ダーク・ファンタジー小説
- Re: White/Fang(過激グロ注意) ( No.7 )
- 日時: 2019/11/08 22:15
- 名前: 祝福の仮面屋 (ID: jo2UR50i)
White/Fang代伍節
「散り行く時は命徒花」
「ふぅ…」
「お疲れ様です!佐之の兄貴!」
「いやぁ今回も凄かったっすね!」
「玖頭龍使う程の相手だったんですか?」
控え室に戻った瞬間に問答攻めしてくるコイツらは俺の舎弟だ、コイツらは俺と同様に元孤児で俺が路地裏を縄張りにしてた時に喧嘩売って来たからボコボコにしてやった、そんで俺の腕っ節に惚れたんだとか。俺はホモじゃねぇよ
「バカお前、兄貴が雑魚相手に玖頭龍を撃つかよ。」
「いや俺からすれば殆ど雑魚だよ、とりあえず早く試合終わらせたかったからやった、だが」
「だが?」
「相手に学習されちまったら負けてたかも知れねえな、奥の手もあるから勝てるには勝てるだろうがギリギリだったろうな。」
「やっぱそうなんすか?」
「種族体格が違い過ぎると力に差が出るからな、正直言ってあんな異形系とは二度とやりたくないね、俺の体が保たん。あ、そういやゲンはどうした?」
「あぁ、ゲンの奴はさっき兄貴に客が来てたからそいつらの接待に…」
そう噂してるとバカァァァンッ!と控え室の扉が開き、ボロボロになったゲンが飛び込んで来た。
「ゲン!何があった!」
「あ"…、兄貴"…逃げで下ざい…!」
「いい、何があったか教えろ」
「狐顔の男が…、灰崎 佐之助に"会わ"せろ"っていき"な"り…」
「おやおや、なんだか事態が大事になっていませんか?」
「テメェか…!ゲンをやったってのは…!」
長身痩躯の狐顔の男が開かれた扉から入ってきた、敵意は感じないがそこらの奴らに比べれば圧倒的に強い、戦闘態勢に入った俺に勘付いた男は喋り出した。
「おっと殺気を収めてください、流石の私でもあなた相手では勝てませんからねぇ…」
「何もんだテメェ…!」
「私、こういう者でございます。」
そういって男が差し出した名刺には対特殊災害隠密局『White/Fang』と書かれていた。
「政府の狗が何の用だよ?」
「私は貴方に用がありましてね、ご同行頂けるでしょうか?」
「断る、要件も言わねえ奴にノコノコとついてく馬鹿があるかよ」
「おっとそれもそうでしたね、貴方には新型兵器、『レギオン』のパートナーとなって頂きます。」
レギオン…、確か妖に拘束具を装着させ生体兵器として使役する政府の新たな武器か、何で俺が?いや、そもそもメリットはあるのか?
「無理だ、俺はここの連中を養わなきゃならねえ、悪いが交渉は決裂させてもらう。」
「こんな燻ったアングラな格技場よりも、うちに来て忍として闇を葬った方が養うには丁度良いと思いますが…、報酬はこの位で宜しいでしょうか?」
男はタブレット端末に金額を表示する、俺はその金額を見て絶句してしまった、こんな額があれば皆を養うのは容易になるだろう。
「保証は?」
「貴方の働き次第です」
「兄貴…、マジで言ってるんですかい?」
「悪いな、ゴロー…俺の次に腕が立つのはお前だ、コイツらを頼んだぞ」
「契約成立…と見て宜しいでしょう?」
「あぁ、契約成立だ」
「では参りましょうか」
俺と男は扉を出てどこかへ向かう、どこに向かっているかは分からないが、この男は何か感情を読ませない薄気味悪さがあった。
「そうだ佐之助さん」
「あ?」
「『鴉』気を付けて下さいね…、愛する者を護りたいなら『狼』の元で働くのが一番効率的です、佐之助さん専用にチューンしておいたレギオンを用意させております。是非とも研究所までご同行お願いします。」
鴉…鴉?なぜ鴉の名前がここで出てくる?鴉とは恐らくレイヴンの事だろう、だがそこまで危険な組織では無かったはずだ、寧ろ俺達に金を送ってくれた共生関係にあった筈…
「レイヴンと何かあったのか?」
「いいえ?何も…」
「ホント気味悪いな、アンタ」
〜天逆鉾〜
「ゴロー、どうすんだよ…」
「ジン、お前はゲンの手当てをしてやってくれ、タケルはオヤジにこの事を伝えて来い。ただし無駄に盛るなよ?ありのままの事を伝えてやるだけで良い、オヤジの事だから許してはくれるだろう。」
「わかった、行ってくる。」
「頼んだ」
「カ"…!」
「ゲン!?どうした!どこか痛むか!?」
「ガ…カ"ラス"か"…」
「鴉!?鴉がどうした!?」
嫌な予感がする、良い予感は当たらないのに嫌な予感は滅法当たる、世の中は理不尽で、そういう風に出来ている。
「カ"ラス"は…、『レイ"ウ"ン』は…、俺達を"殺す"気た"…!タケル"の奴を"…、早く呼ひ"戻して"くれ"…!」
俺は走る兄貴に頼まれたから、俺は兄貴達の伝達役だ、この位出来なくてどうする…
「オヤジ!」
目の前に目当ての人物がいた、俺はオヤジにありのままに起こった事を話そうとしたが…
「聞いてくださいオヤジ…、オヤジ…?」
返事がない、まるで尸のように、いまになって分かった、オヤジはもう死んでるのだ。よく見たら床に臓物がブチまけられてたし、ホログラムの顔が写っている刀を背負った男が、オヤジの顔を乱雑に掴んでいた。
「お、なんだお前コイツの知り合いか?ならよ灰崎 佐之助って男をしらねぇか?」
「(コイツ、佐之の兄貴を狙ってる…?)佐之助?さぁ、そんな人しらね…」
瞬間、俺の体は組み伏せられた。一瞬だ、だがその一瞬の間に男は数mあった間合いを詰め俺を組み伏せたのだ、俺は体術には自信があったがこの状況が今ひとつ理解出来なかった。
「!?」
「おいおい、嘘は良くねぇよなぁ…!俺は嘘が嫌いなんだよ…、なぁ、ホントの事教えてくれよ、灰崎 佐之助はどこにいる?」
「お、教えねぇ…!お前らには、ぜってぇ!」
俺は男を振り払い走る、全力で、だがその逃走も虚しく俺の体から力が抜ける、まるで気が抜けた様に。
「一体何が…!?うわぁぁぁぁぁ!」
俺の下半身が消し飛んでいた、焼く様な痛みが全身を襲う、そして下半身は雷に撃たれたかの様に真っ黒に焼け焦げていた。
「はぁっ…、はぁっ…くそぉ!」
「お、逃げるのか?頑張れ頑張れ、はいあんよが上手、あんよが上手!」
俺は残った上半身を使って必死に這いずる、兄貴に伝えなければ、その抵抗も虚しく男が背負った刀を抜く音が聞こえる。
「兄貴逃げて下さい!この男は…レイヴンは俺達を…!」
ザクリ、そう音がして俺の首は落ちた。
「良くねぇよなぁ、チクリはよぉ」
「ここです」
「ここか」
俺は研究所に来ていた、どうやらここが連中の新兵器『レギオン』の研究所らしい、俺は狐顔の男からキューブを渡された。
「これは?」
「貴方の式神のコア…即ち心臓です、それを放り投げてみて下さい、貴方専用と言われるのも納得の個体が現れますよ。」
そう促され俺はコアを投げる、するとコアから大量のポリゴンと思われる物質が放出され、下半身のない鎧の様な上半身と片腕だけで全身と同等か少し劣る大きさの腕を持った機械とも生物ともとれる物体が浮遊していた。
「コイツが…、俺の…!」
「ね?佐之助さん専用と言われても納得が行くでしょう?」
確かに納得はいく、ここまでの個体では相当な力もあるだろうから俺でなければ引きずられるだろう、確かに俺専用だなと思い振り向いた瞬間に伝令が届いた。
「伝令です!灰崎 佐之助殿はおりますか!?」
「俺が佐之助だ、何か用か?」
何だろう、嫌な予感がする。悪い予想は滅法当たるのだ、しかもこんな場所では余計に
「レイヴンのリーダーを名乗る男から、『明日の夜天逆鉾に来い、話をしよう』との事です。」
最悪だ、俺の判断で皆を危険に晒したのだ。いや下手すればもう死者が何人か出てるのかもしれない、俺は明日の夜に天逆鉾へ行くだろう、『惡・即・滅』を心に誓い…
次回White/Fang代陸節
「六根罪瘴燃ゆるが如し」
次回佐之助メイン回最終回、ここから玖を喪い壱を得た少女と修羅か羅刹かの世を生きた少年の物語がリンクしていく。