ダーク・ファンタジー小説
- Re: 白黒と虹色 ( No.14 )
- 日時: 2019/01/11 23:01
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
絡繰りの島、クロニア島。そこに住む一人の人形師の指には緑色のリングが輝いている。
その人形師メーデルはそのリングが救恤のリングだとは知らなかった。
その島にアイセたちは到着していた。
アイセ「人形劇?」
イリス「わぁ、可愛い人形ね」
アイセとイリス、メルは劇に見入っていた。その人形を操っているのは長い桜色の髪をした
少女メーデルだ。
メーデル「全部私が作った人形なの。貴方たち人形劇は初めて見たの?」
全員が頷いた。エゼルはアイセの持つ寛容のリングとメーデルの指輪が光っていることに
気が付いた。アイセたちは虹のリングを探していることを説明した。
メーデル「これが貴方たちが探している虹のリングの一つなのね…いいわよ、欲しいなら
あげるわ」
メーデルはそのリングをアイセに渡した。
メル「え?いいの?」
メーデル「いいのって…私が持っててもしょうがないじゃない。そこまで執着してたわけでは
ないからね。それに貴方たちはあの時の奴みたいな悪意は感じない」
全員が首を傾げているのでメーデルは歩きながらその日にあったことを手短に話した。
桃色の髪をした男がメーデルにアイセたちと同じようにリングを渡せと突然言って来たらしく
彼女はその要求を断った。怪しい上に他人に何かを頼むときの態度ではない、渡すことなど
できるものかと言ってやったのだ。
メーデル「そもそも名前も知らない男よ?そんな人物にそれも上から目線で寄越せって
言われても渡す気にならないでしょう?」
イリス「それは…まぁ、はい」
- Re: 白黒と虹色 ( No.15 )
- 日時: 2019/01/11 23:28
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
メーデルの家に到着すると玄関に一体の人形があった。白いドレスを着た仏蘭西人形が
微笑んでいる。この人形もメーデルが作ったモノだ。他にも至る所に可愛らしい人形がいる。
メーデル「エゼルには少し合わないようなモノばかりね。イリスやアイセ、メルは
こういう人形は好き?」
アイセ「はい、メーデルさんの作る人形はどれもとても可愛らしくて表情豊かで…」
メル「私は玄関にあった人形が好きよ、イリスは?」
イリス「う〜ん棚にあった水色のドレスの人形かな」
楽しそうに話しているアイセたちだが外から何か声が聞こえた。メーデルが全員を静かに
させ、そっとカーテンを開けて外を確認する。
メーデル「また…魔獣ね。少し静かにしていて」
数分してメーデルが「楽にしていいわよ」と言い深呼吸する。
エゼル「さっきのは?」
メーデル「私が話した男の手下って感じね。私を狙っているの…私だけを狙うために
ここを魔獣たちに監視させている。決められた時間にね」
メーデルは時計を見ながらそう説明した。少しして溜息を吐いた。
メーデル「私のモノを狙っているのなら私だけ狙えばいいのに…」
エゼル「早くリングを出せっていうために人質みたくしてるってことか」
暫くの沈黙の後、イリスが口を開いた。
イリス「なら早くここから出て行ってもらいましょう、その人に」
メル「そうね!ここは強気にバシッと言ってやらないと、でしょ?メーデル」
メルの言葉にメーデルは笑って頷いた。
- Re: 白黒と虹色 ( No.16 )
- 日時: 2019/01/12 08:58
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
メル「でも作戦無しでそのままいくの?」
メーデル「私は彼の戦法なんて知らないし、それしかないわね」
エゼル「じゃあ行こう、行動しなければ何も起きないから」
魔獣が通り過ぎた後、一同はメーデル宅を出ていき魔獣が向かった方向へ歩いていく。
イリス「メーデルさんは何処でそれを?」
イリスはリングを見ながらそう聞いた。メーデルが悩んでいる。
メーデル「分からないのよね。家に元々あったらしくて…」
アイセ「じゃあメーデルの先祖様の持ち物ってカンジかな?」
メーデル「まぁそんな感じね。でも一応は宝物よ?貰い物だし」
メル「一応って…」
****
廃病院に一人の男が佇んでいた。その男こそメーデルの話していた人物フィードだ。
彼はこの場所で待ち構えていた、この場所に様々な仕掛けをして置いた。
フィード「(リングが関わっているとなれば…アイツらも来るか…)」
病院内には幾つもの仕掛けと何匹もの魔獣を放って準備満タンだ。
- Re: 白黒と虹色 ( No.17 )
- 日時: 2019/01/12 10:38
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
メーデル「物騒なお出迎えね」
メーデルたちを囲う魔獣を見ながらそう呟く。
メーデル「倒しながら進むわよ、足元の仕掛けとか気を付けて」
エゼル「よし、行くぞ!」
魔獣たちを倒しつつ足元を注意しながら先へ進んでいく。
だがその数に段々と押されてきた。
メーデル「…ここは人形師の本領発揮ね」
メーデルが器用に何体もの人形を同時に動かす。剣を持つ人形、銃を持つ人形、弓を持つ人形が
魔獣たちを一掃していく。メーデルの器用さに全員が驚いた。
メーデル「さぁ、ある程度片付けたし進みましょう」
廃病院の階段を駆け上がり屋上へとやってきた。黒い雲で太陽が隠れている。
メーデル「貴方ね、魔獣共を徘徊させてるのは…名乗ってくれないかしら?貴方、私の名前は
知ってるみたいだし」
フィード「…フィード、で?何しに来たんだ、素直に救恤のリングを受け取りに来た訳じゃ
ねえだろ?」
メーデル「貴方を追い払いに来たのよ」
フィードはニヤァと笑みを浮かべた。メーデルのリングに亀裂が走り、二つに割れて
消えた。メーデルは口を開けたまま呆然としていた。
メル「ど、どういうこと!?アイセのリングにも反応してたはずだし…」
フィード「ちょっと仕掛けを弄っただけだ。偽物と本物を入れ替えてな」
- Re: 白黒と虹色 ( No.18 )
- 日時: 2019/01/12 11:50
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
フィードはリングを奪ったまま逃走した。メーデルたちは肩を落としていた。
メーデル「ごめんなさい私の不注意だったわ」
アイセ「いいのいいの、仕方ないことだし」
メーデル「…よかったら貴方たちと一緒に旅をさせてくれないかしら?やられたまま引くのは
性に合わないから」
メーデルは髪を掻き分けながら少し微笑んでそう言った。それを断る理由はアイセたちには
ない。
イリス「じゃあこれからよろしくお願いしますメーデルさん」
メーデル「こちらこそお世話になるわ、出来ることは何でもするわね」
メル「じゃあ天空島に帰りましょう!」
****
クロニア島の海岸へ向かうとき、アイセは一人の男に声を掛けられた。
白髪に緑の瞳をした青年で白いマフラーをしていた。
アイセ「あのどうしたんですか?私に何か御用ですか?」
???「救恤のリングは…俺が取り返す」
アイセ「え?あ、ちょっと—」
青年がそう言い残し消えてしまった。アイセもメルたちに呼ばれ仕方なく戻った。
全く別の場所でその青年はマフラーを一旦取った。首には禍々しい黒い鱗が、首以外にも
肩や脚にも鱗がある。
フィード「で?竜人が何の用?俺、今回の報告で忙し—」
フィードの胸部を青年の手が貫いた。フィードの手から救恤のリングが転がる。そのリングを
青年は拾い上げ倒れたフィードを見下ろす。
フィード「オイ…テメェの、今の…飼い主は、王だろうが…!!」
???「本来の主が戻って来た。俺がここに居る必要はなくなった」