ダーク・ファンタジー小説
- Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.6 )
- 日時: 2019/11/08 20:45
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: jo2UR50i)
White/Fang代肆節
「所詮この世は修羅か羅刹か」
『行け行け行け行け行け!』
『ぶっ殺せぇえぇぇぇえええぇ!』
『うおおおおおお!』
「…五月蝿え、滅茶苦茶五月蝿え」
俺が今いるこの部屋の上では、種族体格関係なしのデスマッチが行われている。ここが何処かって?おお悪い悪い、まずはここの説明からだな。ここは元神奈川県横浜市にある赤レンガ倉庫の跡地だ、ここ横浜は東楼を囲む壁の外にある『隔離地帯』っつーとこの地下にある。
じゃあ、種族体格関係なしの『種族』の説明と行くか、本来ここの住民達は元々東楼や他の都市となんら変わらねえ見た目してたんだが、ここはかつて地盤沈下の発生した土地の一つだ、それが影響して大穴がぽっかりと空いた旧鎌倉市から漏れ出た有害物質によって人々の外見は誰から見ても『バケモノ』としか言い様がない異形の姿になっちまった。
無論、東楼やその他首都では「妖」と呼ばれる化け物が出現した為、見た目がアレなここの住人達は妖扱いされ後ろ指をさされ実験に使われ殺される、だから俺がここの住民達を養ってかなきゃならねえのと同じだ。
つっても一応ちゃんとした人間もいるが、殆ど逃げちまって今残ってるのは俺とここの運営者達だけ、ここは隔離地帯非合法地下格闘技界『天逆鉾《アメノサカホコ》』、こいつぁ天逆鉾に属する…しがねぇチンピラの話だ。
「Ladies,And,Gentlemen!さぁさぁ今夜も張り切って行こうぜ!今夜もレフェリーはこの俺ルフトが務めさせてもらう!まずは赤コーナー!さぁ、猛る猛獣の登場だ、その力を見せつけてやれ!天上天下唯我独尊のチャンピオン、『灰崎ぃ、佐ぁぁぁ之助ぇぇぇ!』」
「「「うおおおおおおおおお!」」」
レフェリーの紹介と共に歓声が上がる、俺の名は灰崎 佐之助、この天逆鉾不落のチャンピオンだ。
「期待してるぜ!良い死合見せてくれよ!」
「佐之ちゃぁぁぁぁん!頑張ってぇぇぇ!」
「グッチャグチャにしてやれぇぇぇぇぇ!」
周囲の歓声がよりヒートアップする、俺が現チャンプってのもあるんだろうが、何よりこれはデスマッチギャンブルだ、金を賭けて勝った方により多く変換される。よりシンプルで単純明快なルールで女性も多い、女性ファンから俺は『佐之ちゃん』と呼ばれていた。
「さぁさぁお次は青コーナー!堅実に攻め堅実に守り、型に嵌りながらも堅実な戦績を収める武闘家ァ…フランキー・マキシマァァァァァァァァァァス!」
「「「うおおおおおおおおお!」」」
青コーナーからも歓声が湧き上がる、どうやら相手もかなりの手練れらしい、だが俺と違う点と言えば顔付きが人間のそれじゃねえのと、両脚が極端に長かった。一体関節何個あるんだろうか。
「フランキーかー」
「渋い線組んで来んじゃん」
「負けんなよフランキー!」
「人間なんざブッ潰せぇぇぇ!」
めっちゃ蛮声飛んでるなおい、まぁ地下格だから問題ねえけども表舞台だったら警察沙汰だろうな…、まぁ誰が相手でも遠慮はしねえが
「ヘイ!」
不意に相手から声を掛けられる、何だ?友好の証でも結ぼうってか?
「アンタ、現チャンプなんだってな。」
「だったら何だよ」
「アンタ相当『使う』だろ?」
「それが?」
「魅せてやろうじゃねぇの、血に飢えたクリープショーの住民にさ」
「同意だな…レフェリー、早く鳴らせ」
「まぁ待てよ、まずは発券からだぜ?佐之助は1.5でフランキーは2.65!五分後に発券は終了するから急いでくれよな!」
「佐之助に40!」
「フランキーに65!」
「こっちは70だ!」
俺より相手の方が券多いってどういう事だよ…、まぁ俺がいつも通り勝つより相手が勝つ方に期待した方がスリルもあるか…、とりあえず頼んだぜ、ルフト
「OK発券は終了だ!さぁ、準備は良いか!?Ready…Fight!」
カァァァンッ!とゴングが鳴り響くと同時に相手が間を詰めてくる、成る程…脚が逆関節になってるからその機動力を生かしたか
「シッ!」
轟ッ!と振るわれる回し蹴り、関節真っ直ぐにも出来んのか、便利だなおい。と称賛したいがここは地下格、俺は群ッと身を沈めた。
「何っ!?」
「フッ!」
そしてカウンターのアッパーを俺は放つ、相手は咄嗟にガード体勢に入るが良いのが入った、牙積ッ!と衝撃が相手を貫き吹っ飛ばす。
「くっ、中々やるなアンタ…!」
「現チャンプだからな、そら行くぞ!」
轟ッ!と放たれるストレート、だが驚くべき事に相手が受け流しを使って来たのだ、ストレートをスカして硬直した俺の体に前蹴りが叩き込まれた。
「ガッ…ハッ!」
「どうだ?俺の蹴りは、流石のアンタでもかなり効くだろう?」
「っせーな…、図に乗ってろ」
俺はまたストレートを放つ、無論相手は予想の範疇だろう、遂に自棄になったかと勝機を見出した相手は鼻で笑った
「また同じ手か!?同じ手は二度と俺には通用しないぜ…!?」
…と笑っていた顔は一瞬で驚愕に変わった、俺が闘牛の如く突っ込んで来たからだ、そして俺の手は相手の塞がった両腕を強引にひっぺがし怒波庵ッ!と顎に強烈なフックを叩き込んでやった。
「カッ…!?」
「テメェまた同じ手をっつったよなぁ…、だが現チャンプはノコノコと同じ手を使う程甘くねえんだよバァァァカ!」
俺は怒涛のラッシュを怯んだ相手に叩き込む、我流拳術奥義「玖頭龍」、上下左右斜めの玖方向から放たれる乱撃は相手に防御する暇も回避する余裕もカウンターを決める隙も与えない!
「クッ、おおお…!」
「悪いな、トドメだ」
怒轟音ッ!と強烈なアッパーを打ち込む、相手は白目を剥き仰向けに倒れた、ヤッベもしかして殺っちまったか?
「レフェリー、生死判定」
俺はレフェリーに生死判定を求める、死んじゃったら興行相手がいなくなっちゃうからね、死なれちゃ困る。主に俺が
「どう?」
「生きてるぜ、問題ねぇ」
息はしてるっぽい、良かった
「さぁ!勝敗は決した!この死合を制したのはァ!?天上天下唯我独尊のチャンピオン…赤コーナー、佐ぁぁぁぁぁ之助ぇぇぇぇぇ!」
「「「うおおおおおおおおおおお!」」」
オーディエンスから歓声が噴火の如く吹き上がる、正直この勝利後の歓声は嫌いじゃない、とにかく勝った事の喜びを感じられるからだ。
「やっぱ佐之は強えな!」
「これからも頑張れよぉぉぉぉぉ!」
「佐之ちゃぁぁぁん!おめでとぉぉぉぉぉ!」
歓声を背に俺はリングを降りる、今尚歓声は止まず佐之助コールが始まっているが関係ない、正直疲れた…鯛茶漬け食いたい…と思いながら控え室への通路を歩いていると
「佐之!」
…と声を掛けられた。
「…ミズハか」
「そうだよ♪試合お疲れ様」
彼女はミズハ、まぁ…俺の親友みてえなもんだな、それ以上でもそれ以下の関係でもねえ、ただ話のしやすい奴ってだけだ。ただし顔はバケモンのそれだが個人的にかなり美人だと思う、俺って性癖歪んでんな…
「相変わらず呑気だよなお前は、親友が地下で殺し合いしてるってのによ」
「でも毎回勝ってるんだしいいじゃん、それに佐之のおかげで私達が生きていけてるって訳だし…、お父さんやお母さんも…いや、みんな感謝してるよ?」
「おい佐之」
「あぁ、義父か」
この黒スーツの顔に刀傷が走ったガタイの良い男は、俺が義父と呼ばせて貰ってる天逆鉾を経営してるヤクザ「吾妻會」の若頭だ。
「ミズハちゃんも来てたか、こんなチンピラと一緒にいて楽しいか?」
「育てたの義父だけどな?」
「いえ、楽しいですよ?性格はこんなだけど色々知ってますし、寧ろ私達みたいなバケモノじゃないから…」
俺はちょっとムカついたから拳骨を下す、厳ッと鈍い音を出してミズハは頭を抑えた
「何すんの!?」
「るせえな、自分を勝手に卑下するもんじゃねえよ、俺は自身のねえ奴が大嫌えなんだよ」
「なんで自信持てよって素直に言えねえかなぁ…、俺はそんな捻くれた子に育てた覚えはないぜ?」
「あのな義父!俺は真面目に…!」
「ふふっ…、アハハハ♪」
「何が可笑しいってんだ…」
「ううん、だって…私の事を綺麗って言ってくれるのは佐之位だから…!アハハハ♪」
「お前性癖歪んでんな」
「るせーな、わぁってんだよんなこたぁ」
俺は思うには、俺は皆で笑い合う日常が欲しいのかも知れない、冗談かまして、感情ぶつけ合って、妖を殲滅してここにいる皆も日の元を歩ける世界が欲しいのかも知れない。所詮この世は修羅か羅刹か、弱肉強食でも構わない、皆が笑い合える世界が欲しい。だが俺はまだ知らない、俺の選択が余りにも愚かで残酷な事を…
次回White/Fang代伍節
「散り行く時は命徒花」
正直言って技とか全部るろ剣リスペクト…