ダーク・ファンタジー小説

Re: フォルトゥナさん、リ・スタート ( No.9 )
日時: 2019/10/22 10:05
名前: 春先雪華。 (ID: xs5T8t9X)

仮面の奥に隠されたユーフォンスは自身の顔を片手で覆った。赤い目がギロリと
夢を睨んだ。仮面集団、隠密教団マスカレードは唯の教団ではない。彼らにはある
ルールがある。自身の仮面の下に隠された素顔を見た人物は必ず殺すということ。
沈黙の後、放たれた言葉はたった三文字だった。

魔弾を掠った右頬、傷からは煙が上がっている。前に立つジュードは未だ不気味な
笑みを浮かべている。

「やはりそうでしたか!貴方には光属性への耐性が無い!でぇ?ならないんですか?
ガーゴイルに…そうだ!私、拷問が趣味なんですよ」

ジュードは不気味な笑みを浮かべたまま剣を手に地面を蹴り上げた。

「アイツと違って確かに耐性は無い。だがその程度で怯んでいるわけにもいかないな」

ジュードより前屈みの姿勢でクロムも地面を蹴り加速する。彼の行為は自滅しようと
している風に見えた。それに違和感を覚えたジュードが目を見開く。すれ違いざまの居合が
入っていた。ジュードの扱う光属性の魔法はあまりにも脆かった。彼よりも強い光を
操る人間をクロムは知っていた。

「ここは…末恐ろしい事です」

白露の声が反響する。周りは阿鼻叫喚だった。炎が上がり次々と倒れていく柱などが
老若男女問わず押しつぶしていく。目前に立つのは懐かしい祖母。彼女の体に刀が刺さった。
その光景は白露が幼い頃に祖母の死体を見て一週間ほど見た夢、だがそれはあまりにも
辛すぎる。そこでハッと我に返る。スルスルと触手が縮まっていき微かに舌なめずりを
する音がした。

「どうだ?悪夢の感想は…お前の悪夢、あんまり美味くねえな。もっと怖がってもらわないと
困るぜ」
「そう言われましても…生ある者は多くが必ず死ぬ、それは普通なのですから仕方がないのです」
「随分と強いんだなお前」

やれやれという風にヘルムは首を振る。一方、ザンを相手する花蘭とユーフォンスを相手する
夢は偶然同じ場所に辿り着いて共闘していた。花蘭の額には脂汗が滲んでいた。

「随分と苦戦しているようですね」
「うるせぇよ、それはお互い様だろ」