ダーク・ファンタジー小説

Re: 超能力者と宇宙人と生贄 ( No.1 )
日時: 2019/02/17 07:25
名前: サバ (ID: H65tOJ4Z)


第一話「超能力者の少年」

少年は身体能力が高いことで知られている小さな村で育った。同じ歳ぐらいの子供に比べて背は少し低く線が細かった為に小柄で弱そうな見た目は村での恥晒しだと体罰なのような特訓は日常であった。

感情を表に出すことは相手に自分の考えを悟られること、つまりは弱点。それを克服させる為に冷静であれ、常に相手の一歩前を行け、感情を表に出すな、と教え込まれた。

「周りを蹴散らしてでも自分が生き残る方法を考えろ」
これが村での掟のようなもので、少年はその掟が守れなかった。
病気持ちの母の看病をしながら特訓を受けて疲労は溜まるが母に心配をかけたくなかった少年は自分のことを優先するという考えが無かったからだ。
村では「異質の子ども」「親が病気ならその子どもも病気持ちかもな」なんて言われていた。

ある日、同じ歳ぐらいの子が少年の家の戸を叩く。
少年が戸を開けると開口を待ちわびていたかのように人が雪崩のように家の中に入ってきて床に眠る母の周りを囲うように立った。
少年は彼らが何をしているのか分からなかった。
最後に家に入って来たのは少年を鍛える為に指導をしてくれた男性だった。

男性は母の真横に来ると少年を呼び寄せた。少年は男性の隣に立って母になにかするのだろうかと思っていると男性は言った。
「オマエには特別なものを感じる。こんな荷物を背負って生きるのはやめろ、そうすればオマエは強くなれる。よく見ておけ」
そう言って男性は30cm程度の鋭利な刃物を母の胸に躊躇いなく突き立てた。
少年は母の名前を呼び叫んだ。
男性は表情を変えることなく言った。
「オマエは弱いものを守るために生きてきたのではない、強いものをひれ伏すために生まれてきたのだ」

男性は抵抗する少年を担ぎ上げ、無理矢理母から引き離し物置小屋へ投げ入れる。「頭を冷やせ、感情の乱れた者など、この村に必要ない」そう言って少年を物置小屋へと閉じ込めた。少年は母を殺された悲しみに泣き叫んだ。
その日村には豪雨が襲った。