ダーク・ファンタジー小説

Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.25 )
日時: 2019/12/22 10:59
名前: 祝福の仮面屋 (ID: PZX6sAnA)

「うむ……誰を向かわせるべきか…不破…は駄目として、葛城……は名義上私の隊とは言え元々は一ノ瀬のとこのだし………」

三島小隊隊長・三島 朝霞は、今後の作戦について頭を抱えていた。主にWhite/Fang恒例の、【レイヴンへの単独潜入調査】へ行かせる者の選抜に誰を選ぶべきか、部下思いな彼女はそうそう決断にいたれていなかった。

「だとしても下手な者を出す訳にも…」

そして不意に扉がノックされ、「ひゃうっ!?」と少女の様な悲鳴を上げ扉の方に一瞬で振り返る朝霞、「ゴホンッ」と空咳を一つすると彼女は扉へを開ける。
すると中に、振り袖姿の静流が入って来る。
朝霞の不可解なものを見る様な視線を気にしたのか、少し静流が赤面したが朝霞は可愛いと思いながらも、安心するよう促す。正直、和風メイドの様に可憐な姿をした静流に若干見惚れながら、彼女へ座るように促す。

「で…なんで私の所に来たんだ?」
「い、いえ!その…何というかですね…隊長の唸り声が聞こえて来たから?少し気になっちゃって…」

「あー、聞いてたか….」と、少し申し訳なさそうな表情をする朝霞。少しだけ神妙な表情をする静流に「いや、問題ない」と伝え、唸り声を上げていた理由を話す。

「まぁ何だ、その…レイヴンへの単独潜入調査の任務についてだが、誰を選抜しようか迷っていてな…」
「あー、ありますよね。ゲームとかでも」
「いや冗談で言ってるわけじゃないんだがな?」
「分かってますよ隊長」

静流の軽口に苦笑いを浮かべる朝霞と、彼女の反応を見て楽しんでいるのか不明だが、口元を隠しながらコロコロと笑う静流。
そして、数秒程経った後笑い合っていた二人の表情からは笑みは消えており、剣呑とした雰囲気が広がっていた。そしてその空気を破る様に、静流は静かに口を開いた。

「隊長、お願いがあります」
「………何だ」
「レイヴンの単独調査、私にやらせてください」

朝霞は絶句する。
恐らく、White/Fang結成時から見ても自らレイヴンの単独潜入調査を志望する者は、静流が初めてだろう。朝霞は「本当に行くのか?」と、再度静流に質問するが、彼女の答えは変わらなかった。
【何を言っても聞かないだろう】そう察した朝霞は、餞別……または餞と言わんばかりに険しい表情で、静流と自身が挟むテーブルに一つのガジェットを置く。そのガジェットはグリップの様な形状をしており、上部に赤いスイッチが一つ配置されていたシンプルな物だった。

「これは?」
「アサルトトリガー……【東柄重工】謹製のレギオン保有者専用の武装だ。テスト運用時点では副作用の確認はされなかったが、どうなるか分からんぞ。あくまでこれは切り札として捉え、普段使用は極力避けろ」
「……分かりました。では、私はここで…」
「待て」
「………何でしょう」
「これだけは覚えておけ、世界を滅ぼすのはレギオンかもしれない…だが、世界を繋ぐのもまた…レギオンだ」
「……はい」

朝霞の言葉に静かに頷いた静流は、隊長室を後にした。





代参節
「興味愛想なんてのない脳内」





「ここが…会津…」

東京から数10キロ離れた場所に存在する隔離区域・通称【外郭】に存在するそこには、他の街とはまた違った、荒廃した何かが存在した。
【電脳海賊・レイヴン】、妖の出現と共に活動を始めた者達。
否、彼らは前から活動していたのかもしれない。後に勃発する、戦いを暗示しているかの様に。
静流が少し歩いた先にアイズへと続く入口が見える。壁にこそ囲まれているが、外へ続くトンネルなど無く扉の外へ一歩でも出れば、そこから先は【外郭】の荒野が広がる。

「(確か…裏ルートを模索してあるから、そこから中に行けって隊長は言ってたっけ)」

静流は円形に都市(?)を囲んだ壁に沿って歩き、更に少し歩いた所に裏門を見つける。
彼女は門の中に入り、手近な人に話を聞こうとした刹那ーーー

「ッッッ!?!?!?」

彼女は撃たれた。

「がっ………ああああああああ!いってええええええええええ!」

脚を撃たれたのか、脹脛を抑え地面を泣き叫びながら転げ回る静流。そんな彼女を見下ろす人影を、静流は睨み付ける。
静流に睨み付けられた男は、「そんな睨むなよ、怖えじゃねぇか」と、軽口を飛ばして彼女を見据える。

「なぁ嬢ちゃん、さてはここのもんじゃねぇだろ?身包みか金目のもん置いてけよ…それがない場合、どうなるか分かるよな?」
「………ひぐっ、うぅ……」
「お?何だ…っておいおい!この女漏らしてやがるぜ!」
「マジか!まぁ、急に撃たれた挙句こんな恐喝まがいな事されりゃ、誰でもそうなるか!でもやっぱ、黙って貰ってなきゃならねぇからなぁ…」
「ん!んんんんんん!」
「静かにしててくれよ、後で気持ち良くしてやるからさ」

口に猿轡を嵌められ、静流は多数の男達に抱き抱えられながら男達は自身のアジトへと向かって行く。そして静流は、この男達は鴉の構成員でない事にも勘付く、少なくとも鴉はこんな郊外間近な所に来ないだろうし、まず金目の物が欲しいなんて三下臭い事は言わないだろう。
男達に連れられ、静流は脚の痛みに我慢しながら歩く。

「さて着いたな、おい!この嬢ちゃんを立てねぇ様に腕ぇ縛って、そこら辺に座らしとけ」
「はいよ、大人しくしてろよー」
「ん"ん"ん"ん"ん"!」
「何言ってるか分かりませ〜んw」

男達は笑いながら静流の腕を縛り、柱に座らせる。

「まぁ、身包み剥ぐ前に泣き叫ぶ声が聞きてぇからなぁ…猿轡くらいなら取ってやっても良いだろ」
「んんんんん!……っぷは!はぁ…はぁ…!貴方達は誰なんですか…!?それに、何で私を………?………っ!」
「さっきも言ったじゃん、俺らは金目の物が欲しいんだよ。それが駄目なら身包み置いてって貰うし、それも駄目なら強硬手段ってとこか?それに嬢ちゃんは脚怪我してるんだしさ、もう楽になろうぜ?身包みやら金目の物やらは、俺達が有効利用してやるよ」

痛みに呻く静流を他所に、男は笑いながら拳銃に弾丸を込める。

「うぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!痛いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!何で撃ったの!?私何もしてないじゃん!」
「五月蝿え餓鬼だな………もう良いや、死ね。金目の物やら身包みやらは、お前殺した後でじっくり漁ってやるからよ」

泣き叫ぶ静流を睨みつけながら、男は静流の眉間に銃口を突き付ける。本来、人殺しを初めてしよう者なら手が震えるのだが、男の手は全く震えていなかった事から男はこれまでに何人か殺して来た事が分かる。

「じゃあな」

男は引き金に指をかけ、泣き叫ぶ静流を打ち抜こうとした次の瞬間!

「痛いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………っしゃ治ったァ!」
「なに…!ぎゃああああああああ!」

工場内に、静流の叫び声と男の悲鳴が響き渡る。
男の悲鳴を聞いた他の男達は大慌てで工場内に入って来た後、目の前に広がった光景に戦慄した。
彼らの目に移ったもの、それは右腕を抑えながら床を転げ回る男とつい先程まで脹脛を撃たれた満足に歩けなかった少女が、満面の笑みで転げ回る男の頭を左脚で踏み付けていたからだ。
少女・静流は弄ばれた怒り故なのか、公衆の面前で小便を漏らすと言う痴態を見られた恥ずかしさ故なのかは不明だったが、今尚収まらない怒りを男にぶつけガスガスと男を踏み続けていた。

「テメェ!一体どうしてくれんだ!私の痴態をあんな公衆の面前にさらしやがって!この歳で失禁する事が、現役JKにとってどんだけ恥ずかしいか分かっててやらせてんのか××××野郎が!爺にすら見られた事ねぇんだぞ!」
「ギ、もうやべ……」
「あぁ"!?知るかボケが!花のJKに赤っ恥かかせてくれやがって!身包み剥ぐとか言ってたなぁ、何なら剥ぎ取り繋がりでお前の皮がどこまで繋がって剥けるか挑戦するかコラ!」
「死ねぇぇぇぇぇ!」
「テメェが死ね!」
「ぎゃばっ………!」

静流は腰から刀を抜き放ち、殴り掛かって来たもう一人の男の頚動脈を撫で斬りにする。
男の首から、まるで間欠泉の様に噴き出す真っ赤な血液を浴びながら静流は狂気染みた笑みで、刀身に付いた血を舐める。側から見れば、目の前にいるのは猟奇的殺人鬼とその被害者という構図にならなくもないが、今回の被害者は静流である為そう言う事にはならないだろう…多分。
男達は腰を抜かす者もいれば、静かに失禁する者もいた。
もう一人の男は後退りながら逃げようとしたが、運悪く静流に目を付けられ一足飛びで距離を詰めた彼女に床に縫い付けられる。

「ひぃ!い、命だけは助けてくれぇ!」
「じゃあ質問ね?」
「は、はい!」
「レイヴンって知ってるでしょ?私、そこに用があるの。レイヴンのアジトまでの行き方を教えて欲しいかな〜♪あ、比較的安全なルートでね?嘘ついたらどうなるか…分かるでしょ?」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ……そ、それは」
「はい時間切れ」

ザクリ、と音を立て男の脚に刀が突き立てられる。
男の野太い悲鳴、その五月蝿さに静流は耳を抑えながら優しく微笑み、男の耳元で囁きかける。

「そっかぁ、じゃあ1000から3ずつ引いてみよっか♪ちゃんと質問答えてね?はい1000ひく3は?」
「き、きゅきゅきゅ…きゅうひゃく…きゅうじゅう…なな。き、きゅうひゃく…きゅうじゅう…よん。きゅうひゃく…きゅうじゅう…」
「はい、答え聞くね?鴉のアジトへの行き方は?」
「きゅうひゃく…はちじゅう…はち。き、きゅうひゃく…はちじゅう…ご!きゅうひゃく…」
「はい時間切れ」
ザクリ
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!」

静流は溜息をつく。

「これがラストチャンスね?私は何も、呑気に数字だけ数えてろって言ってた訳じゃないの。拷問続けたら、貴方の精神壊れちゃうでしょ?正気を保ってられる様に数えてろって言っただけ。………早く言えよ」
「こ、ここ"から…数キ"ロ歩いた先に"、旧地下鉄の駅がある"。そこを"通って"い行けば、レ、レレレイヴンの、あ、ア"ジトに"、着ぐがら"…」
「そっかぁ、有用な情報ありがとね?」
「い"、いのぢだけは…」

血尿を垂れ流しながら、男は涙でぐちゃぐちゃになった顔で静流に命乞いをする。それを静流はーーー

「無理♪」

妖艶な笑みと共に、斬り捨てた。






「さ〜てと!行きますか」

静流は、私服任務だった為に着てきたお気に入りの振り袖を血に汚しながら、鴉の巣へと向かう。
目指すは鶴ヶ城。
そこに巣食う、彼女の大事な物を根こそぎ奪って行き、玖を奪って壱を与えた憎き鴉達を一羽残さず殺す為に。





次回
代肆節
「No.chance of survoiving」
久方振りの投稿!
この拷問を通して、静流はやっぱ忍の末裔なんだなと感じて頂ければ
そしてレギオン保有者専用装備のアサルトトリガーとは?
因みに、白牙の専用装備は全て東柄重工謹製だったり