ダーク・ファンタジー小説

Re: スキルワールド ( No.90 )
日時: 2018/12/21 22:53
名前: マシュ&マロ (ID: R9GAA8IU)



 「やあニコラ。 ニコラのおかげで助かったよ」


 「もぉー“おに〜ちゃん”!、いくら何でも一人で挑むなんて危険なんだからね」


 そう言って頬を膨らませながらフリストの方へと近づいていくニコラ。その様子に友間は驚きを隠せずにいた。


 (ニコラがどうして敵の方に!? しかも目の前のがお兄ちゃんなの!?)


 「いい!、次からは私も付いていくからおに〜ちゃん一人で無茶はしないでよね!」


 「ああ分かったよニコラ。約束するよ」


 だが友間はフリストの片方の手が背後でクロスするのを見た。多分だが約束が守られる事はないだろう、と友間は思った。


 (まだ体は動かないままだ。それにシロも動けない状況だから不利かもしれないな)


 「あっ、それと友間さ......いえ友間。お願い『解除』」


 ニコラのそんな声が聞こえてきた、すると次の瞬間には体が自由に動かせる様になったのだった。


 「友間、・・・・・これは忠告であり命令です。私達及び伊月にはもう関わらないで下さい」


 「どうして......、どうしてニコラが敵になるの!? 今まで仲良く皆で笑ってたはずじゃ・・・・・・」


 「私にも......私なりの道理があるんです・・・・・・。ただそれを通すだけです」


 「これが道理なの!、本当にこれがニコラのしたい事なのッ!?」


 「・・・・・・・ここでは話の邪魔が入ってしまうので場所を移しましょうか、お願い『転移』」


 一瞬の情景の揺らぎと共に目の前の風景は朽ち果てた屋敷へと変化した。友間は夢ではないのかと自身を疑ったが鼻を貫くような腐敗の臭いからすると高い割合で現実のようだ。


 ーーガチャッ!


 そこへ誰かが入ってきた_____。


 「おいフリスト!、急に人を呼び出しておいて何の用だって・・・・・・・。」


 「ど、どうもー・・・・・。」


 「ぶっ殺してやるッ!! 今すぐに腸をぶち抜いてソーセージに・・・・・。」


 「・・・・・お願い『黙って』」


 ーーバギッ!!


 伊月の体は一秒後には貫かれた壁の奥へと消えていた。そしてニコラは何事もなかった様子で淡々と話を続けたのであった。


 「確かに端から見れば私の思想は悪なのだと言えます、ですが・・・・・・」


 「この件に関しては手を退け、だろ?」


 「フゥ、理解してくれているのであれば早急にでも・・・・・・」


 だが友間は手でニコラを指して話を途中で止めさせた、すると友間本人も予想をしていなかった事をニコラに言い放った。


 「理解はしてるよ、充分すぎる程にね......だけど実感はまだ全然してないよ...。」


 「どういう事.....ですか?」


 「なんていうか......まだニコラが敵だなんて信じられないなぁ、なんて思っちゃって・・・・・。」


 その言葉を聞いてニコラ自身の顔が一瞬だけ強ばり次には友間への怒りの表情へと変わったのだった。


 「ふざけないで下さいッ!!、そんな馬鹿げた理由なら私の前から消えて下さいッ!!」


 「いや、でも・・・・・・。」


 「お願い『友間を消し・・・・・」


 ニコラは何かを言いかけたが最後までは言えなかった。その理由は気絶したニコラを抱き抱えているフリスト自身が物語っていた。


 「ニコラはまだ不安定なんだ。彼女自身は忘れているだろうが心の奥底には深く刻み込まれた傷があるんだよ......。」


 「ニコラをどうするんですか?、それにあなたは敵なのに俺にそんな事を言うんですか?」


 「それは・・・・・・いや、それは止めておこう。君やニコラのためにもね」


 「どうして俺が出てくるんですか?、ニコラは大丈夫なんですか?」


 そう友間に聞かれたフリストは少しの溜め息を吐くとこんな事を言ってきた。


 「今夜8時、そこで君の答えを聞かせてくれ・・・・・・。」


 「ちょっと・・・ッ!、少しでも答えてくれたって・・・・・・」


 「僕からの話はそれだけだ。それとニコラを取り返すのなら相当の覚悟を持って来い!」


 フリストの気迫に押されて一歩引き下がってしまった友間。ただ部屋をあとにするフリストの後ろ背を見ている事しかできなかった。



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 「・・・・・・・友間さん....何処まで行っちゃたんでしょうか?」


 シロは自身の主人を探して沈みかけた夕方の日を浴びていた。忽然と消えてしまった主人の臭いを頼ろうにも移動した訳ではないので地面に臭いが残っているかと言われればない......そして自身への絶望と怒りがシロを押し潰そうと溢れ出してくる。

 「友間さん......友間さん......。」


 「あっ、えーと・・・・・・シロ...?」


 「ッ!!......ゆ、友間さ〜〜〜んっ!!」


 「うわっ!、ちょっとシロ!? 少し落ち着こうか!」


 「嫌です!、もう会えないかと!? もう絶対に離れませんからねっ!!」


 「・・・・・ごめんねシロ......必死で探してくれてたんだね...。」


 そう言って抱きついてきたシロの頭を優しく撫でたあげる友間。道端という状況でなければもう少しシロに抱きつかせてあげられたのだが、シロを自身から何とか引き剥がした友間は心の中では悩んでいた。


 「んっ、何かあったのですか友間さん?」


 「まあ......。それはともかく早く帰ろう、シロ」


 「・・・・・・そうですか。」



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 「でっ、僕たち抜きで伊月を追ってて一緒にいたニコラが拐われたと?」


 「悪かったよダン、君とユウを置いたままやったのは悪かったけど、“何かあったら”呼んでって言ってたから?」


 「だからって何かあってから報告してくる奴がいるかよっ!!」


 ダンは友間に怒号を浴びせる、友間自身は隣にいるシロの事で心配になりつつも皆への話を続けた。


 「今夜の8時、屋敷に来いってフリストは言ってた・・・・・・。」


 どうしてそんな風な嘘をついたのかは分からない、多分だがニコラがストラングに戻ってきた時にニコラの笑っていられる居場所を守っていたかったんだと思う......。


 「そう怒らなくても良いんじゃないの『僕』?、だって奪われたのなら奪い返せば良いじゃないの?」


 「あのなユウ、敵の勢力とかスキルがまだ不明なんだぞ?」


 「×××××××××××××××?」


 「ほら、キグルミさんだって『そんな下らない理由で仲間を見捨てれと?』って言ってるよ?」


 「はー、まったく。伊月って奴の捕獲からとんだ飛び火だぜ、あーもー分かったよ全面戦争でも第三次世界大戦でもやってやるよ!」


 「そう来なくちゃね『僕』♪、そうと決まればニコラを取り戻しに行くぞー! エイエイ、オー!」


 「まー待て、いちょう伊月の捕獲についても頭の中に入れとけよユウ、それから皆もな?」


 そんな感じで決まってしまったニコラ奪還作戦、そして約束の8時まであと47分......。