ダーク・ファンタジー小説

Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.3 )
日時: 2019/11/13 06:20
名前: 祝福の仮面屋 (ID: kNmNzfjC)

White/Fang 代一節「悲劇への序曲」

2030年、突然、だけど奇妙な現実味を帯びた破滅は、好きな人の告白の様に唐突に訪れた。
昔私が祖父から聞いた話によれば、超規模な地盤沈下が日本の各地で発生し、日本の国土の5分の1を根こそぎかっぱらってったそうな。
とは言え当時産まれていなかった私からすれば御伽噺の様な空想感が漂っていた、人間は他人から見聞きした情報をこの世の理として捉える習性がある、それ故に本来の情報に懐疑的になるのだ。
私が産まれて5年経った2111年の時点で、もう日本という国は存在せず天津巫國と呼ばれる國になってたらしい、これはマジ情報だったのが救いだったのかもしれない。
私の祖父…と言うか私の家はかつての経済界の首領的な立ち位置の家系だったらしく、おまけに忍者の家系でもあったらしい。一昔前は「アイェェェェェェ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」なんてネタが某動画投稿サイトにて持て囃されたらしいが、今もそのネタ通じるのかな…通じる訳ないか、ないな
とにかく、これは2120年現在を生きる忍者の孫娘の私が紡ぐ、素敵な素敵な物語



〜天津巫國(旧日本国)ある山奥〜

「ただいま〜」
そう言って私は靴を脱ぐ、靴は時代錯誤なものではなく普通に何処にでも売ってそうな靴だ。時代錯誤といえば自分ちの外観くらいだろう。(寝殿造と言うらしい、いつの時代だ)そう思いながら上がるとちょっと視線を感じた、上の方だろうか。コソコソ…いやカサカサと動き回る音が聞こえて来る。
「ちょっと、コソコソと隠れていないで出てきて貰える?バルサン炊くよ?」
「………!」
おっと、少し意地悪のつもりで煽ってやったら唐突に殺気が吹き出してきた、いや単細胞か。はぁ…面倒な事になったなぁ…
「ムカつくなら捕まえてごらんよ、でも私…鬼ごっこは強いよ?」
と言いながらも私は弾ッと飛び上がり轟ッ!と風切り音でも鳴りそうな程に鋭い蹴りを牙ッ!と相手に叩き込む、骨を叩き斬ってやったつもりだったが相手も相当な手練れらしい、私の蹴りはアッサリと掴まれた。
「クッ…」
ミシミシと嫌な音が聞こえる、ヤバイ、マジで折る気だコイツ。
「(パニックになるな、こんな時は…こう!)」
弾ッ!と相手の腕を蹴り、強引に拘束を抜け出す、そして空中へ翻すと同時に相手を爪先で蹴り上げる。
「小癪な…!」
男のくぐもった声が聞こえる、仮面でも被っているのだろうか、表情は読みづらい。
「おぉ、あなた喋れたんだ…、てっきり喋れないと思ってたよ。ケリ付けたげるから付いておいでよ、鬼さん!」
私は走り出す、向かうは屋根裏部屋…の煙玉保管庫、何故そんなものあるのか?おいおいここは忍者屋敷だぜ?
「アイツは…ってはぁ!?」
後ろを見ると暗殺者(仮)は壁を走って来てる、パルクールじゃないんだから床走ってよ!障子破ったら弁償だよ!?
「(付いた!久し振りだなぁ…ここ来るの…ってそうじゃない、今はアイツをどうにかしないと…!)」
私は隠れる場所を探す
「(あの木箱がいいな…)」
私は丁度いい大きさの木箱に身を潜める、そして5秒程後に暗殺者(仮)の足音が聞こえる、歩いているのかゆっくりだ。
「小娘め…、一体どこへ…!?」
男の足音が近づいて来る、あと少し…あと少しだ…、来た…今!
「何っ!?」
磐ッ!と蓋を勢い良く開けて飛び出すと同時に踵落としの体勢に移る、蓋は相手の視界を塞ぐし、踵落としのモーションはフェイク、だが相手は反射的に防御の構えに移るから時間稼ぎには十分!
「さて問題!これは何に見えるでしょうか!」
「貴様…っ!」
「楽しかったよ♪鬼ごっこォォォォォ!」
私は豪快かつ大胆に煙玉を投げる…そう、煙玉を投げた筈だった…突如として怒尾尾尾尾音!と盛大な爆発音を鳴らしながら煙玉は爆発したのだ。なんと言う事でしょう!これまで薄暗く視界の悪かった屋根裏部屋の屋根が吹き飛び視界が明るくクリアになったではありませんか!
「これぞ劇的BeforeAfter…ってね」
だけどこれは私も想定外だった、まさか炸裂弾だったとは、とはいえここに来るのは幼稚園の頃以来だし受験だなんだで来る暇無かったし…とか思っている内に暗殺者(仮)が落ちて来た、おいおいマジかよ、あの勢いと体勢でスーパーヒーロー着地決めちゃったよ。すっご
「ふむ、腕を上げたな…静流」
「え、お、お爺ちゃん!?」
なんと言う事だ、私の命を狙った暗殺者(仮)はまさかの祖父だった、悲しきかな現実…
「おい待て、お主今変な事考えとるじゃろう…だが家に入った瞬間に殺気を感じ取るのは見事じゃ、小さい頃はまともに見つけられなかったからのう。」
「いや、お爺ちゃん手ぇ抜いてたでしょ?」
「いいや?お主がマジで儂を殺しに来るもんだから若干本気でやらせて貰った、周りの物を利用して勝機を生み出すのも高評価じゃ…」
とお爺ちゃんが評価していると刃牙ッ!と床が抜けた、お爺ちゃんは無論落ちた、あぁ可哀想に…ついに天からのお迎えが…なんて冗談かましてる場合じゃない!私は和室に飛び降り、お爺ちゃんの元に駆けつける。
「おぉ…おつつつ…」
「お爺ちゃん!大丈夫…!?」
私の伸ばした手はガシッと掴まれる、え?何で?私助けたのに?
「勝ったな…!」
私はハッとする、あろう事かこの爺敵の同情を誘って来やがった!汚ねぇ!
「いやいや、そこまでして勝ち欲しいの!?」
「いや、最後はお主がどんな反応するか試したまでよ、結果お主は助ける道を選んだ。結果としては悪くないが戦場だだたらお主…、とっくに死んどったぞ?」
「だってお爺ちゃん…」
「いや、わかっとる、寧ろ敵だったらそのまま追撃加える気がして来た…」
「多分お爺ちゃんって分からなかったら掛けてたかも…」
「何じゃろうな、孫に殺されるってすっごい複雑な気分」
「そっか…ふふっ♪」
「ククク…!」
コンコン
「「!?」」
「すいません、静流ちゃんの友達の朝比奈なんですけど、静流ちゃん居ますか?」
「あぁ〜ごめんヒナ!ちょっとお手伝いしてた!」
「そうなの?大丈夫だよ!行こ、映画遅れちゃうよ?」
「じゃあお爺ちゃん!行って来ま〜す!」
「遅くなるなよ〜」













私は友達と街へ出かけた、だが今の私は知らない、この『おでかけ』が悲劇のトリガーになる事を…




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代2節「9を失い1を得る」