ダーク・ファンタジー小説

Re: ゴーストトレイス ( No.12 )
日時: 2019/11/09 14:31
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

霊障特別課は上層部では登録されているが表向きには発表されていない幻のような
課である。霊障特別課の存在を知る警察はごく少数に限られている。

「さて、本題に入ろうか。霊障特別課、新課長の草凪菫」
「はい。警視総監」

長い黒髪をした女刑事、草凪菫は真剣な表情で目の前の男を見た。

「話に聞いたよ、これからも霊障特別課の活躍を期待している」

霊障特別課のオフィス。事件の報告書を書き終えたエトは大きく伸びをした。

「お疲れだねエトくん」
「あ、灰崎さん」

いつの間にか後ろに来ていた男、灰崎憶久はスッと微笑む。何かと怖い噂が立つ
男だが穏やかな性格だ。そしてエトの上司の一人である。彼の持つカンテラの中には
黄色っぽい炎が灯っている。ただの炎ではない、それは「悪魔」である。

「最近は事件が連続していたから疲れるのも無理はない。もう休憩の時間だ。
休んだらどうかな?」
「じゃあそうします。お先に失礼します」

最近、営業停止中だった食堂がリニューアルしたという話を聞いた。エトはそこに
足を運ぶ。

「おぉ、なんか久し振りに見た気がしますね」

後輩の一人、雛野斎ひなのいつきだ。年齢はエトより上だが入って来たのはエトより後なので
彼はエトを先輩として認識している。

「つーか今の今まで気づいてなかったけど先輩、霊能力は使えないんすね。そんだけ
力があるのに使えないとか勿体無いと思うけど」
「そう言われましてもね?無いものは無い」

昼食を食べながら二人は話す。どうやら彼女の霊力はかなり高い方らしい。なのに霊能力を
持たないことは他人も本人も謎である。