ダーク・ファンタジー小説

Re: スキルワールド ( No.101 )
日時: 2019/03/30 13:08
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「私を殉職という事にして下さい、それが私からの条件です」


 「ニコラ、君のスキルなら事実を捻り曲げるなんて簡単なんじゃないの?」


 「もちろん、そんな事は簡単なのですが私も私なりにスキルに頼ってばかりは嫌なだけです」



 そう言って近寄ってくるニコラ、小柄な体でシロを抱えているニコラに対して少し面食らい気味な友間だったが気を取り戻すと眠っているシロを受け取る。



 「それじゃあ殉職の件はお任せします、くれぐれも私を悲しませないで下さいね」



 ニコラが小声で何かを呟き直後にフリストの姿が消えた、ニコラは冷えきった眼で友間と京八を見据えると不意に視線を反らした。

 どうしてあんな冷たい眼になってしまったのか、友間は少し悲しくなり一人の人物の事を思い出した。



 「カマキリ.....」


 「えっ、今なんて?」


 「あっ! いや!、なんか母親を殺した人の事を思い出しちやってさ」


 「あなたの母親を殺したのはカマキリという名前なんですね.....」


 「う、うん。それがどうしたの?」


 「・・・・・・ある組織があなたの事を狙ってます。....気をつけて下さい」


 「あ、ありがとニコラ.....」


 「それと勘違いしないで下さいよ、ただ次に会う時まで誰かに殺されていて欲しくないだけなので。あなたを殺すのは私ですから」


 「・・・・・・どうして俺に、そんなに怒っているの?」


 「さあ、どうしてでしょうか。何故かあなたを見ていると怒りが込み上げてくるんですよ、私の消えた記憶に関係しているのかもしれませんね」



 ニコラの言葉に引っ掛かりを覚えて問いかけようとしたが、既にニコラの姿は消えており友間は何処かやるせない気持ちでいっぱいになった。



 「まっ黒奈、済んだ事だし引き上げようぜ」


 「・・・・・・・うん、そうだね....京八」


 「ところで黒奈、背骨が痛くて歩けないから肩貸してくれないか?」


 「分かったよ京八、それと今度こそは絶対安静だからね?」


 「分かってるよ。っていうか安静にしてないとジャッキーに追加の骨折をプレゼントされるからな」



 苦笑いを見せつつ友間に身を任せる京八、そんな京八に対して友間も苦笑を投げ掛けていると屋敷全体に揺れ響くような轟音が鳴り響いてきた。

 脳裏にハナテを浮かべている二人だったが、屋敷自体が突如として消えて悲鳴にも似た声を挙げて二人仲良く落ちていった。



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 「痛ててて、お〜い黒奈。大丈夫か?」


 「う、う〜ん。平気....たぶん」


 「だ、大丈夫ですか、お二人とも...?」


 「ど、どうも美琴さん、なんとか.....」



 友間はそう言ってゆっくり立ち上がる、どうやら屋敷の欠片が残っていた事が幸いして比較的にあまり高い位置からは落ちなかったようだ。



 「ほら京八、肩を貸すから立って。それと美琴もよく無事でしたね」


 「伊月が助けてくれたの、でも伊月が怪我を負ってしまって.....。」


 「こんな程度の怪我、俺にとっちゃ目に止める程もないぜ」


 「なに強がってるのよ!?、ほらお姉ちゃんに見せてごらんなさいっ!」


 「痛たたたッ!! 姉さん痛いからっ!?、離してよちょっと待って!」


 「もう、強がってるからよ伊月。辛いならお姉ちゃんに甘えたって良いのよ」


 「・・・・・・姉....さん...」


 「こりゃ見物だな黒奈っ!」


 「こーら!、姉弟の話なんだから遠くで待ってよう」


 「あ〜っ!、せっかく面白くなりそう雰囲気だったのによ〜」



 友間に引き摺られてその場から遠ざかっていく京八、それを他所に伊月と美琴は気不味そうに顔を合わせた。



 「その....悪かった姉さん、あの....」


 「大丈夫、あなたが間違えたって私と伊月が姉弟である事に変わりはないもの♪」


 「その....本当に・・・・・・」



 気づかぬ内に目から涙が溢れ出てきて泣いていた。何を間違っていたのか伊月の心の中で疑問が浮かんだ、そして更に泣いてしまった。



 「大丈夫よ、お姉ちゃんはいつだって・・・・・・」



 もらい涙なのか美琴自身も泣いてしまっていた。これで全てが丸く収まったとは到底言えないが二人の平穏だけは戻ってきたのではないだろうか。



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 「そんで伊月の奴がよ、俺の脚を掴んでから・・・・・・おっ!、ユウとダンじゃねぇか!? 調子はどうだ?」


 木陰で休んでいた友間と京八、そこへユウとダンが疲れた様子でこちちに笑みを投げかけてきた。



 「上々だよ、それと大変だったよね『僕』」


 「ああ、ゾンビの襲来に屋敷の倒壊。末には屋敷自体が消えちまったからな」


 「ごめんダン、ニコラは助けられなかった」


 「・・・・・・・・まぁ失敗してからの成功だからな、そんな時もあるよなユウ?」


 「そうそう、人生って長いんだしね♪」



 その言葉で少し友間の気持ちは落ち着いた。ところで誰かを忘れてはいないだろうか友間?、許嫁とやらを放ったらかしにしてはいないだろうか?


 「あれ?・・・・・・・・あっ!、シロ!?」



 ふとシロの事を思い出した友間、軽く混乱しつつも瓦礫の積もっている方へ顔を向けると体に無理を言ってそちらの方へ飛び出して行った。

 だが友間が瓦礫の中に飛び込もうとした直後、爆発にも似た衝撃波が起こり瓦礫の波が友間の体を飲み込んだ。すると瓦礫の中から白い腕が伸びてきて友間の腕を万力の力で引っ張った。



 「大丈夫ですか、友間さん?」


 「ゲホッ! ゲホッ!、何とか無事だよシロ」


 友間はそう言って苦笑いを見せると瓦礫の中を掻き分けて埋まっていた下半身を救い出した。



     【・第二幕(前半)〜完〜・】