ダーク・ファンタジー小説

Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.7 )
日時: 2019/10/20 21:23
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

「フォルトゥナ様!」

黒い蝙蝠のような大きな羽を広げ飛んできたクロムはゆっくり下降しフォルトゥナの方を
少し横目で見た。

「スコル、交代だ。ルネア殿のところに向かえ。事情は本人から聞いた方が良い」
「え?ここからまさか…走るの?」

困惑するフォルトゥナを余所にスコルとクロムは話を進め二人とも何かを決めた。
スコルの背中にクロムと同じ形の翼が現れた。しかし黒い羽と違い彼の羽は白い。
フォルトゥナの体をスコルは抱き抱え空へ飛んだ。

「ここからは私たちが相手しよう。…彼女でなければ不満か?俺たちを倒さなければ
主を殺すことなど出来ないがな」
「楽しそうなことしてるじゃん。クロム、だっけ?俺たちも混ぜろよ」
「すみません花蘭が…」

好戦的な妖鬼族の青年、花蘭の言動を宥める夢。イヴ以外に右眼のみ繰り抜かれた仮面の
青年ヘルム、フルフェイスの大男ザン、金色の仮面の青年ユーフォンス、顔の上半分を
仮面で覆う男ジュードの四人。彼らをそれぞれクロム、白露、花蘭、夢の四人が相手取る。
仮面集団が勝つか、クロムたちが勝つか。それともフォルトゥナが彼らの教主ルネアを
救うのが先か。

「おぉ、随分と荒々しいな」
「気を抜くなよ。あの怪力、そして巨体に合わない俊敏性…獣でもちゃんと頭脳はあるらしい。
それと…あまりやり過ぎるなよ」

全員が地面を蹴る。

「流石魔族。相当強いですねぇ…だからこそ楽しみってものですよ」
「…随分と余裕だな。秘策でもあるのか」

ぶつかり合い互いに距離を取る。

「まさか。私は貴方のような魔族に勝てませんよ。でもそうですねぇ…確かスコルと
言いましたか…魔族の多くは光属性の魔法が弱点だと聞いたことあります、しかし彼は
その属性の耐性を持っている。さぁて貴方は耐えられますかねぇ?」

不気味な笑みを浮かべジュードは剣に光を纏わせる。白露は直刀でヘルムの触手を
斬りながらどんどん間合いを詰めていく。

「見た目の割に随分と強気な攻めだな」
「祖母から斬り合いでは下がれば負けると言われております故」
「へぇ…祖母は、死んだのか?」

白露は無言になった。仮面の奥でヘルムは笑い舌なめずりをした。右手と左手の人差し指に
金色のアーマーリング状の刃をつける。白露は首を傾げる。

「俺は夢喰い、特に悪夢が好物でなぁ…これにはちょっとした薬をつけてある」
「あぁ成程!夢喰いでしたか。ですが…私は悪夢は残念ながら見たことありませんよ?」
「安心しろよ。俺がとっておきの悪夢を見せてやる」