「右ね、分かった」

 聞き終わるかどうかのタイミングでジャッキーは部屋から走り去って行ってしまったが3分もしない内に車椅子の人物と共に戻ってきた

 「ご、ごめんね...お姉ちゃん」

 「良いの良いの、あんたが無事なら」

 「どうも、友間と言います」

 「あっ....どうも、シセラ・システィアと言います」

 そう答えるシセラはジャッキーと顔立ちなどは同じだが、男勝りというか活発なジャッキーと比べて真逆な暗めな雰囲気をしていて手に少々ふっくらとした体型の小さな人形を抱えていた

 「んっ? (あの人形....誰かに似てるような ・ ・ ・ ?)」

 「ど、どうなされましたか?」

 「友間、シセラに何かクレームでも?」

 「あー.....と..、その人形ってスカルに似てる気がしてさ」

 「あぁっ!、スカルだと? あいつの名前は私のいる場所で出すんじゃねぇ!」

 「ねぇジャッキー、まだ気にしてるのスカルの事で....」

 「龍紀は黙ってて!、あいつのせいで私は50年も時間がずれてんだよ!」

 「へっ?、50年....時間がずれる?」

 中々の複雑な展開に思わず疑問が飛び出してしまった友間は少し混乱した

 「どういう事....、京八?」

 「い、いや〜これには俺もさっぱりだぜ黒奈」

 「....その説明は俺がするぜ..」

 急に荒れかけてきた部屋の中に突如として男の声が聞こえたかと思うと空間に穴が空き、中から宙に浮くスカル本人が現れた

 「出やがったなスカル!」

 「まずは落ち着けよジャッキー」

 「京八には関係ないでしょ!」

 「お、お姉ちゃん....落ち着いて」

 すると、小声ながらもシセラの一言で部屋の中が静まり還ったのだった

 「ふーーー....やっとこれで事情が話せるよ.....、まず最初に言えば俺は悪くないんだよ」

 「あぁッ!、もういっぺん言ってみろ!!ギタギタにして肉片にしてやる!」

 「お姉ちゃん、シーーー!」

 「チッ!、妹の頼みなら ・ ・ ・ ・ 」

 「まぁ、簡単に説明すれば『俺の異空間に迷い込んだジャッキーが俺に戦いを挑んできたかと思うと戦い疲れて寝ちゃったんだよね』」

 ここで一旦話を止めてジャッキーの様子を伺うとスカルは再び話し出した

 「『戦い疲れたジャッキーは中々起きなくて結局起きたのは異空間では数週間後、でも外の世界とは時間の流れが違うから外はもう50年も過ぎちゃってたってわけさ』」

 こうしてスカルの言い分が終わると友間は一つだけ思った事があった

 「いや!悪いのって結局ジャッキーじゃん!」

 「ち、違ぇよ友間!、え〜.......それはだな、あれだよあれ」

 「いやいや黒奈の言う通り悪いのってジャッキーじゃん!」

 「あ〜はいはい、悪いのは私だって自覚もしてるわよ」

 「嘘つけッ!」

 そんなこんなで結局はジャッキーが反省するはめになり、言いたい事を言えたスカルはさっさっと異空間に戻っていった

 「.....?、ところでジャッキー」

 「何よ友間?」

 「シセラも、その時いたの?」

 「いや、いなかったが?」

 「じゃあ、どうしてシセラは異空間に行ってないのに....歳をとってないの?、普通に考えて変な気が...?」

 「......はぁ~..、それは ・ ・ ・ 」

Re: スキルワールド ( No.15 )
日時: 2018/06/09 23:27
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 「....それは.....シセラがまだ生まれてなかったからよ」

 「「「えっ!?」」」

 この場にいた友間・京八・龍紀の三人は驚いた。50年前にはシセラはまだ存在していなかったという事なのか?

 「シセラは....、・ ・ ・ 私とは母親が違うの....」

 「「「はっ??」」」

 再び少年三人は意外な事実に驚いた。確かに顔も容姿も似ている二人が異母姉妹なのだから驚いても無理はない

 「私が、スカルの所に迷い込んだのは50年も前の14の時だった。スカルとの一件が起こってスカルはお詫びにと家族の住んでる家に送ってもらったんだけど......」

 ジャッキーの口が止まり、唇を噛み悔しみや怒りというどちらも混ざったような表情なりがら話を続けた

 「家に返った私には、2つ下の妹ができていた....実の母ではない別の母親の子だったけど私は嬉しかった.....“でも”、義理の母は50年も前から姿の変わってない私を忌み嫌っていた」

 ジャッキーの呼吸が少し荒くなり、拳を握る手が小刻みに震える

 「あの“女”は!、年老いた父の財産を狙ってるバカ女だった.....既に80を過ぎていた父の体調が悪化していくと私だけじゃなく体の弱いシセラにまで手を挙げるようになった!!....あの時、私の...私の手で殺しておけば!」

 「お、おい、ジャッキー、少し落ち着けよ!、黒奈も見てねぇで何とかしろ!」

 「あの“女”との生活が始まって1年後....とうとう父が死んだ...それからが悪夢の始まりだった」

 その瞬間、ジャッキーだけじゃなくシセラも小刻みに体が震えていた

 「そして....私とシセラは逃げ出したの....、でも道端でストラングに保護されて、それから3年が過ぎて今ってわけ....」

 「あの....一つ質問いいかな....?」

 「何?、友間?」

 「君の母お...あ、いや....、義理の母親ってその後どうなったの?」

 「勝手に酒飲んだまま運転して死んだらしいわよ.....」

 暗い空気が部屋を包み込む、だがそんな空気を打ち破る者が現れた

 「ガチャ!)) オイ!お前ら!!、まだミーティング始めてないのかっ!!」

 「「「ぼ、ボス!」」」

 「さっさっと始めるぞ、この任務では京八の立場も関わってくるからな」

 「あ〜!! 俺、何か心配になってきたぁ〜」

 「何ビビッてんのよ京八、私があんたの分まで敵を叩きのめしてやるわよ」

 「び、ビビッてないしジャッキー!!、俺はお前より多く敵を倒してやるからな」

 「ふん、だったらどちらが強いか今からでも決めようじゃないの」

 「おうよ、かかって来いや!」

 「ま、待ってよ二人とも、喧嘩は良くないよ」

 「「龍紀は黙ってな!(黙っててよ!)」」

 「ははは、二人とも意外と仲が良いような気が」

 「「うるさい!(うるせぇ黒奈!)」」

 「お姉ちゃん、それと京八さんも.....落ち着いて...下さい」


 [〜そんなこんなで時間は進み〜]


 少年少女の合わせて五人は今、真っ昼間の歌舞伎町を歩いていた

 「 ヒソ ヒソ )) 確か目的の組織ってここを曲がった所だっけ京八?」

 「 ヒソ ヒソ )) そうらしいぜ黒奈」

 「 ヒソ ヒソ )) 二人とも組織 組織ってうるさいわよ!、誰が聞いてるかも分からないんだし」

 「はいはいジャッキー、気をつけるよ」

 「何よ京八!、それが人に対する態度?」

 「ほら二人とも、よく“喧嘩するほど仲が良い”って言うでしょ」

 「「うっさい龍紀!!」」

 そんな感じで意外と仲の良いメンバーはワイワイとしながらも道を歩いていたが、誰かに跡をつけられているとは気付くことが出来なかった

Re: スキルワールド ( No.16 )
日時: 2018/04/11 21:17
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 「 ・ ・ ・ ん.....?....」

 「どうした黒奈?、何かあったかぁ〜」

 「え..あ、いや何となく後ろに誰かがいた気がしてさ」

 「何だよそりゃ、ははは」

 「もー二人とも、無駄話してないで行くわよ」

 「あーはいはい分かったよジャッキー、黒奈も急ごうぜ」

 「そう...だね ・ ・ ・ ・ 、?」


 色々と疑問が残りながらも先へと進むため足を進める友間、だが五人の後ろ背を見送る者も確かにいたのだった


 [〜少し進んで〜]

 「ここが....“例の場所”」 

 「そうみたいね、友間」

 そんな感じで一行が着いた場所は看板に『土神どがみ不動産』と書かれた不動産屋の事務所らしき建物だった

 「うっし!、じゃあ入ってみんか」

 「あ〜京八、ここは一旦待った方がぁ」

 「龍紀..?、どうした怖ぇのかよ?」

 「いや、そうじゃなくて敵のスキルも分からないまま乗り込むのはマズイんじゃ」

 「ならどうするってんだよ?」

 「ここは一旦、退いた方が....」

 「バカ言うなよ龍紀、男が目の前にあるもん取らずにどうするってんだよ!」

 「あーもー男なら静かにしてなさいよ京八!」

 「じゃあ、どうするってんだよ?」

 「あ....あの私...、私に考えが...」

 「お! シセラ、何か考えでもあんのか」


 ・ ・ ・ ー・

 ・ ・ ー・ ・

 ・ ー・ ・ ・


 五人全員は一旦、ストラングが用意している少々古い賃貸アパートへと戻ってきた

 「でっ黒奈、計画は何だったっけ?」

 「はぁー.....だから、夜になったら不動産屋に行ってみて組織の親玉らしき人物の跡を二人ぐらいで追ってみるんだってば」

 「あーそうだたっけ、えーと俺とジャッキーで尾行するんだっけ」

 「そういう事、気をつけてよ京八」

 「任しとけ黒奈、ところで....今って何時だ?」

 「ハァー、これは先が思いやられるかも」

Re: スキルワールド ( No.17 )
日時: 2018/04/13 17:55
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



友間を含めて五人の人物は、夜になりかけた沈む夕日が窓から照りつけるなかで少しずつ準備を進めていた


 「おい黒奈、冷蔵庫からコーラ取ってくれ、コーラがなきゃエネルギー切れの時ヤベぇーし飲まなきゃシャキとこねぇんだよ」

 「はいはい分かったよ ((ガチャ! )、はいコーラ (( ポイッ」

 「おっ! サンキュー黒奈」と言いながら放り投げられたコーラをキャッチするとズボンのポケットへ無理に押し込んだ

 「京八、今6時ちょっとよ、そろそろ行くから準備早く済ましてよね」

 ジャッキーはそう言った後に自分の身なりを確かめ満足そうに微笑んだ

 「別に遊びに行くわけじゃねぇだろジャッキー?」

 「バカ言わないでよ、このバカ京八! 女子は何処でもオシャレな方が良いの」

 「いやいやだからってスカート履くか?、もしかしたら走るかも知れねぇぜ」

 「だったらアンタ達みたいなズボンよりスカートの方が動きやすいわよ」

 そう言って頑として意見を譲らないジャッキーは、天井に届きそうな程のノビをしてから足元にある自身のスマホを拾った

 「それと良いわねシセラ、友間、龍紀、私か京八に何かあったら携帯に電話するから電話が鳴ったら最低限の覚悟はしておいてね」

 「俺とジャッキーの場合ねぇだろ、なあ黒奈?」

 「ん?....あ...、そうだね」

 京八の問いに友間は返事を返したが、どこか上の空といった感じだった

 「どうしたんだぜ黒奈、ちょっと前から何か気に掛かってるみてぇだけどよ?」

 「ん〜....、何かちょっと嫌な予感がしただけ」

 「何だよそりゃ、スタート地点から悪い予感ってよ」

 軽い感じで受け止める京八だったが、それと裏腹にジャッキーはこんな事を言った

 「なら、気を引き締めて行きましょ、どっちも....ちゃんとした人の形で戻って来たいしね」

 「お...おう、そうだなジャッキー」


 すると今まで何かをしていた龍紀が口を開いたのだった


 「大丈夫だよ京八、こっちは敵がきても準備万端だからね♪」

 そう言うなり今までイジっていた物を持ち上げて構えた、その正体はスナイパーライフルだった

 「確かにな、龍紀も居るしシセラもいるからこりゃ安心だな」

 「ちょっとぉ、シセラが病気で激しい運動が駄目なの忘れてない?」

 「あっ、そうだったなジャッキー」

 「ふん!、まぁそんな事よりそろそろ時間だから行くわよ京八」

 そう言ってジャッキーは京八を置いて玄関へと行ってしまったのだった

 「妹思いだねぇ、まっ そんじゃ行ってくるな龍紀、黒奈」

 「シセラも体には気をつけなさいよ」

 「う...うん、お姉ちゃんも....気をつけてね」

 そうして京八とジャッキーはアパートを後にし、そして部屋の中にはシセラと龍紀、それと友間だけとなった

Re: スキルワールド ( No.18 )
日時: 2018/04/15 10:18
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 ・ ・ ・ 。 

 無言の空気が気不味く押し積める部屋では、無言で何かをしているシセラと龍紀、そして何か話そうと必死な友間がいたのだった

 「 ・ ・ ・ ね、ねぇ龍紀」

 「んっ....何?友間」

 「ところでさ、俺らってスキル使えるけどさ、何かスキル使える人とかの呼び方とかってあるの?」

 「ん〜と....“アビリティア”って言ったと思うよ ・ ・ ・ 」

 「 ・ ・ ・ (俺に話術の才能を誰かぁ〜〜)」

 「ブゥー ブゥー )) 友間、京八からの電話が鳴ってるよ」


 龍紀の呼び掛けでやっと電話が鳴ってるのに気づいたが、電話が鳴るのは二人に何かがあった時だけだ ・ ・ ・

 友間は多少ながらも震えた手で自身のスマホを掴んだ、そして京八からの電話をとってみた


 『あっ! やっと掛かったぜ、手短に説明すんが敵に見つかった!。...いや、俺の行動はもう既に敵に知られてたみてぇだ、そっちにも敵が来るかもし.....』

 「もしもし京八!、どうしたの!!」

 『チッ!、敵に囲まれた ((ツー、ツー』

 「 ・ ・ ・ ヤバイ!龍紀!、身構えといて!、それとシセラも ((コン!コン!」

 すると玄関の方からノックの音がして龍紀はハンドガンを構え、シセラは頭を抱えて目を瞑った

 「じ、じゃあ俺が様子を見てくる」

 「ああ、お願い友間」

 そう言って返事した龍紀はまるで今までとは違うハンターの様な眼をしていた、友間は玄関へと慎重に近づき少し様子を伺った


 コン!コン!.....、バン!!バン!!


 「(こ、怖いな) ....は、は〜い誰でしょうかぁ?」

 覗き穴から外を見てみる、大柄で髪を角切りにした男が立ってドアを叩いていた

 「(や、ヤバそうだから開けない方が.....)」

 「チッ!、こんなドアなど邪魔だ」

 「へっ!、今なん...((ドゴッ!!」

 ドアに突然として穴が空き、その穴から出ている腕でドアの鍵が開けられた

 「ガチャ!)) やぁやあ諸君こんばんは、そして死ね!」


 とうとう敵に部屋への侵入を許してしまった、そして友間の頬を冷や汗が垂れ落ちた......。

Re: スキルワールド ( No.19 )
日時: 2018/04/19 18:25
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)






  パァンッ! パァンッ!



 ・ ・ ・ ・ 部屋に最初に響いたのは銃声だった、しかしソレは龍紀の持っている銃からの音だった。

 銃弾は二発、侵入してきた敵の眉間と心臓部に的確に命中させ敵の体を後ろへと傾かせたのだった


 「や、やったね龍紀!」

 「.....いや...、まだだよ」

 「へっ ・ ・ ・ 、!?!」

 「あ〜イテテ、頭と胸を迷わず撃つたぁ中々の銃の手慣れようだな」

 敵の男は撃たれた部分を抑えながら立ち上がると撃たれた箇所から手を離すが、何と撃たれた箇所には傷どころか銃弾の跡すら無かった

 「俺のスキルは“特化系の『タフネス』”、つまり俺の体は戦車並みの硬度ってわけよ」

 そんな風にベラベラと自身のスキルを明かす男に対して、龍紀が途中で口を開いた

 「ふ〜ん、特化系のスキルねぇ、ならコレならどう?」


  ・ ・ ・ ・ ジャキ!
 
 ......パァン! パァン!


 今度は男の両膝に当たり、思わず床に膝を着いてしまった男は少し驚いたがすぐに龍紀を睨みつけた

 「やっぱりね、どんなに硬いからって言って表面は守れても銃弾の衝撃は伝わるみたいだね、特に筋肉の少ない関節とかは」

 「それが何だって言うんだよ!?」

 「それは、君に多少のダメージぐらいは与えられるって事だよ」

 「ふん!、ソレが分かった所で無駄だ! ((バッ!! 」

 男は龍紀に向かって飛び出した、だが男の視界の隅に鉄に変化した友間が見えた

 「させるかッ! ((ドガッ!!」

 「グッ!...このガキが!」

 「鉄の拳はさすがに効くみたいですね」

 そんな会話の後、ようやく友間と敵の二人の戦いが始まった

 「バキッ)) ぐッ! クソガキッ!((ドガッ!」

 「何の...これくらい ((バンッ!」

 「友間!、ちょっと下がって!」

 「えっ!龍紀、何で?」

 「いいから、早く!」

 「う、うん分かった」

 「待てガキィ!」

 龍紀に言われるままに友間は狭い部屋の隅へと飛び退くと同時に龍紀が何か丸い物体を敵へと放り投げた


 チ!チ!チ!チ! ....ピカァーッ!!


 眩しい光が友間の目を貫き思わず目を反らす、先程に放り投げられたのは閃光弾だったらしい

 「行くよ!友間とシセラも」

 「え、ちょっ待っ.....」

 龍紀に手を引かれて眩しく光る部屋の中を駆ける友間、そして少しすると三人は外へと勢い良く飛び出した

 「友間!、シセラを抱えられる!?」

 「外に出てどうするの?」

 「部屋の中は狭いし他にも住居者がいるから人に見られない場所に移動しよう」

 「分かった、ちょっと失礼するねシセラ」

 「あ...あ..はい、すみません」


 そうして友間はシセラを背負って龍紀は自身の銃器が入ったスーツケースを抱えると、敵が来る前にアパートを後にした


 [〜少し進んで〜]


 「ハァ ハァ ハァ ハァ 、友間とシセラは大丈夫?」

 「ハァ、ハァ、俺は大丈夫だ、だがちょっとシセラの方を心配した方が良さそうだ」

 「す..すみません、ちょっと....振動に慣れなくて.......」

 慣れないどころか走る友間の背に乗るシセラは顔色がどんどん青紫へと変色していった

 「休ませた方が良いと思うけど、....敵が一人とは限らないからあと少しだけ頑張ってねシセラ、それと友間も」

 「任しといて、体力なら少しは自信があるからさ」

 「は、は..い......うぷっ! ・ ・ ・ 頑張ります」


 色々と危険な状況の友間・シセラ・龍紀、それと行方の分からない京八とジャッキーはこの先どうなってしまうのでしょうかね?

Re: スキルワールド ( No.20 )
日時: 2018/04/20 20:04
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 真っ暗な夜道、街灯だけが光照らすだけの人道を急ぐように駆ける三人の姿があった


 「ハァ ハァ ハァ ハァ .....ねぇ龍紀、どこか隠れられそうな場所でも探さない?」

 「ハァ ハァ ハァ ..うん、そうした方が良いね、友間と......それとシセラも含めて」

 「は、はひィ....お願いします..うっ!」

 完全に顔色が青紫になっているシセラは、友間の背で必死になって強烈な吐き気と戦っていた

 「何処が良いかなぁ〜、ん〜......あっ! あそこは友間!?」

 「えっ? てっ、あそこって危険じゃない?」

 そんな事を言う友間の目には暗がりに佇んでいる工事途中の廃墟ビルが見えていた

 「好き嫌いは言えないでしょ、それにシセラもそろそろ楽にしてあげないとね ・ ・ ・ ・」


 [ 〜 廃墟ビル前 〜 ]


 「じ、じゃあ一旦シセラをお願いね」

 そう言って友間はシセラを龍紀に託すと、立ち入り禁止と書かれた看板を無視してビル前に設置されたフェンスをよじ登った

 「ガシャン! ガシャン! )) ヨッ!と、それじゃあシセラをこっちにお願い」

 「うん分かった、ゆっくり受け渡すよ」

 シセラを慎重にフェンス越しで受け取る友間、シセラを受け取ると再び背に乗せるが今度は顔色を確かめてからだ

 「大丈夫、シセラ?」

 「だ...大丈夫......だと...、思います」

 「ん〜、ちょっと心配」

 「そんな流暢なこと言ってないで行くよ、お二人さん ((ガシャン!、トッ!」

 そうして忙しげに廃墟ビルへと入っていく三人、だが安心の一時もあと少しほどしか続かないだろう ・ ・ ・ ・ 。






 「フゥ〜、これで一安心できるぅ〜〜」

 「油断は禁物だよ友間、この町にいる以上は僕達に安全な場所なんて無いんだから......」

 「わ...、私も....そう、思います」

 「ん〜、でも京八とジャッキーの行方が分からないし任務も遂行できてないから基地に戻ることも無理そうだね」

 「そうみたいだね、僕の武器も残ってるとしたらスナイパーライフルと替え玉の弾丸にハンドガン一丁、それと閃光弾と煙幕弾が二つずつってトコだね」

 「なら武器にも限りがあるって事だね、.....あっ! 龍紀さぁ、基地と連絡取って誰か呼べない?」

 「あっ!そっか!.....でも、上手くいくかは分からないよ?」

 「それでも助かる可能があるなら実践あるのみ!.....、・ ・ ・ ・ じゃない?」

 「まぁ.....、それもそうだね♪」

 ビルの床から勢い良く腰を上げた龍紀は自身のポケットからスマホを取り出してドコかに電話をした


 プルル〜 プルル〜

 プルル〜プルル〜


 「 ・ ・ ・ ・ ガチャ!)) あっボス?、えぇ....ちょっと事態が悪化してまして......。」

Re: スキルワールド ( No.21 )
日時: 2018/04/22 12:54
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 「 ・ ・ ・ えぇ...はい..はい、よろしくお願いします、では...((ピッ!」



 ボスとの電話を切った龍紀、肩から力を抜いて友間とシセラの方へ体を向き直した

 「 ・ ・ ・ その...援助は呼べたんだけど....、軍用ヘリを使っても最低でも丸二日はかかるってさ」

 「じゃあ、二日間は援助が来るまで町の中でサバイバルか?」

 「まー・・・そうなると思うけど、ボスから追伸で『大変だと思うが味方なら、もう一人君達の近くにもいるはずだ』って言われた」

 「..?、...ん〜“もう一人の味方”..?」

 すると友間はピンとくるような出来事を思い出した、・・・それは町に着いてからの道のりで誰かに追われてると思ったという感覚だ

 「味方は、俺達の周りに...いる....。」

 意味深そうに友間は言うと考え込んでいた顔を上げて周りを見回してみた、しかし自身を含めてシセラと龍紀の三人以外は誰の気配もしなかった

 「ん〜・・・・ 一体何処にいるんだ....」

 だが友間に急な尿意が襲ってきて、トイレがないかと周りを見回していると外の工事現場に簡易式のトイレがあったのを思い出した

 「ごめん龍紀、ちょっとトイレ行ってくる」

 「んっ、うん分かった..?」

 そう会話してから部屋のドアノブを回す友間、ここはビルの一階にある部屋だったから部屋を出てから更にビルの玄関にある押しドアを押して開けると外へと出られた

 「え〜と、トイレは.....おっ! あったあった〜♪」

 そう言いながらトイレを見つけると早速トイレのドアを開けて中へと入っていく、この時ドアを閉めるのも忘れずにきちんと閉めた

 「ふ〜と、さっさっと済ませるか」

 友間はそう言いながらズボンのチャックを全開にすると、用事を済ませるために用を足した。だがそんな時だった・・・・


 コンコン! ガチャ!


 急にドアが開くと友間の背にナイフが突き出されたのだった


 「・・・・あ、あの〜...どちら様で..?」


 [〜 ・ 一方その頃 ・ 〜]


 「ねぇシセラぁ~、友間なんか遅いねぇ〜」

 「は、はい...確かに ・ ・ ・ 遅い...ですね」

 そんな風に暇をもて余す二人だったが、部屋のドアが開いた事で二人共ドアの方へと振り向いた

 「もぉ〜、遅いよ友ま...ぁ....」

 「よおガキ、また会ったな」

 そこにはアパートに押し入ってきた男がいたのであった

 「マズイッ! ((ジャキッ!!」

 ハンドガンを構える龍紀、だが動くのが一足遅かった


 バシンッ!!


 頬への平手打ちが炸裂してバランスを崩してしまい銃を落としてしまう、急いで拾おうとするも男に腹辺りを掴まれ宙へと投げ出された


 バリンッ!!


 運が良いのか悪いのか、龍紀は部屋にあった窓からガラスを割って外へと姿を消してしまった

 「これで、どっらも恨みっこ無しだ」

 そう言って男は龍紀に撃たれた両膝を摩って深く息を吐く、さすがの頑丈さにも弱点はあったようだ

 「まーあとは、お嬢ちゃんの始末ってだけか」

 そうしてシセラへと足を動かす男、それをシセラは体を引きずりながら後ろへと後退する


 ズリ....ズリ....ズリ..、ドンッ!....。


 背中が壁に触れる、これでシセラは逃げ場を失ったというわけだ

 「あ...あぁ..助...けて..、お姉..ちゃん...」

 「そんな震え声で言おうが誰も来ねぇんだよ、バカが!」

 「ぜ、絶対に...来ま..((ドゴッ!!」

 一撃の拳がシセラの腹に当たる、これでも軽めなのだが何せ体が弱いため口から吐血を吐き出し自身の服と男の片腕を汚した

 「チッ!、汚ねぇな....楽にして殺ってやろうと思ったが、思う存分になぶり殺してやんよ」

 その声と共にもう片方の腕がシセラを見下ろすように掲げられる、思わず目を瞑ったシセラだがジャッキーのある一言を思い出した




 ・・・・・・〜・・・・・・〜




 「ねぇ、シセラってさ人は好き?」

 「や、優しい....なら好き..かも」

 「そっか、・ ・ ・ ・ でも世間は優しい人ばかりじゃない、シセラのお母さんの様な人だっている」

 「うん ・ ・ ・ 、怖...いし嫌...。」

 「まぁそうね、....だけどねシセラ、もしアナタが怖い人達に襲われたりしても・・・私がそばに居れなかった時は自分で、自分の力で戦いなさい!」

 「自分の....力..?」

 「そう、アナタにあるスキルで戦うのよ」

 「だ、だけど....人が傷つくのは....、...見たくない」

 「うん。私だって同じ気持ちだもん、....でもアナタにとって大切な人や失いたくない存在があるなら必死で戦いなさい」




 ・・・・・・〜・・・・・・〜



 「......たく...ぃ」

 「あぁッ!、何ぶつぶつ言ってんだよ....たくっ!」

 「死に....たく..ない」

 「おいおい、泣いてんのか嬢ちゃん、まったくこれだからガキってのはなぁ」

 「私は...生きる.....いえ、...生きてみせます!」

 「はいはい、そうですか知るかよ」


 そう言って振り落とされた拳、だがその拳はシセラでも何でもない空間に落とされ空振りした....いや、空振りではなく避けられたの方が正しいか?

 「なっ!、普通に歩くのも大変なガキのくせに!」

 そう言って憤慨する男から少し離れた場所に息を切らし膝が震えながらも壁に触れて立っているシセラがいた

 「ハァ ハァ ハァ ハァ 危な...かった..。」

 「クッソ!、ガキがぁ!」

 男が右腕に力を入れながらシセラに向かって襲いかかってくる、だがシセラは体力を使い果たしており移動すらままならなかった

 「(使いたくは....なかったけど、殺るしか....ない!!)」


 スゥ~......““苦痛ノ解放””ッ!


 そうシセラが叫んだかと思うと同時にシセラを中心とした爆発が起こり、男もろとも部屋の所々を吹き飛ばし全てを爆風と一緒に焼き払ったのであった




 「ハァ ハァ ハァ ハァ も...ぉう、限か....!!..ゲホッ! ゲホッ! ((ドサッ!」

 さっきの爆発で焦げてしまった床にシセラは多量の血を吐きながら倒れた、そんな時に誰かがシセラの目の前に現れた・・・・ 。

Re: スキルワールド ( No.22 )
日時: 2018/04/25 17:07
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)

 
「ゲホッ!....ケホッ! ケホッ!......、ハァ ハァ ハァ ハァ 苦...しい...」


 壁に空いた所々の穴から血を吐いているシセラの血を、より赤々として月明かりが照らしだしていた。しかしそんなシセラの視界の端には赤い目をした者が入り込んできた


 「もぉー大丈夫、シセラ?」

 「お...姉ちゃん........。来て...くれた...の..、....ケホ!ケホ!ケホ!」

 苦しみながらもシセラは頭を声のした方へと上げる。すると幻か本物か、シセラに笑顔を見せている姉のジャッキーの姿が見えた

 「はい、これ飲んでみて」

 「え.....何?、...ソレ?」

 ジャッキーはシセラに青色の液体の入った小瓶を差し出した、だがシセラは小瓶を取ることが不可能なまでに衰弱していた

 「冗談よ冗談♪、少し辛いと思うけど我慢してね」

 そう言ってからジャッキーは妹の体を自身に優しく引き寄せると小瓶の蓋を開けて中の液体を口へと注ぎ入れた

 「グビ!...グビ...グビ...)) んっ! うっ!」

 顔を少し歪めるシセラ、だがジャッキーは苦味に苦しむ妹の顔と小瓶を持った手だけは絶対に緩めなかった

 「もう少しだから、もう少しだからねシセラ」


 グビ!...グビ....グビ.....グビ・・・・。


 「ぷは!...、ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ 」

 「よし!、よく頑張ったわねシセラ♪」

 「どうして....ココに...、お姉ちゃん..が...?」

 そうジャッキーに問いかけるシセラはゆっくりと楽になった体の上半身を起こした

 「それは姉としての...勘..かな?」

 「...勘....」

 「あっ、それより龍紀と友間はどこにいったの?」

 「ゆ、友間さんは...トイレに行ったまま行方不明で.....龍紀さんは...そのぉ〜」

 「おぉ〜い、僕なら無事だよ〜〜」

 ちょうど後ろから龍紀のそんな声が聞こえてきて、シセラとジャッキーは振り返ってみると壁にある窓から今入ってくるところの龍紀の姿があった

 「ふぅ〜、ここが一階の部屋で本当に良かった、でなかったら僕なんて死んでたよ」

 投げ出された時に窓のガラスで切ったのか、いたる所に切り傷ができていた

 「それじゃあ残るのは友間だけって事ね」

 「あ、あの....京八さんは..?」

 「おう!、俺ならここに居るぜ」

 シセラの疑問の後すぐに服がボロボロになった京八が部屋へと入ってきた

 「ジャッキーがいて助かったぜ、危うく敵に捕まるところだったぜ」

 「そ、それは京八が私の足を引っ張ってたから仕方なくよ」

 「たく、そんなお前ぇの所が可愛くねぇんだよ!」

 「ふん!、あんたに可愛いなんて言われたくも思われたくも無いわよ」

 「ま、まぁまあ二人共、まずは友間のことを心配しようよ」

 「そうね、友間って今回の任務が初めてだったしね」

 そんな会話をしていた四人の耳に、好戦的というか物怖じしなそうな女性の声が聞こえてきた

 「その心配はいらないわよ、だって友間なら私の隣にいるもの」

 全員が女性の声がした方を一斉に見る、確かにその隣には高身長の女性と比べて頭一つ分ぐらい小さな友間がいた

 「何者よ!」

 「今助けるぜ黒奈!」

 「ジャキ!! )) 敵なら、撃ち殺す」


 完全な戦闘態勢へと移ってしまったジャッキー・京八・龍紀、その様子を見ていた女性は嬉しそうに片手を少し上げて構えるとスキルを発動しようとした


 「ちょっ!ストップ!! ストォーップ!、何今から戦闘を始める雰囲気になってんの!!?」

 「えっ?、だって敵なんだろ黒奈?」

 「そうさ、私がお前らをボコボコに.....。」

 「お姉ちゃんは黙ってて! そうだ、三人にも状況を説明しなきゃね」

 「「「ハッ!?、友間の“姉”??」」」

Re: スキルワールド ( No.23 )
日時: 2018/04/29 12:28
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 「でっ、美香さんは友間の姉って事?」

 そう聞いてみるジャッキー、友間の姉を改め“黒奈 美香(くろな みか)”は少し笑ってから返事を返した

 「ああそうさ、....だがまぁ少し前に久しぶりに実家に帰ってみたら母親が殺されてたの衝撃的だったな〜」

 軽い感じでそう言ってる美香に対して、友間は母親の事をすっかり忘れていた事に気づいて心で苦笑いを浮かべた

 「そんじゃあよ、黒奈の姉さんが何でここに居んだ?」

 「まぁー、話すとちょっと長くなるわね〜・・・・。」


 [〜 回想シーン 〜]


 美香はストラング基地の廊下を歩いていた、その理由は署長室に向かうためだ

 「ガチャ! )) おーい金森ぃ、呼ばれたから着てやったぞ」

 「美香、そろそろ私のことをボスと呼んでくれないか」

 「何でよ金森?、年下だろうが年上だろうが結局は人間同士でしょ?」

 「まったく、お前のその持論はよく分からんな」


 そうこう言いながら二人は対面する様にソファーに座ると、少しして一人の少女が二人分のお茶を運んできた


 「すまないね、ハルカ」

 「いえ、“金剛おじさん”の手伝いになるのなら嬉しいです」

 その言葉を聞いた途端に美香は飲んでいたお茶を吹き出してしまった

 「ブゥッ!! )) ゲッホ!ゲホ!ゲホ!、金森あんた“金剛おじさん”って呼ばれてるの?」

 「それがどうした?」


 そのボスの回答に美香は笑いが込み上げてきて思わず笑ってしまった


 「いやいや、あんたって今年でいくつよ?」

 「・・・・ろ、68だ....。」

 「ぷっ!....ハッハッハッハッ!!、あんたさぁーそのなりで60代とかって笑えるわね」

 「仕方ないだろ、アビリティアというのは長生きな分だけ容姿の変化が遅いのだから」

 「でも私にとっては、金剛おじさんは金剛おじさんです」

 「まあ人それぞれだから良いけど、あんたが少女趣味だったのかと思ったわよ」


 思い出し笑いなのか美香はまだ少し笑っていたのでボスは一発殴りたくなった、だがここは大人の対応で本題に移ることにした


 「ところで美香、お前への任務がある」

 「んっ?、私に任務とは珍しいわね?」

 「お前への任務の内容は、『今任務を行っているメンバーのサポートとして尾行を行い、時には援助に回る』というものだ」

 「まー任しといて、何かあったら敵とか殲滅しちゃうから」

 「それとだが、お前に兄弟とかはいたりするか?」

 「??、....6つ下に弟がいるけど何か?」

 「いや、何でもない、任務に関しては任せたぞ」


 そう言ってボスは何故か話を終わらせた、疑問が残りながらも美香はソファーから立ち上がると部屋を後にした



 [〜 そして現在へ 〜]



 「.....ってな訳、まさか弟がストラングに所属したなんて思ってもみなかったけど」

 「俺も一緒の心境だよ、お姉ちゃんがどんな仕事してるのか思ってたらストラングで働いてたなんて」

 「まぁーでも意外と楽しいんだよ、今の仕事の方が......よっし!、じゃあ移動するわよ」

 「えっ、お姉ちゃん今!?」

 「だって敵にここが知られるのも時間の問題だし、こんな固い床の場所で眠る気なんて無いわよ?」


 そう言うと部屋を歩き出して外へと向かう美香、全員は痛んだり疲れたりしている体に無理を言って渋々立ち上がった


 「シセラ、車椅子が無いから私が背負ってあげる」

 「あ.....ありが..とう..、...お姉ちゃん...」

 「黒奈ぁ~、ちょっと肩貸してくれ〜」

 「はいはい、分かったよ京八」

 「それじゃあ皆、行こうか」


 全員の準備が終わったのを確認すると、美香はそう言って全員は夜の街中へと美香の背を追って歩き出した

Re: スキルワールド ( No.24 )
日時: 2018/05/02 19:37
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 「ガチャ! )) いらっしゃ〜い、ささっ入って入って」

 そう言って全員を誘導する美香、どうやら彼女は賃貸マンションを借りていたようだ

 「フゥ〜〜、さすがに戦いの後に長距離の移動はきついわねぇ」

 そう言いながらシセラを背から降ろすジャッキー、これを見習って友間も京八を床へと静かに寝かせた


   ビキッ!!!


 「イーテテテテェッ!!、こらゃ明日は全身が筋肉痛だな」


 苦笑いしながら言っている京八、かなり無茶をしていたようだ


 「ふふ、やっぱり京八は無茶が好きだね」

 「いやいや龍紀、俺はあんまり好きじゃねぇぞ」

 「そお?、昔から無茶する事が多かったし無茶してる時の京八って何か楽しそうだし格好良いよ?」

 「た、龍紀、お前は男だろうが、そのセリフは女になった時に言ってくれ」

 「照れてる?」

 「て、照れてねぇ...((ビキ!!」

 「あ〜らら、これはキツそうね京八」

 「そ、そんな事ねぇぞジャッキー」

 そう言って上半身を起き上がらせる京八、だがジャッキーはジトッとした目をして一言呟いた

 「ふ〜ん、そうなんだぁ〜」


    ・ ・ ・ バシンッ!!


 ジャッキーの平手打ちが京八の背中に直撃する、あまりの痛みに声は出さずも身を揺らして痛みの度合いを表していた

 「イ〜チチチチ!、何...すんだ、ジャッキー」

 「無茶する男って今時期はモテないわよ、明日は縛ってでも安静にしてもらうからね」

 「だけど任務があんじゃねぇか」

 「任務なら私達に任せて、ちょうど美香さんも居るんだし」

 「あ〜、その事だが私はやらんぞ」

 「えっ?、どうしてですか?」

 「私は別に助っ人しに現れたんじゃない、あくまでアンタらが任務を遂行できるように道をセッティングするだけだ」

 「じゃあ....。直接的には手は貸さない、という訳でしょうか?」

 「そーゆう事、これも社会勉強だと思って受け入れなさい」

 「そんじゃあ俺も明日...((バシンッ!!)..イーテテテ!!?」

 「だーから、あんたは明日はシセラと留守番よ!」

 「えー待ってくれジャッキー」

 「待たないし聞き入れません」


 そんなこんなで文句を言いながらも京八は、シセラと見張り役の友間の二人+美香と一緒に留守番となりました

Re: スキルワールド ( No.25 )
日時: 2018/05/04 14:28
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 今は夜、まだ夜が明けずも少し明るくなってくる時間帯だった。そんな時間に友間達の眠っているアパートの屋上に動きがあった


 「ここが...、そうか」 

 「ああ。ここに奴らが居るらしい」


 数にしてザッと数十人の武装集団が屋上で待機していた。その手にはアサルトライフルが各自で握られている


 「...1....2....3..、よしッ! 乗り込むぞ!!」

 「うっひょー!、大勢揃って大掛かりですねぇ〜」


 「「「「「「ハッ?」」」」」」


 突如として聞こえてきた女性の声に屋上にいた全員が驚いて声の主へと素早く顔を向けた


 「ヨッ!、今の時間帯って{おはよう}それとも{こんばんは}の方が良い?」

 「き、貴様は!、誰だッ!!」

 「んっ、私はただの友間の姉さ」

 「話し通じてんのか!!?」

 「まーそんな話は隅に置いといて、私らに何か用」

 薄笑いを浮かべて武装集団に聞く美香、背に満月が浮かぶため薄笑いが悪魔の微笑みの様にも見える

 「何の用かって?、それはこれだ!!」

 その瞬間に銃口が一斉に美香に向けられ引き金が引かれる.....が、...美香は動かなかった

 「ハァー、・・・・【逆再生】((パチン!」

 そう言ってから指を鳴らした瞬間、銃口の先から放たれた弾丸は巻き戻しボタンでも押されたかの様に銃口の中へと戻っていた

 「時間が操れるアビリティアか、....なら数で攻めろ!!」

 すると武装集団が大勢で美香へと迫ってくる、だが再び美香は片手構えると一言呟いた


 「・・・・【笑い月】((パチン!」


 指を鳴らしたと同時に背にしていた満月の光が強くなったような気がした、すると次の瞬間に奇妙な光景が広がっていた

 「ワーハハハハハハ!!、ワーハッハッハッハッハッハ!!!」

 その場にいた美香を除いて全員が急に大きな笑い声を挙げて笑い出したのであった

 「どお?、何故か笑っちゃうでしょ」

 そう満足気にその場にいた全員に聞いてみる美香、そして次の手を実行させた

 「次は【巨人の行進】((パチン!」

 今度は指を鳴らした瞬間に美香の右腕がどんどんと大きく肥大化し、像でも掴めそうな程の大きさになった

 「じゃっ、バイバ〜イ♪」

 そう笑顔で最後のお別れを言うと右腕を武装集団へと大振りで横に振り、全員を吹き飛ばしたのだった

 「・・・・んーーー....最近の男って踏ん張りってのが足りないわね〜」

 そんな事を言ってると眠気でも襲ってきたのか美香は大きくアクビをし、天高くに背伸びをする

 「あ〜眠っ、サッサッと夢の続きでも見よっと」


 そんなこんなで美香はベッドを求めて自宅へと戻っていったのでした.....。

Re: スキルワールド ( No.26 )
日時: 2018/06/10 00:33
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 眠っていた友間達は台所からの物音で目が覚めた、ただし例外として京八は爆睡していた


 「おっ 起きたか、ちょうど朝食ができたところだぞ♪」

 そう言って台所から現れた美香の手には大皿に盛られた大盛りの[もやし炒め]と[チンジャオロース]の二品だった

 「こ、これは流石に....。」

 この様な反応を示すジャッキーと打って変わってシセラと龍紀は目をキラキラと輝かせていた、もしかしてこの二人って大食い?

 「お、おーい京八、朝食みたいだよ」

 「ガァー、ガッ......んっ・・・飯か、黒奈?」

 「そうだよ、ほら起きて起きて」

 「ん〜、一晩寝て体が楽になっ....」

   ビキッ!!!

 「うぅぎゃああああああ!!、体が!、体の全身がぁ!!」

 「どうやら、今日は本当に俺とシセラとで留守番みたいだな」

 「絶対に意地でも外へ出てやる」

 そう言って無茶苦茶な歩腹前進で逃走を試みる京八だったが、虚しくもジャッキーの踵落としが腰にヒットし絶叫するだけに終わった

 「こ....、腰が...ぁ・・・」

 「何ごちゃごちゃ言ってんの?、飯よ飯!」

 「き、気の毒そうだけど今日ばかり諦めた方が良いと思うよ」

 そう友間は言った後に腰の痛みで動けない京八に肩を貸して朝食へと向かわせた


※この後のシセラと龍紀の食べっぷりに友間はかなり驚かされました※


 [ 〜 時間は進んで 〜 ]


 「お〜い、大丈夫か京八」

 「ああ黒奈、何とかな」

 今は昼を過ぎた頃だろうか、ジャッキーと龍紀は周辺の安全確認と言って部屋を後にし美香は用事があると言って出掛けたっきりだ

 「あっそうだ京八、昨日のジャッキーとお前に何があったんだ?」

 深い意味は無いが何となく知っておきたかった、そして京八の返事を待った

 「別に言うような事も無かったぞ?」

 「あ...、あの..私も...知りたい....です」

 「まっ、二人がそう言うなら話そうかな」

 そう言って京八は昨日の事について淡々と話を始めたのだった

Re: スキルワールド ( No.27 )
日時: 2018/05/08 18:18
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)





 ここは昨日の夜の歌舞伎町、そんな場所で路地裏を駆け抜ける二人の人物の影があった




 「ちょっと京八!、まだ繋がんないの!?」

 「何やってんだよ友間!、出てくれよ!出てくれ!」


 プルル〜・・・・ プルル〜・・・・

 ガチャッ!


 「あっ やっと出たか、時間がねぇから手短に説明するが...、見つかった!....いや、俺の行動は敵に知られてたらしい、そっちにも敵が来るかもしれ・・・・。」 

 京八の頭上から敵が一人降りたってきた、だが避けるも既に敵に囲まれている事に嫌でも気づかされた

 「チッ!、敵に囲まれた ((ガチャッ!」

 「でっ、伝える事は伝えられたの?


 「あぁ多分な、あとは状況を打開するだけだ、....スキル『発電』ッ!!」

 「あっ京八、ちょっと待って!」

 「んっ、こんな時にトイレか?」

 「バカッ!、そんなんじゃなくて、その....私..、今はスキルが使えないの・・・・・。」

 「あ〜そうだった、お前ってスキル使うのに相手への憎悪が必要だったな」

 そんな感じで京八が頭を掻いていると、数枚の刃物がジャッキーへと飛んできた

 「ヤベ!、危ねッ!!」

 「ガシッ!)) えっ!、きゃッ!」

 間一髪でジャッキーを体へと引き寄せた京八は、心の中で安堵の溜め息を吐いた

 「ちょ! ちょっと京八!、離して恥ずかしいから!」

 「いやいや、そんな事言ってる場合か....!、チッ!」

 敵が一斉に襲いかかってきたが顔は隠しているため見えないが体格の大きさは様々だった。

 京八は舌打ちを鳴らすと筋肉に電気を流して筋力を強化すると、少し嫌がるジャッキーの腹をしっかり掴んで驚異的なスタートダッシュ決めると敵の網から脱出した



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「ハァ、ハァ、ハァ、結構遠くまで逃げたが、敵は撒けたか?」

 そう言って周りを見渡しながら建物の陰へと隠れようとする京八、そんな時にジャッキーが口を開いた

 「あ、あの......そろそろ..離してくれないかな?」

 「お!、おう! 悪ぃ、急いでたからツイな」

 そう言って自身を弁護する京八は頬を赤めたジャッキーをゆっくりと地面へ降ろした

 「ふー....だけど、敵が私達の行動を知ってたなんて驚きね」

 「全くだ、何でだろうな?」

 「もしかしたら、最初から私達がいる事を知ってたのかもね」

 「と、言うとジャッキー?」

 「そうね、だとしたらストラングの基地内から意図的か事故か、どちらかの事情で情報の漏れがあったりして」

 「そりゃ無いだろ?、ストラングは外部からも内部からも充分な対策がされてると思うしな・・・・。」

 そう京八が反論した時だった、突然として京八はジャッキーを抱き締めるとジャッキーの視界から見えない位置から突風が吹き荒れたのだった

 「きゃっ! 何!?、何なの!?」

 「お、落ち着け...ジャッキー....。」

 そう言ったかと思うとジャッキーの体から崩れ落ちる京八、その背には真っ赤な血が見えた

 「あ〜らら、二人まとめて私の『カマイタチ』で体ごと両断しようと思ってたけど一人だけ助かったみたいね」

 そう言って現れたのは長い黒髪の女性だった、手には片方ずつに鎌が握られておりジャッキーと比較すると女性の方が有利に見える

 「あ....ぁあ......あ..」

 ジャッキーは地面に尻もちを着いた、その理由は目の前の女性ではなく京八から流れている血だった

 「血....、血...血..血」

 「?、ん〜恐怖で頭がイッちゃったかな?」

 「血!...血..血..血..血..血..チ..チ..チ・・・・・。」

 急に黙り込んだジャッキー、不思議そうに女性が様子を見ているとバッと顔を女性へと向けた

 「ア...ァハハハハハハハ!、アァーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 何が面白いのか笑い出すジャッキー、そして笑い声が止まると一言だけ言葉を発した


 ......“復讐劇・血”....。


 そして再び笑い出すジャッキー、だが今度はさっきと違うとしたらジャッキーの目が[赤色]から[濃い赤]へと変わった事だ

 「な、何よこの子、頭が本当にイカれたみたいね」

 そう女性は警戒しながら言うと鎌を顔辺りで構えて豹変したジャッキーと対峙した

Re: スキルワールド ( No.28 )
日時: 2018/05/11 22:00
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 最初に動いたのは女性の方だった、壁を蹴って笑っているジャッキーの後ろを取ると後ろ首に鎌を振り切った

 「(早めに決着を着け・・・・・((スカッ!!」

 女性が切ったのは何もない空間だった、地面に着地したと同時に後ろから笑い声がし髪を強く引っ張られ首がのけぞる

 「ヒャァー!ヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!ひゃ!ひゃ!ひゃ!ひゃ!」

 どんどんと引っ張る力が強くなる女性はあまりの力に態勢を崩して背から転ぶ、だが髪を引っ張る手は緩むはずもなかった

 「痛い! 痛い! 痛い! 離して!! もう離してお願い!!」

 「ヒャァー!ヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!ひゃー!ひゃ!ひゃ!ひゃ!ひゃ! ((ガシッ!」

 ジャッキーの空いてる一方の手が女性の肩を掴んだ、そして女性の髪とは正反対の方向へと押し出した

 「ミシ!...ミシ!..)) い...だ....ぃ」



  ボギッ!!!!



 鈍い音がした直後に女性の首が変にグラグラとするようになった、この様子にジャッキーは興味を無くしたのか女性の死体を背後にポイッと投げ捨てた

 「ひャ!ひャ!ひャ!ひャ!ひャ!ひャ!ひャ!....ゲホッ!! ゲホッ!! ゴポッ!!」


 急に咳き込むジャッキー、その口元には血が赤々と見えた。かなり体に無茶がある様だ

 「ひゃ....ひゃ..ひゃ...ひゃ~....。」

 ヨタヨタとした足取りで何処かへと向かおうとするジャッキー、その背後で何かが動いた気がした

 「?、....((ガッ!) うっ! ガ..、ガァアアァ〜〜!!」

 ジャッキーの首はアームロックで締め付けられジャッキーは体を振るって抵抗する、その実行犯というのが・・・・・・。


 「落ち着け!!、元に戻ってくれッ!!」

 それは京八だった、怪我を負いながらも締め付ける手だけは緩めまいと奮起し更に両腕に力が入った

 「ガアァーアァアアァァァァァーーッ!!」

 するとジャッキーの方も両腕から逃れようと倍の力で辺りを蹴散らしながら暴れ回った

 「す、“スキル『発電』”、.....悪く...思うなよ。((バチチチッ!!」


 「うっ!....うぅ~...ぅ.....((ドサッ!」

 力尽きたかの様に倒れ込むジャッキー、京八は気を失っているのを確かめると額を拭って一息着いた

 「フー・・・・、ってか背中が痛ィな」

 そう言って自身の背を擦ると顔を歪めた後にポケットに無理矢理にネジ込んであったコーラを取って一気に喉へと流し込んだ

Re: スキルワールド ( No.29 )
日時: 2018/05/14 17:27
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 ジャッキーは目が覚めた、ガバッと横になっていた体を起こすと自分の起床に気づいた京八が笑みを投げかけてきた

 「ヨッ!、起きたみてぇだな」

 「また...私....、やっちゃたんだ・・・・。」

 「“やった”って何をだよ?」

 「また私は....また....」

 「おーいジャッキー、本当に目ぇ覚めてるか?」

 京八は一人何かを呟いていたジャッキーの両肩を揺すってみた、するとビクッと驚いた感じでジャッキーがこっちを見た

 「私...また..」

 「はいはい、そうゆーの省いて何があったんだ?、お前に」

 「・・・・・話すと長くなるかもだけど、2年ぐらい前に私の初めての任務があったの...。」

 「ほいほい、そんでジャッキー?」

 「始めは私も嬉しかったわよ、でも敵の数が情報を遥かに越えた3000人だったの」

 「ストラングが情報を間違えるなんて珍しいな?」

 「ええそうね、私も最初はそう思ってたけどそうも言ってられなくなったのよね」

 「と、言うと?」

 「敵に囲まれた、しかも3000人という数にね、まあ当然ながら私達の方が不利でほぼ壊滅の状況まで追い込まれたわ」

 「それなのに生きてたのか?」

 「ええ、一人の敵を倒した時だった。私の顔に返り血が飛び散ったの、.....そこから後の記憶はないわ」

 「で、生きてたと、じゃあ3000人もいた敵はどうなったんだ?」

 「よくは分からないんだけど、気がついた時には大勢の死体の山に埋もれてた」

 「じゃあ俺ってヤバイ状態のジャッキーを相手にしてたのかよ」

 京八は先程のことを振り返って冷や汗が垂れた、だが冷や汗の次に背中からの激痛が襲ってきて顔を歪めた

 「いててて、まだ背中が痛ェな」

 「あっ 今思ったら、よくアンタって生きてたわね」

 「おう、ただあれは少し気絶してたんだよ、それとも俺が死んだと思ったか?」

 「まっ、バカは無駄に生命力が強いって言うから思ってなかったわよ」

 「何だよソレ!?、俺ってそんなにバカに見えるか?」

 「まあそうね、特にバカの最上級の位置にいそうね」

 「ハァ〜、お前との口喧嘩は疲れるからやめとくぜ」

 そう言って京八は夜空に向かって背伸びした、そしてその後に勢い良く立ち上がった

 「まっ、黒奈達の所へでも戻ろうぜ....、いや待てよアイツらの所にも....敵が来てるんじゃねぇか?」

 それを聞いたとたんにジャッキーは弾かれたかのように立ち上がった、そしてこう言った

 「シセラがいるのよ!、ほら京八!早くシセラの所へ急ぐわよ!」

 そう言って無我無中で走り出すジャッキー、その様子に溜め息を吐いた京八は一言呟いてからジャッキーを追って走り出した

 「今日はそう簡単には眠れそうにねぇな」

Re: スキルワールド ( No.30 )
日時: 2018/05/19 08:53
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)

 ここは場所が戻って京八、シセラ、友間のいる部屋の中、そして京八の話がちょうど終わったところだった


 「......ってな訳だ、そんでこの後がお前らと合流して話は終わりだ」

 「は、はは、ジャッキーって恐い一面もあるんだね」

 引き笑い気味にそう言う友間、それと引き替えにシセラは落ち着いていた

 「お姉ちゃんに......血は見せちゃ...。ダメ...だね・・・・・」

 「ああ、俺もそれには同感だ。黒奈もシセラも気をつけような」

 そんな時だった、京八の背後にあった玄関の扉が開いたのでシセラを除いた全員がビクッとしたのだが、どうやらジャッキーではなかった

 「あんたは何者だ?、いちょう鍵は閉めてたんだが....?」

 そうゆう風に警戒しながら質問する京八の目線の先には黄色いフードを目深に被った人物が無言で立っていた

 「・・・・・。私は.......いや、それは後にしよう」

 発せられた声は可愛らしい少女の声だった、だがどこか人を油断させないオーラを身に纏っていた

 「誰だが知らねぇが用があるなら座ってしようぜ」

 そう言いながら顔の分からない少女にゆっくりと近づく京八、そして少女の肩を掴もうとした瞬間だった

 シュッ! ドガッ!!

 一発の拳が刹那の如く速度で京八の体を突いて後ろへ吹き飛ばした、その動きはまさしく達人の域だった

 「い、てててて....、急に何しやがんだよ!!」

 だが、その言葉が聞こえないかの様に襲いかかる謎の少女、しかし今度のターゲットは友間だった

 「えっ!俺!?、『性質<鉄>』」

 周りの被害を考えて<炎>を避けて<鉄>にしてみたが、これが吉となるのか凶となるのかは分からない?

 ブンッ! スカッ!!

 ブン!ブン! スカツ!!

 謎の少女はフードで顔が隠れてるのにも関わらずに次々と友間の攻撃を避ける、まるで全身に目でもあるかの様だ

 「......私、退屈」

 その少女から聞いた瞬間に友間のヤル気スイッチが<オン>になった、そして友間の動きも変わった

 シュッ!、シュッ!シュッ!

 次の攻撃に移るまでの間隔が狭まった、友間は鉄の重さを活かして次々と遠心力のかかった拳を放った

 シュッ!シュッ!シュッ!、......パシンッ!!


 少女の体には当たりはしなかった、だけどフードに拳がカスッたことでフードが後ろになびいて少女の顔が露になった

 「.......へっ、....(カァ~」

 少女の顔は短い黒髪に整った顔立ちで可愛いと友間自身そう思った、すると少女はすぐに頬を赤めて床に小さくなって何かをブツブツと言い出した

 「顔見られた、顔見られた、顔見られた、......。」

 被り直したフードの布を強く握る様子の少女、友間は何か悪いことをしちゃったかと心配になった

 「あ、あの、大丈じょ....。」

 「はいはいストップ友間、ここは私が説明するわ」

 突然として聞こえたジャッキーの声に顔を玄関へと向ける友間、そこにはジャッキーと龍紀がいたのだった

 「おうジャッキーお帰り」

 「はいはい京八ただいま、ところで話を戻して説明しなきゃね」

 そう言ってジャッキーは小さくなっている謎の少女の頭にフードを透して触れた

Re: スキルワールド ( No.31 )
日時: 2018/05/21 13:28
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)




 「はい!。じゃあ本題に入るけど、まずコイツの名前は“坂下 灯利(さかした ともり)”、ストラングでは初心者の戦術訓練をやってるの」

 「ど、どうも.....。」

 もう灯利には最初のような雰囲気は無くなっていて逆に小さくなってシセラのようにジャッキーの横で大人しくなっていた

 「あー、いつもは“こんな”じゃないんだけど.....、実は男が全般的に苦手なのよね」

 「??、おいおいジャッキー、俺を殴った時は全然そんな感じなかったぞ」

 「それはフードで目を隠してたからよ京八、でもホントは極度って言って良いほどに男が苦手らしいのよね」

 「は、はい、昔から男の人には慣れなくて、私自身そろそろ慣れたいんだけどね」


 そう言ってチラッとフードから部屋の男子勢を見てみた灯利だが、また頬が赤くなってフードで再び顔を覆ってしまった


 「ふ〜ん、ならさ京八や友間は置いといて僕はどうなの?」

 そう龍紀は自身の顔を指差しながらジャッキーに聞いてみた、するとジャッキーの答える前に灯利から返答が返ってきた

 「お、男の子だと意識....しなければ...多分ギリギリ....、大丈夫かと・・・・。」

 「へ〜そうなんだ・・・・・ならさ♪、僕のこと男の子じゃなく女の子だと思って接してね」

 「は、はい頑張って....みます.....。」

 「おっ そうだジャッキー、そういえば俺らってストラングに援助頼んでたよな、その助っ人が灯利なのか?」

 「い、いえ京八さん....、私以外に他にも人がいたんですが....道に迷ってしまったみたいで・・・・」

 その時だった、ちょうど玄関のドアが勢い良く開いて二人の人物が息を途切らしながら現れた

 「おいおい、鍵付きの玄関ドアの存在意義はドコ行っちまったんだ?」

 そんな京八の疑問と共に二人の人物は部屋へと入ってきた

Re: スキルワールド ( No.32 )
日時: 2018/05/24 18:26
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


「ふー、ワリィワリィ、初めて来る場所だから二人して迷っちまったぜ」

 笑いながら言っているのは友間が見覚えある人物、そう氷飴 零(ひあめ れい)だ。そしてその横には身長がかなり低くて服装が全身を赤系で統一した少女がいた

 「私は東城 蘇芳(とうじょう すおう)、ただのスキルホルダーだよ」

 最後の蘇芳の言葉に皆がハテナマークを浮かべたが、これで助っ人合わせて8人が揃った

 「でっ、早速だけど今回の任務に関しては何個か壁があるわ」

 そう言って言葉を止めるジャッキー、全員の視線が集まったのを確認すると言葉の続きを話し出した

 「まず第1に敵の親玉が姿を現さないこと、第2に敵の力量が今だ不明、そして第3にアジトの場所が分からないって事よ」

 「じゃあ全く状況は進まずじまいってこと、ジャッキー?」

 そう蘇芳に聞かれジャッキーは苦笑いを浮かべてから渋々に返事を返した

 「まあ、そうね.....でも、そろそろ私達からも反撃しないとね」

 「じゃあヤルのかジャッキー?」

 「えぇ京八、いちょう作戦はあるわ」

 「「「「「「「作戦....?」」」」」」」

 ジャッキーを除いた全員から疑問の一声が飛び出してきた、そして再び全員の視線がジャッキーに集まった


 「そっ、簡単に言っちゃえば囮作戦ね」

 「やるのは良いが・・・・・、誰が囮をやるんだ?」

 「良い質問ね零、それに関してはココにいる友間にやってもらうわ」



 「・・・・・・・、エッ!俺がやるの!?」

 「大丈夫よ、遠くでは龍紀に援護射撃させるし私達だって少し遠くから様子を伺ってるわ」

 「おいおい待てジャッキー!、黒奈にやらせるんなら俺が・・・・。」

 「アンタは今は重症人でしょ! ((バシンッ!!」

 ジャッキーは不服を申してきた京八の背中を叩いて黙らせると、痛みで動めく京八を無視して友間へと目を向けた

 「友間、アンタは私が死んでも守るから安心して囮になって...、良い?」

 「ま、待てジャッキー俺はまだ....((バシンッ!!) ぎぃやぁぁああ!!!」

 「だ、大丈...夫.....わ、私も絶対....友間さん....。..守る...」

 「ほら、シセラもそう言ってるんだからリラックスよ、リラックス」

 「わ、分かった・・・・・俺、頑張ってみる」



 覚悟を決めた友間だが頭のドコかでは何故か嫌な予感がしてきたが、それを無理に頭から消すと大きな溜め息が一息出てきたのだった

Re: スキルワールド ( No.33 )
日時: 2018/05/27 13:45
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 ここは夕日の光が差し込むカフェの店内、その中に二人の人物が座っていた


 「でっアンタ、最近の仕事は順調?」

 そう言ったの朝から出掛けたっきりの友間の姉を改めて黒奈 美香(くろな みか)がいた、そして向かい側には一人の老けた銀髪の男が座っていた


 「仕事の方は順調だ、前のような命を落とす危険もないからな」

 そう答えた男は黒のリクルートスーツに黒の革靴を着けていてカフェの雰囲気に合わない、それと一番に目立つと言ったら男の右目にある眼帯だろう

 「ハ!ハ!ハ!ハ!ハ!、順調そうで良かったよ。ところでアンタの弟子が今回の任務でココに来てるんだが少し様子を見に来ないか?」

 「弟子...?、あぁ龍紀の事か・・・・・だが止めておこう、あまり気が乗らん」

 「え〜〜何で何でーーー?、せっかく珍しくの師弟の再開だと思ったのにぃ〜」

 「そうただをごねるな美香、俺だって珍しく会いたいという心境ではあるが....。」

 「あるが...?、何?」

 「わざわざ敵のいる街で再開する必要など全く無いからな」

 それを聞いた瞬間に美香は思わず笑い出していた、すると男は疑問の表情を浮かべた

 「ハハハハハ、やっぱアンタって変わったよ。昔の恐れられた最強のスナイパーは敵を警戒して弟子にも会いに行けなくなってんだもん」

 「・・・・・・変わらぬ人間など居ないさ、それに警戒を怠ったから俺はこの右目を失った」

 そう言い終わると男は席を立って美香との会話を打ち切ると美香を背を見せて歩き始めた。だが男の左脚の動きが変だった、これもまた自身の油断による代償で失った物の一つと言える

 「おーいちょっと待った!」

 「んっ、何だ?」

 「会計のこと何だけど〜....」

 「・・・・・ハァ~、分かった俺が全て払おう」

 「ヤッター!!、じゃあ金森には私から『友間たちは今回の任務を成功させる』って伝えといて」

 「分かった伝えておこう。なら俺からもお前にお願いだ、俺が来ていたことは龍紀には内緒にしていてくれ」

 「はいはい分かったわよ、じゃあね....」


 “ウラジミール”



 [〜 場所は変わって 〜]


 ここは夕日が沈んで夜になったばかりの広い公園の一角だ、その場所に一人の少年。つまり友間がいた

 「ふー寒っ!、もっと厚着した方が良かったな」


 プルルル〜 プルルル〜


 友間のスマホから着信音が鳴った、一瞬友間は驚いたが急いで電話に出てみたところ掛けてきたのはジャッキーだった

 『もしもし友間、こっちはスタンバイ完了よ。700m離れた建物からは龍紀が周辺を警戒にあたってるわ、それと私達も100mもしない場所から辺りを警戒しとくわね』

 そうジャッキーは言って電話を切ろうとした時だった、急に誰かにスマホを引ったくられた

 『もしもし黒奈、俺もいるから安心し ((バシンッ!!)...ぎぃやあぁああああ!!』

 『たく、やっぱり京八は縛ってでも置いてくるんだったわ。またね友間(プツッ!)』

 通話が終わり友間はスマホを耳から下へ降ろした、すると後ろから視線を感じて振り向くと巨大な白髪の大男が友間の目の前にいたのであった

Re: スキルワールド ( No.34 )
日時: 2018/05/30 21:54
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 「!! ・・・・・・・。」

 友間は目を見開いて目の前の人物を見ていた、多分だが男の身長はゆうに2m以上はある感じで体格も大柄だった


 プルルル〜 プルルル〜


 「ガチャ!)) あ、もしもし」

 『友間!、逃げてッ!!』

 「えっ あっ、分かっ((ドゴッ!!」


 友間の体は高く飛び上がり背中から地面に着地する、まだジャッキーと繋がっているスマホを強く握り直すと急いで痛みに耐えながら立ち上がった

 「もしもしジャッキー、まだ繋がってる?」

 『今助けにッ! ウッ!・・・・・、((ツー ツー 』

 「えっ!ちょ!ジャッキー、もしもーし!」

 友間は仕方なくスマホをポケットにしまうと顔を上げた、そこには男の体が目と鼻の先にあった

 「俺らに何の用だ!!」

 「んっ?、ただ目障りな邪魔者の処理だ。だが安心しろ今回はただの見定めだ、だがもう一つの用事があるんだがそろそろで終わる頃だろう」

 すると友間の耳元に誰かの叫び声が聞こえてきた、声のした方を見てみるとその辺り一帯に紫色をした煙が充満していた。すると煙の中から誰か出てきた、そしてその脇には見覚えのある少女が力なく抱えられていた

 「シセラッ!!、このやろッ!!」

 「待て、黒奈 友間 ((ガシッ! 」

 「離せッ!、性質<炎>」

 全身から炎が吹き出し体の全てを覆い尽くすと男に掴まれた手を無理に振りほどいてシセラへと飛び出した


 「喰らえーーーーーッ!!!」


 ドガンッ!!!


 炎と怒りが込められた拳は煙から現れた男の顔に直撃した

 「イテェな、ガキが!」

 ほぼ無傷の状態で男は言ったかと思うと友間の首に男の手が伸びてきた、そしてもう一方の拳が構えられた

 「殴るってのは、こうだッ!」


 バキンッ!!


 拳は友間の頬に当たると骨を貫き、顔の全てを粉々に破壊した。頭の部分が消えたことで炎が燃えてるだけの体は力無く地面へと倒れ込んだ


 「チッ! 雑魚だな、どいつもコイツも弱すぎだ!」

 「まあまあ良いじゃないか、それよりボスから頼まれていた『誰かを人質として連れて来い』っていう依頼は必要はなかったみたいだね」

 「ああ、そうらしいな。っていうか!、コイツはお前が運べ!」

 「はいはい、ホント君は人使いが荒い人だね」

 「ウルセェな!、オメェも俺のスキルで眠らしてやろうか!!、しかも永遠にナァッ!」

 「分かったよ、全くこれだから君を慕ってくれる部下ができないんだよ」


 そんなこんなと会話をする大男と気性の荒い男の二人組はそうこう言いつつシセラを連れて何処かへと消えて行ってしまった・・・・・。


Re: スキルワールド ( No.35 )
日時: 2018/06/02 10:08
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 友間は流されていた、冷たくて奥の見えないぐらい暗い空間を浮遊するように上下左右としながら進んでいた


 「(体が...重い、俺って死ぬの...?..)」

 周りの冷気と上下左右する流れの影響なのか?、はたまた頭を破壊されたのが原因なのか?。だがここでは友間の首から上にちゃんと頭が付いていた


 「さ、寒い....ところで..ココ、何処..?...。」

 段々と友間には徐々に強くなる眠気が襲ってきた。だが少しすると友間の進む方向から少女の声が響いてきた

 (「...な...いで!..、ま...あ.....には...る...こ..が...る!」)

 「ん〜、何...この声..?」

 どんどんと進むにつれて少女の声が大きくなっていく。すると不意に友間は光を見た、強い光を放っている野球ボール程度の大きさの結晶が眩しく目に映った

 「死なないで!、まだアナタには....」


 “やる事がある!”


 今度はハッキリと聞こえてきた、そして友間は自然と結晶に触れようと手を伸ばした。だが次の瞬間.....。

 「あ...あれ、ココって....。」

 友間は仰向けの状態で星の見えない夜空へと手を伸ばしていた。

 「俺って確か....。」 


 体は今だにスキルの影響で燃えていた、次に自身の顔に触れて存在する事を確かめた後でゆっくりと立ち上がった

 「俺は何で生きて・・・・。まぁ、まずは“スキル解除”っと」

 すると今まで燃え盛っていた体から炎の消え失せると火傷一つ無い肌が現れた

 「皆はどうしてる.....。シセラッ!!」

 急に思い出したかのように慌てる友間、だがまだ冷静な方の思考が働き仲間を捜すことにした

 「えーと...、皆ってドコに・・・・。あっ、居た」

 意外とあっさりと言うか友間からして右の方に地面に倒れている皆が(龍紀を除いて)いた


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「グー、グー、グー・・・・。」

 心地良さそうに寝ている京八がいた、すると誰かが京八の体を揺すった

 「ねぇ京八・・・・・、ねぇ!ってば」

 その声の主は先程に起きたジャッキーだった。話を戻して中々起きてくれない京八に苛立ってきたのかジャッキーの背後から赤黒いオーラが出始めたのだった

 「サッサッと・・・・・、起きんかいッ!!」

 バシンッ!!

 「ぎぃやぁぁぁああああッ!!」

 「おはよ京八」

 「何が『おはよ』だよジャッキー」

 激痛が走っている背中を抱えながら力無く立ち上がる京八、その様子は同情の目線で見てあげたいくらいだ

 「大丈夫?、京八?」

 「ギリギリだけどな」

 そんな風な会話をする二人の周りでは友間が次々と起こして回っていた

 「ジャッキー!、京八ァ〜!、皆起こし終わったよー!」

 「ありがと友間、ところでシセラは何処にいるの?」

 キョロキョロと周りを見回すジャッキー、その様子を見て友間は罪悪感を感じたが意を決して口を開いた

 「ジャッキー.....、実は・・・・。」

Re: スキルワールド ( No.36 )
日時: 2018/06/05 18:49
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 ガチャ!


 「ヤッホー!、ただいまァ〜!」


 夜遅くに美香は帰ってきた、だが家の中では夜中にも関わらずジャッキーの怒号が聞こえてきた

 「京八! 退いてッ!、私はシセラを助けたいの!!」

 「いーや俺は退かねぇ、俺はお前を無理にでも行かせねぇぜ」

 「待て待て待て、一体何があったんだ?」

 「おっ 美香さん、何とかジャッキーを落ち着かせてくれねぇか?」

 「お安い御用さ、((パチンッ!」

 「私は・・・・・・・・ッ! ((バタ!) スー スー スー 」

 「それで、何があったの?」


 [時間は進んで]


 「ふ〜ん、シセラが誘拐されたと....、これはまた面倒な事になったわねぇ〜」

 そう言いつつ片手に持っているビール缶の中身を喉へと美香は流し入れる、そんな時だった...!...。


 ヒュン! バリンッ! ドスッ!!


 窓ガラスを何かが貫いて美香のすぐ隣の床へと突き刺さった、だが美香は落ち着いた様子で呟いた

 「矢で手紙を届けるなんて面白いことするわね」

 躊躇も何も無しに床に刺さった矢から手紙を取って美香は読み始めた、無言で進めていると動きが止まり部屋の全員に見えるよう紙を高く掲げた

 『2日後の午前1時に所定の位置で待っている、連れて来る人数には制限はしない    by.土神』


 それを見た全員はジャッキーを除いて手紙の下に書かれてある地図を見た

 「お姉ちゃん、これって罠だと思う?」

 「んっ、さーね友間、行ってみたら分かるんじゃないの」

 そう素っ気ない言葉を言い残すと一つ欠伸をして美香は床に横になって眠ってしまった、残された全員はお互いの目を見て考えているようだ

 「まっ、今日のところは寝ようぜ。ジャッキーが起きた時にでも考えれば良いさ」

 この状況でも意外と落ち着いていた京八は美香を真似て床に横になると寝てしまった

 「それも、そうだね」

 龍紀の一言を最後に皆は少し冷たい床に横になると疲れてたのか意識はもう既に夢の中へと入って行っていた

Re: スキルワールド ( No.37 )
日時: 2018/06/08 20:20
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 次の朝、友間は蘇芳の叫び声で目が覚めた。何が何だか分からずに慌てて体を起こすと蘇芳が半泣きになりながら下腹部を抑えていた


 「えっ!ちょっ!蘇芳っ!、大丈夫!?」

 「だ、大丈夫ですよ友間さん。た、ただいつもの生理痛の時期が来ちゃった様でし...!、アーイィタタタタタタァ〜!!」

 「ほ、ホントに大丈夫なの??」

 「友間、京八、濡れたタオルを取って来てちょうだい」

 ちょうど起きたらしい美香は冷静に二人へと指示を出した、もちろん二人はそれに従った



 [〜 時間は少し進み 〜]


 「フ〜、ちょっと楽になりました....」

 力を出し尽くしたかのように床に横になって安静にしている蘇芳、すると先程に目覚めたジャッキーが話しかけてきた

 「まったく~、蘇芳の生理痛っていつも酷いわよね」

 「ご、ごめん....、でも昔からの体質みたいだから仕方ないのか...ウッ!」

 「まあ、今日のところは私が面倒を見よう。ジャッキー達は各自で自由行動をして時間を潰すと良い」

 そう言ってから蘇芳の体調を確かめる美香、そんなこんなで今日のところは皆それぞれで行動する事になった



 [〜 時間は進んで 〜]



 「ん〜〜・・・・・・、ハァ〜」

 「おいおいジャッキー、シセラの事は心配だとは思うが心配してるだけじゃ何も変わんねぇぜ」

 そんな風に会話する京八とジャッキー、他の皆とは別行動らしく二人だけで人の波の中を進んでいる

 「そんな事は私だって分かってるわよ、でも勝手にシセラのことを考えちゃうのよ....。」

 「でもジャッキーは強ぇだろ?、そこら辺の敵なんてチャッチャッと蹴散らそうぜ」

 「だって、シセラはこの世で私のただ一人の肉親よ!。そんな妹を守れない私に何が守れるって言うのッ!?」

 「それなら俺が守ってやるさ!。・・・・まぁ、今日のところは明日のために支度でも整えようぜ」


 そう言って京八は照れ隠しなのか人混みの中をどんどんと進んでいくが、ジャッキーはその背を追いながら一言呟いた

 「わ、私はアンタに守られるぐらい弱くないわよ!!」

 「おっ、元気が出てきたじゃねぇかよ」

 「げ、元気なんか出てきてないわよ」


 そんな感じで話す京八とジャッキーを見る限り意外と大丈夫だな、という感じに思えた

Re: スキルワールド ( No.38 )
日時: 2018/06/11 18:04
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


ここは昼間の人通りの多い通り、そこでは龍紀・灯利・零の歩く姿が見られたが友間の姿だけが見えなかった


 「あ..、あの龍紀さん....」

 「さん付けじゃなくて『龍紀』で良いよ♪、その方が灯利のこと呼びやすいし」

 「そ、そうですか....分かりました....、と、ところで友間さんは何処へ行ってしまったのでしょうか?」

 まだ少し龍紀に慣れていないのか言葉に多少かかり気味に聞いてみる灯利、すると少し考えてから龍紀はその問いに答えた

 「まあ、友間は友間なりの考えや行動があるんだよ...。それに僕達が考えてても何にもならないしね」

 「まーそうだな龍紀、それに友間には何か凄ぇのも眠ってそうだしな」

 「へぇ〜君が人を高く評価するなんて珍しいね。ところで友間に眠ってそうなのって?」

 「勘だよ勘、ただそんだけだ」

 そんな感じで会話をしている三人。その三人の背後には何かが近づいて来ていた

 「んっ!、・・・・・僕達に何か用ですか....」



 [〜 場所は変わって 〜]



 「んー・・・、ここなら大丈夫かな?」

 辺りを見回しながら言う友間、そんな風にしている友間がいるのは廃墟となった雑居ビルの中だった


 「フーーー・・・・、よしっ! やるか!、性質<コンクリート>」


 すると体がコンクリートとなり友間はビルの壁へと手を触れてから目を瞑る、そして片手と壁とを融合させて廃墟ビルの全体に意識を張り巡らせてみる

 「・・・・・。」

 全てへ張り巡らせた時、融合した片手からビルに念じた

 「(.....、壊れろッ!!)」

 すると所々から物音が消えて天井の一部が次々と落ちてくる、次に崩壊を止めると別のことを念じた

 「(巨大な手になれ!!)」

 今度もまた先程と同じように少しの間の後に友間からして右手側に巨大なコンクリート製の片腕が出現する....が、力尽きたのか融合していた方の片手が壁から離れて友間は床へと倒れ込んだ


 「ハァ ハァ ハァ やっぱり建物の全域に意識を張り巡らせるのは疲れるなぁ〜」


 かなり疲れたのように荒く息をする友間、だが何かを確信したかのように微笑むと立ち上がった

 「え〜と次は、性質<炎>ッ!!」

 次に炎へと変身すると腰を少し屈めて拳を構える、そして今度は思いっきり壁を殴ると壁が軽く壊れた

 「・・・やっぱり当たってた」

 壁を殴った拳を見つめる友間、そして全てを確信したかの様に一言呟いた


 「これなら、救えるかも....。」


Re: スキルワールド ( No.39 )
日時: 2018/06/13 21:42
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 友間は寝ていた、疲れてしまったのか廃墟ビルの廊下で夢を見ながら眠っていた



 「んー・・・・、前もこんな展開だったっけ?」

 そう言いながら寒くて何も見えない空間を上下左右に浮遊している感覚があった

 「・・・・・でっ、俺に何の用?」

 あまりの目の前の眩しさに目を細める友間、そんな友間の目の前には一度だけ見たことがある結晶らしき物体があった

 (「あっ、スミマセン呼び出してしまって。ですが一つだけ伝えたい事がありまして....。」)

 「え〜と....、まぁまず話を聞かせて下さい」

 (「実は私は、こんな姿なのですがアナタ様のスキルの化身でございます.....」)

 「 ・ ・ ・ えッ!?、俺のスキル? スキルの化身??」

 (「えーとあの、話の続きをよろしいでしょうか?」)

 「え、あっスミマセン、続きをお願いします」

 (「先程に話した通り、私はアナタ様のスキルの化身のような存在であり、もう一人のアナタ様のような立場です」)

 「よく意味が分からないのですがぁ.....。」

 (「そうですか.....なら、この姿はどうでしょうか、性質<炎>」)


 すると結晶は燃え上がり徐々に形が変化していく、そして最終的には炎に包まれた少女の姿へと変化していた


 「も、もしかして俺が吸収した炎なの?」

 (「はい!、面と向かって会うのは初めてでしたね。」)

 そして炎の顔が揺らぎ少女が微笑んだのが直感的に分かった、次に友間の思考に疑問が浮かんできた

 「聞きたいんだけど君が炎の化身って言うならさ、他の性質の化身とかもいるの?」

 (「はい、おられますよ。....ですが、今は眠っておられます.....。」)

 「?、じゃあ君は何で起きてるの?」

 (「それは、その....。アナタ様が...いえ、友間様がお頭を破損された時に炎の性質を使ってなされたのが原因かと思われます。」)

 そう丁寧に答えてくれた少女、すると友間はもう一つ疑問が浮かんできた

 「それとさ、俺って頭を粉砕されたのに何で生きてたの?」

 (「簡単に説明させて頂くと、炎というのは叩かれようが斬られようが炎なので何度でも同じ姿に戻ることができ、炎の源である薪...つまり友間様が生きている限りで何度でも再生いたします」)

 「えーと、つまり俺はスキルを使ってる最中は死なないって事?」

 (「はい、つまり何らかの性質に変化している時だけは体の全てが消滅しない限りで元に戻ることが可能です」)

 「ん〜・・・あっ、じゃあ石とか木とかに変化してても再生するの?」

 (「はい、そうなりますね」)

 少女から話を聞いていて友間の心境は色々と混乱していたが、体が後ろに引っ張られるような感覚で我へと返った


 (「時間がないようですね...。では最後に私から渡したいモノがあります」
)


 そう言うと少女の燃え盛っている手が友間の手に触れて友間の体が一気に燃え出した、けど熱くはなく温かった

 (「では、さようなら。友間様」)

 どんどんと視界が炎で覆われていく、しかし友間は視界に入ってくる炎を払うように頭を振ると少女に聞いた

 「聞き忘れてたけど!、君の名前は何て言うの!?」

 だが意外にも燃えている少女の顔から現れたのは驚きの表情だった

 (「あっ!失礼しました、私には名前などないので答えように困りまして....。」)

 「なら俺が名前を付けるよ、えーとちょっと待ってね・・・・・。」

 そんな友間を焦らすかの如く友間の体は下半身から段々と燃え消えいく、すると思い付いたのように友間は声を挙げた

 「えん!、君の名前は炎!。あっ、でも女の子に対して失礼かもしれ・・・・」

 (「私.....いえ、エンは名前を頂き嬉しいです♪」

 「それなら良かっ・・・・・。」


 ホッとしたのも束の間、友間の体は一気に灰と化してエンの前から姿を消してしまった


 (「・・・・・・。頑張って下さいね、友間様」)

Re: スキルワールド ( No.40 )
日時: 2018/08/30 18:40
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 友間は目が覚めた、そして自身の体を見てみると炎が赤々と燃えていた


 「?、......あれは夢?、それとも現実?」

 考えてても仕方ないのでスキルを解除する、そして立ち上がろうと床から腰を持ち上げた時だった


 グラッ  ダンッ!


 「・・・・、やっぱり疲れてるな。よこしょッと」

 立ち上がるとまずは辺りを見回してみる、だが何処を見ても来た時と同じで乱雑な風景だった。そこで部屋にある窓から外を覗いてみたところ何と月が高々と昇った真夜中だった

 「ヤッベッ!、早く帰んないと皆に怒られるかも!」

 そう言って忙しげにその場を去っていく友間。だが、そんな友間とは別の意味で慌てている場所があった



 [〜 場所は変わって 〜]



 「.....ん、・・・・ここって...?」

 今ちょうど起きたらしき人物はシセラだった、するとシセラの耳に男性の声が聞こえてきた

 「ハ!ハ!ハ!ハ!ハァー!!、お目覚めかな? お嬢さァーん」

 「・・・・・・、??」


 一応説明しておくが起きたシセラがいたのは場所が分からない真夜中の倉庫の中、そしてそんなシセラは椅子に座っており目の前には変人の如く変人なピエロ風の男がいた


 「・・・・・・、??」

 「・・・・・・、あっ、あの〜」

 「・・・・・え〜と....、はい」

 「意見というかぁ、俺の衣装に対してノーリアクションかい?」

 「あっ...。私...周りと比べて....反応が鈍い.....そうです...。」

 「あ、あ〜とそうなの・・・・・。」

 「はい、・・・・・。」


 変な空気と一緒に少しの間の沈黙タイムが開始された、だが沈黙タイムに耐えられなかったのか謎の男がシセラに話しかけた

 「あのォ〜、僕の素性に対してもノーコメント?」

 「え、え〜と.....誰、...ですか?」

 「あ、その俺は、君を拐った奴の親玉やってるんだけどぉー・・・・・。」


 シセラの静かというか消極的な対応に困惑してるのか頭を掻いた、そして決心を決めたのか変なピエロ衣装を無理矢理に破り脱ぐと堂々と宣言した

 「俺の名前はお前らがお探しの土神、そう土神 新次(どがみ しんじ)だ!。あっ、それと28歳独身で本業で不動産やってて副業で闇商売やってまぁーす」

 「・・・・・そうですか....。」

 「(ちょい待ち、こんな感じの子供に対してどう対応すれば良いのやら)」

 かなり困惑している様子の土神、すると初めてシセラから話しかけてきた

 「えーと....、あの...土神..さん...。」

 「おっ!、何々!?」

 「服...。寒く....ない..ですか..?」

 「へっ ・ ・ ・ ・ 。」

 土神は自分の体の様子を見るために下を見てみた、そして自身が着ていたのが変なピエロみたい衣装だけだったのを思い出した

 「えーと、まず一言謝罪をさせて頂きます。ホンマ失礼しましたッ!!」


 かなり威厳も何も無い土神。本当に悪の組織の親玉なのか?、そして友間たちの結末はどうなってしまうのでしょうかね?

Re: スキルワールド ( No.41 )
日時: 2018/06/17 09:26
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)




 「最近さぁ、何でか社員の反応が冷たくてねぇ〜。しかも今日に限って何故か全員一日休暇をとっちゃってるしさぁ〜」

 「・・・・・色々と....苦労...してます..ね....。」

 「えっ!、分かってくれる!その気持ち!」


 色々と流れが掴みにくいと思うので説明させて頂くが、何でか土神の相談相手にシセラがさせられているという状況である


 「しかもさぁ、裏の方の仕事がとぉーても難しいし何か嫌になっちゃうんだよねぇ〜」

 「土神さんは....裏では...何をして...いるんです....か..」

 「んっ、あぁちょっと待ってて。どっこらせ」

 「・・・・・?」

 急に立ち上がり倉庫の中から何かを取り出そうとする土神、その様子をシセラは疑問に思いながら見ていると...。

 「おっ!、あった♪あった♪」


 そう言って土神が手に持っているのは青色をした液体の入った注射器だった、するとシセラの胃がキリキリと痛みだしシセラの脳に危険信号を送っていた

 「そ...、ソレ...何で.....すか...?」

 「んっ、コレかい?。コレは『トリガー』って呼ばれるいるモノだよ、いわゆるスキル専用のドーピング剤だね」


 この土神の一言により更に胃の痛みが増して注射器の中の液体が危険だと告げていた

 「この液体はスキル持つ者、つまり俺や君といった“アビリティア”だけに過剰なまでの増強反応を起こして強くする、だから裏の世界にある闘技場では『トリガー』を摂取させた状態で戦わせたり、自分のスキル強化のための“お薬”として使われたりしてる」

 ここで一旦話を止める土神、そしてシセラを一瞬だけ見ると再び話を始めたのだった


 「まあ、だがこの薬にも欠点が一つだけあってね。それはつまり『効能時間の短さ』なんだ、普通ならドーピング一回で一週間ぐらいは楽に持つはずだけどトリガーの場合は効き目がせいぜい10分程度なのが悲しいところだね」

 「ど、どうして....そんなの..を...、売ってるの....?..」

 「どうしてかって? そりゃあ決まってるよ、売れるからさ。力や娯楽を求める輩は腐るほどにいるからね、そして俺もこの薬で一時の力を得ることができるんだ」


 すると前置きも何もなしに腕に注射器を突き刺した土神、すると笑い声を挙げだし段々と姿が豹変していく

 「あっ そうだぁ、トリガー摂取してると思考能力が低下するから気をつけてね、シ・セ・ラ・ちゃん♪」


 シセラは背筋に激しい悪寒が走った、そして大きな影がシセラの体を覆うように現れたのであった・・・・。

Re: スキルワールド ( No.42 )
日時: 2018/06/21 23:17
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)




「ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ・・・・。」


 規則性のある呼吸が聞こえてくると一人の少女が通りすぎた、続いて大きな影が後ろから追いかけてくる


 「ハァ ハァ ハァ ハァ ・・・・・ウッ!、ゲホ!ゲホ!ゴポッ!!」

 疾走してる最中に口から血を吐いてしまった、しかし少女は止まる事なく走り続けていた



 「ブゥオォオオオオオーーーーッ!!!」

 耳が痺れる程の雄叫びが聞こえてきて思わず耳を押さえる、そして後ろから何かが飛んできた


 ガッシャーンッ!!


 飛んできたのは小型の船だった、そう今いる場所は人のいない夜の港だったのだ。そして少女ことシセラはギリギリで飛んできた船を避けると近くの建物の中へと逃げ込んだ

 「ハア ハァ ハア ハァ ハア ハァ こっちに来ないで...。」

 震えた声で祈るシセラの体は震えていた、だが願いは届かなかったようだ

 「ブゥゥオォオオオオーーーーッ!!! ((ガシャンッ!!」

 「キャッ!、こ...怖いよ.....お姉ちゃん」



 すると急に音が止まった、疑問に思い辺りを見回してみると自分の隠れて所だけ暗いのが分かった。震えながら上を見てみると・・・・・。


 「ブゥオォオオオオーーーーッ!!!」


 ドッシャーーーンッ!!


 巨大な塊のような拳がシセラへと迫りきて周りに破壊音と砂煙を舞い上がらせた・・・・・。


 [〜 場所は変わって 〜]


 「ガバッ!)) シセラッ!!・・・・、ハァ ハァ ハァ 」

 「ん〜、どうしたんだジャッキー? 今って夜中の3時だぜ」

 「聞いて京八!、シセラが! シセラが危ないのッ!!」

 慌てたように起きたばかりの京八の肩を揺するジャッキー、かなり取り乱している様子だ

 「落ち着け!?、一旦落ち着こうぜ!!?」

 「何言ってんのッ!?、シセラが危け....きけ....ん・・・・・。((バタッ」

 「え、お〜いジャッキー?、大丈夫か〜」

 「心配するな京八、ただ眠らせただけだ」

 「そ、そうですか美香さん、ところでジャッキーが言ってたシセラの危険って何ですかね?」

 「まっ、そこん所は分からないけど。シセラが不在の影響でホームシックならぬ“シスターシック”に陥っちゃてるわね〜」

 「し、シスターシックですか?」

 「まっ、今日のところは寝ちゃいましょう」

 「そっ、そっすね」

 そう言ってまた眠り直すことにした美香と京八。それとシセラは生きているのか、はたまた......いえ、やめておきましょう・・・・・。

Re: スキルワールド ( No.43 )
日時: 2018/06/25 18:13
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 友間は朝の5時に目が覚めた、だが昨日から龍紀や零、そして灯利は帰ってきていないし連絡もないままだ

 「・・・・・、今日の午前1時....か..。」

 起き上がった友間は辺りを見てみる、まだ全員は寝ており疲れてたようだ

 「ん〜、ちょっと散歩でもするかな」


 [〜 少し進んで 〜]

 「フー、やっぱり朝の散歩って気持ち良いなぁ〜」

 そう背伸びしながら言う友間、すると後ろの方で何かの気配を感じて後ろを振り返った

 「・・・・・、?、気のせいかな?」

 そう言ってまた歩き始める友間、だがその勘もハズレではないようだ

 「・・・・・彼が、黒奈 友間....。」

 隠れていた少女は小さな声で呟くと昇る朝日とは逆の方向へと姿を消したのであった


 [〜 時間は進んで 〜]


 「蘇芳はまだ激しい運動はできそうにないな、それに龍紀ら3人の行方も不明なままだからアンタ達3人でシセラを助けるしかなさそうよ?」

 そう言いながら朝飯の麻婆豆腐(大盛り)を机に置く美香、それを聞いた友間、ジャッキー、京八は互いの顔を見たあとに少しの苦笑いを浮かべた

 「こりゃあ悪い予感がするな、なっ黒奈」

 「ま、まぁでも京八もいるしジャッキーもいるから安心だよ」

 「 ムシャ ムシャ))わらひは絶たみしぜらを助けるわよ」

 「ちゃんと喰ってから言えよ!」

 「・・・・・ゴックン))だーかーら、私は絶対シセラを助けるって言ったのよ京八」

 「まーそれにしても龍紀とかは何処行っちまったんだか?」

 そう京八は疑問を呟くと残りの米と一緒に麻婆豆腐を掻き込んだ


 [〜 場所は変わって 〜]


 「ガチャ!)) 失礼、少し寄り道をしてしまっていた」

 そう言って薄暗い部屋の中央に行くと部屋の電気を付けた。すると少女の姿が照らされ白くてほんのりピンク色をした髪に明るい紫色をした瞳、そして上下はどちらも白いシャツとスカートを着用していた

 「何かあったの?」

 「いえ、アナタ方に教えて頂いた友間という人物を拝見に行ってただけです」

 「ところでさ、僕らって昨日初めて君に会ったんだけど何で友間のことを聞いたの?」

 その声の主はと言うと行方の分からなくなっていた龍紀であった、その横には零も灯利も怪我一つなく畳の床に座っていた

 「ん〜、詳しくは言えませんが私にとって友間という人物は“運命のパートナー”です」

 「へ〜そうなん・・・・、えっ!今何てった!!?」

 部屋の中にいた少女を除いた龍紀達3人は思わず驚きの声を挙げてしまっていた


Re: スキルワールド ( No.44 )
日時: 2018/06/27 19:23
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 「ヘッきし!!、ズズー....風邪でも引いたかな?」

 「おいおい黒奈、今頃になって風邪引かれちゃあ困るぜ」

 そう言ってから友間にティッシュを渡す京八、それを受け取った友間は鼻を拭った

 「大丈夫だよ京八、それより龍紀達って何処に行っちゃたんだろね?」

 「まーその内にでも戻ってくるだろ、そう簡単に潰れるタマじゃねぇしな」

 「そうだね、それに今は別のことに気を使わなくちゃいけないしね」

 そう言って友間はジャッキーの方に顔を向けてみた。ジャッキーは忙しなく部屋のあちらこちらを歩き回ってはブツブツと何かを呟いていた

 「私ならできる、私ならできる、私はシセラを助けられる・・・・・。」

 「おーいジャッキー、色々と大丈夫か?」

 「んっ あ、うん....大丈夫よ..京八...。」

 「まだ昼前だぞ?、気長に時間が来るのを待とうぜ」

 「バカ言わないでよ京八、私にとっては大事な事なの!」

 そんな事を言っているジャッキーの背後からは大丈夫には思えない赤黒いオーラが見えてきた

 「土神ってのに会ったら妹を拐ってくれた事を後悔させてやるわ、フフフフ」

 「きょ 京八、ホントに大丈夫かなジャッキー?」

 「大丈夫だろ?、その内にでも収まるさ」

 「そうだと良いんだけど」

 多少の心配ありげに友間はジャッキーに目線を移した後に、まだ約束の時間にはならない時計へと視線を変えて呟いた

 「シセラ.....、今頃どうしてるのかな...?」

Re: スキルワールド ( No.45 )
日時: 2018/06/30 08:53
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



・・・・・・。今は真夜中の一時の少し前の時間帯、友間、ジャッキー、京八は手紙に書かれていた地図を頼りに“ある場所”に来ていた


 「こ、ここって港よね、こんな場所で戦うのかしら?」

 「まぁ何だって良いさ、サッサッと土神とその仲間でも倒しちまおうぜジャッキー」

 「でも何処にいるんだろ?、やけに静かだし」

 そう言って辺りを見回してみる友間、そして一行は港の奥へと進むことにした


 [〜 少し時間が進み 〜]


 「とうとう奴らを見つけたな黒奈」

 「ああ、でも想定してたより数が多いね」

 「そうね、今数えられるだけでも30人ぐらいはいるわね」


 3人は倉庫らしき建物の屋上から様子を伺っていた、だがシセラの姿だけが見当たらなかった

 「シセラって何処にいるのかな?」

 「お前らの探している奴は、ここには居ないぞ」

 「「「!?.....エッ!」」」

 振り返った3人の目線の先には公園であった巨体の大男がいた、そして前とは違って黒服を着ていた

 「これから始まるパーティーにご出席の方々は私が送り届けましょう」

 そう言ったかと思うと大男は3人へと避ける時間さえ与えずに屋上から叩き落とした


 ドスンッ!!


 「イッテぇなッ!!、もうちっと優しく扱えや」

 「そんな事を言ってる場合じゃないわよ京八」

 見ると下にいた集団に囲まれていた、ついでに言えばこちらも全員が黒服姿だった

 「チッ!、殺るしかねぇかよ、スキル『発電』ッ!!」

 「じゃあ俺も、性質<炎>ッ!!」

 「ちょうど私もいけるわ、復讐劇・血」


 京八は体に電気が走り、友間は赤々とした炎のように燃え盛る、そしてジャッキーは体から赤黒いオーラが煙の如く現れた

 「パチ パチ パチ)) ようやく役者が揃ったようだね、しかし少し人数が減っていないかい?」

 そう声と共に出て来たのは白いスーツを着た男、土神が現れたのだった

 「アンタが土神、よくも妹をッ!!」

 勢い良く飛び出したジャッキー、周囲の者を力で弾き飛ばし土神の顔にめがけて拳を突き出した

Re: スキルワールド ( No.46 )
日時: 2018/07/04 16:45
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 ドゴォォォンッ!!


 土神の顔にジャッキーのパンチがメリ込んで十数mぐらい飛んでいく土神、その様子にジャッキーは呆気にとられてしまっていた


 「あ、あれ? 結構弱かったわね?」

 「そんな事よりジャッキー、周りの連中にも気を付けろよ」

 背後から聞こえたかと思うとジャッキーの横に京八が現れて周りの連中を電気による火花で威嚇した

 「えぇ大丈夫よ、これからが本題なんだから」

 「きゅ、急に他人の顔を殴るなんて妹さんの方とは正反対だね」

 その声は潰れて歪んだ土神の顔から発せられた声だった、そしてゆっくり立ち上がったのだった

 「へー、かなり強めに殴っといたんだけどねぇ」

 「ほ、ホントに君は妹さんとは姉妹なのかい?」

 そう疑問を呟いた土神、すると徐々に潰れていた顔が整っていき元に戻った

 「あら、アンタの持ってるスキルは何ていうのかしら?」

 「まぁその話は置いといて1つだけゲームをしないかい?、もちろん君ら3人は強制参加だけどね」

 「急にゲームって、.....まー拒否権は無いみたいだしルール説明でもどうぞ」

 そう言うとジャッキーは土神の喉元を噛み千切りそうに感じる程の雰囲気で歯を見せて笑う、それに笑みには完全な殺意すら感じられ土神は少しだけ冷や汗が垂れ落ちたのだった

 「良い笑顔だ、そうじゃなきゃゲームの意味もないしね」

 「あらどうも、だけど私の笑顔を見るのも今日という日で最後だから脳裏にでも焼きつけておくといいわ」

 「そ、それは少し遠慮しておきたいかな」

 「二人で話してる途中で悪いが、そろそろでルールの説明ってのをしてくれねぇか?」

 「あっ そうね京八、っでゲームのルールってどんなルールなの?」

 「それはとぉ〜ても簡単な1つだけのルールだよ、まあ今から説明するよ」

 ここで話を一旦止めた土神は自身の鼻についた鼻血を白いスーツの襟で拭うと再び話を続けた

 「それはただ1つ、今から朝の7時になるまでの間にシセラちゃんを取り返せたら君らの勝ち、でも今いる場所も含めて港全体に中々の威力がある爆弾をセットしてあるから朝までに助けられなかったら君らもシセラちゃんも一緒に人生ゲームオーバーってことかな」

 「人の妹をさっきから“ちゃん付け”で呼ばないでくれる、まあ私達は港のどこかにいるシセラをアンタ達の妨害を受けながら助けろって事でしょ」

 「そうそう、飲み込みが早くて良かったよ。それじゃ10秒後にスタートだよ」


 1...、2...、3...、4...、

Re: スキルワールド ( No.47 )
日時: 2019/08/05 22:27
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 9...、10...、0....。


 10秒が過ぎた時だった、周りにいた敵が一斉に襲いかかってくるが京八の方が早かった


 「バチ! バチ! バチ! )) まずは第一関門の突破だっ!!」

 そう京八は言ったかと思うと体の電流が大きくなり地面に向けて拳を振り落とした


 バッゴォオォオォォーーーンッ!!


 振り落とされた衝撃で土煙が舞い上がり辺り一帯が見えなくなる、この状況に友間は手探りで少しだけ歩いてみると・・・。

 「ガシッ!)) おい黒奈!、行くぜこっちだッ!!」

 友間の腕を掴んだのは京八の片手だった、そして京八のもう片手はジャッキーの手を引いていた

 「ゲホ!ゲホ!ゲホ!!、君ら絶対に逃がさないよ!、そしてシセラちゃんもねっ!!」

 姿が見えない土神の声が三人の耳元に聞こえてきたが、三人は構わずにその場を離れていった


 [〜 少し時間は進み 〜]

 「ハア ハア ハア どうやら敵からは逃げられたみたいだぜ、そんで今からどうするか?」

 「決まってるじゃない、シセラを見つけた出すのよ手分けしてね」

 「ならジャッキーは京八と行動して、まだ京八の状態が不安定だからね」

 「大丈夫だって俺の体はもう平き・・・・。」


 ビキッ!!!


 「いでっ!! ま、まあ俺一人でも大丈夫だぜ」

 「どこがよ!、意地を張るのは別のとこでやんなさい」

 こうして三人はジャッキーと京八、そして友間の2チームに別れて別行動をする事になった


 「〜 場所は変わって 〜」


 ここは真夜中の通りが少なくなった道路、そんな道路を何かが通り過ぎていった

 「私とした事が嬉しさのあまりに寝てしまったいた、しかし彼が生きてなければ私の喜びも無駄になってしまう」

 そう言いながら道路を高速で走っているのは、今日の朝方に散歩している友間の様子を伺っていた少女だった

 「早くお側に行かなければ、私の『運命のパートナー』の所に....。」

 そう呟いていると走っている脚にも力が入っていき少女の走る速度が上がった


 [〜 場所は戻って 〜]

 「シセラ〜! 居るの〜?、居るなら返事して〜!」

 大声でシセラを呼んでいる友間、だがこの倉庫には何も見当たらなかった

 「ん〜、シセラはどこに居るのかな?、無事だと良いんだけど....。」

 念のために倉庫の中をもう一度見てみる事にした友間、だがそんな友間の背後には何者が近づいてきていた

Re: スキルワールド ( No.48 )
日時: 2019/08/05 22:30
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)

 

「えっ!、誰!?」

 友間は後ろにいる誰か分からない人物に気付き、振り返りざまに足払いをして相手の態勢を崩してから相手を床に押し倒した

 「!...。ちょ! ままま待って下さい!!、私です! 蘇芳ですッ!!」

 なんと友間が押し倒したのは体調不良で姉の美香と一緒に留守番をしてるはずの蘇芳すおうだった

 「な、何で蘇芳がここに??」

 「あ、あの〜 推測するより先に体の上から離れてくれないかな?」

 「ご、ごめん、でも何で蘇芳がいるの?」

 「実は美香さんがスキルで生理痛を一時的に解消してくれたんですよ、たぶん私が無理にでも三人の所へ行こうとしてたから」

 「そういう事、ところでお姉ちゃんも来てくれたの?」

 辺りを見回してみる友間だったが、美香の姿は見当たらなかった

 「美香さんなら私をここに送った後にサッサッとスキルで帰っちゃいました。それと美香さんのスキルって何なんでしょうかね?」

 「ん〜・・・・、まあ考えても分からなそうだし今はシセラを助ける事を優先しよう」

 「そうですね、私も一緒にシセラを捜します」

 「ああ頼む、俺一人で捜せる範囲も限りあるしな」


 こうして友間は蘇芳と共にシセラの捜索を再び始めました


 [〜 場所は変わって 〜]


 ここは港にある友間と蘇芳がいた倉庫とは別の倉庫の中、そんな倉庫の中には京八とジャッキーがいた


 「シセラ....、大丈夫かな....。」

 「おい大丈夫かよジャッキー?、シセラいねぇから精神的にやられてんじゃねぇか?」

 「だ、大丈夫よ! それより早くシセラを見つけなくちゃ」

 そう言ってジャッキーは京八より先を歩いて行った、だがその瞬間にジャッキーの真横にあった壁に亀裂がはいった

 「危ねッ!! ((バッ」

 飛び出した京八は人並み外れたスピードでジャッキーを抱えると今いる場所から素早く離れた

 「か、間一髪だったな、はは」

 苦笑いをする京八の目線の先には砕けたコンクリートの床と、公園で会った大男と気性の荒い男の二人組が立っていた

 「んー、今のは惜しかったね湯水ゆみずくん」

 「うるせぇなッ!デクの棒!!」

 「これは困ってねぇ、いちょう吉川 通(よしかわ とおる)という名前があるのだけどね?」

 「知るかッ!、それと今はゲームに参加してるゴミ虫の駆除だッ!!」


 その会話を聞いていた京八だったが自身の真横に強烈な殺気を感じて冷や汗が頬を垂れ落ちた


 「へ〜、その“ゴミ虫”ってのは私達のことかしら?」

 京八の推測だが、たぶん今の状態のジャッキーには逆らわない方が良さそうだった。しかも京八の考えを肯定するかのようにジャッキーの周辺から赤黒いを越えたドス黒いオーラが出ていた

 「あ?、それがどうしたってんだ。殺られてぇかッ!!?」

 それを聞くとジャッキーは笑った、だがドス黒いオーラと合わさり笑顔が怖かった

 「じゃあ、殺ろうか」

 そうジャッキーが言った瞬間、京八の隣から姿が消えて気性の荒い男こと“湯水ゆみず”の顔面にジャッキーの怒りの鉄拳がブチ込まれ倉庫から外へと殴り飛ばした

 「私達がゴミ虫? 結構よ!。だったらゴミ虫はゴミ虫なりにアンタらを殺ってやろうじゃないの!!」

Re: スキルワールド ( No.49 )
日時: 2018/07/08 19:19
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)


 ここは真夜中の港、そして今ここは荒れていた


 ズバァァアァアアンッ!!


 「無茶苦茶だなジャッキーは?」

 「そういう君はどうなんだい?」

 「んっ、ああ俺はただの見学人って感じだな」

 「そう言わず、どうかな? 湯水くんは君の彼女さんと戦ってて不在だし、本音を言って体を動かしたいと思ってるんだよ」

 「やっぱ展開的にそうなる?、ってかジャッキーは彼女じゃねぇぞ!」

 「・・・そうか、ではさっそく始めるとしよう」

 そう言って双方とも身構える、それと普通に考えれば大男こと吉川よしかわの方が体格的には有利だがどうなのだろうか?

 「スキル『発電』ッ!!、こりゃあ最初っから本気の方が良いかもな」

 「君がそう思うならそうすれば良いよ」

 「お前って掴みにくい奴だな、何ていうか否定しないよな」

 「ただ否定したところで何も変わらないと思ってるだけだよ」

 「そうかよ、じゃあフルスロットルでいくぜっ!!」

 たちまち全身が強く発光したかと思うと、雷神を思わせる姿へと変貌した

 「神々しい姿だね、まるで雷神様だ」

 「そうかよ、こちとら燃費が悪くて充電がもう少しで切れそうなんだよ。だからサッサッと勝負を着ける」

 「では、こちらも本気というものを出させて頂きましょうか」

 そう言ったかと思うと吉川の姿が変貌していき恐ろしい鬼へと変身した

 「フー、フー、フー、やっぱり鬼というのは高揚感があるな」

 「そんじゃ殺るか?」

 「それでは、お手合わせ願いましょう((バッ」




 バァアァアァンッ!!


 先手を取ったのは吉川、そして京八の首には吉川の蹴りがメリ込んでいた

 「こりゃあ首がミシミシすんな....。だけど、そんな程度だな」

 「・・・・・・?」

 「前置きしとくが、俺のはちと痛ぇからな ((グッ」


 ドガァァアアアアアンッ!!!


 「!!...、グアッ!」

 「痛ぇだろ?、そんじゃ少しの間でも寝てな」

 そう言って吉川にもう一撃を顔面に叩き込む京八、吉川の方は呆気なく倉庫の壁まで飛ばされ気絶して倒れ込んだ


 「フー、これでこっちは一件落ちゃ...く..。」

 京八は立ち眩みがして姿が元に戻る、そしてあまりの立ち眩みで床に尻もちをついてしまった

 「や、やっぱ反動がキツいな...。ちょっと休...む..。((バタッ」

 全てを言い終わる前に眠ってしまった京八、ところで誰かのことを忘れている気がするが気のせいかな?

Re: スキルワールド ( No.50 )
日時: 2018/07/11 23:48
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 「チッ! クソがッ!」

 「アンタが弱いからでしょ」

 そう言ったジャッキーの目の前には悪態をついているボロボロの湯水がいた

 「お前、アイツとは桁が違うじゃねぇかよ」

 「あら、友間のことかしら? 残念だけど友間を倒したらしいけど、私と友間とじゃ経験も実力も違うのよ」

 「ああそうかよ、なら俺も奥の手だ!」

 そう言ったかと思うと湯水の手に紫色をした煙が吹き出してジャッキーを包み込み、湯水の方は思わず笑みをこぼした

 「ふ〜ん、催眠ガスみたいなモノかしら?」

 「はっ?」

 ジャッキーの声が聞こえたかと思うと煙の中からジャッキー本人が現れた

 「悪いけど、怒ってる時の私にこんなモノは目眩ましにすらならないわよ」

 「チッ!、なら次の手を ((ドゴッ!」

 ジャッキーの怒りの鉄拳が炸裂して湯水を吹き飛ばす、そしてこう言った

 「うっさいわね!、私はシセラを捜すのに必死なのよ!」

 「お、おい待て、待てよ!」

 湯水がそう言ったのを構わず無視して立ち去ろうとするジャッキー、それに激怒した湯水はポケットから“あるモノ”を取り出した

 「フザケンナッ!! ((ブスッ!」

 「んっ?、!!....まさかアンタ!、“ソレ”って!」

 湯水の腕には緑色の液体が入った注射器が刺されており、その様子にジャッキーは驚いていた

 「そうだよ、違法薬品“トリガー”だよ」

 「バカ!、ソレがどんなに危険なのか分かってんの!?」

 ジャッキーが慌てて言ったのも束の間、湯水の体がヒクヒクと痙攣したかと思うと突然として止まった

 「ヘハッ! ヘハハハハッ!!」

 「もう!、何でシセラを助けるのにコイツの相手しなきゃならないの?」

 そう言うジャッキーの目の前には目の血走っている湯水がいたのであった


 [〜 場所は変わって 〜]


 「お〜い、シセラ〜! 居るの〜?」

 今、友間と蘇芳は新たな倉庫へと移動しシセラを捜索していた、すると・・・・・・。

 「シセラ!!、良かった生きてて!」

 気絶してはいるが友間の目線の先にはシセラが椅子に座らされていた、客観的に見れば怪しく思えるだろうが友間は蘇芳の制止も聞かずにシセラへと走り寄った

 「シセラ! シセラ!、大丈夫!?意識はある!?」

 「うぅ〜、友..間さん....?」

 「よし、じゃあこんな場所から早く出よ・・・。」

 「おやおや、こんな場所とは聞き捨てならないよぉ〜」

 「土神っ! 何処だ!?」

 友間が周りを見回したと同時に倉庫の扉が音を立てて閉じてしまい、倉庫にある上の階から誰かが降りてきた

 「折角のゲームなんだし、ヒロインをラスボスから自力で奪い返すってのはどうだい?」

 「そ、それはちょっと遠慮したいのですがぁ〜」

 「う〜む、それは残念だ。まあ君らを生きて帰らす気は微塵すらも無いけどね」

 「そうだと思ってました」

 「ちょっと友間!、悠長に話してる前にシセラを連れて逃げなくちゃ!」

 「それを、させると思うかい?」

 土神のその声が聞こえたかと思うと常識外れな脚力で友間へと飛び出してきて重い蹴りを放つと友間を蹴り飛ばした

 「ドガッ!)) うっ! 性質<炎>ッ!!」

 「やっと殺る気になってくれたかい?」

 「ああ、今のでお前を殴り飛ばす覚悟が整ったよ」

 「ふふ、良い目だね、それでこそゲームの楽しみがあるってものだよね」

 「友間!、まずはシセラの確保からしてっ! シセラにまで被害が及んだらジャッキーが黙ってないよ!」

 「確かに、それじゃあ準備は良いかな蘇芳?」

 「『赤き精彩ブラッティーレイン』ッ!!、こっちも準備万端よ」

 スキルを発動した蘇芳は親指の爪で手首を切ると、そこから大量の血が吹き出して固まると血で作られた剣に変化した

 「それって面白いスキルだな蘇芳」

 「どうも友間、じゃあ土神のことは任せるわよ」

 「OK蘇芳、それとラスボス戦の開幕だ」

Re: スキルワールド ( No.51 )
日時: 2018/08/14 17:26
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 土神は思っていたより強かった。そして今は空中に放り出されたところだった


 「ガシャン!)) ぐっ!、畜生」

 「そう怒るもんじゃないよ、ただ君との力の差があり過ぎただけなんだよ」

 「へー、良いこと聞きましたよ」

 友間は皮肉を込めて言ったあと、体から吹き出した炎を強めて土神に向かって飛び出していった

 「おっと、危ないね ((スカッ」

 「オリャァアァアァアッ!!」


 ーードガンッ!!


 猛攻のすえに土神の腹に気合いの一撃が喰らわされた、だが土神は痛みに顔が歪むどころか笑ったのだ

 「フフフフフ、ハァハハハハハ!」

 「(な、何だコイツ、炎で殴られたってのに熱くないの?)」

 友間は土神の笑ってる隙を突いて止めることなく拳で殴り続けた。そして最後にトドメの炎の一撃を放とうとした時だった

 「ガシ!)) いい加減にしてくれるかな〜?」

 「う!、放..しやがれ、悪党」

 「あっ?、今何て言った?」

 「悪...党って、言ったんだよ」

 その言葉が気に触れたのか土神の表情がキツくなり首を絞めている手にも力が入っていく

 「(く、苦しい!、でも蘇芳はシセラと一緒に逃げられたみたいだね)」

 「人のことより、まずは自分のことを考えといた方が良いよ」

 「だ...い丈夫です.....奥...の手があるん...で..」

 「ほう、それはそれは楽しみだね。だけど君はもう死ぬんだよ?」

 ーーボギッ!!


 首の折れた音がして土神の手が緩む、すると次の瞬間には友間が爆発した


 「なっ・・・・・・。」


 爆発は倉庫全体を震わせる程の大きさがあった、最も爆発地点の近くにいた土神は吹き飛ばされた

 「ゲッホ!ゲホ!ゲホ! く、苦しかったぁ」

 煙の中から人影が現れると友間の声だと分かった、しかし何で生きているのだろうか

 「スキル使用中は死なないって効果があって良かった」

 「面白いスキルだね、なら今のが奥の手なのかい?」

 「!!....えっ!、まだ生き ((ドガッ」

 生きてることを実感していたのも束の間に、まだ煙が充満してる中で友間の背に痛みが走って吹き飛ばされた

 「ガシャン!)) グッ!、ったくお前もお前で不死身なのか?」

 「いやいや、ただ自分のスキルで体をちょっと操作しただけさ」

 段々と煙が晴れてくると土神の姿が見えてきたが、驚く程に土神の肉体がムキムキになっており友間の心は不安で重くなった

 「さあ、ゲームの続きをしようか」

Re: スキルワールド ( No.52 )
日時: 2018/07/16 20:38
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 目の前にいる人物は化け物だった、そして今この瞬間にまた友間は死んだ


 ーーボギッ!!


 「また首の骨が折れられたな」

 「まったく、そろそろ殺されようとは思わないのかい?」

 「いえ、逆に心が燃えてきました」

 「ハハハハ、体も燃えてるのに心まで燃えてるとはね」

 とは言ったものの金剛力士像の如く肉体になった土神に、友間のパンチなど効くはずもなく炎の熱すら厚い筋肉のせいで無意味に等しかった

 「どうした?、ボス戦なんだからボスと戦うに相応しい戦い方をしてくれよ?」

 「・・・・・・いちょう、最後の手段なら残ってますよ....。」

 「また自爆かい?、だけど一度君が試したけど生きてたけどね」

 「それよりも良い方法です」

 「じゃあ試してみなよ、逃げも隠れもせずに正面から受け止めてあげるよ」

 「(しめた! この瞬間を待ってたんだよ、確実に土神に当てられる瞬間をな)」

 友間はスーツが筋肉ではち切れそうな土神から目を離すと右腕に意識を集中させた


 「(右腕が壊れない程度に力を注いでるイメージを・・・・・・。)」


 すると友間の体から炎が消え、逆に右腕には血のように赤く燃える炎が吹き出した

 「ほお、これは凄いじゃないか友間くん」

 「そういうのは一発喰らってからお願いします」

 そう言うと友間は走り出したが土神は相変わらず立ったまま動かない、そしてこれが最初で最後のチャンスかもしれない


 「喰ゥラえェェェーーーッ!!」


 ーードガンッ!!


 右腕の拳が当たった瞬間は何事もなかったが、続いて拳から土神に向けて爆発のような炎が吹き出して土神の肉体を焼き貫いたのであった

 「ァアッ!!、ぎゃああぁあぁぁっ!!」

 苦痛の叫びを挙げて地面に倒れながらも腹に空いた大穴を抑えようとする土神、それとは対照的に静かな友間は気絶寸前だった

 「(や、ヤバイ...体が重いし目の前が見えにくくなってきた、でも自分はまだ死ねない)」

 土神の最後までを見届けようと友間は気合いと根性で土神の方を向いた、だが次の瞬間には顔が青ざめた


 ーードガンッ!!


 「ガシャン!)) うっ! 脇腹の骨が」


 左の脇腹辺りを抑える友間、スキルを使用すれば一瞬で修復するがそんな力は残っていない

 「これは流石の自分でも危なかったよ、まさか体を焼き貫かれるとはね」

 その声の主は何を隠そう土神本人であった、そして土神自身は悠然と立っており腹に空いた穴は肉の塊が塞いでいた

 「お前...何者だよ、それか不死身かもな...。」

 「いやいや、不死身ではないけど近いかもしれないね」

 「やっぱ...化け物だな、お前」

 「そうだ、君とのお別れの前に何のスキルなのか教えておいてあげようかな・・・・・・。」

Re: スキルワールド ( No.53 )
日時: 2018/07/18 18:50
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 「スキルの名前は『細胞コントローラー』、簡単に言っちゃえば自身の体の細胞全てを操れる、こんな風にね」

 すると土神の左手が岩のようにデコボコとなり灰色の塊と化した

 「今のは左手の細胞を操作して硬化させたんだ、これはどのぐらいの威力になるんだろうね」

 「うわッと! ((ドガン!」

 友間は気合いで何とか避けることができたが、もし避けられなかったなら先程までいた所のようになっていただろう

 「ハァ ハァ ハァ ハァ.....けっこう頑張ったつもりだったんだけど、アンタには勝てそうにないみたいだな」

 「そういう事。もし君からダメージを負ったとしても、細胞を新しく作っちゃえば済んじゃう話しなんだよね」

 「そうですか....。だけど俺にも俺なりの戦い方があるんですよ。“性質<炎>”」

 スキルを発動した友間だが、体から炎が燃え上がるどころか右腕に弱々しい炎が灯っただけだった

 「そんな炎でボスを倒すつもりかい?、だったら面白い冗談だね」

 「悪いですけど、お前を全力で倒すつもりです」

 「面白い! 冗談より面白いことを聞けたよ」

 「それはどうも・・・・・・。」

 友間は飛び出そうと腰を屈めた、だがその瞬間に土神の背後から蘇芳が現れたかと思うと自身の血で作られた剣を両手で勢いよく降り下ろしたのであった


 ーーバキンッ!!


 血の刃は土神の肉を抉り切るどころか硬い肌に弾かれて後ろへと高らかに跳んでいってしまった


 「えっ!・・・・・、え〜と....ハロ〜?」

 「蘇芳! 何で戻って来たの?、シセラはどうしたの!?」

 すると蘇芳の後ろからシセラが現れて、友間にこう言った

 「た、助けに....来たんで、..す」

 「それに仲間を助けるために仲間を犠牲には出来ないからね」

 「感動的な友情の話をする前に、誰かを忘れてないかい」

 「ええ、そこんところは大丈夫よ」

 そう言って蘇芳は後ろにいるシセラに目で合図を送るとシセラは片手を差し出した、そして蘇芳はその手を血の剣の破片で突き刺した

 「ッ!!、シセラッ!」

 友間は一瞬だけ取り乱したがシセラの覚悟のある目を見たことで我に帰ると、シセラは土神の背に向かって飛び付いた

 「なっ、シセラちゃんから抱きついてくれるとは嬉しいね」

 嬉しそうな土神をよそに、友間は走り寄ってきた蘇芳に信じられない程の力で倉庫の外へと運ばれていった

 「あっ! しまった、二人が逃げてしまっ・・・・・・」

 「覚悟して...下さいね.....。」



 “苦痛ノ解放”ッ!!



 土神の言葉は最後まで言う前に、シセラを中心とした爆発が起こり音と光が全てを包み込んだのであった


 ーードッガアァァアアアンッ!!





 ・・・・・・・。





 どのくらい時間が経っただろうか、友間はのしかかってる瓦礫をどうにかどかすと辺りを見回した

 「えっ・・・・。蘇芳?、シセラ?」

 「う〜ん、いたたた。まさかここまでの威力があったなんて」

 「蘇芳!?、良かった生きてて!!」

 「あーもーちょっと離れてよ友間、ところでシセラは?」

 友間は今までシセラの姿があった場所を見てみた、だが瓦礫の山が積もっているだけだった

 「ま、まさかね、そんなはずは・・・・。」

 だが瓦礫が降り注いできたはずなので生きてるかと考えれば難しいかもしれない、しかしそんな考えを拒絶するかのように友間は立ち上がると瓦礫の山へとヨタヨタと近寄ってみたところ瓦礫の山から声が聞こえた

 「だから言ったじゃないか、君では勝てないって」

 「ゾクッ)) まだ生きてるのか!?」

 そう思わず友間が言うと、瓦礫の山から人影が姿を現した

 「ヤッホー♪、それとシセラちゃんは生きてるよ〜」

 そう言って気絶しているシセラを見えるように片手で掲げる土神、化け物にも思える相手を前に友間は恐怖とは別の感情が沸き立った

 「・・・・・その手....、離せや」

 「んっ?、離せ? どうしてだい?」

 「その手を!、シセラから離せやッ!!」

 そう友間は叫んだかと思うと右腕に弱々しく燃えていた炎が全身に燃え移り、炎が全身から燃え盛ったのであった

 「まだ挑むつもりかい?、結局は全員殺されるというのに?」

 「そんなのは俺の知った事じゃねぇ!、俺はお前を焼き殺すっ!」

 どこから言葉が出てくるのかは分からなかったが友間はもう目の前の土神だけを見ていた、そんな友間の脳裏に声が響いてきた

 (「友間様、私です!エンです!」)

 「(えっ!、エン? どうしたの?)」

 (「今こそ、スキルの本領を発揮する時です!、さあ何かを大声で叫んで下さい」)

 「(何かって言われても....。んーじゃあ、シセラの真似になるかもしれないけど、借りるよシセラ・・・・・。)」


 “性質ノ解放”ッ!!


 そう辺りを震わせる程に叫んだ友間。そして次の瞬間、ジェット噴射のように全身から炎が吹き出し真夜中の夜を昼間へと変えた

Re: スキルワールド ( No.54 )
日時: 2018/07/21 11:44
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 ジャッキーはボロボロな状態で地面に倒れていた、その近くには頬に赤々とした拳の跡が刻まれた湯水が倒れていた

 「さすがに、今回はヤバかったわね....。!....んっ何、あの光って?・・・・」

 上体を起こすとジャッキーは遠くに見える光を見てそう呟いた、すると力尽きたのかように地面にまた倒れてしまった


 [〜 時間は少し戻って 〜]


 友間たちがいる場所と変わりここは別の場所、そこにはジャッキーと暴走中の湯水がいた

 「ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ....とんでもない化け物ね、コイツは」

 「ヒィーヒヒヒヒヒヒッ!」

 「そろそろで薬の効力も切れるはずなのに一行に変わんないわね」

 状況を説明するとジャッキーは右腕を負傷、目の前の湯水は血走った目でジャッキーを凝視している

 「落ち着けぇ私、スー・・・ハー・・・・。」


 ・・・・・・・“復讐劇・血”ッ!!


 「ヒィーヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!」

 「さぁいつでも来なさいよ、返り討ちにしてあげるわよ」

 「バッ)) ヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!」

 ジャッキーの言葉を聞いてか聞かずか弾丸の様に飛び出してくる湯水、それに対してジャッキーは上段蹴りの構えをとって湯水の首を体ごと吹き飛ばした

 「ハー・・・・・ふー・・・、このままじゃ長期戦は無理そうね」

 そう呟いたジャッキーに吹き飛ばされたはずの湯水が飛びかかってきて紙一重でそれを横に避けるとオマケで湯水の背に蹴りを入れてやった

 「ったくも〜、両手が自由に使えたら良かったのに〜」

 愚痴を吐いたジャッキーだったが再び湯水が飛び出してきたので再度また横に転がって避けたは良いが右腕に激しい痛みが走った

 「ギリッ!)) うッ!、こんな時に...。」

 すると気を抜いていたのが原因でジャッキーの腹に湯水の拳が突き刺さりコンクリートの地面に体が擦れながら吹き飛ばされた

 「......くそったれ、....シセラを絶対助けるって決めたじゃないのよ私」

 額でも怪我してしまったのか左目に自身の血が染み込んでしまい片方の視界が赤くぼやける、そんな時に湯水の大きな笑い声が聞こえてきた

 「ヒィーヒャ!ヒャ!ヒャ!ヒャ!....ひゃ?」

 急に違和感でも感じかのように笑い声が止まる湯水、ジャッキーが顔を上げてみると湯水の体が痙攣しており口から泡を噴いていた

 「やっ...と効果切れね....。」

 ジャッキーは最期の力を使い尽くす勢いで立ち上がると湯水へと一歩一歩ふらつきながら近寄った

 「覚悟、ちゃんと決めなさいよ」

 「ひゃ...ひ..((ドッゴン!)・・・・。」

 湯水の頬に有無を言わせずジャッキーの拳が振り落とされた、あまりの威力に頭から勢いよく地面に衝突した湯水は赤々とした拳の跡を残して気絶した


 [〜 そして現在へ 〜]


 こういう訳で現在の結果となったわけだが倒れ込んだジャッキーには起きる気配はない、するとそんな無防備なジャッキーに近寄ってきている者がいた

Re: スキルワールド ( No.55 )
日時: 2018/07/22 13:24
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 「お〜いジャッキー、大丈夫なのか?」

 「・・・・・・。」

 「おい龍紀!、全然起きねぇし体もボロボロで危険かもしれねぇぞ」

 「そうだね零、応急処置しかできないかもだけど大丈夫かな」

 「た...龍紀、ジャッキーは....大丈夫...?」

 「大丈夫だよ灯利、ジャッキーはこんな程度じゃ死なないから」

 「ゲッホ!ゲホ! そ...の言い方、酷いわ...ね..。」

 「あっ!ジャッキー、気がついた? それとごめんね、すぐに助けに来れなくて」

 「その前に...ゲホ、京八は?」

 無理に体を起こすジャッキー、まだ片目は血で染まって見えないが使える方の目で辺りを見回してみた

 「あ〜京八なら僕の後ろにいるよ」

 そう言って横に寄った龍紀、その後ろでは大きな寝息をたてて寝ている京八がいたのであった

 「こんのバカは、どうしてたかと思ったら今まで寝てたとはね」

 「まぁまあジャッキー、京八だって頑張ったんだと思うし許してあげて」

 「ちょっと許す前にアイツの顔に一発だけ良いかしら?」

 「えっと、あ〜・・・・どうぞ...。」

 「よしっ!、決まりね」

 この後、京八の叫び声はまるで断末魔の叫びのような声でしたとさ・・・・・。


 [〜 少し時間は進んで 〜]


 「ヒリ ヒリ)) 痛ってぇなジャッキー!、俺が何をしたってんだよ?」

 「へー、私が死を覚悟で戦ってたのにアンタは心地よく寝てたみたいね〜」

 「ただ寝てねぇよ! それはお前の誤解なんだって!?、俺も俺なりに頑張ったんだぜ?」

 「そうなんだー、それにしては怪我の一つも無いわね」

 ジャッキーの口から次々と京八への追求の言葉が飛び出してくるが、そこに龍紀が割って入ると話題を変えるためにこんな事を言った

 「ま、まぁジャッキー、その話は置いといて友間と蘇芳を捜そうよ、それにシセラならもう大丈夫だと思うよ」

 「えっ?、それってどういう事なの龍紀?」

 「まーそれはシセラの近くには友間と蘇芳がいると思うし、それに彼女もそろそろで友間のところに到着すると思うしね」

 「んっ彼女?、それって誰なの?」

 「んーと、何か『運命のパートナー』って言ってたと思うよ」

 「へー運命のパートナ・・・・・、えっ!って事は友間の“彼女”なの!?」

 「僕たちも聞いてみたんだけど、それについては彼女が口を閉ざしたままなんだよね」

 「まぁその事については置いとくとして、シセラが友間と蘇芳と一緒にいるのなら二人を捜しましょ、それにだとしたら土神もいると思うから恨みを倍返しで返さなきゃね」

 土神のことを考えてなのかニヤッと微笑んだジャッキー、だがその笑みには殺意を含まれている感じがして京八は苦笑いを浮かべたのであった

Re: スキルワールド ( No.56 )
日時: 2019/08/06 10:48
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 ・・・・・・ここは、場所が変わって土神と他3人のいる場所。時間帯は不明だが朝になるまで時間はかからないかもしれない


 「凄いじゃないか、まるで花火みたいだね」

 そう言った土神の視界には体の所々で高火力のガスバーナーみたいに炎が吹き出している燃えた友間がいた

 「・・・・・・数秒やる、その間にシセラから手を離せ....。」

 表情は顔が炎で覆われていて分からないが、たぶん土神を睨んでいるのだろう

 「かなりの自信過剰みたいだけど君の炎なんか無意み・・・・・・。」

 「これでもか?」

 土神の左肩を巨大な炎が過ぎ去り耳から肩全体を焼き焦がしたのであった、そして何より土神は驚いた

 「・・・・・・け、結構ヤバイかもね」

 「じゃあ次、行きますよ?」

 今度は指から細い炎が飛び出してきて土神の腹を焼き貫いた、しかし土神は傷口を塞ぐとシセラを自身の前に構えた

 「く、くるなら来い! シセラちゃんも巻き添いにできるのならね」

 「・・・・・・先に断っとくが、それをする覚悟はまだ俺には無いんでね」

 「なら大人しく炎を消すんだ!、そうすれば・・・・・。」

 だが次の瞬間に友間の右腕に炎が灯り土神へと巨大な炎が吹き出した

 「な! ちょっ、巻き添いに・・・・。」

 「だけど俺にはシセラを助けられる自信があります」

 すると炎が真っ正面から衝突する直前で急激に横にカーブして土神の背後へと消えていった

 「へっ.....??」

 「油断大敵ですよ、背後とかは特にですよ」

 それを聞いた瞬間に土神は後ろへと振り返ったが次に土神の目に入り込んだのは背後から迫り来ていた炎だった

 「これはヤバィ..((ドッバァアアン!」

 土神の背で爆発に似た衝撃が起こった、衝撃は体の表面を固めて耐えられたが想像を越えた炎の熱が土神の背を焼いた

 「ぐっ! こ、これは熱いね」

 「敵のこと忘れてて良いんですか?」

 「バッ)) !!...しまっ・・・・。」

 いつの間にか友間が目の前まで迫っており加えてシセラも何処かに消えしまっていた、そして土神の顔に友間の鉄拳がメリ込んで土神を後ろへと殴り飛ばした

 「ぅう〜!、急に人の鼻を殴るなんて非常識だね」

 「悪の組織のボスやってる方が非常識ですよ」

 友間は淡々とした足取りで土神に近づいてくる、これでもう流れが友間にあるが嫌でも自覚する事になった

 「まだ勝負はここからだ!((ブンッ!」

 「スカッ)) そうですか....。 ((バキッ!」

 「ギリッ)) ぐぐぅ〜....ま、まだ奥の手は残ってるんだよね、これさ!」

 土神は説明も前置きもなしに自身の腕に何かを刺した、そして体がみるみると肥大化すると手足の付いた4階立ての雑貨ビルぐらいはある肉の塊と化したのであった

 「もう人間ではないな」

 「ブゥーォオオォォオオオッ!!」

 「あっ!、こっち来た」

 巨大な肉団子のような拳が上から迫ってくる、すると友間は地面に手を付いて屈むと手足から思いっきり炎を噴射しロケットのように空に飛び出した

 「意外と飛べるもんなんですね」

 空中を飛行している友間、それを掴もうとしてるのか暴走中の土神は腕を大きく振っている

 「おっと! おおっと危ない!、それとコレどうぞ」

 友間はすり抜けるように土神の猛攻を回避して土神の頭らしき部分に降り立つと右腕の炎の火力を上げて眉間の部分に叩き込んだ

 「グゥゥーーォォオオォオオッ!!」

 「それじゃあ最後のケリを着けますよ」

 そう友間は言うと熱で溶けて欠けてしまった眉間の部分を見下ろすと右腕を構えて意識を集中させた

 「これで終わ・・・・。」

 「そうはさせないよ!!」

 「!....えっ?」

 最後の一撃を放とうとした瞬間、突如として暴れるだけの化け物と化した土神の中から裸の土神が現れたかと思うと両腕を伸ばして友間の首を絞めつけた

 「殺してやるッ!、お前を殺してやるッ!!」

 「すみませんが、もう手遅れです」

 「ま、待て! 待っ・・・・・・。」

 首を絞められた状態から振り落とされた拳、その拳から大規模を焼き尽くす炎が吹き出して友間の近くにあるモノ全てを焼いた





 ・・・・・・。





 あれから少し時間が経った、焼け野原となった港には化け物の焦げた死体とまだ炎に包まれている友間の姿があった

 「・・・・・。やっぱり生きてたりして?」

 ーーガサッ

 「!!....えっ、まさか!?」

 物音がした方へ顔を向けた友間、だがそこに立っていたのは土神ではなく見知らぬ長身の男がいたのであった

 「まさか、ストラングのたった一人の少年程度に負けるとはな」

 「アンタ、誰ですか?」

 悠然と立っている男からは自分に対しての余裕だけが感じる、そんな男の身長は2m以上そして銀色のジャージに黒のジーンズ姿だ

 「俺か....俺は“世界を塗り変える者”ドルス・シンだ。それと土神、いつまで寝ているつもりだ」

 「す...、すみませんドルス様....私の力不足でした.....。」

 焦げた化け物の死体から体の半分を焼失した土神が現れた、その土神の様子にドルスはフッと笑みを浮かべて土神へと近づき屈んだ

 「俺はお前の力量を見余ってしまったようだ、すまないな」

 そう言うと屈んだ状態で土神に頭を下げたドルス、その行動に土神は驚いたのか土神は口をただ動かしただけだった

 「それと、そんなお前に俺からの褒美だ、受け取れ ((スッ...」

 「えっ、あのドルス...様?」

 土神は自分の目と鼻の先に突き出されたドルスの手のひらを見て困惑した、そして次の瞬間ドルスの手のひらから影のような黒いオーラが突如として飛び出して土神の頭を槍のように貫いた

 「どう....して、ですか」

 「悪いのは俺だ、だが俺のこれから始まる計画には使えない奴はいらねぇんだよ」

 さっきまでの笑みから一変して悪人の笑みへと変わったドルス、そしてドルスの体から次々と黒いオーラが現れては槍のように土神を突き刺していった

 「あ、あぁ、やめ...ろよ」

 友間は目の前で起きている事に衝撃を受けて力のない声しか出せず動くこともできなかった

 「すみませン! 許し(グサッ ) 許して下さい(グチュ、グサッ」

 「俺はお前を許してるつもりだし最初から怒ってもねぇんだよ、ただ必要ねぇだけさ」

 「グサッ)) ァアッ! ヤメて下さ((グシュ」

 「おいッ!、やめろッ!!」

 「グサッ)) ん〜、やっぱ中々死なねぇなぁ」

 「いいから・・・・・、ヤメロッーーーーッ!!」

 そう叫びながら飛び出した友間、右腕に意識を集中させドルスの方へと向かう

 「んっ?、何だ?」

 やっと友間の声に気づいたのか振り返るドルス、だが振り返ったと同時にドルスに向けて怒りの鉄拳が友間から放たれた

Re: スキルワールド ( No.57 )
日時: 2018/07/26 13:21
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 友間の拳から爆発したかの様に炎が吹き出しドルスを炎と煙で包み隠した。煙で前が見えないが何かに触れている感覚はある、するとじわじわと右腕から痛みが伝わってきた

 「!!...痛ッ!、何だ!?」

 「『急に人を叩いちゃいけない』って親から習わなかったのか?」

 煙が晴れて目の前の視界が開ける、そして友間が殴ったのはドルスではなくドルスを覆っている黒い壁だと分かり加えて友間の右腕には何本もの黒い針が刺さっていた

 「いいか、この世にはルールや流れってのがある。『弱者が強者に歯向かうな』ってな、分かった?」

 そうドルスの声が聞こえたかと思うと目の前にあった壁が突如として消えてドルスの拳が友間の腹に打ち込まれた

 「ガッシャン!!)) ゲッホ!ゲホ!ゲホ!ゲホ!」

 「痛いか?、その痛みが俺とお前との差なんだよ。分かったら大人しくしてな」

 そう言って土神の元へと戻るドルス、そしてまた友間の耳に土神の悲鳴が聞こえてきた

 「・・・・・・くっそたれ!」

 そう愚痴を吐いてよろよろと立ち上がる友間、そして今度は両腕に意識を集中させた

 「グサッ! グシュ!)) まだ死なないのかよ、・・・・・んっ? 懲りない奴だな」

 「すみませんね、俺って変なところで頑固なんですよ」

 そう言って一瞬だけ笑うと友間はドルスへと飛び出していった

 「学習してないようだな、スキル『闇を呑む闇』」

 スキルの宣言をしたドルスの周りから黒いオーラが沸きだし次々に一本また一本と槍に変化しては友間に向けて放たれた

 「ドスッ! ドスッ!)) うっ!...すみませんね、俺って諦めが悪い時があるんですよ」

 体が槍の雨によって次々と貫かれていくも友間はスキルの効果と根性でドルスに向かって走っていた

 「この程度では死なないようだな、なら別のやり方でいこうじゃないか」

 そう言うとドルスは自身の右腕にスキルを纏わせて自分に向かってくる友間へと進んで歩いた

 「吹き飛ベェェエエーーーッ!!」

 「動きが荒く攻撃が単調だな」

 そうドルスは落ち着いて言うと、友間から放たれた一撃目を自身の右腕で弾くと左腕にもスキルを纏わせて友間から放たれた最後の一撃を防いだ

 「悪いが俺は距離を取るより近距離の方が得意なんだよ」

 「それは俺も一緒ですッ!!」

 友間はそう叫ぶと自身の足裏を爆発させてドルスの少し上まで上昇すると両手をハンマーのようにして両方の手に意識を集中させた

 「これで終わりだァァーーッ!!」

 突然の出来事にドルスは反応が遅れ、ただ上を見上げて目を見開いた。だがその直後に友間の体の炎が段々と弱まり最後には消えてしまった

 「えっ!何でッ!?、うわっ! ((ガシッ」

 今度は友間の方が動くのが遅れてしまい我に戻ったドルスに肩を掴まれそのままの勢いでドルスの拳が生身の友間の腹を貫いて後ろに血が飛び散った

 「がふッ!!、どう...して.....。」

 「ただ俺の方に運が傾いただけさ」

 そう言って友間の腹から自分の腕を引き抜くドルス、そうして友間の体を地面に放り捨てた時だった、ドルスの背後で瓦礫が吹き飛んだ

 「んっ?、何だお前は?」

 ドルスが視線を変えるとそこには京八でもジャッキーでも他の皆でもない一人の少女がいたのであった

 「私はシロ、そしてお前を殺す!」

 「ほう、今日は殺す奴が多い日だな」

 双方から殺意の押し合いが始まり今にも惨劇が起こりそうな雰囲気だった

Re: スキルワールド ( No.58 )
日時: 2018/07/27 10:50
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 ここは夜の港、その港の中を走り抜けていく一団のすがたがあった

 「おいジャッキー、なんで俺がお前を背負わなきゃいけねぇんだよ?」

 「仕方ないでしょ京八!、片目が使えないから距離感が掴みにくいし体の方も限界に近いのよ」

 「それにしては元気じゃねぇか?、それに何で俺がこうなってんだよ?」

 「それはアンタが寝てた罰でしょ!、私の方なんて間違ったら死んでたんだから」

 「俺も俺でかなり疲労感があるんだけどなぁ」

 「まあ京八もジャッキーもどっちも頑張ったってことだよ、それに今ここって危険だしね」

 そう言って二人をなだめようとする龍紀、すると遠くで爆発音が聞こえてきた

 「確かにそうね、それにシセラって大丈夫なのかしら」

 「蘇芳と友間を信頼しろうやジャッキー、シセラはきっと大丈夫さ」

 「そうだと良いんだけど・・・・・。」


 そうジャッキーが呟いた時だった、シセラを背負って走っている蘇芳とばったり会ったのであった

 「!!...し、シ、シセラァーーっ!!」

 「ワッ!、お....お姉... ちゃん?」

 京八の背から驚くほどの速さで飛び出したジャッキーは神速とも呼べるスピードでシセラに飛び付いていき二人仲良く地面に転がってしまった

 「良かったぁ〜、もうどうなるかと思っちゃってたんだから〜」

 「おいおいジャッキー、バリバリ元気じゃねぇかよ?、それと蘇芳も大丈夫なのか?」

 「私は大丈夫、それより・・・・。」

 「お姉ちゃん.....。友..間さんが....今..危ない....の..」

 「おいジャッキー!、こりゃ喜びに浸ってる場合じゃねぇぞ!」

 「分かってるわよ京八!、目にもの見せてあげるわよ....スー・・・・・。」


 “復讐劇・血”ッ!!


 ジャッキーの体から赤黒いオーラが現れる、そしてシセラから手を離して立ち上がると恐ろしい程に素早い動きで行ってしまった

 「・・・・・・やっぱ俺が背負わなくても良かったんじゃねぇか?」

 そう京八は疑問を呟くと無茶をしてスキルを発動し他の皆と一緒にジャッキーの後を追っていった

Re: スキルワールド ( No.59 )
日時: 2018/07/28 17:39
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 場所は変わってシロとドルスによる戦場地帯、空は少し明るくなっており朝までそんなに時間はかからないだろう

 「中々やるな、並の上程度にはな」

 ドルスはそう言うと、体のあちらこちらから黒い触手を出してシロに攻撃する

 「話はいい、お前を地獄の奥底まで生き埋めにする」

 シロはそう言ってドルスから伸びた触手に掌底打ちを喰らわしていくと次々と弾け飛んでいった

 「お前のスキルに少しだけ興味がわいた、一体なんなのか想像もつかないものだ」

 「そういうお前は攻撃のスピードが落ちているぞ」

 そう言って全ての触手を消し飛ばすとシロはドルスへ向かって走った

 「俺のスキルは長期戦には向いていないんだよ、まあ向いていないのであればサッサッと決りを着ければ良い話だがな」

 するとドルスから黒いオーラが消えてしまう、そして今度はドルスの体から更に濃くなったドス黒いオーラが吹き出した

 「さあ....、かかってこい」

 「何のマネだ?」

 シロは途中で足を止めてドルスを見つめた、そのドルスは両手を横にひろげると不敵に笑みをしてシロを見ていた

 「何って“ハンデ”だよ“ハンデ”、こうやってんのは今のうちだぜ?」

 「あとで後悔するなよ ((スッ....」

 シロは姿勢を屈めると弾かれたかの様にドルスへと飛び出していき殴る蹴るの暴襲を繰り出した


 ーードンッ! ドガンッ! ドバァン!


 「・・・・・・・・・・。」



 ドルスの体には次々とシロの攻撃が叩き込まれていった。だが何を合図にだったのかは不明だが、次の瞬間シロの溝落ちにドルスの一撃が入った


 ーーメキ.....!!....。


 だがシロが吹き飛んだ瞬間、ドルスも何かに弾き飛ばされたように後ろへ吹き飛んだ

 「私に殴られながら攻撃をしてくるとは少しだけ驚いた」

 「こちらもこちらで、お前を殴ったはずなのに俺自身に殴られた感覚がして驚いてるよ」

 どちらもそう言って煙の舞うなか立ち上がった、双方ともダメージというダメージは負っていないようだ

 「そろそろ本気で行こうじゃないかシロとやら、お前の力はまだそんな程度ではないだろ?」

 「ああ確かにそうだ.....、だがお前程度の者に本気を出すと思うか?」

 そう言ってドルスを見つめるシロ、その瞬間にドルスには恐怖とも呼べる緊張が体に走った

 「珍しい事もあるもんだな。ミイラ盗りがミイラになるとは聞くが、まさか殺すはずが殺されるかもしれない状況になるとはな」

 するとドルスの視線が突然シロから外れて自身の背後に移った、そして背後から向かってくるジャッキーを見た

 「アンタって敵よね?」

 そうジャッキーは言うとドルスの返答を聞く気もなしに攻撃を仕掛けた、しかしジャッキーの攻撃を軽々と避けるとドルスはジャッキーの首をワシ掴みにして地面へと勢いよく叩きつけた

 「また虫がわいてきたな・・・・・・。」

 そう言うと今度は横から現れた京八を蹴り飛ばすと次に血の剣で斬りつけきた蘇芳の剣を手で弾いて追加で殴り飛ばした

 「全くもって不愉快だ、そして邪魔だ」

 「いちちち、おい大丈夫かジャッキー?」

 「ええ大丈夫よ、でも頭がちょっとクラクラするわ」

 頭を抱えているジャッキーからは血が滲み出ていた、それを見た京八は少し心配になった

 「ゴミ虫が寄り集まった程度では俺を倒せはしない・・・・・。」

 ここでドルスは話を止めると周辺の温度が下がっていくのが分かり、次に今いる場所から飛び退いた


 ーーパキ!パキ!パキ!


 「チッ!、外しちまったぜ」

 そう言って現れたのは零、そしてドルスが先程まで立っていた場所には巨大な氷の塔が建っていた

 「この人数を消すのは面倒だな」

 「その前に私のことを忘れているぞ」

 ドルスは背後から殺気と痛みを感じて後ろを振り返ると、自分の横腹にシロの指が突き刺さり血が地面に垂れ落ちる

 「グっ!、これは不味いぞ」

 そう言って傷口からシロの手をふりほどくと周りから距離を取って膝を着いた

 「ハァ ハァ ハァ ハァ 我ながら滑稽だな、俺と“アイツ”との計画はこれからが始まりだと言うのによ」


 そう言ってから苦笑するドルス、そんなドルスの耳元に聞きなれた男の声が聞こえてきた


 「なら私が加勢してやろう」

 「ハァ ハァ ハァ ハァ じゃあ頼むぞ」

 「ああ、承知した」

 そう声がしたかと思うとドルスとその場にいた全員の目の前から荒れ果てた港の風景が消えて、次には全てが真っ白で平らな空間だけが広がる世界が現れた

 「珍しい事もあるものだな、まさかお前ともあろう者が膝を着くとはな」

 その声の主は奇妙な格好だった。180cmぐらいの身長をしており七三分けにした水色の髪は胸辺りまであり特注らしい白いコートを羽織っていた、そして極めつけに男の顔は水色のガラスで作られた仮面で隠れていた

 「油断した....というのは冗談だ、あの女に気をつけろ」

 そうドルスが言うと謎の男はシロの指先に付いた血とドルスの怪我を見て全てを理解したようだ

 「そういう事か.....。それと私はノア=デスオメガという者だ、そして”世界の新たな神になる者”だと脳裏に刻んでおけ」

 新たに現れたノアという男、そしてドルスの言っていた計画とは何なのでしょうか?

Re: スキルワールド ( No.60 )
日時: 2018/08/01 10:27
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 ここで一つ友間の現状を報せたい。友間は今、自身の精神世界に漂っていた、そして目の前には赤く燃えてる少女“エン”がいた


 「う〜ん、俺の人生って結構短かったなぁ〜」

 (「ま、まだ死んではいませんよ......今のところは・・・・。」)

 「今のところ.....か..。」

 (「そんなに落ち込まないで下さいよ友間様っ!!」)

 「あっ、ごめんねエン。やっぱり落ち込んでじゃどうにもならないしね」

 そう言って笑ってみせる友間、その笑顔を見てエンは少しだけホッとした

 「まーそれじゃあ状況の把握だけど、俺の体ってどんな状態なの?」

 (「はい.....体の状態は一言で言ってしまえば深刻です。何とか私の力を干渉させて延命をしていますが、外部からの治療をしなければ数分ぐらいで死んでしまいますね」)

 「んー・・・・、じゃあ事態は深刻って事だね。あっ!、ところで俺が使ってた『“性質ノ解放”』って結局はなんなの?」

 (「それはですね、簡単に説明すれば性質を最大限に上昇させるもので.....いわゆる覚醒といった感じです」)

 「じゃあさ、炎の他にも使えるの?」

 (「たぶん使えはしますが、彼女たちが友間様を認めてくれるかが......。」)

 「えっとー、エン以外の性質の子のことだよね?、その前に認めるって?」

 (「はい、友間様のスキルは普通のスキルとは別物であり性質の一つ一つに意識があってそれぞれの意思があります。いいですね?」)

 「うん。それで問題は何なの?」

 (「えーっと...。私のように友間様の前に現れる事ができるのは友間を認めてる者だけなんです!」)

 「え?、でも他の子は寝てるとか言ってなかった?」

 「寝てはいますが意識はあるんですよ、寝てる状態では実力の半分も出せませんが友間様をスキルを保持する者として認めれば目覚める事ができるんです!」

 「あの〜近いんだけど、エン」

 (「はっ!、スミマセン! つい話に熱が入ってしまいました」)

 「まぁ、つまり性質に俺を認めてもらえば司ってる性質の力を解放できるって事で良いかな?」

 (「はい! そうです! その通りですよ友間様!!、あっ! それと言い忘れてたのですが性質の解放は短時間しか発動できないのが難点なんですよね」)

 「あー、だから急にスキルが解けたんだ」

 そんな事を言って自分なりに解釈できた友間だったが、そこに誰かが現れたのであった

 「えーと....?、アナタは誰ですか?」

 「やっと面と向かって会えました、友間“様”」

 「えっとー、何か知ってるエン?」

 (「いえ、私にもどうして彼女がこの世界に侵入できたのか疑問です」)

 警戒したように目の前の白髪の少女を見つめるエン、それに対して少女の方も応戦する

 「あのー、火花を散らしてる所で悪いんだけど。まずエンは落ち着いてね、それとアナタは誰ですか?」

 「私の名前はシロ、友間様を御守りする従者として来た者です」

 「・・・・・・・今まで色々と変な出来事とかに出会ってきたけど....、ちょっと整理する時間をくれない?」

 「いえ無理です、早くここから出なければなりませんので」

 「えっ?、どういう意み...うわっ!」

 友間が言葉を言い終わる前にシロと名乗った白髪の少女は友間を抱っこすると上へと勢い良くジャンプした

 「しっかり掴まっていて下さいね」

 そうシロが言ったかと思うと二人は消えていってしまった


 [〜 少し時間を戻します 〜]


 ここは全てが白い世界、そこにはノアという謎の男が立っていた


 「ここは電脳世界、色んな情報が出回ってて便利だぞ」

 そう言ってノアが空中に手を伸ばすと小さな画面が現れて様々な映像が流れ始めた

 「情報は武器だ、だがそれに相応しい武力を持っておかなければ意味がない」

 「お前は何が言いたいのだ?」

 そう殺気をバンバン放出しながらノアに訪ねるシロ、するとノアは画面から顔を反らすと素顔の見えない顔でこう言った

 「つまり、情報を殺すことなく活かせられる程の実力を持ってなければならない....という事だよ」

 そうノアが言ったかと思うと電脳世界の地面が揺れだしてノアの背後から巨大な何かが砂煙を舞い上がらせながら現れた

 「こいつの名は『デスオメガ』、この電脳世界の番人であり全ての物の破壊者だ」

 そう言ってノアの背後から現れたのは高層ビルにも匹敵する程の巨体をしており、片手には槍もう片手には鎌といった絶望と滅亡を象徴したかのような装飾品とローブに身を包んでいる死神が現れたのであった

 「お、おいジャッキー、これって状況的にヤバくねぇか?」

 「た、確かに正面からじゃ確実に無駄死にするわね。龍紀の意見は?」

 「ぼ、僕は逃げるに一票」


 そんな感じで視界の奥にいる死神に対して全員が死しか感じていない所へ、シロが一言呟いた


 「お前たちに頼みなのだが、少しの間だけ時間を稼いでくれないか?」

 「んっ?、何か作戦でもあるの?」

 「お前は確かジャッキーと言ったか?、最初に断っておくが作戦などはない」

 「えっ?、じゃあどうして私たちが時間を稼がなきゃなんないのよ!?」

 「まずは友間様の治療から済ませなければならないからだ」

 そう言ってシロは視線を友間へと向けると皆もその方へと向けた

 「確かにね。あのまま死んでもらっても罪悪感がするしね」

 そう言ってジャッキーは頭を掻いた後、山のように立ちはだかっている死神へと体を向けた

 「いちょう稼げるだけ稼ぐけど期待しないでよ?、それと治療ってどうやってやるの?」

 「そこら辺は大丈夫だ、方法は一つしかないしな・・・・・。」

 そのシロの言葉を聞いて皆は頭にハテナマークが浮かんだが、気にせずシロは友間へと近づくと何故か頬が少し赤かった気がした

 「では...。失礼します」

 そう言ってからシロは友間の唇へと前置きなしにキスをした、そしてその様子を見てジャッキーは反射的にシセラの目を塞いでしまった

 「「「「・・・・・、えっ!!?」」」」

 少しの間のあと皆から驚いている声が聞こえてきたのであった

Re: スキルワールド ( No.61 )
日時: 2018/08/05 18:41
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 友間は今、白髪の少女ことシロと一緒に自身の精神空間を移動していた


 「一つ聞いていいかなシロ?」

 「はい、何でしょうか友間様?」

 「えーっと、その前に“様”付けはやめてくれないかな?」

 「分かりました友間さん」

 「・・・・・まあいいや、ところで俺の唇がさっきから変な感じするんだけど何か知らない?」

 そう言ってから自分の唇を動かす友間、その様子を見てシロは紅潮しながら言った

 「え....あ..の..、私と..今...キスを・・・・・。」

 「えっ、何って言ったの?」

 「かぁ〜))....わ、私とキスしてるって言ったんですッ!!」

 「・・・・・状況は何となく理解できたんだけど、色々と複雑だね」

 「ある程度の接触をしなきゃ友間さんの体に干渉できなかったので....。」

 顔をなるべく友間から反らして喋っているシロ、綺麗な白髪に反して少しだけ見えるシロの耳は赤かった

 「ま、まあ俺を助けるためにしてくれてるなら嬉しいよ」

 「かぁ〜)) そ、そうですか・・・・・。」

 そんな感じでシロと友間が話していると、遠くの方から差し込んでくる光が見えた

 「やっと着きましたか。それでは行きますよ?」

 そう言って友間の手を強く握りしめるシロ、そして二人は勢いよく光へと飛び込んでいった



 ◆・・・・・・◆・・・・・・◆・・・・・・。



 「・・・・・・んっ?、眩しい....。」

 「起きたようですね、友間さん」

 横になっている友間の目の前には目線が少し泳いでいるシロがおり、顔がまだ赤かった

 「ご、ごめんねシロ。無理させちゃったみたいで・・・・・・・。」

 そう言って体を起こした友間の目には真っ白な空間、そして真っ白な地面に倒れる皆の姿だった

 「はっ?・・・・・・、皆...?」

 倒れている皆の横には巨大な槍が刺さっていた、そしてその持ち主はすぐに分かった

 「アイツが・・・・・・ッ!」

 遠くの方に見えるのは巨大な死神らしき怪物、そしてその付近にたたずんでいるドルスともう一人の姿が確認できた

 「ギリッ)) 殺すッ!、性質<炎>ッ!!」

 目の前に見えるモノへの怒りで立ち上がりスキルを発動する友間、そして体に無理をして“性質ノ解放”を発動しようとした時だった

 「ここは私が殺ります、友間さん」

 「いや、俺が殺る!」

 「私的には起きたばかりの体で戦うのはオススメしません」

 その言葉で気づいたのか友間は自身の体を見下ろした、すると体が恐怖でなのか疲労からなのか震えていた

 「では、待っていて下さい友間さん」

 「えっ!ちょっ! まだ俺は大丈夫だよっ!?」

 そう言ってシロを止めようとした友間、だがシロは一旦立ち止まると振り返ってこう言った

 「大丈夫です友間さん、それに私もちょっと怒っているので」

 その目には自身の意見に対して否定をさせない程の怒りを宿していた、これを見てしまっては友間の選択は一つだけになる

 「分かった、無理しないでねシロ」

 「はい、では少し失礼します。」

 そう言って飛び出していったシロは空中を高く舞って目標の人物に向かって標的を定めた

 「んっ? ドルス、あの子ってこちらに向かってきてないか?」

 「それはお前が狙われてるからだろ」

 そうドルスは言って遠くから飛んで向かってくるシロに対して嫌悪混じりにスキルを発動させた

 「チッ!、今日はホントに厄日だな」

 そう言ってドルスは屈むとシロの飛んでくる方へと超人的なスタートダッシュを決めて跳躍した

Re: スキルワールド ( No.62 )
日時: 2018/08/08 11:22
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 シロとドルスは空中でぶつかると争いながら130m下に見える真っ白い地面へと落ちていく


 「仲間を傷つけられて怒ってんのかよ?」

 「いや、友間さんを殺そうとした件に関して怒っているのだ」

 そう話しながら二人は地面に落下し砂煙が舞った、だが二人の戦いは激化を増しながら続いていた

 「クソッタレ!、俺の力は計画の最後まで温存しておきたかったんだがな」

 「心配するな、その心配はすぐに必要無くなるぞ」

 そうシロが言って次の瞬間にはドルスが身構えたのも束の間に肩から腹にかけて大きく肉を抉られたのであった

 「!!.....ゴッホっ!」

 「そう楽に殺されるとは思うなよ」

 シロはドルスの体を引き寄せてそう言うと顔に一撃を入れてこう呟いた

 「死んでいようが生きていようが地獄の奥底まで後悔してもらおう」

 「ちょいちょい、デスオメガのこと忘れてるよ」

 シロの真横でノアの声が聞こえ真上からは巨大な影が突然として現れてシロは上を向いた

 「これはまた面倒なものだな」

 シロの目線の先には死神の鎌が迫ってきておりシロと共にいるドルスは目を見開いた

 「馬鹿ッ!?、このヤロっ!」

 ドルスのそんな声が聞こえたと同時に巨大な鎌が振り落とされ地面が断裂し轟音が響き渡った

 「...うむ、まだ生きてたようだな」

 そう探偵のように喋るノアの首筋にはシロの手が突き付けられており仮面の奥にある頬から冷や汗が垂れ落ちた

 「・・・・・それと、ドルスも生きててくれて嬉しいよ」

 「お前は毎回行動が危なっかしいんだよ!、危うく死んでるところだったろッ!」

 そんなドルスの声が聞こえまだ砂煙の舞うなかから人影が現れて髪が乱れたドルスの姿が現れた

 「まあ結局君は生きてたんだし水にでも流してくれよ」

 「私がいるのを理解しているのか?」

 そう言ってノアの仮面を軽く切ってみせたシロ、しかしノアは冷静な態度でこう言ってみせた

 「ああ、充分に理解しているよ...。」

 すると次の瞬間にノアの姿が揺らぐと砂嵐が消えるようにシロの目の前から姿を眩まし、シロの背後から誰かの気配が出現した

 「バッ))!!.......、後ろか...。」

 シロは体を捻って反転させると後ろにいる人物に向けて拳を放った、だが一歩遅れてノアの姿が再び消えた

 「またか...、お前も小賢しいマネをするのだな」

 「正面からでは勝てない相手に真っ正面から突っ込むのは無益な勇気だ。そんな相手には少し崩していく方法が良いからな」

 そう言ってノアの姿が電脳空間のあちらこちらに現れては消えていった

 「面倒だ、押し切らせてもらうぞ」

 そう言ったあと片足を振り上げたシロ、そして脚を思いっきり振り落としたのだが地面に衝突する直前にシロの脚を地面から突然に出現した大量の真っ白い棘が一斉に襲ったのであった

 「ぐっ!!、この程度では・・・・・・」

 「どうかな? ((パチンッ!」

 指を鳴らしたノア、すると今度は太い槍のような棘が何十本も地面から飛び出してきてシロの体を次々と貫いていった

 「ゴッポッ!、・・・・・・まだ.....」

 何十にも及ぶ棘に刺されながらもシロは最後の力を振り絞って体を貫いている槍の柱を掴むと両方の手で握り潰した

 「まだ暴れられるとは恐ろしいものだ、まぁそれも時間の問題だがな」

 そう言うとノアは視点をシロから反らすと直立したままのデスオメガに視点を変える、そんな時ふと思った事があった

 「ところでドルス、友間とかいう子供はどこへ行った?」

 「さぁな、俺の知ったことではないからな、ところで・・・・・」

 ドルスの話が途中だったが、真っ白な地面から全身が真っ白い友間が飛び出してきて攻撃をしかけてくるがノアはそれを体を反らして回避すると目標を定めて身構えた

 「どうやら下に隠れていたようだな、それに体の色も変わったようだな」

 「...性質<電脳>、この電脳世界の性質を取り込んだ。」

 「面白い、ならその実力を試してみようじゃないか ((パチンッ!」

 ノアが指を鳴らすと大量の棘が友間を襲う、しかし棘が刺さったかと思うと友間の姿が揺らいで突き刺さること友間の体を通過した

 「じゃあ、次は俺からいくぞ」

 そう言って腰を屈めると両手で地面に触れる友間、少しの時間が流れたあと友間を中心にして地面が巨大な触手のような形に変貌しドルスとノアを襲ったのであった

 「チッ!、ったく!『闇を呑む闇』ッ!!」

 「逃がすかよッ!!」

 そう友間が叫ぶと触手を回避しようとしたドルスの脚に新たに現れた別の触手が巻きついて次々と他の触手も絡みついてきた

 「うっ!!、こりゃ中々絞めが強いな」

 段々と強く絞めつけてくる触手は追い討ちをかけるように上空にドルスを持ち上げると急降下で地面に叩きつけて気絶させた

 「ん〜、ドルスが気絶してしまったか。ではデスオメガ、お前の出番だ」

 そうノアが指示を出すとデスオメガの手に離れた場所に突き刺さっていた槍が出現して友間のいる方へ鎌と共に振り落とされた

 「・・・・・邪魔だ、消えろよ...。」

 すると友間のすぐ横から巨大な片腕が出現してデスオメガの攻撃を何とか防いでくれた、そして次には白い巨人の上半身を模したものが形を成してデスオメガと対峙した

 「ノア、殺す前に聞いてやるがお前の言っていた計画ってのは何なんだ?」

 「・・・・・・ハハハ、言うわけないだろお前のような雑魚にはな」

 「何に言ってんだお前は?」

 「デスオメガ、そろそろ本気を出しても良いぞ」

 それが合図だったようにデスオメガは雄叫びを挙げると巨人の半身を掴んだ、すると徐々にデスオメガと対峙していた巨人の半身から嫌な音がして崩れていき粉々にしてしまった

 「デスオメガ、次の相手はコイツだ」

 友間へと伸びているノアの腕、その様子を確認するとデスオメガの槍が迫ってきた

 「クソがッ!!」

 地面から巨大な壁を作成して身を守ろうとする友間だったがデスオメガの槍はそれすらも貫通し目の前へと迫ってきた、そして友間は死を覚悟で目を瞑った




・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




 「・・・・・・・・・、えっ?」

 友間は異変を感じて思わず目を開けた、すると目の前から真っ白な電脳世界が消えて元いた場所の荒れた港の風景が目に入り込んできた

 「・・・・・・・・・?、どうして...?」

 困惑して辺りを見回した友間の目に一人の女性の後ろ姿が見えた、そしてその女性は友間がよく知っている人物だった

 「お...、お姉ちゃん...!?..」

 「ヨッ!友間、それともう大丈夫だよ」

 呆気に取られてしまっている友間、そんな友間に振り返って優しい笑顔で話しかける美香の姿があった

Re: スキルワールド ( No.63 )
日時: 2018/08/14 17:10
名前: マシュ&マロ (ID: BB67RT0Y)



 「アンタらが今回の黒幕ってとこかい?」

 そう言うと美香は目の前の気絶したドルスを背負うノアに少し威圧的な口調で聞いた

 「いかにも、こんな姿ではあるが今回の元凶であり後に起こる事の元凶でもある」

 「へー、今度は何するのか楽しみだわね」

 「まあいい、俺達はそろそろ身を引かせてもらうぞ」

 そう言ってノアは電脳世界に移動するためスキルを発動しようとしたのだが・・・・・・。


 「?、・・・・・これは....?」

 「あーまた電脳世界とやらに引き込まれたら面倒だから一時的にスキルを封印してある」

 「チッ!、また今度は厄介なことを」

 「そう怒るなって、ほんの一時間で元に戻るぞ?。まぁ生きてたらの話だけどね」

 「俺をこの場で殺そうという魂胆か?」

 「いいや違うねぇ、私が言ってるのは『コレ』の話」

 そう言って美香の手にリモコンのようなモノが現れ、美香はさらに話を続けた

 「確かドルスって方の部下に土神っていたよね?」

 「ああ確かにドルスの部下にいたが、それがどうした」

 「そしてその土神が友間たちとゲームを楽しむために港全体に爆弾を仕掛けているのよね、この意味が分かる?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・まさか」

 「そう! その通り、そして私が今持ってるのが起爆スイッチでありスキルを発動できないアンタの命を握ってるわけ」

 「まさか、このような形で追い詰められるとはな」

 「そゆこと。これでアンタらがこの世から消えて少しは世間が大人しくなるってもんね」

 「なら、サッサッと押してお前は弟と一緒に道連れになるがいい」

 「そこんとこは心配ご無用、ベッ ((カチッ!」

 スイッチが押されノアの目の前から友間と舌を出している美香の姿が消える、そのとたんノアの周りで爆発音が聞こえノア自身も爆発に巻き込まれたのであった





 [〜 場所は変わり時間も過ぎる 〜]





 友間は今、なぜか布団に眠っている自分自身を夢の中で見ている状況だった

 「・・・・こんな変な夢も見るもんなんだな?」

 そう友間が言っていると夢の中で誰かに思いっきり頬を引っ張られた感覚がして目を覚ました

 「いでででででで・・・・・、ってかココは?」

 すると友間の目に頬を引っ張って遊んでいる美香の姿が映った

 「お姉ちゃん....、何してるの?」

 「んっ?、ああ暇潰しでね♪」

 「いやいや、普通は寝ている弟の頬を引っ張ったりしませんよ」

 そんなツッコミを入れながら起き上がった友間、それと戦ってる最中は気づかなかったが友間自身かなり疲労が溜まっていたようだ

 「あー体が重いし頭がだるく感じる、あっ! それと京八やジャッキーは?」

 「んっ、えーとアッチだ」

 美香に指で示された方を見てみて友間は安心した、皆はぐっすり眠っていた

 「良かったぁー」

 「安心するのも速いぞ?、京八の場合は背骨に亀裂があるしジャッキーの方は片腕の骨折に更には片目に血が付いてるから間違ったら失明の可能性があるな」

 「ストラングには報告したの?」

 「いや、私のタイミングでやろうかと思ってな」

 「そこは速くやってよお姉ちゃんッ!?」

 「はいはい分かった友間、今やるよ」


 そう言って美香は自身のスマホを取り出すとストラングの基地に電話をかけた


 [〜 ストラング 〜]


 「んっ?、もしもし美香か? 任務を任せてから1週間ぐらいになるが元気にしてるのか?」

 そう言って美香からの電話に出たのはストラング基地の所長である金森 剛ことボスだった

 「んっ、アイツらがとうとう任務を完遂したのか!?。思ってたより早いな、えっ? 怪我人がいるのか・・・・・ああ分かった直ぐに手配する」

 そんなボスのところへ別の着信が来たのであった

 「悪いな美香、別の着信が入ってしまった・・・・・・・何だよそう怒るなって、じゃあまたな((ピッ!」

 そう言って美香からの電話を切るともう一方からの電話をとった

 「金森だ・・・・・・んっ、まだ事態は収集が着かないのか・・・・・分かったすぐに向かうよ」

 そう言ってボスは誰かからの電話を切ると早足で何処かへと向かった


 [〜 少し時間が経って 〜]


 ボスは何か急いだ様子で廊下を通っていると立ち止まって何かの部屋に入っていった

 「事態の状況は今のところどうなってるんだ」

 ドアが開いて中へと入るボス、そう言っていると近くにいた研究員らしき人物からこう言われた

 「何者かが強引にストラングの内部情報に侵入しようとしているのですが、あまりにも強力すぎて時間を稼ぐので精一杯です」

 「ウラジミールは呼んであるのか?、アイツなら何とかできるはずだ」

 そう言ってボスが目の前にある巨大なスクリーンに映っている砂嵐を見ていると研究員にこう告げられた

 「いえ・・・その...、ウラジミールは外部からの任務で席を空けていまして」

 「あーこんな時にか、まあいい出来る限りで侵入されるまでの時間を稼いでくれ、そしたら・・・・・・」

 「ボスッ!!、突破されましたツ!」

 その声が聞こえて向き変えるボス、するとそのとたん部屋の照明が消えて非常用の照明が弱々しく辺りを照らした

 「一体どうなってるんだ、.....早急に警備隊を巡回させろ、それと研究員は電源が戻りしだいに事態の対処を急げ!、残りは俺と一緒に基地の心臓部の確認をしに行くぞ!」

 そうして作業を開始しようとした時だった、巨大なスクリーンに水色のガラスで作られた仮面を着けている男らしき人物の顔が現れた

 『やあストラングの諸君、我はノア・デスオメガである』

 「何だこのふざけた格好をしている奴は?」

 『ストラングの所長である金森 剛に告ぐ、「貴様らにとっての安らぐ場所などもうすぐ無くなる」これは警告ではない予言である。』

 そう言い残して画面から消えたノア、そのあと電源が戻り部屋が明るくなる


 「・・・・・・ノア・デスオメガ...。」


 ボスはそう呟き一人その名について考え込んだ・・・・・・・。





      【第一・完】