ダーク・ファンタジー小説
- Re: あなたが天使になる日 ( No.31 )
- 日時: 2019/08/17 22:50
- 名前: 厳島やよい (ID: Mi7T3PhK)
ここからは、今作で読者に伝えたかったことやこだわったポイントなどをまとめていく、あとがき第二部、となります。
自分用の記録に書いたようなものなので、乱文が多いです。ご了承ください。
※本編未読の方の閲覧はおすすめできません。
※こちらも本編完結前にまとめたものですが、なるべくそのままの状態で投稿します
□まず、ハード面について
ダーク・ファンタジー板に投稿するにあたって、表現にはだいぶ気を遣いました。
複雑・ファジー板への投稿も考えましたが、一定以上の描写は使わなかったので、こちらにお邪魔させていただいております。
この物語では、終盤を除き、なるべく地の文を淡々と書くことを意識しました。
とくに主人公。普段であればそこそここだわるであろう風景描写、例えば海辺のシーンも、目に映る最低限の情報を書いておわります。感情より、登場人物にとっての事実が優先になります。主人公・杉咲佳澄の、他人への関心の薄さ、物理的に狭い視野、世界を冷めた目で眺めている印象を表現するためです。
しかし、朱里視点での執筆においては、事実より彼女にとっての感情を優先させました。こちらは精神的に視野が狭い。誤解を恐れずに言うならば、良い意味で悲劇のヒロインぶっているところが、読み手の好き嫌いを左右しそうだなとも思います。
と、いう感じに、客観的な佳澄視点と、主観的な朱里視点の対比を作りました。ふたりとも、あまり多くを語らないのが共通点です。良いなあと思います、自分で。
百馨(佳澄の母)はハイブリッド型かな。
主人公に、皮肉や言葉遊びも交えながらたらたらと語らせるのは大好きです。そのため、普段から地の文が長ったらしくなりがちなのですが、今作は初心にかえるつもりで、できる限りばさっと切りました。慣れてしまえば難しさは感じないものの、だんだん文章が長くなってきているような気がして、そこは結構面倒でした。
長文短文、堅い文にも柔らかい文にも、それぞれの良さがあると思います。最終的には個人の好みに行き着くのでしょう。
□物語が生まれたきっかけ
この物語の種が生まれたのは、昨年(二〇一八)の夏ごろ。朱里の口癖でもある『死にたい』がすべての始まりでした。最初に思いついた登場人物も朱里です。そして、瑠璃子と蒼太、佳澄、くらいの順番でほかのキャラクターが作り出されました。
悩みがある、失敗してしまった、生きづらい……そんなときの、大小も軽いも重いもない気持ち。
だれかに言われてしまったとき「わたしはこの人の『死にたい』をなくすことはできないのだ」とどこかで勝手に傷ついた自分が存在したり、自分がだれかにそう言ってしまったとき「嫌な思いをさせなかっただろうか」ともやもやしたり。もし、似たような考えを持っている、経験のある人がいたら、この気持ちに共感してはくれないかなあと。そんな風に考えていたら生まれたお話なのです。
□いつかの自分に、自分と似ただれかに、伝えたいこと
書いているうちに忘れちゃったなー! というのは半分冗談です、半分。
「死にたい」が心の中に存在すること、していたことへの罪悪感とか、それを人に言ったこと・言われたことで、こびりついてしまった悲しみとか。言葉の力は強烈なので難しいですが、そういうものは少しずつでも洗い流していっていいものだと思います。その気持ちがあることで命を大切にできるのなら、もちろん適度に留めておいていいのかもしれない。
辛いことは時間が忘れさせてくれるよ、とか、とりあえず前向きに生きようよ、ということは、安易にひとに言えませんし言いません。自分が言いたいとき、自分自身に対して言ってあげればいいと考えるので。ひとにそう言われると「あなたに何がわかるの?」と真っ先に考えてしまうちいさい人間です、わたしは。風化はしても、傷が完治することなんてきっとないし、時間が癒してくれるものならこんなに苦労しないんじゃないかなあ、なんて。
上から目線の不幸自慢のようになってしまいましたが、言いたいことは大体伝えられたはず。お互い大変だけどなんとか今を生きていきたいよね、というお話です。
□登場人物についてⅠ
佳澄は今の自分、朱里は過去の自分、と見立てて書きました。世界をどう見ているか、ふたりの体験や感情において、完全にではないけれど、自身のそれらを投影しています。手芸部に入りたかったというのも、そのうちのひとつです。読む人によっては、ほかにも色々と気づいてしまうかも。
未来の自分はだれなのだろうと、書きながら、時々考えたりもしました。もしかしたら百馨(佳澄の母)かもしれないし、蒼太や司(佳澄の父)かもしれない。絶対いやだけど、瑠璃子かもしれない。
わたしの中の朱里とさよならできる日はまだまだ遠そうで、佳澄がどうなるかもわからなくて。気がついたら二人とも、ぱっと消えていたりするかもしれません。
それと、ここに書くかどうか少々迷いましたが、瑠璃子の元婚約者は佳澄の父親、西園寺司(さいおんじ まもる)です。一応、本編中で匂わせてはあります。
・2『そのまま、泣いていたかった』の司の台詞「いち、のせ……」
→最初の伏線
・当時のあだ名がツカサであること(7『青霞み』参照)
→司はツカサとも読める
・司と百馨が海で出会ったとき、司は百馨のことを知っていた(同上)
→もちろん、瑠璃子経由で
婚約破棄に離婚に病、その上親の介護やら何やらで、わりとひどい扱いになってしまいました。いい人なのに。
でもきっと、彼は強く生きていきます……。
□登場人物についてⅡ
♪杉咲 佳澄(すぎさき かすみ)
主人公。中学二年生。
*じつは、手芸部がどんどん幽霊部員の巣窟になっていくせいで半強制的に部長になっていました。書く必要もなかったので、裏設定となってしまいましたが。
♪市瀬 朱里(いちのせ じゅり)
佳澄の友人、同級生。
*もし正式な手芸部員になっていたら、副部長にするつもりでした。必然的に朱里の寿命が縮むのでボツ。とくに書かなかったけれど、美人さんなイメージ。
♪杉咲 百馨(すぎさき ももか)
佳澄の母親。
*この人に思い入れがあるのかないのか、よくわからない。朱里に、死にたいって思ったことある? ときかれたときの佳澄のような気持ちです。物書きとしての思いは少し投影できたので、よかった。
♪市瀬 蒼太(いちのせ そうた)
朱里の弟。小学三年生。
*もう少し掘り下げてみるべきだったかなあと思う登場人物。彼自身と百馨がいろいろ説明してくれちゃったので、まあいいかなあとも思います。
♪西園寺 司(さいおんじ まもる)
佳澄の父親、百馨の元夫。
*ひどい扱い(登場人物についてⅠ 参照)になってしまいましたが、少し気に入っています。自身のことをまったく覚えていなかった百馨の存在には、救われただろうな。エレベーターで泣いているシーンが好きです。
♪市瀬 瑠璃子(いちのせ るりこ)
朱里と蒼太の母親。司と同い年。
*何事も起こらなければ、ふつうに良い母親だったんだろうな……。朱里と仲良しな瑠璃子も見てみたいです。二人で料理とかしてほしい。あと、テニス。
♪市瀬 紅弥(いちのせ こうや)
朱里と蒼太の父親。彼らとは別居中で、瑠璃子と離婚はしていません。
*当初、彼目線でも話を書こうかと考えていたものの、朱里に語らせるだけで済んでしまったので、出番なしです。
♪斎藤 萌絵(さいとう もえ)
手芸部の顧問。家庭科教師。
*"もっちゃん"のミスリードのつもりで、萌絵、になりました。7『青霞み』にて、ファミレスの店員としても書いています、じつは。
♪土浦(つちうら)
手芸部員。中学一年生
*めんじょめんじょーの子。尾野さんとはけっこう付き合いが長かったりしそう。少し気に入っています。次期部長、がんばれ。
♪新藤(しんどう)
手芸部員。中学一年生
*真面目な子。土浦さんとは中学に上がってから知り合ったんだろうなーとか思っていたり。副部長です。アイス大福が好き。
♪尾野(おの)
手芸部員。中学一年生
*やらかしちゃった子(5『赤を想う』参照)。1『影に咲いている』の時点で、ゆるゆるな伏線を張っています。
♪御子神(みこがみ)
佳澄と朱里のクラスメート
*真面目そう。世渡りうまそう。
♪鷹取(たかとり)
佳澄と朱里のクラスメート
*同じく真面目だけど、要領は悪い、たぶん。佳澄との相性は悪くない、たぶん。
□大変だったこと
・朱里の日記の日付合わせ、過去編の時間軸など
きっちりやろうとすると、わたしの性格上、キリがなくなるので、割りきって適当にやりました。平日が休日になっていたり、登場人物の年齢がずれていたりして、気になってしまったらごめんなさい。
・ところどころ実体験だったり、程度に差はあれど、近いようなことも描写するので、ときどき悲しくなる
書いている以上は我慢するしかない。
・執筆中特有の孤独感
何と言えばいいのでしょうか。もちろん物を書くことは楽しいのだけど、それとこれはまったく別次元の感情なのです。あまり、人に自分の小説のことを語らないからかも。
小説を書くというのは、その世界の神様になるということで。わたしたちの世界の上にもそんな『神様』がいるのなら、きっとこんな気持ちなのかもしれないな、と考えていました。
□今後の目標など
小説を書くときはとくに、起承転結の転結が苦手でぶつ切りっぽくなってしまうことが多いので、きれいに作れるようになりたい。意識して回数を重ねれば、少しはなんとかなるでしょうか。
伏線回収が華麗にできる人に憧れます。厳島には、どうも穏やかなやつしかできません。百馨然り、めんじょめんじょー然り。薬物云々のくだり(1『影に咲いている』にて伏線あり)は、じつはかなり頑張りました。
□そのほか
・5『赤を想う』の「昔観たアニメ映画の台詞」は、と●りのト●ロの「夢だけど、(以下略)」です。
・10『Untitled』の「今は亡き母が好きだった漫画」
見た目は子供で頭は大人のやつ。笑
執筆作業は、音楽を聴いたり聴かなかったりしながら進めました。ピアノ系のゆったりしたものが多かったです。
とにかく書けるときに地道に書いていたので、時間帯はばらばらですが、夜のほうが多かったかも。
また、あとがき第一部にもある通り、準備にも執筆にも時間がかかりそうですが続編を書くかもしれません。
三・四年ほど前に原型の生まれた『いたみ、いのり、願うこと』(仮題)で、本作の登場人物が主人公になります。仲間内のツイッターでちょろっと呟いたことがあるので、もし覚えている人が……いてくれたら、嬉しい。
もともと今作は、それとはまったく別の作品の前日譚になる予定だったのですが、構成を考える段階で難しくなってしまいました。時代設定を若干曖昧にさせているのは、その名残です。両作の舞台が近所同士になったので、まあいいかなとも思います、海の見える町が好きなので。
もし書けそうになったら、頑張ってみます。
ちなみに、佳澄たちの住むところは、千葉県のとある三つの町をモデルとしてかけあわせた、架空の町です。
□おわりに
長くなりましたが、ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
またどこかでお会いできたら、嬉しいです。
それでは。
※この物語はフィクションです。登場する人物名、団体は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。