ダーク・ファンタジー小説

Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.19 )
日時: 2019/11/10 22:31
名前: 祝福の仮面屋 (ID: Z.5JjKPv)

White/Fang代拾参節
「僕は昇りまた堕ちて行く」
白牙史上最恐の回、お楽しみに



〜2109年、北方連合とある戦場〜



「隊長、сирена(セイレーン)、出撃準備完了しました」
「よし、行け」
私が初めて見た世界は真っ白だった、家も地面も空も木も何もかもが真っ白、まるで有るべき色を無くしてしまったかの様に、私は歌い続けていた、何故かは分からない、ただ歌いたかったのだ。そしたら街の人たちは、「歌上手だね〜」って私の足元にお金やお菓子を置いていってくれた。
「隊長!誰かが来ます!」
「あれは…子供か…!?」
「どうしますか…?」
「とにかく保護だ、外に行くぞ」
「はいっ!」
でも私の所に来るのはおじさんやおばさんだけじゃなかった、偶に来てくれる若いお姉さんは私に綺麗なお洋服を買ってくれた、偶に来てくれる若いお兄さんは私に色んな物を食べさせてくれた、だから皆私の事が嫌いだったんだ。自分達は貧しい暮らしをしているのに、1人だけ綺麗なお洋服を着て豪華な食べ物を食べる、それが気に食わなかったんだ。私の何がいけないの?私はただ歌い続けてただけで、その人達が寄って来たのに。
「お嬢ちゃん…大丈夫かい?寒いだろう、中へ入りなさい」
「〜♪」
「?何を歌っているんだい?」
「喜びの歌♪」
「何を言って…ガッ!?」
「た、隊長…うぐあっ…!」
踊れ踊れみんな踊れ、狂った様に踊り出せ♪
踊らない奴はどうするの?
舌を切り取り目を抉れ♪
血で血を洗い殺し合え♪
さぁ始めよう1、2、3♪
楽しいショーの始まりだ♪
「がっ…かっ…」
「ば、化け物…が…!」
「один」
「な、何を…!?」
「два?」
「答えろ…!」
「три♪」
「一体何を…ぎゃああああああああああ!?」
「た、隊長…ぐあああああああ!」
ドロドロ、グチャグチャ、ブチブチと音を立ててみんなみんな死んで行く、1人は眼窩を溶かして口から泡を吹き、もう1人は体という体を幾千もの槍に貫かれ、そしてもう1人は体の中を食い潰されて。
国の敵は私の敵、そう思ってた、王子様に会うまでは…









〜佐之助Side〜
「で、お前はチンピラから少女を救い、その少女を追っていたチンピラを警察に突き出したから遅れたと」
「だからそう言ってんじゃん」
「Есть точн!」
今俺はWhite/Fangの取調室にいる、俺の目の前に座っているのは鬼上司の鹿島 新、そんでもって俺の隣に座っているワンピースの少女は俺が救った少女だ、決して事案じゃねえぞ
「北連人か…」
「そうっす、俺が救った女の子が北連人って俺色々と凄くないですか?」
「お嬢さん、年齢は?」
「16 лет」
「16歳か」
「俺や静流と同級っすね」
「だな」
このセミロングの銀髪ブロンド少女はどうやら一人で天津まで来たらしく、手持ち無沙汰でどうしようもなかったらしく、そこを俺が保護して現在に至る。ちなみにだが表情や仕草、ニュアンスの違いが分かれば外国語を聞き取るのは然程苦にはならない、まぁ個人差あるからおすすめしないが。
「Да,он мой жених,тас что не говори со мнои」
「ブゥーーーッ」
待って、なんかいきなり凄い爆弾発言かまして来たよこの娘、俺にこの組織全体を敵に回させる気か!?
「ほう…、婚約者を名乗るとはお前も偉くなったな…」
「いや違うんすよ!?イリアはちょっと恋愛脳だから…!」
「Меня зовут Ирина・Азимов Спасибо」
どうやら彼女の名はイリーナ・アシモフと言うらしい…、アシモフ?ん?アシモフ!?
「Ирина・Азимовだと…!?」
「Ирина・Азимовって、四堂隊長の名簿に載ってるあのИрина・Азимовか!?」
どうやら俺は、とんでもないものを釣り上げてしまったらしい、まさか四堂隊長の名簿に名前が記載されている少女だったとは…!
「隊長…!」
「あぁ、時は一刻を争う、直ぐに隊長の元へ行くぞ!」
「イリア、付いて来てくれ」
「Что?Что?」
彼女は今ひとつ理解出来ていないみたいだがしょうがない、俺達は全速で一ノ瀬、二伊混合大隊の元へ駆け付けた。
「隊長!」
「遅かったじゃないか二人共、何かあったのかい?」
「いえ、端的に言わせて頂きます、護衛対象が増えました」
「…聞いたかい?冷次」
「あぁ、ばっちりとな」
どうやら俺達の護衛対象が増えるらしい、だが俺達は二伊小隊は要人警護のエキスパートだ、護衛対象が一人や二人増えようが苦にはならない。
「えっと…、本日貴方の護衛を勤めさせて頂きます、White/Fang二伊小隊隊長、二伊 冷次です、Ирина・Азимов様でよろしいでしょうか?」
「Да спасибо сегоданя」
成る程、天津語は話せない訳ではなさそうだが無理に話させる必要はない、要人には北連の方も多い、何の問題もない。
「なぁMr.二伊、これは何の騒ぎだ?」
「Abel氏、此方は北方連合のИрина・Азимов嬢です。」
「初めましてMrs.Азимов、Abel・Blancだ」
「こちらこそ初めましてбарон・Blanc、Ирина・Азимовです。」
かなり流暢な天津語だ、おそらく幼少の頃から学んで来たのだろう、この歳でここまで流暢なのは流石の一言に尽きる。
「私は一ノ瀬小隊隊長を務めております、一ノ瀬 燈矢と申す者です、Азимов嬢、いきなりですが北方連合、ユニオン、ブリタニア、SBによる戦争に付いてはご存知でしょうか?」
「えぇ、もちろん存じております、私達北連はあなた方天津巫國の量子操作技術並びにレギオンの技術を高く買っております、なのであなた方をウチの技術顧問として迎え入れたいのですがどうでしょうか?」
「「「「「ッッッ!」」」」」
全員が絶句した、なんと彼女の考えている事はAbel氏の考えと全く一致しているからだ、とは言え天津には今後一切の戦争に参加しない『不戦の契り』が交わされている為、おそらく…
「お待ち下さいАзимов嬢、私達天津巫國はかつての日本の時代から続く一切の武力行為を捨てる『不戦の契り』がございます、残念ですが断念下さい…」
「何で?」
瞬間、俺を含む混合大隊の全員の動きが止まった、彼女の威圧感によってだ、あんな可憐で華奢な体のどこからドス黒い威圧感が出て来るのだろうか。
「なら、灰崎 佐之助君を下さいな」
「何故、灰崎を…?」
「彼は私を救ってくれた王子様なんです♪私は彼と一緒に居たい、ねぇ、佐之君は私と一緒に居てくれるでしょ…?」
よせ灰崎、その手を取るな!そう叫びたかったが声が出ない、体が動かない、そして彼は…灰崎はなされるがままに彼女の手を
「悪いな」
「え?」
パンッと払った
「…何で…?」
「言っておくが、俺はあくまで俺が助けたいからお前を助けただけでお前を助けたくて助けた訳じゃない、そこんところ勘違いすんなよ」
彼は言う、バッサリと、それも本当に恋をしている少女ならその場に泣き崩れる程の…だが彼女は
「じゃあ何で助けたの?」
微動だにしなかった
「何で助けたの…?助けなくても良かったじゃん…、男は皆そう、期待させて裏切る…力任せで女にしか脳がなくて醜くて傲慢で強欲で怠惰で嫉妬深くて意地汚くて自分勝手なわがままでそれでもって…恐ろしい」
「………っ!」
灰崎も危険を感じ取ったのか臨戦態勢に入る、そんな彼には目もくれず
「そうだ、なら死ねば良い、私の事を裏切る男は道具としか見ない男は、皆、皆死ねば良いんだ♪」
彼女は歌い出した、それはまるで小鳥のさえずりの様で、なのに悪魔の囁きにも聴こえて、それでもってなお天使のラッパの様に聴こえる悲しく醜くて美しい破滅の歌

「Танцуй,танцуй,все танцуют♪
(踊れ踊れみんな踊れ)」
「Танцуй как сумасшедший♪
(狂った様に踊り出せ)」
「一体何を…ぐあぁ!?」
「ぎゃあああああああああああ!」
歌を聞いた隊員達に異変が訪れる、隊員達の眼窩が溶け出し、口から泡を吹き出し倒れ始めたのだ。
「(一体何が…?)」
だが破滅の歌姫は歌うのを止める事はない
「Что вы делаете,если не танцуете♪
(踊らない奴はどうするの?)」
「Вырежьте язык и утолите глаза♪
(舌を切り取り目を抉れ)」
レギオン保有者である俺達の眼窩は溶け出る事は無かったが、その代わりに尋常じゃない痛みが全身を襲っている。
「(くっ…おおっ…!)」
だが殺戮の歌は終わらない
「Это налачо веселого шоу♪
(さぁ楽しいショーの始まりだ)」
「Давай начнеи Один?Два?три!♪
(さぁ始めよう1、2、3)」

「ぐあああああああ!」
「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!」
「クソォッ…クソォ!」
痛みが全身を駆け巡る、まるで寄生虫に食い潰されるかの様に、痛みが酷くて、なのに体は動かなくて、体を内部から弄られてるみたいで、場所が見えないから余計怖くて
「嫌だ…!まだ死にたくない!」
だけど希望は叶わない、ブチブチ、グシャリ、グチャグチャ、ズブリ、と体から幾千の槍が生え出て来る。腹を、手を、腕を、顔を、目を、鼻を、喉を、耳を、足を、背中を、ありとあらゆる場所から槍が生えて来る。
…もう死んだ、みんな死んだ、私を虐める男達も、王子様を誑かす醜く汚い女もみんなみんな死んだのだ。
「Я люблю тебя принц♪」
私は血の海になった地面の真ん中でぐったりとした唯一無事の佐之君を抱き抱える、156cmしかない小柄な私でも彼を軽々抱ける理由は簡単、私はもう人間じゃないから



私の歌は人を殺す、その姿は伝承上の怪物に例えられ
「сеирна(セイレーン)」と呼ばれた。






次回White/Fang代拾肆節
「殺人鬼も聖者も凡人も」
書いてる自分でも感じたWhite/Fangで一番狂気に溢れた回
そして全滅end(復活するけどね)北連へ連れ去られた佐之の結末は?
祝福の仮面屋の次回作にご期待ください(終わらないけど)