ダーク・ファンタジー小説

crossroads ( No.11 )
日時: 2018/03/21 12:26
名前: カコ (ID: hzDRnUrf)


【第3話】


「あの日、最初は男の子が1人だけで屋上に来ていた。…きっと人生を終わらせようと思ったんだと思う」
耳を塞ぎたかった。
逃げ出したかった。
これから知ってしまう真実を受け入れる自信がなかった。
「男の子は高いフェンスによじ登った。これで終わりだ、と思った時、女の子が屋上へやってきた」
震える手を必死に抑える。
「女の子は言った。"こんなことしないで一緒に戻ろう"って。でも感情的になった男の子はこう返したんだ。"口先だけの偽善者のくせに!俺が死んだらいじめが疑われるからって今さら助けようとするな!そんなに助けたいならこっちにくればいい!!"」
彼の目には一点の曇もなく、あらかじめ用意されていた台本があるかのように次々に言葉が飛び出した。
「…女の子は男の子を助けようと、フェンスに登った。フェンスの上に2人になった時、女の子が"口先だけじゃなくて今度はちゃんと助ける''そう…言った…」
さっきとは違って弱々しい口調になっていくのがわかった。
まるでこの話の最後が近づいているのを示唆するように。
「男の子は女の子に圧倒されて、飛び降りるのを諦め、フェンスから降りた。その時…女の子が足を滑らせた。振り返ると…そこには誰もいなかった…」
あの場所にいなくても容易に想像できた。
お姉ちゃんはやっぱり自殺じゃなかった。
「男の子は…男の子は怖くなってその場から逃げた…」



crossroads ( No.12 )
日時: 2018/03/21 12:24
名前: カコ (ID: hzDRnUrf)


私たちのことなんてまるで知らないというふうに吹き荒れる風。
目の前にいるのは一一
「俺、前にこの街に住んでたことがあるって言ったよね」
「……」
「この街を引っ越した理由は、親の離婚といじめだった」
「……っ!!」
失っていたパズルのピースがひとつずつ埋められていく。
「両親の離婚で母親に引き取られた俺は名前が変わった。そして俺の最初の名前は一一…」
埋まっていく。
完成されていく。
ずっと探していたパズルのピースが3年の時を経て元通りになる。
「下山拓也一一親が離婚する前の俺の名前」
「……っ」

走り出す。
今自分がどんな感情でいるのか分からない。
どうして?どうして彼なの?
ひんやりとした向かい風が体を突き刺す。
でもそんなのはどうでもいい。
真実を確かめたくて、私はただひたすら走った。

自分の家についた私は、階段を急いで駆け上がり、自分の部屋に入った。
どこかで薄々気づいていたんだろうか。
絶対に違うと自分に言い聞かせていたんだろうか。
私は引き出しからお姉ちゃんが残した薄ピンクのノートを取り出して、3年ぶりに中を開いた。
「やっぱり…」
全てが繋がった時だった。