ダーク・ファンタジー小説
- Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.28 )
- 日時: 2020/02/05 20:09
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: cerFTuk6)
代肆節【後編】
「風タク思い出すなぁ…天井裏から散策とか」
昔やっていたレトロゲームの事を懐かしく思い出しながら、静流は現在、レイヴン本拠地の屋根裏を這っていた。会津に到着した時、憂さ晴らしにムッコロコロしたチンピラから奪った地図を見ながら、スマートフォンに登録した専用アプリで位置を確認する。
どうやらこの先に換気口があるらしく、直感と携帯用のライトを頼りに更に進んで行く。そして少し進んだ後、静流は驚きの事実を知る。
『なぁ、侵入者が来たんだって?』
『らしいな。まぁ、見間違いだと思うが』
『だな』
「マジかよ…」
バ レ て た 。
一体いつからバレていたんだろうか。取り敢えず静流は状況を整理する為に、更に奥へと進んで行く。
そして10数分ほど這いずり回った後、静流は遂に換気口を見つける。
(あった!)
換気口の下を見る。
下は大ホールとなっているらしく、少しばかり見渡すと、縦横約100mくらいの正方形の床が視界に入る。
そこで静流は、更に驚愕の光景を目にする。
(え……!?)
下には一人の男がいた。
そこまではまだ普通なのだが、その男が戦っていたのはーーー
(あれは、妖なの……!?)
そう、人類の敵・妖だった。
人型故にサイズはC−3クラスだろうが、この時点で一般市民なら数十人はミンチになっていても可笑しくは無く、自衛隊でも討伐に時間を有する脅威なのである。それにも関わらず、男は両手剣と思われる段平を手に、勇猛果敢に妖へ斬りかかる。
そして、妖と数手打ち合った男は、徐ろに左手を翳す。次の瞬間、静流は三度驚愕する事となった。
(レギオン!?)
そう、男が翳した掌からはキューブが現れ、それは次第に人型を形成して行く。それは、誰がどう見ようと、White/Fangの誇る新兵器、《式神(レギオン)》の他に無かった。レギオンを出現させた男は、互角に渡り合っていた妖を瞬殺する。
その光景を屋根裏から見ていた静流は、ただただ戦慄するだけだった。
(レギオンは狼しか持ってない技術の筈…一体、何で技術面に難のある鴉が…?)
静流は思考する。
だが、考える事に没頭していた所為なのか、静流は背後まで迫り来る者の存在に気が付かなかった。
「きゃっ!」
「何だ!?」
「侵入者だ!」
刹那の間に静流は囲まれる。
静流が臨戦態勢に入った次の瞬間、ステージの奥の方から手を叩く音が聞えて来る。
その音の方に眼を向けると、そこには一人の男がソファに座っていた。男は少しの沈黙の後、マスクに映し出されたホログラム映像を笑顔に変え、口を開く。
「よぉ、白い狼さん。ようこそ、真っ黒い鴉の巣窟へ。俺の名はカンヘル、お前さんなら覚えてる筈だぜ?葛城静流」
「カンヘル……!?」
静流は眼を見開く。
親愛なる祖父を殺し、葛城静流と言う名の少女の人生から玖を奪い、彼女の人生を狂わせた怨敵が、今目の前に座っていた。
戦慄する彼女を他所に、レイヴンの頭目・カンヘルはソファから立ち上がり、仰々しく両手を広げる。
「さぁ、全力でかかって来い。それとも?俺の方かr…」
「死ぃぃぃぃぃねぇぇぇぇぇッ!!!」
刹那の間に、静流は一足飛びでカンヘルとの間合いを詰め、腰に収められた粒子加速式忍刀・ムラクモを抜き放つ。
今、修羅の道を征く狼と、世界の闇を牛耳る鴉の頭目との一騎打ちが始まった。
次回代伍節
【喰う者と喰われる者】