ダーク・ファンタジー小説

Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.17 )
日時: 2019/11/10 15:04
名前: 祝福の仮面屋 (ID: Z.5JjKPv)

White/Fang代拾壱節
「踊る阿呆に見る阿呆」



再びThunder・Volt入り口までやって来る、一回目の調査の帰還時に簡易結界(と言う名の電磁フィールド)を張っておいたから問題ない筈だ、このThunder・Volt自体が増幅装置の役割を果たしている為、簡易的だが相当な効果を望めるだろう。
「準備は?」
「問題ないよ」
「よし、ここで降りるぞ、防衛班並びに衛生班と補給班は俺達が降りた後に降りろ」
四堂は本当に指揮官に向いている、一応五河隊の隊長以外は訓練学校時代からの付き合いなので、誰がどの様な傾向を好むのか、どの様なパターンで行動するのかが良く分かる。
「先遣隊は俺達四堂小隊が務める、ここまで培ってきた隠密任務のノウハウって奴を見せてやるよ」
「あぁ、楽しみにしてるよ、僕達もすぐに合流する」
「分かった、四堂小隊、前進!」
四堂の合図と共に小隊のメンバーが内部へ駆ける、まるでかつての特殊機動隊を思わせる無駄のない動きだ、まぁ四堂の事だから参考にしているのだろう。
「じゃあ一ノ瀬小隊も行こうか」
「了解」
「はーい」
「っす」
相変わらず一致しない返事をして私達一ノ瀬小隊も内部へ侵入する、すると同時に叫び声と走行音が聞こえてきた。
「四堂!これは!?」
「妖だ、だがC-1クラスの特攻要員だから各界から出るな、ただし爆発でやられるだろうから一気に駆け抜けるぞ!」
突進して来た妖が結界にぶつかった瞬間に大爆発を引き起こし、それが別個体に次々と連鎖して行き、限界を超えた結界は5撃目で遂に決壊した。
「走れぇぇぇ!」
四堂の合図で各班員及び隊員が一斉に走り出す、おそらくその先にも妖はいるだろう。
「殿は僕達一ノ瀬で担当しよう、四堂は皆と先に行ってくれ!」
「…良いのか?」
私は頷く、流石は四堂、訓練校時代からの友は察してくれた
「……死ぬなよ」
「なに、危なくなったら逃げるさ」
「なら良い…、行くぞお前らァ!」
四堂小隊と各班が走り出すと同時に特殊型5体、異形型2体、人型3体の計10体もの妖が現れる、だが妖討伐を専門とする一ノ瀬小隊はこの程度では怯まない。
「さぁ、ここは守り切るよ!」
「「「オウッ!」」」










〜四堂Side〜
「隊長…」
「あぁ、不自然な位に妖が居ないな…」
現在俺達四堂小隊並びに各班は地下へ来ていた、閉塞感を全く感じさせない場所で高さと広さが東楼の地下空間にも似通った静けさを感じさせる。
「隊長!ここに扉があります!」
「分かった、どいてろ」
俺は隊員に引くように命じる、そして俺はデルタスーツの腕輪に触れて専用装備の「腕部着脱式防御装甲『アルバ・D・ナウ』」を展開する、こいつは灰崎のと似たような物だがコイツは衝撃を与えると空気反響技術を応用した高周波により物体を切断すると言う代物だ、かつてのウォーターカッターに原理は近いかもな。
「切除完了だ」
カキンッと小気味好い音と共に扉の留め具が外れる、すると扉は横にスライドし、中には実験室の様な場所があった。この様な空間にも不自然すぎる程の存在感を示すそこは、俺の興味を惹きつけるには十分過ぎて…
「何だ、あれは…」
「隊長!」
後ろに立っていた、猟奇的殺人鬼の存在に気付く事が出来なかった。














〜一ノ瀬Side〜
「これじゃキリがない!」
「一体何匹湧いて組んだよ…!」
「戦術的には合理的だけどな」
一方私達はかなり苦戦を強いられていた、10体倒す毎にまた10体と現れるそれは、私達を精神的に追い込むのはそれほど難しい事ではなかった。
「よし、四堂小隊と合流しよう!佐之くん!」
「アァ!?」
「新くんと殿を任せて良いかい!?」
彼は肉弾戦を得意としている、彼の力なら妖数匹を同時に相手取れるだろう。
「分かった!行くぜ副隊長!」
「足引っ張るなよ!佐之!」
「わぁってんよ!」
「「装身《アンペイル》ッ!」」
新くんはレギオンを武器に、佐之くんはレギオンを鎧として纏い妖の群れを薙ぎ払って行く、近接格闘戦において彼ら程頼りになる存在は無いだろう、そう油断していた私に妖が襲い掛かって来たが…
「クッ…!」
「あ〜らよっと!」
赤城ちゃんが一撃を食らわせる、すると斬られた妖が爆発したのだ。
「赤城ちゃん…、今のは…」
「葛城流忍術地の型拾伍式『葬撃』、要するに武器版二重の極みです」
彼女の忍術と、加速粒子を用いて斬れ味を激増させるムラクモはとことん相性が良いらしい、今更になってそれを知らされる。
「だが赤城ちゃん、君は葛城でない以上もう使わないって…」
「気が変わりました、私はもう自分が何なのかすら分からないんで、好き勝手やらせて貰います。」
彼女も彼女なりに覚悟が決まったらしい、その3人により妖は瞬く間に蹂躙され、全滅した。
「よし、急ごう!」
「了解!」
「うっす!」
「はい!」
私達は走る、四堂達がいる地下へ
「…時に赤城ちゃん」
「はい?」
「良い顔になったね」
「そうですか?…ありがとうございます」












〜四堂Side〜
「キャハハハハハッ!」
「くおッ…!」
ガキィンッ!と二つの金属がぶつかる音が地下に鳴り響く、相手は妖じゃない、おそらく人間の類だろうか…女性的な体格だが肌は薄い桃色であり外骨格の様な物を纏っている上に左腕は巨大な鋏だ、シルエットは完全に妖のそれだ。
「隊長!俺達も戦います!」
「来るな!お前らでは勝てん!」
「しかし…!」
「(一ノ瀬…、まさか死んじまったか?いいやアイツは必ず来ると言った、ならアイツが来るまで稼いでやろうじゃねぇか!)」
「キャアアアアアアアアアアアアアッ!」
「おおおおおおおおおお!」
化け物の甲高い叫び声と俺の低く重々しい叫び声が交差する、だがこちらは不意打ちにより負傷した身、力で敵うはずもなく
「があああああああああ!」
脇腹を刺し貫かれてしまう、だが俺は話す事なく刺された鋏を小脇に抱え一言告げる、
「フッハハハ…!ヒーローは…遅れてやって来るってか…!?」
訓練校時代の友に、
「遅えぞ一ノ瀬ぇぇぇぇぇ!」
野次を飛ばしながら!
「柱を爆破しろォ!」
「分かった!」
一ノ瀬により命令を受けたレギオンは、柱に干渉し柱を爆破させる、すると地下空間に天変地異の如き揺れが鳴り響き、天井が落ちて来た。
「全員掴まれぇぇぇぇぇ!」
「俺がやる!」
「佐之!?」
「昇龍!」
レギオンを纏った事で膂力を強化された灰崎が放った強烈なアッパーは、落ちて来た天井の一部を打ち抜くと同時に上昇気流を発生させ俺達の体を浮かせた、おそらくあの化け物は圧死しただろうか…




「はぁ…はぁ…ふぅーっ」
「四堂、一体何だったんだあれは…?」
「分からん、だが…」
「キ"ィ"ィィア"ァア"ァアア"ア"ア"ッ"!」
それは何と愚かな考えだったのだろう、化け物が瓦礫程度で死ぬ事はないと分かっていた筈なのに、明確な『死』が俺達の目に飛び込んで来た瞬間…
「ア"ァア"ア"アァア"ア"ッ"!?」
突如として動きを止めた
「何だ!?」
「Chloe…Si tu t'efuis sans permission N'est-ce pas?」
1人の男がそこに立っていた、待てよ?今この男はあの化け物を『クロエ』と呼んだのか?
「アンタは…一体誰なんだ…?」
「Je m'apelle Abel.je suis dersole」
「(この発音はフランス、いや今はセントブリーズだったか…意思疎通が図れるか…?)Vous etes Parlez-vous Japanese?」
「ん?あぁ!アンタら天津人か!?いや〜すまんすまん!つい母国語で喋ってしまう」
「なっ…初めから天津語は喋れたのか?」
「あぁ、さっきもしたが自己紹介と行こうかな、俺の名はアベル、Abel Blancだ、よろしく頼むよ。」
「俺は四堂 叡山」
「一ノ瀬 燈矢です、アベルさん…貴方はその化け物の管理者で?」
「化け物?あぁ、これはキメラと言ってね我々セントブリーズが作り出したレギオンと人間の融合体さ」
この男はいきなり凄い事を言って来た、少なくとも天津ではレギオンと人間の融合実験は行われていない、まず倫理上莫大なコストが掛かるのと被験者と周囲に何が起こるか分からないからだ。
「俺はChasse aux demons…CADの科学班長を務めている、ちょっとこっちの政治状況に興味があって来た、暫くはお邪魔させて貰うぜ?」
どうする、セントブリーズからの客人…しかもそうそう来ない特殊部隊の重鎮と来た、ならば手段を選ぶ暇は無いだろう。
「壁外遠征は中止だ!今すぐアベル氏を連れて東楼へ帰還する!」
「なんだ遠征中だったか、なんか悪い事しちゃったな」
「アベル氏、貴方には聞きたい事があります」
「あぁ構わんよ、こちとら天津の技術にも関心を持っていた所だ、ギブアンドテイクでどうだね?」
「交渉成立だ」
各班員が帰還準備をしている中、俺と一ノ瀬はただ呆然と立ち尽くした、アベル ブラン、この男が何を知り何を握っているのかはまだ、誰にも分からない…









報告書
遭遇した妖「異形型、人型、特殊型」
数 15体
目立った収穫 『セントブリーズの人間及びレギオン融合体(仮称)』
進捗率 5→0%







次回White/Fang代拾弐節
「我ら其れを端から笑う阿呆」
フランス語の文法めちゃくちゃですけどどうか許して下さい
セントブリーズの重鎮アベル、彼は世界の秘密を知る人なのか否か