ダーク・ファンタジー小説

Re: 格安ワケあり物件「ダンジェハウス」 ( No.1 )
日時: 2019/01/25 12:17
名前: 名取 (ID: u/mfVk0T)

第一話「ダンジェハウスの住人と掟」

午前11時、キャリーバッグ一つにインターホンを鳴らす。返答が無かったのでもう一度押してみる。
すると、屋内からバタバタと物音がした。二階の部屋だと思われる。上から下へ近づいてくる物音に扉から少し離れると、扉は勢い良く開かれ元気で大きな声が聞こえた。
「おはよう!キミが新しい使用人?」
ヒョウ柄のバンダナを頭に巻いた高校生ぐらいの顔の青年は「はい」と俺が返事をすれば家へ入れてくれた。
「入って入って!名前は?オレはジュア!」
森本浩平もりもとこうへいです」
「へぇー森本か、よろしくな!」
「よろしくお願いします」
丁寧にお辞儀すると、そういうの要らないからと照れくさそうに頬を赤らめながら両手を前で振るジュアに好感が持てるなと思う。
「じゃあ、この辺で適当に寛いでてくれよ!オレ今からバイトなんだ!」
「えっ?」
「あとはサルとかリベルテとかにでも聞いてくれよ!じゃあな!」
「あ、待って!俺の部屋って…あーあ、行っちゃったよ…」
片手を上げたジュアはそれだけ言うと俺の質問も聞こえていないのかそそくさといつの間にか小脇に抱えたショルダーバッグ片手に家を出て行ってしまった。
広いダイニングに、4畳程ありそうなソファ、目前には画面の大きいテレビ、高そうな別荘だったのか?と思ってしまう。遠慮がちにソファの角に少しだけ尻を乗せ、ジュアの言っていた言葉を思い出す。
ジュアにサルとリベルテ、まるで海外の名前だ。異国籍民が多いのかもしれない。でもジュアは日本語ペラペラな上に顔も日本人そのものだ。アジア人なだけってことなのか?、そう思っていると一階の奥の部屋の扉が開く音がして咄嗟に振り向いた。

金髪に色黒の黒曜石の瞳が印象的なイケメンがパーカーにジャージのズボンとラフな格好で出てきた。俺には気づいていないのかキッチンに入り、冷蔵庫を開けて牛乳パックを取り出した。
イケメンならどんな行動も画になるなと思っていたがハッと我に返ってソファから立ち上がりその場で挨拶をする。
「あの!今日から使用人としてお世話になります、森本浩平です!よろしくお願いします!」
「ん?ああ、よろしくな」
腰から下げて挨拶すると口元に笑みを作ってくれるモデルのようなイケメンに心臓が持たないと思ってしまう。
イケメンとの会話とは何を話せばいいのかと悩んでいると、それ以上の会話が続かなくなり、イケメンはコップに注いだ牛乳を飲んでいる。
「あっ、あのお名前を伺っても…」
またハッとして名前を聞こうと、声をかけたところでキッチンの上の二階部屋から人が出てきた。