ダーク・ファンタジー小説

Re: ゴーストトレイス ( No.9 )
日時: 2019/11/05 17:38
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

無線機から突然声が流れた。その声は久能麗だった。

『緊急事態よ、今すぐ旧帝国劇場に来て霊障事件よ。霊能課職員が霊障化した。
今回は国枝律子さんよ…エトちゃんのラインに資料は送るから目を通して頂戴。それと
そっちには夜叉丸君もいるわね?体調はどう?無理しなくても良いから』
「いいえ大丈夫です」

きっぱりと返す。無線機から麗の微かな笑い声が聞こえた。

『大丈夫そうね。エトちゃんの事、頼んだわよ。それとついさっき律子さんの部屋を色々
探してみたんだけどちょっとヤバい話よ…エトちゃん、貴方彼女に狙われてたみたい』
「え?あ…でもそんな感じがしなかったわけもなかったような…」
『裏で霊障を開放して暴れさせた。それをエトちゃんに解決させるように仕向け、あわよくば
殉職で済まそうとしてたみたい。あの人も馬鹿ね、エトちゃんの周りは恐ろしい程堅い壁で
守られてるっていうのに…後は資料を見て頂戴』

無線が切れた。車の速度を上げ目的地へ急ぐ。国枝律子、その女刑事は既に殉職した
はずだった。だが強力な生霊として現世を彷徨い再び刑事として活躍していた。
霊能対策課も出来上がり、そこで彼女は神導イザナに一目惚れ。だが彼には既に
子どもがいた。それがエトである。彼から沢山の愛を注がれた彼女に嫉妬していたようだ。
そして今日、霊障事件に向かい行方不明に爆破事件で霊障化したことが明らかになった。

「じゃあ俺たち、ずっと霊を視てたってことか」
「そうなるね。そう考えたら本当に怖いわ…でももっとびっくりしたのはあの人が私に
嫉妬してたってところかな?うちのお父さんと結婚したかったのかも、私に嫉妬したんじゃなくて
私のお母さんに嫉妬したの間違いでしょ」

ラインの画面を閉じバッグに携帯をしまう。標識に旧帝国劇場の名前が見えて来た。交通規制が
張られているため見張っている警備員に警察だという証明書を見せ中に入る。まだ爆破は
していないらしい。中に入り異常に暑い事に気付いた。確か律子は火を操る霊能力者。この
暑さは恐らく律子が関係しているのだろう。