ダーク・ファンタジー小説
- Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.24 )
- 日時: 2019/12/03 17:16
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: Bqxxwr/X)
「お前達!彼女は本日付けで我ら三島小隊に特別入隊する事になった、葛城 静流だ!」
三島小隊長、三島 朝霞の一言により周囲の視線が静流に殺到する。そして隊員達は静かに、「あの子が例の…」や「面白そうだ」と言ったざわめきが聞こえて来る。
だが、無論ざわめきの中には歓迎する者だけで無く、「あのガキが…?」「マジかよ…」と言った否定的な者も多かった。そしてそのうちの1人が、「偉そうにすんなよ」と露骨に不快感を表した瞬間ーーー
「喧しいッ!」
怒りを露わにした朝霞の一喝により、周囲のざわめきが消える。
そして彼女は周囲が静まったのを確認すると、静流へ自己紹介する様に促した。
「White/Fang、元一ノ瀬小隊!現三島小隊所属!葛城 静流です!これから数ヶ月、よろしくお願いします!」
「だそうだ、お前ら!全力を以って、全員でしごいてやれ!」
「「「はいっ!」」」
静流の挨拶と朝霞の号令、そして隊員達の活気のある返事、彼女は恐らく隊員達からかなり信頼されているのだろう。故に、少数の否定派も彼女の一喝により消え去った、静流の事を思っての行為だったのか、朝霞は静流に目配せをして来た。
「午後13時から対人訓練開始!解散!」と、朝霞は隊員達に告げ、隊員達はそれぞれの行動に入る。
食堂に行く者、自主鍛錬を開始する者など様々だった。
「葛城、君にも対人訓練に参加して貰う。君の実力を測らせて貰おう」
「分かりました」
「相手はそうだな…不破で良いか」
「不破?」
【不破】…その名には聞き覚えがある、と言うか、思い出したせいで嫌な顔をする。
朝霞が「不破!」と声を掛ける、すると1人の少年が軽快な足取りで駆け寄って来た。
年齢は静流と同じ、笑顔でこそあるが肝心の目は全く笑っておらず、何処と無く大人びた雰囲気と不気味さを感じさせる出で立ちだ。
「やぁ静流、久しぶりだね」
「やっぱアンタか…」
ニコッと微笑み掛ける不破と、はぁ…と大きなため息を吐く静流、その2人を見て朝霞は声を掛ける。
「葛城、君は不破と戦闘を行って貰う。遠慮はするな、常在戦場の意識で挑め」
「「は…はい」」
少しだけ圧を掛けて来る朝霞、彼女の圧に押され少し引き攣った返事をする不破と静流、ちょうど13時の合図が鳴り【White/Fang流】対人訓練が開始される。
代弐節
「懊悩陶酔愉悦御来光」
「ハッ!」
「オラァッ!」
各隊員がそれぞれ得意な兵装を使用し、【鴉】の格好に扮したもう1人の隊員と組手を行なっている、これをトーナメント形式で行いまた別の者とペアを組んで組手を行う。
それが【White/Fang流】の対人訓練だ。
「ハァァァッ!」
「甘い!」
不破の足を刈り取ろうと下段に蹴り込むが、姿勢を低くした不破の右手に弾かれる。
そして数手交えた所で、忍者の末裔である静流は密かに感づく
【この男は体術に精通している】
と。
それも空手や柔道と言ったここ最近の物では無く、どちらかと言えば古来より伝わる【古武術】の動きに近い。空手や柔道と違い、実戦を意識した(正確に言えば実戦しか意識していないが)【古武術】は、相手との苛烈な組合を想定した動きが多い。
故に、相手の隙を突く技も多くーーー
「セイヤッ!」
「がっ!?」
版ッ!と跳ね上げられた腹部に、不破のガチで殺す気の掌底が叩き込まれる。腹部…しかも胃にもろに当たった為、胃を貫く鋭い激痛に顔を歪めるが、こちらとて返し技の位はある。
「調子に………乗んなや!」
「うおっ!?」
掌底を撃ち込み、硬直した不破の腕に即座に脚を絡み付け、不破を押し倒し寝技の態勢に持って行く。【葛城流】とて元を辿れば一つの古武術がルーツであり、同じ古武術の長所や短所くらい学ばされているし、古武術使いとの戦闘も想定した訓練も行なっている。
肘を固められ、苦悶の声を上げる不破。状況の変化に静流はほくそ笑むが、この判断が失敗だったと直後に痛感する。
「ん"ぬ"ぅ"ぅ"ぅ"!」
「ッ!」
腕力で強引に拘束を振りほどいた不破。そして強引に解かれた事で、体勢を崩した静流の顎にゴッ!と不破の放った裏拳が、見事にクリーンヒットする。
轟ッと吹き飛ばされる静流、そして不破はと言うと…何と走りながら追いついて来た、その修羅の如し形相に驚いた静流は体勢を立て直しショルダーチャージの体勢で突っ込んで来た不破の突進力を利用し、彼の腕を掴んで背負い投げを喰らわせる。
「ぐぅっ…!」
「トドメ…!」
仰向けに倒れ込んだ不破にトドメを刺そうと跳躍する静流、腰から刀を抜き不破の首元を刈ろうとした刹那ーーー
「やめ!」
と、介入して来た朝霞に止められ静流は驚愕の表情をする。何故なら全力を込めた渾身の一撃を、指一本で止められたからだ。
目を白黒させる静流を傍目に、朝霞は拍手をして2人を賞賛する。
「見事だ、不破はこれでも体術に秀でてるからな、単騎でここまで行けるのは葛城位だろう!それに不破も不破だ、幕末からある忍の末裔を相手に優勢に立ち回った!」
朝霞に「周りを見てみろ」と促され、されるがままに周囲を見渡す。周囲の隊員達は呆然としており次の瞬間、拍手喝采が地響きの如く鳴り響く。その喝采の中、朝霞は隊員達に
「お前達もこの2人を見習う様に!」
と喝を入れると、各隊員達が一斉に活気溢れる返事を返した。
「さて、私は少し野暮用があるので暫く留守にする。お前達は訓練に励む様に!」
と、喝を入れると朝霞は去って行った。
返事をした各隊員達は、今度は別の隊員とペアを組んで組手を再開する、静流と不破はこのあと滅茶苦茶組手やらされた。
「…そっちはどうだ?」
White/Fang地下研究室に朝霞は来ていた、朝霞がそう問い掛けると暗闇の中から男が1人現れる。男は黒いコートを羽織っており、唇が無く歯が露出していた。
「トリガーの事ですな?順調です」
「そうか、なら良い」
【アサルトトリガー】、レギオン保有者専用の装備として開発されているこれは、レギオンと保有者のDNAを最適化させレギオンとのリンク率を向上、レギオンの活性化を行う。
そしてまだ実験段階だが、現在はフランスの科学者【Abel=Blanc】から頂いた研究資料を元に、レギオンとの融合実験も行なっている。
朝霞は、アサルトトリガーの置かれているガラスケースを見る。
「【Chein Beast】…、君はどんな可能性を示してくれる?葛城…」
次回
代参節
「興味愛想なんての無い脳内」
戦争?勿論やるよ、鴉と狼のな
(世界戦争編は代参幕から)