ダーク・ファンタジー小説
- Re: ゴーストトレイス ( No.2 )
- 日時: 2019/10/14 20:57
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
「行き止まり橋?」
エトが首を傾げた。目の前に座る中年女性刑事、国枝律子は背もたれに体重をかける。
「そうだ。この近くのF橋に現れる歌舞伎役者みたいな霊がいてね。ソイツが通せんぼ
していると通報が入った。荒事は控えないと、って考えで言葉が上手いアンタにこの件を
任せたい。任されてくれるかい?」
「はい、そういうことなら頑張ってみます」
エトの返事に律子が微笑む。後輩からの信頼が厚い、そして先輩からも多く目を向けられている。
目立った霊能力を持たない彼女が何故…という疑問が未だに解けない。エトが部屋を出ると
律子は息を吐いた。
エトはF橋にやって来た。橋の下には川が流れている。今の時間帯は人通りが少なくなる。
「おーい…霊さんやーい。この橋、通りまーす」
誘い込むように声を上げると橋の真ん中に一人の霊が現れた。長い髪に変わった服装、
確かに歌舞伎役者のようだ。歌舞伎なら今の時代もあるが恐らく最近死んだ霊ではない。
江戸時代ぐらいの霊だろう
「ほぅ、ワシが見えておるのか小娘。ワシは景道、通りたいならば首を置いていけ」
「私は神導エト、悪いけどそれは出来ないよ。首を置いていけってつまり死ねってこと
でしょう?私を含め人間の命はそんな軽く差し出せないよ」
エトがそう言うと景道は豪快に笑う。小娘がそんな大口を叩くなんて、といったところか。
「中々肝が据わっているのぅ…ならワシが殺してやろう」
「待って待って!私はそんな…私、そんな強くないの。ねぇ、橋ぐらい渡らせてよ。今はもう
こんな街中で戦いなんて…もう戦の時代は終わったんだから」
微かに相手が反応する。やっぱりか。恐らくこの辺りで起きた合戦で死んだ地縛霊のような
存在だろう。奥には彼の大将やらがいたのかもしれない。一瞬、ほんの一瞬エトが視線を
逸らした時に景道は大きく跳躍しエトの脳天に拳骨を落とそうとしていた。エトが地面に
伏せた時。