ダーク・ファンタジー小説

Re: 格安ワケあり物件「ダンジェハウス」 ( No.5 )
日時: 2019/06/24 20:14
名前: 名取 (ID: tuakPBCn)

第三話「食べ方と相関図」

食卓の準備を終えた頃、皆で席につく。
丸いテーブル円を囲うように座る。俺の右手にはリベルテさん、ヘレスさん、サルさん、ルキさん、ジュアさんとなる。つまり、必然的に俺の左手にはジュアさんということだ。
丸いテーブルとは珍しいなと思っていると、この方が平和なんだとリベルテさんが苦笑した。顔に出てたかな?
少し顔を触っていると、ジュアさんが声を張った。
「よーし!んじゃあ、食べるかっ!いただきます!」
それが掛け声のようになって、皆ジュアさんと同じように両掌を合わせていただきますと言うと箸を手に取った。
これから食事を作るにあたって住民の好みは見なければいけない。食べながら様子を見る。
ジュアさんは子供のように食べ物にもガッつく勢いで食べていて頬に米粒をつけながらもリスのように口いっぱいに物を含んでいる。
「ジュアさん、ゆっくり食べませんか?」
「ん?んんーん!んー、んん!」
「何言ってるか分からないです」
ごくんと喉を鳴らして口の中のものを飲み込んだジュアさんは俺の言いように返答した。
「食べながら喋んなってリベルテが言うんだもんよー、口開けて会話できないだろー?」
「ん?…ああー、そういうことではなくて…やっぱいいです」
「ほーか?」
一瞬ジュアさんの返答に何の話か分からなくなるが、ジュアさんは俺の「ゆっくり食べませんか」という提案についての返答ではなく「何言ってるか分からない」という投げかけに返答したらしい。訂正しようとしたが、なんだか面倒になりやめた。ジュアさんも気にした様子はなく、また食べ物を口に含みながら返答した。
1人だけ風呂上がりのルキさんは首にタオルを掛けたままフォークで盛り付けられたサラダのレタスをつついては食べようとしない。ジュアさんとは対照的に好き嫌いが激しいのかもしれない。声をかけようとすると、ルキさんは少しだけ顔を上げて盛り付けられたサラダから目線を動かした。チラッと見る動作だがガン見、視線の先にはリベルテさんとヘレスさん。二人は楽しそうに話しながら食べている、ルキさんは二人と仲良くなりたいのだろうか?不器用な人なのかな?二人からは嫌われてるように見えたけど…。
俺がルキさんを見ていると、それに気づいたルキさんは俺を見て眉を寄せた。睨みつけられたので慌てて逸らせば小さく舌打ちが聞こえる。ルキさんは不良のようで少し怖い。
隣のサルさんは皿に乗った食材の中で比較的大きいものから食べていて米を食べようとはしない、故に大きい食材を選んでいる時間が長く、食べるのも遅いわりに変わった食べ方をしている。サルさん、と声をかけると「今真剣だから」と話しかけるなと遠まわしに言われた。微妙に絡みづらいお人だ。
ヘレスさんは肉以外を先に食べている。何故かと問えば「好きなものは最後に食べたいんだ」と少し幼い面が見られて可愛いなと愛着が湧いた。
一方、リベルテさんは全ての皿に乗ったものをバランスよく食べてヘレスさんと同様に食べ方も上品で食べる順番も綺麗だった。文句のつけ所がないとはこのことだなと思った。