ダーク・ファンタジー小説
- Re: スキルワールド ( No.71 )
- 日時: 2018/10/21 07:13
- 名前: マシュ&マロ (ID: 1l.7ltSh)
(灯利は、足音や声で相手を探してるんだ。少しありえない気もするけど絶対にそうだ)
それを証明するために小さな石を拾って投げてみる、すると灯利は石が落ちた瞬間にその場所に蹴りを叩き込んだのであった。
(うん、じゃあこれをどう利用したら良いのかな)
仕組みは大体分かったが、ならどうやって灯利に勝つかと言えば悩み所としか言えない。
(ただ正面から突っ走っての力じゃ勝てない、確実な不意打ちでなきゃ灯利は倒せない)
「んー、少し私の戦い方がバレてきた様ですね」
これには返事はしない、どうしても命は大切だからね。
(ちょっと、スキルの実験でもやってみるかな)
そう心で言ってゆっくり音を立てないように立ち上がる友間、緊張で顔から汗がふき出していた。
(.....性質<樹>)
ゆっくり体は木材と化していく、そしてそれが終わると友間は少し屈んで地面に手を着けてみた。
(えーと、下に枝が広がるイメージで...。)
友間の両腕から次々と枝が現れて地面へと忍び込んでいく、この時なんとなくだが地面の中で枝がどうなってるか分かる気がした。
(そのまま地面全体を侵食する感じで枝を伸ばし続ける...。)
自分の腕の一部が地面を這って侵食していくような感じが微かながらにするので体が少しむず痒かい気がした。
(準備完了、あとは灯利のいる場所の感覚を掴めば)
ちょうどその時、灯利の足元から一本の蔓がゆらゆらと出てきたところだった。なので友間はいよいよ攻撃に転じる事にした。
「むむ、友間さん。あなた何かするつもりですね?」
経験からの勘というやつなのか目が見えないながらに何かに勘づいた灯利だったが今となっては遅かった。
ーーボコ...っ!!
地面から大小様々な枝が出現しては全体をうねらしながら灯利を拘束しようとする。しかし灯利の勘と経験を舐めてはいけなかった。
「ハッ! ホッ! ヨッ! ヤッ! 」
枝ができたのは少しだけ服を傷つける程度のことだった。しかし薄々想定していた事だった
(第二段階っ!!)
ーーボゴンッ!!
破裂にも似たような感じで地面全体が新たに出現した巨大な枝によって掻き混ぜられ灯利だけじゃなく周りの者の足場まで被害が及んだ。
(こ、これは想定外...。これだとボスにあとで怒られるな....)
色々と覚悟することが増えたが止まる気はなかった。どうしてなのかは今やその後も分からないままだろう。
「足場がッ!?、卑怯ですよ友間さん!?」
「ごめん!、あとで謝るからっ!」
「スキル『布糸』ッ!!」
その瞬間、灯利の服の一部が糸と変化して友間を襲ってきた。しかし目隠しのお陰かそれとも足場のお陰かギリギリのところで反れた。
「ビックリした!?、今のって何??」
「私は自身の肌に触れている布を自由自在に操れるんです、でもやり過ぎるとちょっと恥ずかしいんですけどね....。」
何か苦い思い出でもあるのか最後の部分はよく聞き取りずらかった。
「まだまだ行きますよ友間さん!!」
次々と灯利の着けているフード付きパーカーが糸に変換されていき原型が薄れていく、それに伴い糸の長さはどんどんと伸びていき友間を襲う。
「性質<解除>」
危険だと判断した友間はスキルを解除して腕の枝から解放されると足場の悪いなか攻撃を回避する。
「性質<炎>ッ!!」
体が燃え盛っている状態で灯利に突っ込んでいく友間、それに対して糸で応戦しようとするが結果は見えている。
(灯利の目隠しさえ取れれば傷つけないまま勝負をつけられる!)
そう思った友間の心に比例してか一層と勢いを増していく炎、灯利までの距離あと僅か2m弱。
「私だって負けられません、スキル『布糸<全開>』」
灯利へと到達するまであと少しの時、灯利の服が全て糸に変わり色々と友間を驚かせた。
「!!....ッ。あっ! スミマセン見ませんからッ!?」
思わず目を瞑ってしまった友間、それが仇となったのか大量の糸が友間に押し寄せては弾き飛ばしたのであった。
精神的に疲労困憊となってしまったからか友間のスキルが自動的に解けてしまう。それに友間自身も力尽きたようで立ち上がれない。そんな所へ灯利がやってきた。
「私の勝ちで、良いですね?」
「うん、それはそれで良いんだけど......寒くない?」
「??、.....何のこ・・・・・・・。」
ゆっくりと目隠しを上げながら喋っていた灯利の動きが止まった。そして続いて起こったのは灯利の悲鳴だった。
「きゃっ!? あの、あの..ふ、服とか、えーとあの」
声からして半狂乱となっている灯利、それに対して友間も混乱気味であたふたとしていたが理性の一部が働いたようで自分の着ている服の布の性質を吸収して別の新しい服を申し訳なさそうに差し出した。
「あ、あ。ありがとう....友間...さん」
「き、気にしないで、それといいから早く服を着けて」
そんな調子の会話が続くところへ観戦していた京八や零が二人の所へと走り寄ってきた、そして京八の第一声がこれだった。
「おいおい黒奈、こりゃあボスに呼び出しくらうかもな」
「え、何の事?」
そう疑問に思って目の前を見てみるとすぐに納得できた、目の前がまるで荒れ果てたジャングルのような感じになっており、どうやらヤンチャしすぎたようだった。
「こ、これは確かにボスに起こられそうだね」
そう言った友間の口元には引きつった苦笑いが浮かんでおり、おまけに冷や汗が頬を滑り落ちていったのであった。
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時間は数時間ぐらいは経ったのだろうか、今友間はボスに至急の呼び出しをされたので所長室へと向かっているのだがどうも気が進まなかった。
「はぁー、嫌な予感しかしないなー」
所長室へと差し掛かった所、
「おっ黒奈!、お前も呼び出しくらったのかよ?」
「えっ!?、京八! 何で京八までいるの!?」
「さぁな?、まずは部屋にでも入ろうぜ」
京八に言われるがままに部屋へと見たところ、どうやらペルナルティー的なものは“今のところ”なさそうだった。
「よく来てくれた二人とも、今日はある人からの依頼がある」
「「へっ?、依頼?」」
京八と友間はほぼ同時に同じところを向くと、そこには一人の少女が静かに座っていた。