ダーク・ファンタジー小説
- Re: スキルワールド ( No.4 )
- 日時: 2023/04/22 11:19
- 名前: マシュ&マロ (ID: y7oLAcgH)
“神はいた、鉄槌をたずさえた神がいた。“
その瞬間、友間は叫んだ、カマキリを睨みつけ立ち上がる。白濁とした意識、身体がミシミシと軋む。獣だ、まるで獣のようである。血走った瞳に、うねる喉、唾液が飛び散る。
その姿を祝うのか嘲笑うのか、神は口元を歪め、何かを呟く。そして鉄槌は下される。
「ア“アアアア“アあ“ぁ“ッッ!!?!?」
カマキリに突進する、なりふり構わず、がむしゃらに、ひたすらに友間は右手を振り上げ、カマキリの中腹部、複数の腕が生えた辺りに木片を突き立てる。鈍い音と共に噴き出ていく血が友間の顔にかかる、深々と刺さった木片が血で滑って取れない、無理に引き抜こうと勢い余って転倒、直後に友間の頭部を無造作に振り抜かれた鎌が掠めた。カマキリは絶叫する、悲鳴が友間の耳をつんざく。
____ドゴッッ!?
慌てふためくカマキリの腕が友間の体を吹き飛ばす、骨どころの衝撃ではない、内臓が宙を舞う。リビングの壁に打ちつけられ痛みに耐えられず吐いた。ドバドバと血が滴る口元、胸から下の感覚が鈍く、そして苦しいのだ。肺を突き破った肋骨が皮膚を貫き、胃腸は目視せずともグチャグチャに潰れているのが分かる。体が動かない、脳が出血しているのか世界がぼやけて上手く視点が定まらない。
「ぁ___あ______ぅぷッ!?」
何か言おうとした気がしたが溜まらず吐いた、鼻からも血が滴る、息をする毎に苦しくなる。
「非常に残念だよ、出来れば生け捕りが良かったんだが・・・・・・」
カマキリは落ち着き払ってそんなことを言う、人間の姿に戻ったようであるが片腕の消失と腹部の重傷を負うこととなった。友間と京八、子供相手とはいえ、その代償は大きなものだった。
「__ぁ____」
友間は虫の息、未だ生きている事が驚かれる程である。薄れゆく意識の中、何かを言おうとしている。カマキリは呆れる、これほどの男はそういるものではないと__。
「介錯は任せてもらおう、せめて苦しまずに殺した後に、君の友人をそっちに送るとしよう」
せめてもの情けとカマキリは片腕を振り上げ、鎌へと変化させる。狙うは頸椎、長年にわたり組織の犬として数多の人間の首を切り落としてきた、この期に及んで失敗などはあり得ない。男の目がギラリと光を帯びたかと思うと、間髪いれず斬りつける。
バアアァンンンッッ!!!
刹那、男の体は爆風に煽られ吹き飛ばされる。理解が追いつかない、歯を食いしばり衝撃に抵抗する。その瞬間、脳がピシリと動き出す。そう、つまりは“備えろ”と脳が警告音を発したのだ。
視界は煙が立ち込め、状況の整理は未だ追いつかず、冷や汗が頬を伝い、顎先から落ちていく。視界の端に変化を感じ取る、咄嗟に体が反応した。振り抜かれた鎌が何かを仕留めた、いやむしろ男の方が仕留められたと言って良い。何かが鎌に絡みつき離れない、煙の向こう側へと引っ張られる、もの凄い力だ。
カマキリは藻掻いた、圧倒的な力によって床に叩きつけられ煙が晴れる。そこには友間が、友間が立っていたのだ。しかし姿は異様、木目を纏いしその風貌、髪の先からつま先まで身体が木材に置き換わっており、その両手は触手の如く伸びてカマキリを捕縛していたのである。
「どうなってんだッ!!?」
カマキリはそう叫ぶ事しかできなかった。