ダーク・ファンタジー小説
- Re: 黎明のソナタ ( No.2 )
- 日時: 2020/01/26 19:03
- 名前: 祝福の仮面な (ID: T8uIPv/C)
「ふっ、フハハハハ…!」
「……何がおかしい?」
「最後に言い残す事は、あるか?」
と、黒髪の少年は質問すると右目を覆っていた眼帯を力任せに引きちぎる。眼帯が外され、露出された彼の右目は赤く、縦に一本に傷が走っていた。僕ともう1人の男が絶句しているのを他所に、彼は宣言する。
「俺は悪魔と契約する…!人間を変えるぞ!」
と。
すると、目と鼻の先に立っている金髪の男は、悪魔との契約を宣言した彼を睨み付け、怒りをぶちまける様に叫ぶ。
「そうか…想像以上だよ、君は3000年前と何も変わっていないんだな!良いだろう、僕は今!君を殺す事に決めた!」
刹那、何もない空間から突如として男の右手に一本の剣が現れ、男はそれを掴んで彼へ突き付けた。彼は突き付けられた剣を睥睨し、右腕を天に掲げる。すると、彼の右腕を漆黒の炎が覆い尽くした。
目の前の男も、剣を空高く掲げる。次の瞬間、男が翳した剣は純白の光を纏い、目と鼻の先には天高く光の柱が聳え立っていた。光と闇、相反する二つの概念を纏った2人は互いを睨み合う。
「覚悟は出来たか?」
「ほざけ、君はここで死ぬべきだ」
「……っ!」
俺は固唾を飲み、勝負の行く末を見届ける。
そして次の瞬間、光と闇は交差し、爆ぜる。
何でこんな事になったかって?それは数ヶ月前まで遡る…。
〜数ヶ月前〜
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」という母の見送りの言葉を背に、俺…啄木鳥 栄次郎は玄関を飛び出す。
「うわっ!ヤベー遅刻だ!」
と俺は声を上げ、走る速度を速める。しかし、愚かな事に俺は前から歩いて来る人に気付かず、肩をぶつけてしまった。
「あ、すいません…」
俺は軽く謝罪し、再び走ろうとしたがーーー
「な!?」
俺の体は、ピクリとも動かなかった。
ぶつかってしまった人はトランプをシャッフルする様な動作をしており、右腕を振った瞬間、男の右手には水で出来た5枚のカードが現れた。
「な…!?」
「運が悪かったな、ぶつかってしまった自分を恨め」
そう吐き捨てた男は身構え、カードを一枚飛ばす。
【死ぬ】
そう感じた俺は直感的に目を閉じる。次の瞬間、投げられたカードは何かとぶつかり合う様な音を立てた。
「……一体何が…!?」
俺は恐る恐る目を開けると、そこには、1人の少年が立っていた。少年の手には、つい先程こちら目掛けて投げつけられたカードが指と指の間に挟まっていた。少年はこちらに振り向き、問う。
「怪我はないか?」
「あ、はい。一応…」
少年の問いにそう答えると、少年は軽く息をついて男を見据える。
一色即発の状況に、俺は直感的に嫌な予感を感じていた。
第1話
【前編】