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ダーク・ファンタジー小説
- プロローグ ( No.1 )
- 日時: 2018/12/26 14:20
- 名前: ダークネス (ID: 7sIm71nw)
ただ、愛して欲しかった。
ただ、抱きしめて欲しかった。
名前を呼んで欲しかった。
私を見て、笑って欲しかった。
ただ、それだけだったのに・・・
じくじくと痛むお腹を抑えながら、そんなことを考える。
刺されたところから溢れ出る血は、私に死を実感させる。
けれどもそこに恐怖はなく、ただぼんやりと空を眺めていた。
大量の血が流れてゆき次第に霞がかってゆく頭で思い出されるのは、家族の顔だった。
いつも私を見下し、疎ましく思っていた母。暴力ばかり振るい、口を開けば暴言ばかりだった父。
そして、そんな両親に愛され、誰からも好かれていた妹・・・
可愛くて、運動ができて、頭が良くて、スタイルが良くて、優しくて、誰からも愛されていた妹。
私の持っていないものは、なんだって持っていた妹。
私の、自慢の妹。
あぁ、もし私の人生に次があるのなら。私は、妹のようになりたい。
顔も、学力も、運動神経も、全部平均かそれ以下でいい。ただ、妹のように愛して欲しい。抱きしめて欲しい。
それ以外は、何も望まないから。だから、神様・・・
どうか、どうか次は、こんな私を愛してくれる人に出会えますように。
どうか、どうかよろしくお願いします。
そして、世界はだんだんと黒く染ってゆく。
世界が全て黒に染まりきる間際、「その願い、叶えよう!」なんて声が聞こえた気がしたけれど・・・
きっと、気の所為だと思う。
あぁでも、本当に叶うのであれば、これ以上幸せなことは無いよなぁ・・・
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