ダーク・ファンタジー小説
- Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.4 )
- 日時: 2019/10/20 13:12
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
2vs1の手合わせが始まった頃、クロムと紅華等は悠々と三人を見つめていた。
「アンタなら真っ先に止めると思ったよ」
「そう見えるか。…人間は脆い。特に彼女のような女は脆いと聞いている。もう二度と
失いたくはないからな」
ノート・ルクスと同じ名を持つフォルトゥナが戻って来たからこそ全員の活気が復活したが
それでも彼の喪失は大きい。鬼も魔族も人間より遥かに長い時を生きるからこそ何度も
大切なものを失う。恐ろしいことにそのことに慣れてしまう。だがクロムやスコルは特に
魔族として申し分ない力を持っていて初めて自分たちよりも強い人間に尊敬した。その男
ノートを失ったことはかなり大きいだろう。クロムはスッと手を伸ばし何かを掴んだ。
紅華の持つ盃に入った酒、その上にも何か落ちてくる。キラキラと日光を反射する小さな
粒。それは透き通った水色の石。アクアマリンという宝石だ。
「宝石…」
「そうだねぇ、やっと扱い慣れてきたってカンジかな」
紅華はフッと笑みを浮かべた。夢と蘇芳も驚く。
「驚いた、まさかこの短時間で扱えるようになるなんて…」
手に握られた水色の剣、その剣が振るわれるたびに淡い水色の光が現れる。対応する蘇芳が
苦悶の表情を浮かべる。確かにこの力はノート・ルクスそのもの、彼本人を相手しているような
気分だった。微かに夢の声が聞こえ、充分に引き付けてから距離を取る。強く一歩を踏み出した
夢から放たれる素早い居合。コンマ1秒でもズレればフォルトゥナは真っ二つにされていた。
上に跳ぶことでその居合を躱すことが出来ていた。そして呆気にとられる蘇芳の目前に
剣先が突き付けられた。蘇芳は大人しく負けを認め、刀を納める。同じように夢も力を
抜き刀を納めた。
「やれば出来るじゃないかフォルトゥナ。どうだい?戦闘後の気分は」
「気分って…私やりたくてやってるわけじゃないんですけど」
「随分と謙虚じゃないか。もう少し傲慢になっても良いと思うけど」
紅華の言葉にフォルトゥナは首を横に振る。
「私は謙虚でいいんです」
