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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 月星の影、浜辺の真砂に ( No.1 )
- 日時: 2020/01/02 15:05
- 名前: 凍鶴 (ID: 7t.dwaO6)
[1-夜凪-]
霞深が目覚めたのは、何処か小綺麗で機械の有る室内だった。 こめかみが随分と痛む、あまり宜しくない目覚め。 しかしその中で確かだと思えたのは、此処が病院であるという事だった。
「かすみさん。佐倉、霞深さんだね。調子はどうかな。」
先刻小走りに此処へ入ってきた白衣の男性が、ベッド側に屈んでそう言った。名前が解るという事は、親と連絡が取れたのだろう。……そう、霞深は悟った。
「……普通、です。」
白く冷たい色をした掛け布団を掴む手は、未だに凍えている。窓から射し込んだ昼前の陽光が当たれど、冷たい。
「そうか……、もう直ぐでお父さんとお母さんが来るからね。」
20代前半の、皺一つ無い笑顔さえ霞深には何の価値も無かった。何故己が此処に来たのかさえ覚えていない上に、何故だか人を皆信用してはならない様な気がしたからだ。
「……はい。」
その返事を聞けば、その医者は頷いて部屋を出ていった。周囲白色だらけで、目には眩しい限りであった。
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