ダーク・ファンタジー小説

Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.15 )
日時: 2019/11/10 15:08
名前: 祝福の仮面屋 (ID: Z.5JjKPv)

White/Fang代拾節
「それでも私は戦いたい」



「四堂隊長殿!一ノ瀬隊長殿!遠征お疲れ様です!」
「あぁただいま、拠点に何か問題はあったかい?」
「いえ、特に問題等はございませんが」
「ならいい、俺達は先に風呂は入らせて貰う、お前らは隊員達と夕食にしておけ」
「はっ!了解しました!」
私達はつい先程遠征から帰って来た、帰って来た時間は午後十八時、要するに移動だけで片道二時間も掛かるのだ。なら本来はもう少し進んだ場所に拠点を設置すべきなのだが、ここから先は未知の領域である為、ギリギリの及第点がここなのだ。損害はなし、だが目立った収穫もなし。明日にはもう少し進展すると良いが
「君達はどうする?食事にしても構わないが」
「いえ、俺は武器の手入れをしておきます、妖の血で性能が落ちてはいけませんから」
「副隊長、俺も一緒していいっすか」
「あぁ、構わん」
そういったやり取りをしながら新くんと佐之くんは武器の手入れに向かう、あの二人結構気が合うんだよなぁ…、側から見れば兄弟っぽく見える。
「じゃあ、私は防衛班の皆さんに食事届けて来ますね!」
「頼んだよ三葉ちゃん、赤城ちゃんはどうするんだい?」
「別に、無駄に動くのは合理的じゃないし」
本当にドライだなぁ赤城ちゃん…、あの頃は良く笑ったと言うのに、彼女からすれば確かにあれはトラウマだったのだろう。身内が目の前で生きたまま喰い殺されるおぞましい光景を間近で見たのだから。
「じゃあ私と一緒に来ないかい?四堂の所へ行くんだが…」
「四堂の隊長んとこ行くならアタシも行く、あの人に聞きたい事あるし」
「よし、決まりだね」
私達は四堂の元へ歩く、…アレ?四堂って今入浴中だったかな…?まぁいいか、彼は基本シャワーしか浴びないから多分上がってるだろう。







私達は四堂の部屋へ来た、何とこの拠点、隊長及び班長格は個室があるのだ。
「四堂、いるかい?」
「入れ」
「失礼するよ」
「客人も連れて来たか」
「うちの新人さ、ほら赤城ちゃん挨拶」
「どうもシドウ=サン、雨宮です」
「ふむ、その奇妙な挨拶は別としてだな…四堂小隊隊長の四堂 叡山だ、よろしく頼むよ」
四堂は若干戸惑ったがすぐに立て直した、流石は一瞬の気の迷いが生死を分かつ隠密任務主体の四堂小隊隊長と言ったところか。
「さて雨宮、俺はまず君に聞きたい事があるんだ、聞かせてくれるかな?」
「何でしょうか」
「君の旧姓…葛城だったそうじゃないか」
「………っ!」
四堂の一言で彼女の顔が強張る、確かに隊長格は君の旧姓を知っている事を彼女には伝えてなかったな、後でフォローしようと思ったが
「何で…その名を…?」
「何、君は一ノ瀬から聞いてなかったのか?俺達各部隊長は全員知っているが」
彼女がジロッとこっちを睨んでくる、そう睨まないでよ、今思えば私は伝えようとしたのに君が突っかかって来るのが悪いじゃん。
「まぁそんな怖い顔をするな、折角の美人が台無しだぞ?」
彼女の顔が少し紅潮する、えっ、もしかして嬉しかったの?
「お世辞は良いです、で…私の旧姓に何の用ですか?」
「俺が気になったのは何故、君の家があの日レイヴンに襲撃されたかだ、俺はあの事件に君の父親が関与していると考えているが、父親について何か分かる事はあるかい?」
「分からないです…、私はその時友達と遊びに行ってましたし…、何より私は基本的に祖父と母が居ましたが父とは一度も会った事はないんです。」
「会った事がない…か、じゃあ父親の仕事もよく知らないと」
「はい」
「俺は隠密任務を主に請け負っていてね、かつて若手だった時代にレイヴンに潜入した事があってね、そこで奇妙なものを見つけたんだ。それは何だと思う?」
四堂は意味深な事を言ってくる、私は彼がレイヴンへの潜入任務を受けていたのは初めて知った、彼がそこで見つけたもの…この世界の現状の核心にでも繋がっているのだろうか。
「俺があそこで見つけたのは『名簿』だよ」
「名簿?」
「あぁ、そうだ…そしてそこに書かれていたのは…」
「待ってくれ四堂、話を遮って悪いが君は一体全体いつから、レイヴンへの潜入任務を受けていたんだ?」
「その話は後でしてやる、それでだな雨宮、そこにはある計画とその被験者の名前が書かれていたんだよ。

葛城 静流 (かつらぎ しずる)

灰崎 佐之助 (はいざき さのすけ)

Graham・Taylor (グラハム テイラー)

Chloe・Alain (クロエ アラン)

Ирина・Азимов (イリーナ アシモフ)

Jack・Thomas(ジャック トーマス)

とな、可笑しいと思わないか?君と灰崎の二人は勿論、おそらく下の三名も俺が若手だった2089年時点では誰一人とて生まれていない筈なんだ、計画名こそは掠れていて判読不可だったがおそらく人体実験の類だろうな。」

名前を聞くだけでも天津巫國、ユニオン、ブリタニア、セントブリーズ、北方連合の四つの國の人間だ、何故レイヴンはそこまでして…
「少なくとも俺達は君と灰崎以外の名簿の人物との接点はない、なら何故君達の名が乗っているのか、その秘密が『Thunder・Volt』に隠されている可能性がある、だからこそ遠征を志願したんだ。」
なら、この世界は誰かによって人為的に造られた物なのだろうか、私には分からないがその秘密もおそらく『Thunder・Volt』にある、四堂は世界の真実を知る事が目的とでも言うのだろうか。
「でも、私とそれに何の関係が…」
「今日はもう遅いから寝よう、急に呼び出して悪かったな、またいつか…いや、もう会議の時話題として出すか?」
「いや、成る可く情報が集まってからにしよう、他の隊の反感を呼ぶ恐れがある。」
「同感だ、では明日」
「では失礼するよ、行くよ赤城ちゃん」
「…失礼しました」
明日、この世界に関する何かが分かるのかも知れない、彼女や佐之くんの出自の事も、あと四日間にて解き明かす必要がある…いやないか。駄目だったら気長に待てばいい、それが一ノ瀬小隊の教訓じゃないか、私はそう思いながらベッドに横になった。







〜翌日〜
「本日で遠征は二回目となる、本日も昨日と同様に衛生班ならびに補給班から二人ずつ連れて行く、あと俺達の混合部隊から何人か置いて行くから防衛班から一人ずつ来い、以上だ」
「一ノ瀬小隊からは氷室三葉を、四堂小隊からは最上翔也を拠点に残す、拠点を頼んだよ二人共」
「「了解!」」
私達は昨日と同じ装甲車両に乗り込む、さぁ二回目の遠征だ、何か進展があると良いのだが
「よし、それじゃ行こうか」
「全隊、前進!」
「「「うおおおおおおお!」」」
私は知らなくてはならない、この世界の真実を彼等の出自を、そして、私自身の正体を




















報告書
遭遇した妖 無し
数 0
目立った収穫 『四堂の過去』
進捗率 5%

次回White/Fang代拾壱節
「踊る阿呆に見る阿呆」
新章は名簿に載っていたユニオン(アメリカ)、ブリタニア(イギリス)、セントブリーズ(フランス)、北方連合ロシアに観点を合わせて行きます。辞書見ながら名前打つのめちゃくちゃ疲れた…
もうロシア語はこりごりだぁぁぁぁぁ!
そしてクロエのeは実際の表記と違いますが、実際のフランス語表記で打つと文字化けするのでそこはご愛嬌