ダーク・ファンタジー小説

Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.8 )
日時: 2019/10/21 17:16
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

空を移動して数十分、小さな集落が見えた。ゆっくり降下し目の前に立つ教会を見た。

「この中ですね。ここに来るのは久しぶりです」
「そっかスコルはここの教主様に会ったことがあるんだっけ。じゃあ多分怪しまれないよね」

翼を引っ込めたスコルは笑顔で頷く。いち早く、彼女を治す必要がある。扉を開けると
目の前にはガラス張りの十字架があった。その前に立つ一人の女が振り返る。

「あ、貴方は…スコル様に…ノート、様?」
「ごめんなさい。私はフォルトゥナ・ルクス、よろしく」
「すまないがルネア殿の容態を知りたい。フォルトゥナ様はノート・ルクスと同じ術を
扱うことが出来る…フォルトゥナ様を殺せば教主は助けると言われているのだろう?だが
ディアナ、分かっているはずだ」

その先は何も言わなかった。鳥のような翼を持つ仮面の女ディアナは息を呑む。
彼女の目の前にいるのは温和で優しい神、そしてその神を守護するガーゴイル。
ディアナは端に寄った。フォルトゥナはゆっくりとルネアの元に歩み寄った。そして
片手をかざす。白い光がルネアの体を包んでいく。

「…この暖かい力…これはノート?」
「教主様、良かった意識が回復したのですね。この人はあの方と同じ名を持つ方、
フォルトゥナ様です。あの人が言った通り、我々はルクス様に救われたのです!」

感極まった様子でディアナはルネアの手を両手でギュッと握った。ルネアは体を起こし
自力で立ち上がる。そして彼女たちから今の状況を聞いた。

「そんな…こんなことになってしまうなんて」
「だが確かだ。貴方にも来てもらう、アイツらは自力じゃ止まれやしねえよ」

フォルトゥナとルネアを抱え扉を蹴破って空へ消えていく。場所は変わり、森の中
暗闇から金の仮面が浮かび上がり一瞬怯む。右肩にナイフが刺さった。

「的中しましたよ、これはラッキーですねぇ」

夢は自身の肩からナイフを抜き地面に捨てる。大柄な体格の割に存在感が薄い、この視界の
悪さの中、それはかなり手こずる原因になる。

「その構え…貴方が得意なのは抜刀術ってところですか?」
「そうなる。が、掠り傷ぐらいなら作れるだろうな」

夢が前傾姿勢でユーフォンスを見据える。そして一閃、躱したと思ったが掠った。地面に
音を立て金の仮面が落ちた。