ダーク・ファンタジー小説

Re: スキルワールド ( No.81 )
日時: 2018/11/19 22:49
名前: マシュ&マロ (ID: tO5N9Mr.)



 「あ〜〜〜っ!、これじゃあダメだ!」


 ここは友間がいるアパート。一人でいるのが落ち着かなくなったのか勢いよく床から立ち上がると玄関へ向かおうとした、すると


 ーーコン! コン!


 「あれ?、今度は誰だろう?」


 またまた現れた訪問者に対しておそおそると玄関に近づいていく友間、そしてはたまた驚きのあまり声を挙げてしまった。


 「し!、シ! シロッ!?」


 発狂に似たような声を出しながら開けられたドアの奥には余すところなく汚れたシロの姿があった。


 「やっと見つけましたよ、友間さん」


 「ま、待って!、どういう事っ!?」


 「私を置いていかれるなんて困りますよ、もし友間さんの身に何かがあったとしたら....私、普通じゃなくなりますよ?」


 「ま、まあ...とりあえず中に入ろう。体を綺麗にしなきゃだし・・・・・。」


 「はい、わかりました。」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「フー、何日ぶりかのお風呂は温かいですね〜」


 「それなら良かったよシロ、じゃあ俺の持ち物から取ってきた服だけど外に置いとくね」


 「ありがとうございます友間さん、こんな私に気遣いまでして頂き・・・・・。」


 「気遣いなんて....人として当たり前の事をしているだけだし、それにたまにはシロにもゆっくりしてもらいたいしね」


 「そうですか.....。ところで友間さん、今回の任務というのは伊月という人物を殺せば良いのでしょうか?」


 「ッ!!...違う! 違う!、違うからね!?、絶対に厄介事は禁止だからねっ!?」


 「ん〜、それは少し難しいですね.....。あっ!、なら半殺しなら...?..」


 「そ、それもダメだからねッ!??」


 「むー、なら私のいる意味がないのでは?」


 風呂場のドア越しにシロからの批判が風呂場を反響して聞こえきたのだが...友間自身、シロには誰も傷つけはさせないと心の隅で決めていたのであった。


 「シロには、今回は危険が迫った場合に力を貸して欲しいんだ。大丈夫?」


 「はい!、友間さんを守るためなら例え溶岩の中、さらには地獄の底まで追いかけて行きます!」


 「は、はは。それは頼もしいね」


 そう苦笑い気味に言い残すと別室に移動してこの間に少し休むことにした、また大事になる予感がするからだ。


 「今回ばかりは平和に終われますように」

Re: スキルワールド ( No.82 )
日時: 2018/11/28 19:49
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)


 ーートン、トン


 「あの、友間さん。お風呂、空きましたよ?」


 友間はシロにそう肩をたたかれて起きた。どうやら少し座って休むつもりだったのだが気づかぬ内に寝てしまい夕暮れから夜になっていたようだ。


 「あ、うん分かったよシロ、俺も入るよ。・・・・・・でも俺のはちょっとシロには狭かったみたいだね?」


 そうシロの色々なところを強調してしまっている自分の服への感想を友間が述べていると、シロの右足に目が止まった。


 そんなに意識してシロの脚を見てなかったし着ているのが半ズボンというのもあるのか、今さらながらシロの右足がなんと膝まで金属製の義足だったのだ。


 「んっ?、あぁこれの事ですか.....これは....私の弱さを思い出させてくれる消えない傷です・・・・・。」


 「傷...って・・・・・・、シロに一体何があったの・・・・?」


 「・・・・・・すみません....。今の私には友間さんに語れる程の資格がありません・・・・。」


 ーードンッ!、ドンッ!


 暗い顔にしたシロをよそに玄関のドアを強く叩いている音が聞こえてきた。そこで京八かニコラが帰ってきたのかと思い、玄関に行ってみる事にした。


 「友間さんッ!!、離れて下さいっ!」


 「えっ!?、シロ?」


 シロにこれでもかと思ってしまう程の力で後ろへと引っ張れた直後、その刹那に何かのエンジンが動き出したような音がし玄関のドアをチェーンソーが突き破ってきたのだ。


 「シロッ!!、危ないッ!?」


 「ふっ!」


 だがそんな心配も無用だったようで、シロは自身の発した掛け声と共にチェーンソーの刃を鷲掴みにし目の前にいる強襲者を睨みつけた。


 「う、うわー。シロってやっぱり強いなー」


 だが敵の奇怪な姿にはシロも友間も呆気に取られてしまった。


 その姿というのが・・・・・・、


 「「着ぐるみっ!?」」


 その敵の姿というのが白と紫の混ざった眼鏡をかけているピンク色の兎をイメージした着ぐるみ姿なのだ。


 「 × × × × × × × ?」


 それに加えて何を言ってるのかボソボソとしていて聞き取れない。だが着ぐるみの体の部分は比較的に装着者の体型に沿って作れてるようで、体型からして女性又は細身の男性が着ているのだろか


 「シロ!、大丈夫!?」


 よく見るとチェーンソーを掴んでいるシロの手が小刻みに震えておりシロに近い実力者なのかもしれない。


 「友間さん!、少しの間失礼します!」


 ーードンッ!!


 吹き飛ばされた敵の影とシロの後ろ姿をただじっと見守っていた友間だったが、新たなに現れた敵の人影に顔を引き締めた。


 「敵は二人か」


 「こんばんは、私はユウ。こっちはダンって言うの」


 「おいユウ!、勝手に個人情報をばらすもんじゃねぇよ」


 「えー、そうかな『僕』?」


 「お前って僕の事をよく“僕”って呼ぶよな」


 「ちょっと失礼、君たち二人は敵なの?」


 「えーとね、私と『僕』は・・・・・。」


 「少し黙っててくれユウ。それとお前、僕たちが敵っていうならそういう事にしてやっても良いぜ?」


 「...?、どういう意味?」


 目の前の二人は双子なのか瓜二つと呼べるぐらいに似てる、特に共通した綺麗な銀髪が特徴的だろう。


 「敵なら構わず行きます、性質<炎>ッ!」


 全身から炎が吹き出した友間、だが身構えたと同時にユウと呼ばれた少女に右手首を信じられない力で掴まれた。


 「ごめんねぇ、ダンがこうしろって言うんだ」


 そんなユウの謝罪の後、掴まれていた手首から思いっきり外へと投げられ勢いよく天井の一部を突き破って何処かへと落ちて行ったのであった。 

Re: スキルワールド ( No.83 )
日時: 2018/11/30 21:45
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「ああぁァアァァアアーーッ!?」


 ーードッシャアァーンッ!!


 地面は硬かった、ここは何処か人気のない公園だろうか。


 まずは被害の確認からだが、スキルのおかげで死ななかったが着陸の時の衝撃で首骨と背骨の複雑骨折に加えてユウという少女に握られた際に右手首の脱臼がみられた。


 「フー、と....。死ななかったとは言えども体力の消費が激しいから少しの間は休まない・・・・・。」


 ーードッゴォオーンッ!!


 友間の背後で砲弾でも降ってきかのように砂煙が舞い上がり思わず苦笑いをしながら首を後ろへと傾けた。


 「到着♪ 到着♪ さーて、あなたの相手は私よ」


 「それと僕もだよ。」


 あまりにも速い再開に苦笑してみせた友間はスキルがまだ発動している事を確かめると二人へと向き直りながら覚悟を決めた。


 「ハー.....フー....。最初の相手は誰ですか?、それとも二人同時ですか?」


 「あっ!、じゃあ私から! いいよね『僕』〜?」


 「分かったよユウ、でも何かあったら即座に割って入るからな?」


 死ぬ程度の覚悟は決めたつもりだ、あとは目の前の相手を殺すぐらいの勇気だけだ。


 「じゃあ私はこれを付けるね〜」


 「手袋ですか?、何か意味があるんですか?」


 ポケットから手袋を取り出したユウ、その事について一応聞いてみる事にしたが彼女にとって何か意味があるのは間違いないと直感的にだが感じた。


 「んー、強いて言うなら“リミッター”?」


 「リミッター?、じゃあ自ら自分自身に枷を付けるって事ですか?」


 「うん! そうだよ!、昔から私って力加減が苦手だから」


 少し恥ずかしそうに言った彼女だが、だとしたら自分を投げ飛ばした時の力は彼女なりの手加減だったのかもしないが、それが本当なら勝ち目はどれぐらいあるのだろうか?


 「んーしょっと、準備運動は終わりっと! あなたは何かするの?」


 「ううん、俺は毎回何もしない方なんだ。構わず来ていいよ?」


 「OK〜!、なら三割で......。」


 ーードンッ!!


 こっちへ突っ込んでくる彼女の事をとても少女とは言えなかった、上手く言い表せないが強いて言うなら“少女の姿をした怪物か何か”だ。


 「行っくよー!、『輝砕』ッ!!」


 ーーズドォォオオーンッ!!


 世界が一瞬暗くなった気がした、ミサイルとも呼べるユウの拳は吹き飛ばされている今でも腹に強く残っている。


 「ゲッホ! ゲホ!、ゲホ!」


 仰向けになった状態で腹を抱えながら蒸せ返っている友間、死んでいないだけ天に感謝なのだろうが腹から広がる痛みは生き地獄とも言える苦しみなのだ。


 「あれー?、大丈夫?」


 「げっほ! ゲホ!、大丈夫です」


 無茶をしてるのは明らかなのだが友間は無理に立ち上がると心配そうに見つめてくるユウに面を向けた。


 「このままじゃ勝てそうにないので奥の手を使いますね」


 「分かった!、じゃあ私も五割で行くよー!」


 そんなユウの返事を聞いた友間は腰を少し屈めて構えると右腕に意識を集中させた、力が少しずつ集まっていく実感と共に友間の右腕の炎も徐々に増していき友間の体の半分を覆うまでに燃え上がっていた。


 「ヤバイ、これは少し張り切り過ぎちゃったかもしれませんね」


 頭が少しぼやけてきた友間だが、目の前にいるユウに対してはこれぐらいの無茶をしなきゃ勝てる相手ではないと無意識に分かっているのだろう。


 「じゃあ行くよ、えーと・・・・。」


 「友間で良いです、ある人には黒奈って呼ばれてますけど」


 「友間!、うん分かった! 私も友間を見習って本気を出すね!」


 そのユウの発した言葉で周囲の空間が捻り曲がったような気がした。


 (これは死ぬ気でユウに叩き込まないと生き地獄なんて言葉じゃ済まなそうだな・・・・・。)


 そう心で呟いた友間はユウが動き出したのを見ると負けじと突っ込んでいき、そんな心に比例してか右腕の炎が友間を飲み込むように燃え盛りユウの体へと一直線に軌道を描いた。



 そしてその一瞬、周囲は二人を中心とした光と音で包まれたのであった。

Re: スキルワールド ( No.84 )
日時: 2018/12/02 11:34
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 風が激しく吹き荒れる中、何かが飛んできて公園の電柱に激突し電柱が軽く折れ曲がった。


 その正体は友間であった。力を使い果たしたように荒く呼吸をし体から炎が消え失せていった。


 「ハァ ハア ハア ハア ハア ハア、これでリミッター付きなんて勝てる気がしないよ」


 そう言ってフラフラと立ち上がると先程まで自分とユウがいた場所へと顔を向けた友間、そこはもう焼け野原と化して公園のゆったりとした雰囲気はなかった。


 「ユウはどうなったんだろ....?」


 周りを見てみた友間だがユウの姿はなかった、すると突如後ろから誰かに押し倒され顔を地面に叩きつけられたのだった。


 「おい! お前っ!、よくもユウを傷つけたなッ!!」


 「そう、だった.....あんたも...いたな....。」


 怒り狂ったようなダンはうつ伏せの状態の友間の首を後ろから締め付けた。すると何かが体力を吸い上げていくような奇妙な感覚を友間は感じた。


 「死ね! 死ねっ! 死ねッ!!」


 首の血管が塞き止められたせいなのか頭に血が上ったような感じがし目も霞んで目の前が徐々にぼやけてきた。


 「性...質..。」


 何か望みがあった訳じゃない。ただ無意識....いや、生きたいと貪欲に思ったんだ。


 「性...しつ..。」


 言葉がもう出て来ない。だが何処か体の奥底から何か這い上がってくる気がした。


 「せい...しつ・・・・・。性質<鉄>ッ!!」


 最後に絞り出せた言葉、それに反応したかのように身体中を力が駆け巡っていき友間は鉄へと変化した。


 「なっ!、まだ生きてやが・・・・・。」


 「・・・・・邪魔。」


 悠然と立ち上がった友間はダンを軽々と背から引き剥がしてみせると信じられない力で地面へと叩きつけた。


 そして心が何かに飲み込まれ支配されたかのように無心な表情でダンに馬乗りになると今度は友間がダンの首を締めた。


 「離...せ..、この化け物が...。」


 「・・・・・死ね...。」


 もう友間は友間ではなかった。誰かを殺す事への恐怖も苦しむ相手への慈悲の心もない冷徹さで染まったような人物になっいた。

Re: スキルワールド ( No.85 )
日時: 2018/12/02 23:10
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「・・・・・・死ね。」


 そうダンに言う友間は冷たかった。人を殺す事への躊躇がなくダンの首を締め上げていた。


 すると____。


 「やめろーッ!! 『輝砕』ッ!!」


 ーーズバァァアアァーンッ!!


 突然のユウの奇襲に反応が遅れてしまい吹き飛ばされる友間、ダンの方も驚きで少し間が空いてしまった。


 「ユウ!?、良かった無事で.....」


 「『僕』の方もね。・・・・・・って!、友間は気絶しちゃったみたい」


 さすがに鉄の体を持っていたとしてもユウの圧倒的な攻撃力の前では荷が重かったらしく気絶してしまったようだ。


 「・・・・・ってかさユウ、僕たちが此処へ来た理由忘れてないか?」


 「んっ?.....あっ!、忘れてた!?」


 「いやいや、普通何か忘れてたら人を殴らないって」


 「でも、まぁ....『僕』が私のためにあんなに怒ってくれるとは思わなかったなぁ〜」


 「ち、違ぇよ! ただ...ただ.....。」


 「ただ〜、何なのかな〜?」


 「僕で遊ぶなっ!、ただ腹の奥底から本気でイラついたからであって・・・・・。」


 「スミマセン友間さん、敵に予想以上の苦戦を強いられていまし・・・・・。」


 友間を気配を追ってなのか現れたシロ、だが目の前の景色を見るとその場いた全員に一瞬の間が生じたのであった。


 「・・・・・殺す...。」


 なんともシンプルで分かりやすい言葉だろうか。その分にシロから溢れ出ている自分たちへの殺意を二人は手に取るように実感できた。


 「まずいかも『僕』」


 「ああ、僕もそう思う」


 その夜、若い男女の叫び声が聞こえたとか聞こえなかったとか。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「んっ、ぅう〜ん.....」


 目を覚ました友間がまず見たのはアパートの天井、そして目の端にはシロの姿があった。


 「友間さん!、意識はちゃんとありますか!? 吐き気や腹痛はありませんか!?」


 「だ、大丈夫だよシロ。それに・・・・。」


 体の半身を起こしながら言葉を言いかけた友間だったがボロボロとなったユウ・ダン、それと謎の着ぐるみの人物が視界に入ってきて思わず脳が停止してしまった。


 「大丈夫ですか友間さんッ!?」


 「あ、えっ? えーと、大丈夫だよシロ」


 「いえ、もしかすると風邪を引いてるかもしれませんので私が・・・・・・。」


 「ゴホンっ!、ラブラブプレーは良いけど僕たちがいる事も忘れないでよね?」


 「ほう、友間さんを傷つけた輩がまだ言うか」


 「だから悪かったよ、腕試しのつもりだったんだが僕もマジになり過ぎてたよ」


 「ちょっと待って!?、腕試しとかって何の事? 敵じゃなかったの!?」


 「僕が敵だと断言した記憶はないよ、ただ敵って事にしてやると言っただけだ」


 「××××××、××××?」


 謎の着ぐるみが何かを言っているようだが声が着ぐるみのせいで聞き取りにくかった。


 「あっ、ここは私が......うん、うんうん...。」


 「...?、何て言ってるの?」


 「なんか『京八から増援の要請があったから来たんだが、知らなかったのか?』だって」


 「えっ、京八が! 京八は無事なんですか!?」


 「××××××××××、×××××××」


 「えーと『断言はできないが京八の事だ、きっとゴキブリ並のしぶとさで生きているはずだ』」


 「なら良いんだけど、まだニコラも戻ってきてないんです」


 「××××××××××、×××××」


 「『ニコラについては分からないが私は“キグルミ”という、これからよろしく頼む』だってさ」


 「どうも、キグルミさん。ところで何で着ぐるみの姿なんですか?」


 「××××××××××」


 「『世の中には知らなくて良い事もあるものだ』って言ってる」


 「そ、そうですか。自分は友間と言います、こちらからもよろしくお願いします」


 「・・・・・友間さん、こんな正体も知れない敵に対してすぐ信用するのはどうでしょうか?」


 少し不満があるように訴えてくるシロ、しかし信用する選択しか今はないし相手からの敵意も全く感じられなかった。


 「大丈夫だよシロ、いざって時にはシロっていう頼もしい味方がいるからね」


 「ひゃっ!....。て、照れてしまいました」


 そんなこんなで和解したようなムードの五人はまだこの先に疑問を残しながらも話を進める事にした。