ダーク・ファンタジー小説
- Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.5 )
- 日時: 2019/10/20 16:55
- 名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)
その日、数人の付添人を連れて歩いてきた人間の男は持ち前の明るさで子どもたちを
笑わせていた。
「ノート、もう行ってしまうのか」
「あぁ、このガキたちみたいに俺の帰りを待ってる奴らがいるんでな」
仮面の教主の顔をノートは見つめ二ッと笑みを浮かべた。仮面の奥で彼女もスッと微笑む。
「そういえば…お前は俺を神だといったな。なら神である俺がお前らに救済を与えてやる」
扉を開け、目を教主に向ける。その目は柔らかい。
「もし困ったら俺のところに来い。俺が、俺たちがお前らを助けてやるからさ!」
絶望の近くには必ず希望があるという言葉、それを教えとしていた。だが実際、彼女の
人生は絶望ばかり。国の騎士として戦っていた頃。その頃に布教活動を始めた。貧しい
人々にいつか必ず救われると自身が希望になるために…。だがそれは他人を救うことしか
出来なかった。自分は濡れ衣を着せられ罪人となった。死に際に見たのは1柱の神、
そして彼女は仮面をつけ仲間をかき集めた。小さな集落を拠点に教えを説いた。
長い年月が過ぎてやっと彼女に希望がやってきた。ノート・ルクスという希望が…。
彼を見た時、気付いた。この男は魔術で無理矢理若い肉体を保っているが既に老人、
死期が近付いていると言うことに。
『教主を助けたいか?ならば俺が今から言う娘を殺せ名は…』
猛毒に侵され眠っている教主の近くに立つ右目のみ繰り抜かれた仮面をしている青年は
触手のようなものを彼女の額に近付け何かを吸っていた。夢喰いという種族の青年ヘルムだ。
「あのサソリ男、信頼していいのか?」
「気に食わないがそれしか手はない。さっき言っていた人物を殺せば良いんだろう。
ならばさっさと行動しなければな」
教主の側近、ジュードは笑みを浮かべていた。
フォルトゥナたちは平穏に生活している。
「ノートさんとは血の繋がりも無かったんですか。でも不思議ですね、フォルトゥナさんは
ノートさんに似ています」
困り顔をしている長い藍色の髪をした男、白露はやんわりとした口調で話す。
「なんか最近ノートさんに似てる似てるって凄い言われるんだけど…そんなに?」
「えぇ」