ダーク・ファンタジー小説

Re: スキルワールド ( No.72 )
日時: 2018/10/15 20:49
名前: マシュ&マロ (ID: 1l.7ltSh)



 「どうぞ、金剛おじさんと二人方も」


 ボスの秘書を務めているらしいハルカという少女からお茶を頂いた二人は自分たちと対局して座っているボスの隣を見ていた。


 「この方は天音あまねさんと言ってな、君たち二人と同じくアビリティアの一人だ」


 「どうも、天音美琴(あまね みこと)と申します。二人ともよろしくね♪」


 少し落ち着いてるというかおっとりとした雰囲気をした美琴と名乗った彼女だったが、友間と京八は彼女の隣に置かれているものが気になっていた。


 「あっ、これの事? 私ね...、自分では上手く歩けないのよね...。」


 「すみません!、不快にさせるつもりではなかったんです」


 「オホンっ!。 友間、その事については気にせず天音さんからの依頼を聞いてあげなさい」


 「あっ、はい ボス。それで俺と京八に何の用なんですか?」


 「えーと実はね、今日は調べて欲しい事があって来たの。それで調べて欲しい事なんだけど」


 「はい、何ですか?」


 「私の弟....いえ、天音伊月(あまね いづき)について探ってほしいの...。」


 「?、また何で弟なんですか? しかも俺らなんかに...。」


 「俺の方から君達の事を推薦したんだ。この前、といっても3ヵ月は経ってはいるが土神との一件があったしな」


 「土神....ですか。でも土神の一件については俺はただラッキーだっただけで他の皆だっていま・・・・・。」


 「他の皆もいる、だろ? しかし今はジャッキーも負傷中であり龍紀や他の全員も別の任務に行ったりしているからな」


 「あのーボス、黒奈については分かったんですけど俺のいる意味は?」


 「京八、君には今回も友間のサポートをしてもらいたい。友間だけでは心配な面もあるからな」


 「うっす!、任せて下さいボスっ!」


 「それと君達にはもう一人程の助っ人を付けようと思っている、詳しい事は依頼の説明と一緒に行うつもりだから少し待っててもらいたい」


 「「分かりました、ボス」」



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 「私、綾音ニコラ。よろしくね二人とも♪」


 「よく来てくれたニコラ、君には二人と一緒に行動してもらいたいんだが...、行けるかい?」


 「任せて下さいボス!、それと今回はどういった内容ですか?」


 ニコラと呼ばれた少女はボスを目を向けて頭を右に傾ける。それに続くようにボスの隣に座る美琴がこう言った。


 「少し前に友間さんや京八さんにも説明したように、私の弟である天音伊月が何をしているのかを探ってほしいんです。最近、よく怪我をして帰ってくるんですよね....私、心配で...。」


 「ただの喧嘩とかじゃねぇのか?、それだったら怪我ぐらい誰でもすると思うぜ?」


 「それがなのですが、京八さん....。この頃 近所で失踪事件が多発していまして私が直接見たわけじゃないんですが......伊月らしき人物が事件の起こった付近で頻繁に目撃されているんです・・・・・。」


 「ふ〜ん、そんで弟さんの行動を見張ってほしいという訳で?」


 そう言った京八、すると美琴は罪悪感を感じたように顔を曇らせてながら話を続けた。


 「ええ、まあ....。私の勘違いだと良いのですが....。」


 「そういう事で三人とも、今回の依頼については頼んだぞ」


 「「「はい、ボス!」」」



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 時間は進み、まだ冬の季節から抜けだせない様子の町の風景が友間の目の前には広がっていた。


 「あっ 家はこちらです、まだ伊月は帰っていないと思います」


 「マンションですか、高台なので町がよく見えますね」


 「はい、私もそこが気に入っています友間さん。坂が少しあるのが大変なんですけどね」


 そう言いつつ友間に微笑みかける美琴、すると友間の耳に京八の声が聞こえてきた。


 「おーい黒奈〜っ!、俺らも自分達の借りてる部屋に行こうぜ〜っ!」


 「分かったー!、俺もすぐ行くよーっ!」


 そう言って二階に向かうための階段を駆け上る友間、部屋は美琴と伊月が住んでいるすぐ隣になっている。


 (今回は安全に終われますよーに)


 そう心で祈った友間だったが、それと同時に雨が降り始めてしまい悪い予感がしてきたのだった。


 「・・・・・・・・あっ!、美琴さんが風邪引いちゃう!?」


 そう言って踵を返して駆け下りていく友間、だが次に聞こえてきた誰かが階段を滑り落ちていく音は痛々しいものだった・・・・・・。

Re: スキルワールド ( No.73 )
日時: 2018/10/21 07:16
名前: マシュ&マロ (ID: 1l.7ltSh)



 「だ、はははははッ!! 黒奈!、なつう顔してんだよ!?」


 「その事については触れないでくれないかな?」


 まだ顔がヒリヒリしていて悲惨な状況になっているだろう、しかし京八の笑いようには呆れがきてしまった友間だった。


 「友間さんも失敗する事があるんですね」


 「いやいやニコラ、俺は成功より失敗してばっかりの人生だよ?」


 「あら、それは失礼。ふふ...」


 三人は今、自分たちが借りている賃貸マンションの一室にいた。極めて平穏なので嬉しいこと他ならないことだろう。


 「そんで黒奈、これからどうするつもりなんだ?」


 「ん〜・・・・・。伊月って人が帰ってたら、まずは次に出かける時に尾行するぐらいしかない今のところないかも」


 「そんじゃ、気長に待ちましょうかね〜。俺は一旦寝るぜからなぁ 」


 そう言って立ち上がると別の部屋の方へ行ってしまった京八。そして残された友間とニコラは仕方なしに暇潰しの会話を始めたのだった。


 「友間さんは、お母さんが殺されてしまったらしいのですが犯人は捕まったのですか?」


 「んー、急にそう来られると少し困るんだけど.....率直で言ってまだ捕まってないみたい...、一度だけ会った事があるけど二度目は遠慮したいかな」


 「そうですか......、なら! もう一度会えるのなら、友間さんはお母さんに会いたいですか?」


「えっ? 急にそんな・・・・・・、んーでも、それが本当なら一瞬でも良いから会いたいかな」 


 「決まり!、私が友間さんの願いを一つだけ叶えてあげるね♪」


 「ははは、ありがとニコラ。ならそれは後のために大切に取っておく事にするよ」


 「えー・・・・勿体な〜い」


 「いいんだよ、この先何があるのかも分からないんだしね」


 「そお?、.......でも! 友間さんがそう言うなら大切に取っておくね!」


 「うん、分かった。....あっ!、それとニコラの方も叶えたい夢とかってあるの?」


 「え........そ、それはね・・・・・・。」


 唐突な質問に思わず頬を紅潮させて言葉に詰まってしまうニコラ。そして少しの間があったあと、ニコラは小さな声でこう言ってきた。


 「・・・・・・お、おに〜ちゃんと....ずっと幸せに.......過ごしたい...な..。」


 ーーカア〜っ!!


 「あっ、ニコラにお兄ちゃんがいたんだ。それでどんな人なの?」


 「ほ、本当は血が繋がってないんだけどね.....初めて...、私に優しく接してくれた人なの....。」


 もう恥ずかしさのあまり頬が林檎のように赤くなってしまったニコラ、気持ちを必死で抑えようとしながら友間との話を続けた。


 「そ、それでね....おに〜ちゃんは...芸術家をやってるんだけど、すんごく凄いんだけど周りからの評価があんまり良くなくてどこか悲しそうなの....。」


 「その、お兄ちゃんって凄く良い人なんだね。ニコラが嬉しそうに話してるからそうなんだって思える」


 「うんっ!!、すんごく良い人なのッ!。今度ね、友間さんにも会わせてあげたいなーっ!!」


 「うん、じゃあ今度ね・・・・・あっ、京八っ!!」


 「んもー、騒がしくて眠れやしねぇぜ」


 「ごめん京八、次から声ボリュームを考えるよ」


 「いや、それより隣の家の弟さんが帰ってきたみたいだぜ」


 「それじゃあ準備しとかないとね、ニコラも何か必要なのがあったら言ってね?」


 「はい、分かりました友間さん」


 こうして友間・京八・ニコラの三人の物語が開幕しようとしているのかもしれません。

Re: スキルワールド ( No.74 )
日時: 2018/10/20 10:53
名前: マシュ&マロ (ID: 1l.7ltSh)



 「あっ!、お帰り伊月」


 「ああ.....ただいま、姉さん」


 「・・・・・今日もボロボロじゃないの。そうだ!、私のスキルで治して・・・・・。」


 「いい....いらねぇ...。」


 「で、でもね。たまにはお姉ちゃんにも世話をやかせてくれないかな〜って・・・・・」


 「だから! いらねぇって言ってるだろッ!!」


 「そ、そう怒らなくても」


 「・・・・・・っ!!.....。ご、ごめん....姉さん...。」


 「ううん、お姉ちゃんの方もごめんね伊月。...でもね、お姉ちゃんだって心配なの、伊月が何処か行っちゃう気がして...。」


 心配するように伊月に語りかける美琴、だがそんな美琴の声を遮るように伊月は顔を背けてこう呟いた。


 「分かってるよ、俺だって分かってんだよ・・・・・・。悪い、また出掛けてくる」


 伊月はそう言って家を出て行こうとする、美琴はそれを引き止めると伊月にこんな事を言った。


 「約束して!、絶対に危ない事はしないって!!」


 「・・・・・・たぶんな....。」


 「伊月っ!」


 だが伊月は姉の声を無視するかのように足早に外へと出て行ってしまった。


 「・・・・・・はぁ....。」


 そう誰もいなくなった部屋で溜め息を漏らした美琴、その目には涙が浮かんでいたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 外へと出てきた伊月は少し肩を落としながら歩き出した、が その後ろから数人の人影がついてきていた。


 「だ、大丈夫だよね? こんな典型的な尾行の仕方だけど?」


 「静かにしとけ張れねぇだろ?、それに方法もこれしかねぇしな」


 「大丈夫ですよ友間さん!、自分の事を信じましょう!」


 「おっ、黒奈。ニコラ。伊月が曲がってったぜ!」


 「よし、自分の運でも信じようかな」


 そう自分に言い聞かせるかのように友間は呟くと、二人と一緒に角を曲がっていった....しかし、曲がってすぐに三人の足取りは止まった。


“伊月が消えた”


 「チッ!、勘づかれてたみていだな黒奈」


 「ん〜、だったら手分けして探してみるしかないのかな?」


 「仕方ねぇなー・・・・。おしっ!、じゃあ伊月を見つけた奴は各自で連絡するって事で良いな?」


 「分かった、京八」


 「分かりました、京八さん」


 そうして各自解散する事になった三人は、それぞれの道を進んでいく。そして友間も自分の勘に従って前へ前へと歩き始めた。