ダーク・ファンタジー小説

序 ( No.5 )
日時: 2018/04/05 07:30
名前: 篠木蛍 (ID: 6SeEpuIV)

「うわっ、海奈ってホントにそーゆーの好きだよなぁ」
熱心に刀を調べる海奈を目の前にして、めいが呆れながら言う。しかし海奈は
「うっさい」
と不機嫌そうに吐き捨てると、また刀を調べ始めた。んだよ、と頬を膨らませるめい。
「おいこれ、持てるらしいぞ」
圭介が刀の前に添えられてあったプレートに目を通す。そこには手書きで『御自由にお持ち下さい』と書かれている。
「はあ、よくまぁ盗まれない物だな」
それを聞いた海奈は、刀をそっと手に掴み、ゆっくりと持ち上げた。
「重いな......つまり本物か?」
「実際そうならな。......俺にも持たせてー」
海奈の持っていた刀を圭介がひったくる。すると強烈な重みが手に乗っかった。
「うおっ、お、重い......」
力に自信のある圭介でさえ、この刀を軽々と手にすることは難しいようだ。
すると、めいがいきなり変な提案をしてきた。
「もしかしたらその鞘抜いて......人殺せるんじゃねェ!?」
3人の間を沈黙が走る。
「ハッハッハ、じゃあ俺も人殺しの仲間入りに......」
汗をかきながら、圭介はゆっくりと、しかし確実に鞘を抜こうとする。
が。
「あれ?」
鞘が抜けない。
「ふんぬ〜!」
力いっぱいに鞘を抜こうとするが、全く、全然、微塵も抜ける気配がしない。
「......まあそりゃそうだろな」
哀れに挑む圭介とめいを見て、海奈は1人ため息をついた。