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ダーク・ファンタジー小説
- Re: ゴーストトレイス ( No.10 )
- 日時: 2019/11/05 18:47
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
いち早く危機を察知した夜叉丸はエトを突き飛ばす。後方に押し倒されたエトは目前に
広がる火柱を見た。彼がいなければ焼き消されていたかもしれない。礼を述べると夜叉丸は
「礼なんていりません」と答える。
「この辺だな…準備は出来てるな?入るぞ」
扉を開くとステージの方に炎に包まれた女がいた。変わり果てた炎の魔女、あれが自身の
死を知った国枝律子の姿である。
「来たんだねエト…で?霊障退治かい。いい加減、身の程をわきまえな。アンタは課の中でも
最低ライン、底辺だよ。この仕事で生き残れるなんて無理な話さ」
「聞き捨てならねえな律子先輩。全員がそう考えてんなら今頃、エト先輩はいねえよ」
いつの間にかいる不動明王、それは興信の式神である。否、神卸といってもいいだろう。
そのまま彼は殴り掛かる。炎の中に突撃してもへっちゃららしい。
「血気盛んだね。だけどアタシも武術に精通していてね」
「かはっ!?」
カウンターの膝蹴りは興信の腹を捕らえた。防御がスカスカだった。興信は攻撃に徹している。
一方律子は防御に徹している。
「神導エト、アンタを妬み恨む理由は特にないよ。所謂八つ当たりって奴さ。どうせ
短い時間さ…ゆっくり楽しもうじゃないか!」
さっきまでよりも大きな火柱があちこちから上がる。同時刻、別口から入った刑事たちがいた。
「…恐らく中にいるわね。急ぐわよ八咫野君」
久能麗はヒールを鳴らし急ぎ足で進む。彼女に付き添っているのは八咫野幽だ。
彼も夜叉丸ら同様にエトを慕う後輩の一人。最初こそ彼女を認めなかったがエトの器の
大きさに惹かれていった。
「あの人は舐めてるのね。あの子は決して底辺じゃない。あの子は理想の上司って奴よ」
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