ダーク・ファンタジー小説

Re: 現代百鬼夜行 ( No.2 )
日時: 2019/04/14 10:19
名前: 枢 (ID: s00TEuml)

彼女がいる部屋だけでなくこの家とその周辺の気温が下がっている。桜花は手を擦り合わせる。
春なのにこの寒さは何だろう。それは家に来ている長い水色の髪の女性、白波氷菓が原因だ。
パステルブルーのワンピースを着た女性だが彼女は雪女と言う妖怪だ。
理玖「オイ大丈夫なのかよ雪女がこんな暖かい時期にあちこちで歩いてよ」
氷菓「貴方こそ人間から畏れられる鬼が人間の少女を守るなんて驚いちゃった。食べる機会でも
伺ってるのかしら?」
理玖「そんなんじゃない。これが俺の…そういえば何でここに来た?氷菓」
話を戻した。氷菓は微かに微笑んだ。雪女、正体を話してしまうと消えてしまう。彼女が
出てくる昔話もある。
氷菓「ねぇ天城桜花、貴方は彼が鬼だと知っていてずっと一緒にいるのかしら?」
桜花「え?今初めて知ったんだけど…」
氷菓「あらじゃあずっと彼が人間だと思って?やっぱり貴方、嘘つきなのね理玖」
氷菓は鼻で笑う。理玖は氷菓を睨む。
氷菓「不思議よねぇ。ねぇ人間の行事に節分と言うのがあるでしょう?豆をまいて鬼を追い払う…
貴方、彼の事を知って怖いとか思わないのね」
桜花「理玖さん、ずっと一緒にいてくれたから」
氷菓「分からないわよ。貴方が成人するまで待ってそれから喰らう…とかね」
桜花「理玖さんは鬼だけどそんなことしないよ!」
桜花は思わずムキになる。氷菓は小さく短く息を吐いた。
氷菓「本当に不思議ね天城桜花。妖怪と仲良しこよしする人間なんて久しぶりに見たわ」
氷菓は笑った。元の暖かさが戻り始めた。氷菓は席を立ち窓を開ける。スッと溶け込むように
彼女は消えた。
理玖「氷菓も古くからいる妖怪、まさか退治される側が倒す側に回るとは俺も予想してなかったが」
桜花「?」
桜花は理玖の顔を見て首を傾げる。群青色の目は黒曜石の目を見据え細くなる。鬼はそっと
人間の子に微笑んだ。