ダーク・ファンタジー小説

Re: 異世界戦争 ( No.3 )
日時: 2019/04/30 21:14
名前: Nahonn (ID: 3nlxUYGs)


 俺が王の反感を買った理由は、まあ平たく言えば王の気遣いが原因だ。
 王の気遣い、とはこのニーラス国の王の娘であるロゼリア姫が、怪我をして帰って来た少年兵や戦士の手当てに参加したことだ。それを王に見つかってしまったロゼリア姫は、咄嗟に俺に加わるよう強要された、と言ったのだ。すぐに姫は訂正したものの……今に至る。
 きっと王も少しでも、血の繋がってない娘を不安にさせたくなかったのだろう。だから、不安、材料の俺に遠回しで死ねと言ってきたわけだ。
 どっかの誰かみたいに「わあ!なんて優しい心遣い!!。」なんて成るわけない。だって殺され掛けてるんだぞ?。誰得だ?
 やるせない怒りが込み上げてきたが、少年兵で最も強い俺を切る事が出来る王は尊敬すべきほどの能無しだ。

 はあ、なんてらしくないため息をついた。いつかは覚えていないが、10歳という幼さで少年兵の兵長になった時"冷酷紳士"なんて訳の判らんことを言われていたのが、今ならよく解る。
 何せ、周りの人間とのコミュニケーション能力が無いくせに、外ズラが良いからだ。(本当は、無惨に人を殺すくせして、女性にも男性にも紳士的に優しいからである。)そんな性格のせいで王の反感を買わなければいけなくなったんだ。直さなくてはな。

 「うわああ!!」
 目の前にいた男が声を荒上げた。俺は、無意識で戦っていたらしく、その男の声で激痛が戻ってきた。右脇腹と左肩に銃弾を食らっていて、そして背中や脚などにかすり傷や切り傷を負っていた。
 あんまり酷くはないが右脇腹の銃弾を食らった所の出血が多いな。次食らったら動けねえ。
 男が、いつの間にか短剣を出していて、俺の太ももに向けて突き刺そうとした。避けようと脚を後ろに下げようとしたが、考え事をしていたせいで、瞬発力と判断力がいつもよりずっと遅くなっていた。もう、刃は直ぐそこまできている。
あと、数センチの間だ。避けきれないと判断した俺は、少しでも致命的にならないよう、銃を仕込んでいた所に当たるよう、膝を内側に持っていった。

 途端に後ろから、尋常ではない程の殺気を感じた。
 この独特の気配は少年兵に違いない。俺は、男の頭を蹴ると、ぐるんと一回転をして、その少年兵の首をかっ斬ろうとした。女だ。ショートカットの美しい黒髪が、ふと揺れた。判断が遅い。ランクC−くらいだろうか。敵を斬るのに情けと慈愛を感じる。
 どこか、懐かしい香りがした。甘い、華の香り。女だからだろうか、白い肌を斬るのに躊躇いがあった。青と銀の双眸がこちらを覗く。その瞳から、絶望と諦めと後悔が混ざった感情が少しだけ滲んでいる。死を見据えた眼だ。

 でも、その眼はすぐに、希望と喜びと安堵が混ざった色を浮かべていた。
 「ライア!!。ライア=イーグリオン!!!。」
 女は何とも言えない喜びを、俺に抱きついて表した。暖かい女の温もりを感じた。


 その再開が、この世界をひとつにする始まりといえるものであった。