ダーク・ファンタジー小説
- Re: スキルワールド ( No.100 )
- 日時: 2019/02/17 23:28
- 名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)
友間の従者であるシロは今、群がってくる異形のゾンビ達を紙でも千切るように両手で裂いては瓦礫の方へと叩きつける。
「チッ! 数が以上に多いな、私を足止めするためか」
掴んでは裂いて、群がってくるゾンビに投げ捨てるの繰り返し。シロは主人の安否を気にかけていたが、今の自分が行けばこのソンビ達を連れて行くことになり主人に迷惑が掛かるのだと悟っていた、だから無尽蔵に湧いてくるソンビ達を殺し尽くす必要があった。
「待ってて下さいね、友間さん」
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「はっくしょんッ!、今頃になって風邪をひくのは嫌だな」
「おい黒奈っ!、危ねぇぞッ!?」
京八に強く肩を掴まれ後ろの方へと投げ飛ばされ、一歩遅れて化け物の拳が降り下ろされた。
先程までの場所にいたら間違いなく潰されていたと思い、不意に悪寒というものが走った。
「ところで黒奈、どうして俺らあんなのと戦ってんだ?」
「えっ、今更!? でも京八って途中まで行方不明だったしね」
「そうなんだよ、伊月に脚をちょっと抉られちまって逃げられはしたんだが、止血するためにスキルで傷口を焼いたら痛みのあまり気絶しちまったんだよな」
「だったら何でここが分かったの?、ここって町から離れてるし木々とかも茂ってるから」
「あー何か、森の中に身を隠してたら見つけた。それで急にデカイ音がしたから見てみたらユウとダンを見かけたんだよ」
そう京八が言った直後、化け物の乱入で話が中断されてしまった。回避していた二人は埃の舞うなかでそれぞれのスキルを使用して化け物に攻撃を食らわす。
「それで屋敷の中に入ろうとしたんだが、今度はキグルミさんが窓から飛び出してきたりしてビックリしちまったぜ」
「こっちの状況を言うとニコラが裏切ったと言えば良いのかな?、だけど色々あってニコラの救出をしてるとこ」
「OK!、状況は何となく分かった。そんで目の前のフリストとか言う奴をぶっ倒せば良いんだな」
京八はそう言うと腰を低くして眼前に見えるフリストへと標的を合わせた。そして一呼吸を置くと自身のスキルで体に電気を流して強化するとフリストに向けて飛び出した。
「若いって恐いものだね、まぁ若さなりの単純さがあるけどね」
フリストは京八の突進を寸前で体を捻って避けると体の回転を活かしたまま通り過ぎていく京八の背に手刀を浴びせた。
「痛てッ!、おいおい俺の背骨ってまだ完治してねぇんだよ!」
「おっと、これは失礼な事をしたね」
4ヵ月前の出来事が脳裏にチラつきつつ身構えた京八、まだ背骨のヒビは完全には完治していない状態で戦うのは勝つという要素も含めれば不可能に近いだろう。
「痛ててて、これは背骨の傷が開いちまったな」
「京八!、大丈夫なのっ!?」
「モチのロンだぜ黒奈、こっからが俺の本領発揮だ!」
「怪我を庇いながら僕と戦うつもりかい?、なら退場をオススメするよ」
「俺からの答えはノーサンキューだぜ!、それにお前を倒したら庇う必要なんてないだろ!」
威勢よく踏み出した京八はまず最初にフェイントで蹴りを放つ、京八は避けられる前に放った脚を一旦退いて床を強く踏みしめると前へ飛び出して右ストレートを打ち出した。
放たれた右腕はフリストの肩を掠めただけだったが拳の通り際にフリストの肩をガシリと掴んで自身へと引き寄せた。そして引き寄せられたフリスト顔には驚きの二文字だけが塗り潰していた。
「歯ァ食いしばれよッ!!」
「ちょ...待っ・・・・・・!」
ーーメキッ!!
フリストの頬に京八の放った左の黄金ストレートが炸裂した、そして京八の発していた電気がフリストに放電して京八とフリストとの間で強烈な火花が散った。
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「ふぅー、いっちょ上がりだな」
気絶しているフリストを横目に尻餅をついている京八、主人の意識が途切れたせいか先程まで暴れ狂っていた化け物も糸の切れた操り人形のように屋敷の屋根に突っ伏していた。
「そんで黒奈、これからどうするんだったけか?」
「ニコラを助けに行くつもり、でも敵意剥き出しだったから自信はないかな」
「それはそれで良いんだが、あっちにいる伊月とその姉の方はどうするんだよ?」
「ここで待ってもらうか、後でユウとダンに合流して保護してもらうしかないかな。伊月の方は気絶しちゃってるし」
「そうか、ならニコラを説得したらシロとキグルミさんを探して一件落着だな」
疲れが今頃になって追いついて来たのか京八は苦笑いし自身の背中をさすった、友間の方もスキルが強制的に解除されて体が生身に戻ると床に倒れるような形で休憩をとった。
「シロの方も大丈夫かな?、ちょっと心配」
「シロなら無事よ一応、それよりも自分の心配した方が良いんじゃないの友間?」
その場にいた京八と友間は声のした方へ迷う事なく体を向けて身構えた。視界の先に見えたのは動きのないシロを引き摺りながら現れたニコラの姿だった。
「安心して下さい、少し眠ってもらってるだけですから」
「ニコラ、どうして君が敵になるの?」
「友間、あなたからの質問の意味が分かりませんね?」
「君は少し前まで仲間だった、それなのに今は敵になってる・・・・・・。」
「勘違いしないで下さいよ、私は誰の味方でもありません。むしろ全てに敵対する存在と言っても良いでしょうね」
「じゃあ、どうして君は・・・・・・」
「質問が多いですよ、私はただ取引をしに来たんです」
「もし拒否すると言ったら?」
「あなたの存在ごと私のスキルで消し去ります、これは最後の忠告です。私と取引しなさい」
「・・・・・・分かった、取引の内容は何なの?」
「フリストとシロとの交換、そして私の存在はストラング内部では“殉職”という事にして下さい」