ダーク・ファンタジー小説

Re: 超能力者と宇宙人と生贄 ( No.2 )
日時: 2019/02/19 08:10
名前: サバ (ID: 6fVwNjiI)


少年の赤い瞳は光を灯さず影が差し込んで黒みを帯びる。少年は夜の間ずっと泣いていたのに目元に腫れどころか、喉も渇かなかった。

地べたに両膝・足・お尻を付けてボーッと空気中を舞う埃をみつめる。
五日が経過した。物置小屋へ少年を目の敵としてきた悪ガキ大将の少年が姿を現した。それまで物置小屋へは誰も来なかった。食事も摂っていない、水分補給もしていない、睡眠もとらなかった少年は普通なら痩せこけている頃だが、ソコへ入れられた初日と容姿が全く変わっていなかった。ただ、開けられた扉の方を見ることもなく光の宿らない瞳で光の差し込む小窓を見つめていたのだ。

ガキ大将の子は少年の肩を「薄気味悪い」と蹴り上げる。簡単に吹き飛んだ華奢な少年は使われなくなった道具が入った積み上げられた段ボール箱に突っ込んだ。辺りに溜まっていた埃が分散して白くモヤがかる。それにガキ大将の子は軽く噎せる。少年はお風呂にも入っていない筈なのに物置小屋は以前と変わらぬ道具のサビやカビ、埃の臭いだけで、まるで少年が生きていない存在に思えたガキ大将の子は、段ボール箱に埋まって出て来ない少年を挑発した。
「身内を殺されたぐらいで弱いヤツだな!オマエなんかが何故アノヒトに認められるんだ?オレは認めない、オマエみたいな弱いヤツ」
少年に向けた嫉妬の言葉、少年は何も言わない。ガキ大将の子はボソッと呟いた。
「…病気の母なんて死んで当然だ」

段ボール箱の山からゆっくり物音を立てて起き上がった少年は静かに告げる。
「死んでいい生き物なんて居ない」
「は、は?」
「オレにとっては大切な人だった、生命を奪っておいて死んでいいだと?…許さない」
少年は俯き気味にガキ大将の子へユラユラと歩み寄る。ガキ大将の子は後ずさり少年の言ってる事を理解するでもなく「何言ってるか分かんねえよ」と怒鳴りつけ強がった。
少年はガキ大将の子へ視線を向けた、暗い物置小屋でギラリと光る赤い瞳と目が合ったガキ大将の子は息を詰めた後、動かなくなった。

ガキ大将の子の横を通り過ぎ、少年は雨雲を引き連れ森の中へ歩いて行った。のちにガキ大将の子が物置小屋の前で石のように固まり石化しているのが見つかった。