ダーク・ファンタジー小説

Re: あなたが天使になる日 ( No.34 )
日時: 2019/12/31 00:11
名前: 厳島やよい (ID: fMHQuj5n)



『やさしいはつこいのころしかた』 あとがきと、いろいろ。

 こんにちは。厳島やよいです。
 2019年夏小説大会 ダーク・ファンタジー小説部門で、本作品が銅賞をいただきました。記念につくったイメージPVも知人たちに好評で、ニコ動なら利用規約的にも載せられそうかなーとか妄想しています笑
 ダーク・ファンタジー板の前の名称である、シリアス・ダーク板のつもりで書いていたとはいえ、ファンタジー要素皆無だけれど良いのだろうか、と未だにすこしだけオドオドです。
 投票してくださった皆さん、ありがとうございました。




 『あなたが天使になる日』より抽象的な言葉や遠回しな表現が多いことも相まって、わりと無理がある印象、蛇足感なんかも否めませんが、後日譚を書ききることができました。(執筆期間、約3か月。文字数、改行・空白を除いて10451文字、たぶん)
 雰囲気重視の話なのに、書きたいことが意外とたくさんあって、文字数のわりに詰め込みすぎたというのも反省点のひとつです。


 本編中の、6『天使になりたい』で登場する古い熊のぬいぐるみは、康介がプレゼントしたものです。この話を書くつもりで、当時執筆していました。

 正直細かいことは覚えていないのですが、本編中でほとんど描写できなかった(しなかった?)であろう、登場人物の成長が書けたかなと思います。
 わかりにくいけれど比較的変化が大きいのは、九歳の朱里と十三歳の朱里です。
 独りで強く生きていくんだという静かな意志を感じるボツ作文の、九歳。佳澄と出逢い、ひとと深く関われるようになって、離れていた人間関係に少しだけでも近づくことができた、ほかの形でも佳澄を大切にしたいと考えた、十三歳。
 康介が佳澄を陰で支えていたことも知っていたからこそ、あの日の朱里は「死にたいって、思ったことある?」ときけたのかもしれません。
 そんなことを想像しながら、この話を書いてよかったなあ、と余韻に浸るのでした。
 ちなみに、康介の名前の由来はとくにありません。名字の鷹取には、続編(の、ようなもの)でのつながりが少し、ある予定。御子神も繋げられるかなあ。




 先日、とあるブログ記事を拝見しました。直接の外部誘導は禁止だと記憶しているので、URLは貼らず、概要をゆるく要約していきます。
 筆者の方が視聴している(文脈から察するに、おそらく毎朝なのでしょう)テレビのトーク番組にて、その日は、特集に関連して「母に言われた忘れられない言葉」というテーマで募集したメッセージが、出演者に読み上げられていました。
 ほのぼのとした思い出にコメントを添えていき、番組は和やかに進行していました。が、あるメッセージが読み上げられたことにより、スタジオの雰囲気が一変。

「"あなたは幸せになれない"という母の言葉が呪いのように残っています」(原文ママ)

 冗談で和らげることも、内容を掘り下げることも難しかったため、そのときは曖昧なコメントが交わされて話題が移りました。
 数十分後、番組は何事もなかったように進行していましたが、出演者のひとりが意見したそうです。

「ずっと気になってたんですけど、さっきのメッセージ送ってくれた方ね、お母さんの言葉が呪いになっているという。あの、FAXここで紹介された、読まれたことで、もう、呪いは解除されたということでいいんじゃないかなと。厄落としというかね、これをもって呪いは解けたということで。よろしくお願いします。幸せになってください」(原文ママ)

 その言葉が、体にすっと染み込んでいく感覚がありました。当時の筆者の方と同じく、わたし自身もすこし、救われたような気がしたのですが、それ以上に大きかったのが、物書きをつづけている理由への気づきです。
 ひょっとして、わたしは文章を書くことによって、物語に自己投影することによって、それをだれかに読んでもらうことで呪いを解こうとしているのではないか……。そう気づいて、頭の片隅にかかっていた靄が、少しずつ、少しずつ、晴れていきました。
 思えば『あなたが天使になる日』全体、あとがきなども含めて、厳島やよいの壮大なひとりごとみたいなものですし。
 以前、読者さんのひとりが「(この作品を)やよい自身だと思って読んでいる」と仰っていて、的を射ていると感じました。どうりで書きやすいわけです。

 人間、だれしもが様々な呪いを抱えていると思います。その呪いの解き方も、人それぞれだと思います。と、いうことはもしかしたら、読むこと、で呪いを解ける人も、少なからずいるのかもしれません。
 自己満足の塊の文章が、もし、ほんのすこしでも、間接的にでも、だれかひとりの役に立てる日が来たら。
 これほど嬉しいことは、なかなか無いかもなあと、思うわけです。


 もうひとつくらい『あなたが天使になる日』のその後を書けたら楽しいのに、話が単純すぎたせいかネタが足りません。おとなしく続編(の、ようなもの)でも書きます。
 この物語のページを開いてくださった、たいせつに読んでくださった皆様、応援の言葉や感想をくださった皆様、改めてありがとうございました。

二○一九年 十二月 厳島やよい


引用・参考 ■ 『呪いが解ける日』夜更け/note
(問題がありましたら、該当部分を削除します。ご一報ください)