ダーク・ファンタジー小説

Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.1 )
日時: 2019/10/19 12:40
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

遡ること一週間前、高校卒業式終了直後の出来事であった。

「君、この本落としたよ」

スーツを着た男に声を掛けられた。彼が持っていたのは単行本、彼女の持ち物だ。

「あ、有難うございます」
「本、好きなんだ…そうか…君になら頼めそうだ、俺の代わり」

首を傾げる彼女を余所に男は独り言を呟いて去っていった。そしてその日の夜、目を覚ますと
そこは綺麗な森の中だった。

『君に俺の知っているここでの知識を全て渡そう。いいか?これから君の名は
フォルトゥナ・ルクス』

その声はその日に出会ったスーツの男の声にそっくりだった。同一人物として
考えるのが妥当だろう。その男がどんな人物なのかは知らないがなってしまったなら
後の祭り。この異世界生活を楽しむだけだ。近くの湖を覗き込むとそこにはフォルトゥナの
姿が写り込む。一瞬、自分でも男なのではと思うほどの顔立ちだった。顎の辺りで
切り揃えられた癖のある黒髪、瞳の色も黒。前はここまで整った顔立ちではなかったし
ちょっと得した気分、心機一転した気分だ。