ダーク・ファンタジー小説

Re: ***森物語*** ( No.1 )
日時: 2019/03/13 16:17
名前: 龍星 (ID: 9Urj1l4Z)


プロローグ「親友の失踪」

『—私は森が好きだ。何故って?……フフッ、それは落ち着かせてくれるからさ。』

 そう言った少女—風音 涼花が居なくなってから、早一年が経つ。今日もその涼花の親友—佐々野 ゆずは、もとは二人で通うはずだった高校、雨林高校に一人で通っていた。

 ゆずは生まれつき心臓が弱く、スポーツや体育の授業などの運動や体操ができないためか、小学生のころいじめられていた。そんな時、助けてくれたのが涼花だった。

 その時からゆずと涼花は親しくなっていった。ゆずと涼花は同い年で、現在はどちらも16歳のはず、だ。

 涼花は鳳鳴中学の卒業式目前にして、失踪したのだ。その前から、涼花はずっとゆずを庇ってみんなからハブにされていたため、涼花が失踪したことをクラスメイトが知っても何事もなかったかのように過ごし、現在に至った。

 本来ならば二人で通っていたであろう雨林高校に、あんなことがあったため、ゆずは一人で通っているのだ。警察にも訴えたのだが、涼花に親がいなかったことからまともに取り合ってももらえなかった。

 しかし、ゆずは知っていた。この事件が起こった原因を。何らかの力が加えられ、涼花が失踪したということを。


 今、ゆずが知っていることは二つ。


 一つ目は、涼花はまだ死んでいないということ。これについての明確な根拠はないが、もし最悪の事態が起こっているのなら、ニュースなどで表ざたになるはずだ。しかし、ゆずが情報収集のため毎朝欠かさず見る報道番組でも、そのような報道は取り上げられていなかった。そのことから、ゆずは涼花が死んでいないと思えるようになったのだ。

 そして二つ目は、クラスメイトによって涼花が失踪したということだ。何故、それをゆずが知っているのかというと、前に涼花をいじめていたいじめグループの幹部にあたる存在の、東 美晴とその友達—神木 紗奈の会話を聞いてしまったからだ。

『ハハハハッ、マジウケるんですけどー。涼花のヤツ、アイツらの罠に堂々とハマるんだもん。』
『ホント、ホント。アイツらの罠にはまるなんてね〜きゃはははっ』

 ゆずはこの会話を聞いて、初めて涼花の失踪がただの失踪ではないことを知った。この時から、ゆずは涼花の失踪の手掛かりを探すようになった。

「はああ……今日もまた嫌な一日だ……ううん、これも涼花の為!頑張らなきゃ!!」

 ゆずは自分に一喝入れると、予冷の鳴る校舎へと入っていった。



プロローグ「親友の失踪」end