ダーク・ファンタジー小説

Re: 白黒と虹色 ( No.9 )
日時: 2019/01/10 21:24
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

ヴェルデッド王国、次のリングはここにあるようだ。
エゼル「ルナエラが言ってた通りならここにリングがあるんだな」
ルナエラが言ってたのはリングが他のリングを探す道標だということ。
アイセの指には橙の寛容のリングがある。
イリス「そうね。ここで立っててもしょうがないし、少し歩いて色々聞いていきましょう」
メル「よぉしじゃあしゅっぱ〜つ!」

そして数十分後、全員が溜息を吐いた。
メル「も〜、なんで誰もいないのよ…」
アイセ「ホントにいないね。まだ昼間だし人がたくさんいると思ったんだけど…」
???「いないのは…当然よ」

黄色のドレスを着た女性が彼らにそう言った。
???「私はイリア、ここの王女です。色々説明しますね、まずこの国には私ともう一人以外は
いません」
イリス「もう一人、ですか?」
イリア「今は鍛錬をしている時間なのでいませんが…彼のことは置いといて…
国は魔獣により占拠され私は国民たちを逃がしました。私には守らなければならないものが
あるので…」
イリアは自身の指にはめてあるリングを見せた。赤色の光を放つ謙遜のリング。
イリア「謙遜のリングです…」
アイセ「私たち、これを探してたんです。譲ってもらうことはできますか?」
イリア「これは国宝です。でも…もう少し考えさせてください」
アイセ「すみませんそうですよね…肌身離さず持っていますから大事なモノに決まってます。
ごめんなさい」
イリアは首を振って「大丈夫です」と答えた。彼女はある小屋に身を隠していると言うので
そこに案内してもらうことにした。

Re: 白黒と虹色 ( No.10 )
日時: 2019/01/11 19:03
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

小屋に入るとテーブルにレモンティーが入った5つのカップが並べられていた。
イリア「あら?ジュード、もしかして彼らを連れてくること知っていたの?」
ジュードと呼ばれた青年が奥から姿を現す。このレモンティーも彼が注いだのだろうか。
だとすれば騎士ではなく執事のようだ。
イリア「さぁ、皆さん立ち話も難ですし座りましょう。冷めてしまいますよ」
ジュード「…」
イリス「どうしたんですか?ジュードさん」
ジュードは困ったようにイリスの肩に乗っているメルを見ていた。
ジュード「…猫ってお茶は大丈夫なんだろうかって…」
メル「だいじょ〜ぶ!香りだけでね」
イリア「そうだ、私はこの国を救いたい。だから手を貸してくれるのならこのリングを
貴方たちにあげるわ」

イリアはそう提案した。国内にいる魔獣を追い払うには彼らの住処と化している城を
開放するのが一番いいだろう。魔獣らを操る人物もきっとそこにいるはずだ。

エゼル「ジュード、何処に行くんだ?」
席を立ち階段を登ろうとしたジュードにエゼルはそう聞いた。
ジュード「…着替え」

Re: 白黒と虹色 ( No.11 )
日時: 2019/01/11 21:16
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

城の正門から堂々と潜入した一同は大理石の広間へとやってきた。
ジュード「ッ、イリスさんしゃがんで!」
イリス「え—!?」
ジュードはイリスをしゃがませ剣を横に振るった。その剣は三本のナイフを床に落とした。
???「あの時の姫様と騎士か…あ、でも良いのが釣れた」
上から飛び降りてきた男の片手にはナイフが握られていた。
アイセ「この魔獣を飼い慣らしているのは貴方ですか…」
???「あぁ、俺はセシア。初めましてだな虹の守護者の転生者?」
セシアはそう言うと地面を蹴り一気にアイセとの距離を縮めた。アイセはホルダーの銃を
抜いて銃口をセシアに向けた。
セシア「撃たないんだな、俺を」
アイセ「聞きたいことはたくさんある。なんでここを襲ったのか、っていうこととか」
セシア「俺的にはリングとかどうでもいいんだけど…王が欲しがっててさ、んでここに
リングがあるって知ったから襲わせたんだよ。一回は取り逃がしたが二個になって
現れるのは好都合なんだぜ?」
エゼル「リングは奪わせない!」
エゼルが剣を振るったがその剣はセシアのナイフで弾かれた。その勢いで体勢が崩れた。
その一瞬の隙を見逃すような敵ではない。空いた腹部に膝蹴りを入れ吹き飛ばす。
次にイリスの魔法による攻撃を避け彼女の後ろに回りナイフを振り下ろそうとするも
それはジュードにより止められた。
イリア「ジュード!」
イリス「ジュードさん!」
ジュード「無理に戦わなくていい…守るのは俺の仕事」
ジュードはイリアとイリスの前に立ち剣を納め柄に手を添える構えをした。その構えに全員が
疑問符を浮かべる。
エゼル「ジュード、なんで剣を…」
セシア「オイオイ、敵を前に剣を納めて何考えてるんだ?」
ジュード「その余裕も束の間だろ」

Re: 白黒と虹色 ( No.12 )
日時: 2019/01/11 21:33
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

柄に手を添えた構えを取るジュードとナイフを構えるセシアが同時に動いた。
セシアのナイフを躱し彼を追い抜いた時、ジュードは既に剣を抜いていたが力を抜いていた。
セシアの胴に浅いが横に一閃された傷ができ、血が流れていた。
アイセ「す…すごい…!」
傷を見たセシアが肩を揺らし面白そうに笑っていた。
セシア「勝ったと、思った?」
ジュード「否、これでも騎士長なんでな。慢心する気はねえ」
セシア「…邪魔な奴らも多くてあまり見れなかったけど、これだけは宣言するぜ。
虹の守護者の転生者アイセ、いつか俺が、俺たちがテメェを真っ黒にしてやるよ」
低い声でセシアはそう告げた。全員の背筋が凍り息を呑む中アイセはギュッと胸元で
手を握って言う。
アイセ「やれるものなら…やってみれば、私の精神は伊達じゃないよ!」
それを聞きセシアが大声で笑った。
セシア「そうか!そうだったな〜…そういう奴だったな…」
それだけ呟きセシアが影に消えていった。

****
イリア「ホントに行くのねジュード」
イリアから謙遜のリングを受け取りジュードは頷いた。国を滅茶苦茶にした彼ら黒の種族は
許すことが出来ない、そしてこれは彼ジュードのけじめでもある。
ジュード「大丈夫です、イリア様。貴方を支えてくれる人はたくさんいるでしょう。俺は
修行がてら彼らを倒すだけだ、必ず生きてここに帰ってくる」
イリア「そう…ホントにありがとうジュード!」
イリアはそっとジュードの手を握った。

メル「ジュード、お別れはもう済んだの?」
ジュード「あぁ、それとイリア様から君たちにと」
ジュードはイリスに赤い謙遜のリングを渡した。
エゼル「…じゃあそろそろ行こう」
イリス「そうね、ジュードさんこれからよろしくお願いします」